一木けいのレビュー一覧

  • 全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)

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    一木けい『全部ゆるせたらいいのに』新潮文庫。

    読んでいて、昔懐かしいささやかな家庭の描写に喜びを感じる一方で、切なさと悲しさで心が痛くなるような小説だった。

    一種のアル中小説と言っても良いだろう。

    酒で憂さを晴らすとか、酒は百薬の長とか、適度な酒ならとか都合の良いことを言うが、酒は一滴でも身体にも、精神衛生にも良くない。本書に描かれている通り、酒は家庭崩壊の原因にもなる。どうして法律で禁止されないのか不思議でならない。

    毎晩のように泥酔する夫の宇太郎に自身の父親の姿を重ね合わせ、不安に押し潰されそうになりながらも、何とか家庭にすがる千映。

    娘の恵が産まれてから、より一層、仕事に力を入

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    2023年04月04日
  • 悪と無垢

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    今回もまんまと翻弄された。
    第一章から止まらなくなる流れ。でも読み終わるとさらに深まっている謎。
    こんなに整理するために読み直したの久々。

    時系列はバラバラながら「英利子」とのそれぞれの出会い、受けた恩恵、予期せぬ無関係そうに思える出来事。
    章を重ねるたびにそれらが密接に繋がっていることを理解し、表と裏から覗いているような感覚。理解する喜びとさらに深まっていく困惑がごちゃ混ぜになって、格別な体験だった。

    全体的な大きな流れだけではなく、各章の欲望と悲哀、人間の不気味さ、明らかになり切らないちょっとした疑問点など、それぞれの読み応えも抜群だった。
    また著者らしい、常識や大多数の意見を背にした

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    2023年03月11日
  • 愛を知らない

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    いやぁ、一木さんやっぱりいいわ。

    ヒリヒリする。

    もう読む手が止まらなかった。

    出てくるキャラクターがみんな良い。

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    2023年03月11日
  • 悪と無垢

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    不穏なプロローグから、一話目の物語を読み終えてこれは短編集なのか?紹介文にあった悪女とは??
    ただ、すごく好みの作品っぽい…
    常に持ち歩いて短い時間でも本を開いて没頭するくらい夢中になって読んだ。
    読みながら、その嘘に気付かない私も簡単に信じきって騙されてしまう側なんだろう…
    1話目2話目の危うい彼女たちのように自らすすんで騙されにいって、その束の間の幸福に身を委ねる描写が本当に上手くて、、私が一木けいさんの作品で一番好きな「穴底の部屋」を感じられたのが一番の収穫でした。

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    2023年01月13日
  • 愛を知らない

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    血の繋がらない母と娘の感動作。
    といっても、虐待やクラスメイトとの関係などテーマはいろいろあった。

    一木けいさんの作品は、読み始めからぐっと引き込まれる。登場人物の心理描写が生々しいからか、臨場感もある。

    久しぶりに読書にのめり込んだ。

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    2021年10月30日
  • 愛を知らない

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    ネタバレ

    「わたしがそのときいちばんつらかったのは、ただその人が憎いだけじゃないってことだった。」「引き出しを分けることにしたの」「恩にも時効はあっていい。」反芻して自分の中に落とし込んだ、冬香先生の言葉たち。

    そして、ヤマオが行動派で素敵なんだ。

    橙子のようなつらさ、悲しさ、想いを抱えている人はどのぐらいいるのだろうか。気づかないところに、すぐ近くに、いるかもしれない。どうかこの本を必要としてるいる人に、広く届いて欲しい。

    カツセさんが帯を書いていなければ、読んでいなかったかもしれない本。私のところに届いてほんとに良かった。

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    2021年09月12日
  • 愛を知らない

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    高校で同じクラスになった親戚の橙子は、まわりから浮いている存在だ。クラスでも一目置かれるヤマオの推薦で橙子は合唱祭のアルトソロになる。ピアノ伴奏する涼と指揮者の青木さんの四人で練習をはじめるが...。
    「愛着障害」この言葉を最近になって目にすることが多くなってきた。
    橙子は、ネグレクトされて保護されて芳子の家に里子として引き取られた。里子にだされた子供は、度が過ぎる程のイタズラや、悪さを繰り返し、里親の反応を試しくるのだそう。
    クラスに馴染めない橙子も、そんな可哀想な子供だから、わかって欲しいと芳子は言った。
    しかし、芳子の本当の姿を涼とヤマオは知ってしまう。
    「恩にも時効はあっていいと思うの

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    2021年06月23日
  • 愛を知らない

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    母と橙子、それぞれの「愛してほしい」が切ない程伝わってくる小説。これをクラスメイトで親戚の涼の視点から書いているのが凄いと思った。青木さんとヤマオのキャラクターも魅力的。
    母娘の関係という地球上最も近い存在の愛の形を描いてると思う。恋愛の男女の関係とは別の視点で、人間として1番関係性が密接で深いのは母娘だと思っていて、それをここまで描ききっていることに感動した。

    男の人は、あまり読んでも分からないかもしれない。

    母として、娘として、女として、愛されたいと望む人間性を切なく描いている。

    そんなに長くないのでスッキリすぐ読める。
    197ページあたりは、スピードアップして、私はゾッとした。

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    2020年05月17日
  • 1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)

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    由井本人やその周辺にいる(いた)人たちをそれぞれの視点から描いた作品。
    ひとことで言ってしまえば青春恋愛小説なんだけど、その枠に留まらないエピソードや読後感があった。
    特に「潮時」に描かれた船乗りのお父さんの話がたまらなく切なくて好きだった。

    慌ただしく日常を過ごしていて、ふとしたタイミングで思い出す過去の恋愛。
    その人の隣で過ごす時間が何物にも代え難い幸せな時間だったこと。
    いまは消息も知れないし、その人が死んだとしても知る手段がないのだけど、いまもどこかで幸せに生きていればいい、その生活の中で一瞬でも私と過ごした時間を思い出してくれたらもっと良い、と願ってしまう気持ちになりますね。

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    2025年12月13日
  • 1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)

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    一木けいさんの文章とてもすき。
    等身大な感じがして、全身からすんなり沁みてくる。真冬のおでんみたいな嬉しい温かさ。

    いろんな気持ちとタイミングが重なって変わっていく人生がそれぞれにあるって意外と忘れがちなことだった。

    人の愛の形っていろいろだな、
    葛藤もある、諦めもある。それでもその中で生活を営む。

    みんな幸せでいてほしいと心から願った。

    中学のとき好きだったあの人も。

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    2025年11月23日
  • 1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)

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    一木けいさんの本は初めて読んだ。

    1ミリの後悔もない、はずがない
    の 、 が意味するもの。

    子どもの頃に自分たちの力では何ともならなかったことが、大人になるにつれて自分の決断で人生を選んでいく。

    それぞれいろんな事情がある人でも恋をする。
    離ればなれになりたくても、その決断をしなければならない、自分以外のせいで。

    生きるための強い意志を感じる。
    足りない部分を埋め、誰かに埋めてもらう人生。
    1人で生きていくのではなく、誰かと支え合うことのあたたかさを改めて感じた。


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    2025年11月16日
  • 1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)

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    一編一編大切に読んだ。
    絶対再読すると思う
    一木けいさんの本、今まで読んだもの全て何度も読むぐらい気にいってる。
    ストワリーはもちろん、心理描写巧みで心がきゅっとなるのに引き込まれる

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    2025年11月02日
  • 彼女がそれも愛と呼ぶなら

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    キモいシーンがあるけど、全体的には面白かった。
    学生向けではないかも。
    でも、いろいろな人がいると知るのは悪くない。
    同じことをするにも、相手によって全く違うのだ。

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    2025年10月13日
  • 愛を知らない

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    ネタバレ

    瑞々しくて悲しくて苦しい話だった。

    正直、芳子のことは少しも好きになれないし、可哀想だとも思わないけど
    ヤマオが言うように彼女が橙子を引き取らなければ
    同じクラスになることも合唱することもなかったと思うので
    そこに関しては「ありがとう」なのかなと思う。

    好きだけど嫌い。
    心の底から嫌いになれたらどんなに楽か。
    そう思ったときは、冬香先生のように、感情を別々の引き出しに入れてみようと思う。
    恩にも時効がある。いい考え方だと思った。

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    2025年10月07日
  • 結論それなの、愛

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    初読みの作家さん
    タイに駐在する女性たちが主人公たちの連作短編集
    みんなどこかで人とのつながりに飢えていて、それをどうにかしようともがいてた
    どれも良かったけど、1作目の菜食週間が好きだった
    心理描写が巧みでどんどん引き込まれてった
    久々にもっとこの人の書いた文を読みた!ってなった。

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    2025年10月05日
  • 全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)

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    良かれと思って与えた愛の形が人を苦しめることってあるんだなって、そんなことを考えながら読みました。それぞれの立場に立てば理解できても、許せないし、でも諦められないし。誰かと生きていく難しいなって思いました。家族ってある種の呪い。幸せであろうと不幸であろうと、離れようとしてもなかなか離れられなくて、嫌いにはなりきれなくて、恐怖や不信感に支配されていても、父親だから…夫だから…っていうところに着地する。でもそれは悪くない。
    ただ、当たり前のことだけど暴力や暴言で人を支配しようとするのは弱い人のやることだと思った。はけぐちがなかったのかもしれない、追い込まれて、逃げられずにいたのかも知れたない。でも

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    2025年09月12日
  • 彼女がそれも愛と呼ぶなら

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    男女の関係に言葉をつけようとすると苦しくなったりするのだろう。
    自分に何か明確なものがあるとそんな事も気にならないし、憧れる。
    「2人の関係」について深く考えたくなる物語だった。

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    2025年09月03日
  • 愛を知らない

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    合唱祭をめぐる、高校2年生の涼(りょう)とその同級生たちの物語り。生まれた子供は全ての出来事が初めての経験であるのはもちろんだけれども、親にとっても子育ての全ては初めての経験であり、その中で起こる様々なことを丁寧に語った良作と思いました。星4つの評価としました。

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    2025年09月01日
  • 結論それなの、愛

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    論理感グチャグチャ、色に溢れたタイでの生活に最初はうわぁとなったけど、皮膚に纏わりつくような暑さと濃い花の香り、あの現地の男独特の欲しい言葉をくれる時間に包まれると、あぁ細かい事はもうどうでもよくなっていくんだなと妙に納得した。一人は逃避行し、また一人は罪を犯し、そしてまた一人現実の世界へ戻っていった。

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    2025年08月18日
  • 全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)

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    なかなか興味深い題材で、感情移入しやすかった。また読み返したい。アル中の父を持つ女性の話。私の父もお酒をかなり飲む人だけど、ここまでではないし、暴力、警察沙汰があるわけではなく飲みすぎて病気になったりお金がすぐなくなっちゃうくらいだけど、アル中って本当に怖いなってことを再認識しました。
    すべての章に、愛という文字が含まれていて、そこもなんとなく好きなところ。
    愛について、考えさせられました。勝手にしろって突き放せたら楽かもしれない、それでもあなたが好きだとゆるせたら楽かもしれない。だけどどっちにも振り切ることができない辛さ、不安定さ、やるせなさ。勝手に期待してそれを裏切られて、失望して、期待す

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    2025年08月12日