一木けいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一木けい『全部ゆるせたらいいのに』新潮文庫。
読んでいて、昔懐かしいささやかな家庭の描写に喜びを感じる一方で、切なさと悲しさで心が痛くなるような小説だった。
一種のアル中小説と言っても良いだろう。
酒で憂さを晴らすとか、酒は百薬の長とか、適度な酒ならとか都合の良いことを言うが、酒は一滴でも身体にも、精神衛生にも良くない。本書に描かれている通り、酒は家庭崩壊の原因にもなる。どうして法律で禁止されないのか不思議でならない。
毎晩のように泥酔する夫の宇太郎に自身の父親の姿を重ね合わせ、不安に押し潰されそうになりながらも、何とか家庭にすがる千映。
娘の恵が産まれてから、より一層、仕事に力を入 -
Posted by ブクログ
今回もまんまと翻弄された。
第一章から止まらなくなる流れ。でも読み終わるとさらに深まっている謎。
こんなに整理するために読み直したの久々。
時系列はバラバラながら「英利子」とのそれぞれの出会い、受けた恩恵、予期せぬ無関係そうに思える出来事。
章を重ねるたびにそれらが密接に繋がっていることを理解し、表と裏から覗いているような感覚。理解する喜びとさらに深まっていく困惑がごちゃ混ぜになって、格別な体験だった。
全体的な大きな流れだけではなく、各章の欲望と悲哀、人間の不気味さ、明らかになり切らないちょっとした疑問点など、それぞれの読み応えも抜群だった。
また著者らしい、常識や大多数の意見を背にした -
Posted by ブクログ
高校で同じクラスになった親戚の橙子は、まわりから浮いている存在だ。クラスでも一目置かれるヤマオの推薦で橙子は合唱祭のアルトソロになる。ピアノ伴奏する涼と指揮者の青木さんの四人で練習をはじめるが...。
「愛着障害」この言葉を最近になって目にすることが多くなってきた。
橙子は、ネグレクトされて保護されて芳子の家に里子として引き取られた。里子にだされた子供は、度が過ぎる程のイタズラや、悪さを繰り返し、里親の反応を試しくるのだそう。
クラスに馴染めない橙子も、そんな可哀想な子供だから、わかって欲しいと芳子は言った。
しかし、芳子の本当の姿を涼とヤマオは知ってしまう。
「恩にも時効はあっていいと思うの -
Posted by ブクログ
母と橙子、それぞれの「愛してほしい」が切ない程伝わってくる小説。これをクラスメイトで親戚の涼の視点から書いているのが凄いと思った。青木さんとヤマオのキャラクターも魅力的。
母娘の関係という地球上最も近い存在の愛の形を描いてると思う。恋愛の男女の関係とは別の視点で、人間として1番関係性が密接で深いのは母娘だと思っていて、それをここまで描ききっていることに感動した。
男の人は、あまり読んでも分からないかもしれない。
母として、娘として、女として、愛されたいと望む人間性を切なく描いている。
そんなに長くないのでスッキリすぐ読める。
197ページあたりは、スピードアップして、私はゾッとした。 -
Posted by ブクログ
由井本人やその周辺にいる(いた)人たちをそれぞれの視点から描いた作品。
ひとことで言ってしまえば青春恋愛小説なんだけど、その枠に留まらないエピソードや読後感があった。
特に「潮時」に描かれた船乗りのお父さんの話がたまらなく切なくて好きだった。
慌ただしく日常を過ごしていて、ふとしたタイミングで思い出す過去の恋愛。
その人の隣で過ごす時間が何物にも代え難い幸せな時間だったこと。
いまは消息も知れないし、その人が死んだとしても知る手段がないのだけど、いまもどこかで幸せに生きていればいい、その生活の中で一瞬でも私と過ごした時間を思い出してくれたらもっと良い、と願ってしまう気持ちになりますね。 -
Posted by ブクログ
良かれと思って与えた愛の形が人を苦しめることってあるんだなって、そんなことを考えながら読みました。それぞれの立場に立てば理解できても、許せないし、でも諦められないし。誰かと生きていく難しいなって思いました。家族ってある種の呪い。幸せであろうと不幸であろうと、離れようとしてもなかなか離れられなくて、嫌いにはなりきれなくて、恐怖や不信感に支配されていても、父親だから…夫だから…っていうところに着地する。でもそれは悪くない。
ただ、当たり前のことだけど暴力や暴言で人を支配しようとするのは弱い人のやることだと思った。はけぐちがなかったのかもしれない、追い込まれて、逃げられずにいたのかも知れたない。でも -
Posted by ブクログ
なかなか興味深い題材で、感情移入しやすかった。また読み返したい。アル中の父を持つ女性の話。私の父もお酒をかなり飲む人だけど、ここまでではないし、暴力、警察沙汰があるわけではなく飲みすぎて病気になったりお金がすぐなくなっちゃうくらいだけど、アル中って本当に怖いなってことを再認識しました。
すべての章に、愛という文字が含まれていて、そこもなんとなく好きなところ。
愛について、考えさせられました。勝手にしろって突き放せたら楽かもしれない、それでもあなたが好きだとゆるせたら楽かもしれない。だけどどっちにも振り切ることができない辛さ、不安定さ、やるせなさ。勝手に期待してそれを裏切られて、失望して、期待す