一木けいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。
たまに読む一般の方のブログで紹介されてて、気になったから読んでみた。
主人公は、ピアノが上手な男子高校生。
同じクラスで親戚の橙子が、合唱コンクールのソロに選ばれて、指揮者、男子ソロの4人で練習をしていく。
最初やる気のなかった橙子は、徐々にクラスメイトとも打ち解けていった。
そんなとき、主人公とその仲間は、橙子の出生の秘密を知る。
橙子が、自分が里子であることは知られたくないって言ったことが印象的だった。
同情されたくないからか?と主人公は想像を巡らす。でも、そういうことではないと思う。
読み進めていき、おそらく、橙子自身が、育ての親から橙子の生みの親について悪情報ばかり聞かされおり、自分のアイデンティティや生まれを恥ずかしいもの、人に知られたくないことだと思い込まされていたんだと思う。
橙子が魅力的で、誰かに大切にされるに値する人間であること、誰かを救っていること、ヤマオに説得されたのだろうけど、橙子が肯定的な意見を全て素直に受け入れられたのかどうか…。
育てにくい子は、たしかに存在します。
愛着障害の試し行動というのも、現実にあるのでしょう。
でも、信頼関係を築けなかったこと、子どものせいにしないであげて欲しかった。
最後には、育ての母も、橙子との日々に幸せがあったことに気づけるけど、遅すぎた。
橙子は、きっと、自ら選んだ道とは言え、しばらくの間は「育ててくれた恩を裏切った自分」に苦しみながら生きていくことになる。つらすぎる。
ピアノの冬子先生が「恩にも時効がある」と主人公に言ったけど、大人である冬子先生自身も、そのことに気付けるまでに相当の年月を要したはずだ。
里子里親というか、養子縁組なのではないか?と些末な法律論にひっかかる暇もないほど(読み終えてから違和感に気付いた)この少女の行先が明るいものであるよう願いながら、先へ先へと読み進めました。 -
Posted by ブクログ
「元カレ」をテーマに描いた、人気女性作家に
よる4編のアンソロジー
それぞれの作家さんらしい物語を堪能できた。
〈姉ちゃん・青山美智子〉
読後感が爽やか。最後の意外性が良かった。
〈三月なんて前世・一木けい〉
小麦アレルギーの脚本家、琴と自分勝手で
ろくでもない元カレとの過去の記憶が描かれる
〈全てはカーテンの中・町田そのこ〉
さすが町田さん!というようなストーリーだった。あの小刀、バッグに忍ばせていたら銃刀法違反に
なりそう
〈二つ年上・山内マリコ〉
着物店に就職した主人公の成長を描くストーリー
主人公のそれぞれが、元カレに対して、未練や
後悔、憎しみを持ち続けながら生きている。
そんな厄介な気持ちを持ち続けながら生きることは苦しみが伴い、なかなか忘れることさえできない。
更に元カレとの記憶は常に美化されがち。
そんな元カレとの過去を自分なりに区切りをつけようとする主人公たち。元カレと過去の気持ちに区切りをつけ、次の一歩を踏み出そうとする彼女たちを思わず応援したくなる、そんな物語だった。 -
Posted by ブクログ
「淫雛な路地」にやられた。
言葉のチョイスが素敵な作家さん。
恋愛小説は卒業したので、
残念ながらストーリーにときめくことはなくなってしまった。そのかわり、文章自体を存分に
味わうことが出来た。
「自分の鳩尾に墨をどくどくと流し続けるような時間」
「あけびが太陽を吸収したような色の瞳」
「仄暗く静謐な横顔」
「紫色を帯びた手の中に、文庫本」
「真っ赤な尾翼を持つ飛行機が夕陽に溶け込むように飛んでいく」
美しい!こんな風に言葉を操れたなら。
一木けいさんの心も
繊細でいろんな色彩をもっているんだろうな。
語彙と知性と表現力と感性と。
絶妙なバランス。
言葉にとんでもなく色気を感じた。
「淫雛な」という形容詞をつけられた「通路」もびっくりよ。でも、言い得て妙なんだよなあ。
素晴らしい表現は
まだまだ沢山あって、
身悶えしながら読み進めた。
タイトルも秀逸。
連作短編になっていて、
それとなくでてきた登場人物が次の短編で主人公になってる。
その設定も好き。
え?さっきのワンシーンの人!って気づいた時の喜びよ。
「卵とキウイ、あるいは跨線橋」
どうよ?洒脱なタイトル!
大人の芳香を感じる一冊。
恋愛を過去においてきた私には、
言葉の色香を堪能できた読書体験。