一木けいのレビュー一覧
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一番好きなのは奈落の踊り場。読みやすい文章で物語に入り込めて時間があっという間に感じた。
読むだけで浮かび上がる情景と足りない空白を埋めようと想像させるそのバランスが私の好みだった。
「愛想笑いに疲弊する頬は、真崎の部屋にいたときとは筋肉の使い方が違った」
表現の仕方や一つのアクションに対して自然なアプローチで情報を説明するのがスマートに感じる。
次に好きなのは馬鹿馬鹿しい安寧
最初の主人公より愚かさを感じるのに何故かイライラせず読める。
この二つの作品は不倫特有のヒリヒリ感とハラハラ感、理性的に考えて決断すればリスクを冒さなくて済むのにそうしない人間の非合理的なところが垣間見れて -
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初めて読む作家さん。文章が、素人の域を出ていなくて、少しびっくりし、戸惑いながら読んだ。でも、確かに、心を動かされるものがあった。話題になったのも頷けた。力がある1冊だった。
幼い頃から親に虐待を受け、愛着障害を持つ女の子の物語。合唱コンクールの練習に励む高校生四人が主な登場人物。
愛着障害を持つ女の子は、幼い頃、自分を施設から引き取ってくれた育ての親に、試し行動を繰り返し困らせた。高校生になって、随分と落ち着いたとはいえ、クラスメイトへの態度もぶっきらぼうだ。人からよく思われようなんていう気持ちは皆無と思える行動をとる。
この物語を読んで1つ強く思ったことがある。私も、この女の -
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アルコール依存症の父のもと育った千映。
自分の夫もまた、アルコールに溺れようとしている。
夫に父の姿が重なり、『ああなっては欲しくない、娘の恵に自分と同じ道は歩ませたくない』と神経をすり減らす日々を過ごしている。
『全部ゆるせたらいいのに』とは、つまり、ゆるすことができない部分があるということだ。
全部ゆるすことができたら楽になることは理解しているけれど、ゆるすことができない。
許すは、何かを行うことを認めること。
赦すは、既に行った罪や過ちを責めないこと。
平仮名で表すことでそのどちらの意味も含有しているのだとすると、過去も未来もひっくるめてあなたの行為をゆるしたい、ということなのかな?
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「誰も彼も、見たいものだけ見て、信じたいものだけ信じるよね。この世界にあるのは、そんなきれいなものばっかりじゃないのに。ー」(P.154)
「誰かを傷つけないために言わないことで、別の誰かが傷ついたら?ただ黙っとくのがほんとうに、いいことだと涼ちゃんは思うの?ー」(P.155)
「それで、その人のすべてを、わたしの中の引き出しに分けることにしたの。たしかに大事にしてもらった。愛をもらった。守ってもらった。つらいときに優しくしてくれた。情に厚くて、セクシーで、すごく魅力的な人。だけど、そのよい方ばかりに目を向けると、つらくなっちゃうのよ。そんな人に対してこんなことを思う自分がろくでなしに思えて。 -
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なにより、アルコール依存というのが
いかに恐ろしいものかが思い知った。
その人の人生、周りの人も含め
狂わされてしまう。完治できた人間はいるのか
と思うほど、悪循環で呪いのような病気
主人公の背負ってきた苦労、
幼少期から父にされてきた事を考えると
泥酔し家庭に影響するほどの
目の前の旦那に対し
信じる、ことが当たり前のように
できないのは、仕方ないよな
難しいよな、と思う
そんな彼女から
許す、諦めることが
いかに難しいかを教えてもらった
お酒で狂うまでの
千映と旦那と子供の生活
と
千映が幼少期の頃の父と母の生活
お話がそれぞれあって
どちらも心がポカポカするほど、暖かく幸せな
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Posted by ブクログ
初めて一木さんを読んだ時の衝撃が忘れられない。当時から背後には暗い冷たいものはあったんだろうけれど、あの、ページを読み進めたい!と思わせる躍動感というか胸をえぐられる感じが…やっぱり乏しい。小説家としては、上手くなっているのかもしれないけれど。個人的にはすごく、寂しい気持ちになる。
特に今回は、最初2つを読んで、不倫の話か、もうやめよ…となり、ただレビューを見たら最後には繋がるというので期待を持ち直して最後まで読んだ。最後まで読むと、えぐみとか、薄ら寒さ、心地悪さをちょっとした言動も含め巧く描いているのだけれど…
あの、次のページを読みたい!!ってなる感じが最初の本からどんどん減っていってしま