あらすじ
「俺いま、すごくやましい気持」。ふとした瞬間にフラッシュバックしたのは、あの頃の恋。できたての喉仏が美しい桐原との時間は、わたしにとって生きる実感そのものだった。逃げだせない家庭、理不尽な学校、非力な子どもの自分。誰にも言えない絶望を乗り越えられたのは、あの日々があったから。桐原、今、あなたはどうしてる? ――忘れられない恋が閃光のように突き抜ける、究極の恋愛小説。(解説・窪美澄)
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Posted by ブクログ
この小説のなかにある恋は、リアルな恋だと思う。
少しでも恋を経験した人が読んだら、追体験させららるほどのリアルさだと思う。
大人になってから出会って好きになった人に対して( もし学生の頃に同じクラスだったら好きになってたかな? )って考えてみたり、
こんなに好きな人でいっぱいの毎日を過ごしていて、この人に出会う前は自分は何を考えてどうやって過ごしてたんだろう?って考えてみたり、
喫煙者の彼と電話をしてるときの、タバコを咥えながら話すくぐもった声にキュンとしたり、
みんな同じことを感じて、考えて、生きてるんだなって思った。
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由井の今の旦那さんもとてもいい人で、由衣がこの人と出会えて幸せな家庭まで持てて本当に良かったと思う。
でも、桐原との終わりが曖昧なものになってしまってるから桐原も由衣も、どうにもなれなくて辛い。
由井は桐原のあの頃の思いを手紙で受け取ってしまって、自分の中で落とし所をみつけなくちゃいけない。
桐原も新しい生活があるかもしれないけど、もしかしたら心のどこかで由井のことをずっと待ち続けてるかもしれない。
とにかく最後があの手紙でおわったのが本当にいい。
読者としてどこまでも考えることができるから、余韻が全然抜けない。
ずーっと考えてる。
娘さんからしたらあの手紙を読んでお父さんに電話したくなる気持ちも分かるし、「捨てちゃおうかな」って思ってしまう気持ちも分かる。
私は、由井のことだからきっと手紙は押入れの奥深くにしまいこんで今を大切に生きていくだろうなとは思うけど、
あの頃のあやふやな終わりをはっきりさせてきっちり終わらせたいとも思うんじゃないかなとも思う。
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桐原からの手紙の余韻にやられてしまって泉と高山のことが薄くなってしまうけど、泉は本当によくあの決断ができたと思う。
きっと高山と一緒になってたら、心のどこかにずっと子どもが居続ける。
高山と本当の意味で一緒になれることはなかったと思う。
もうすでに大切なものがある人間は、それを捨てては生きてはいけない。
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由井の父のアルコール依存症の書き方もリアル。
本人も苦しむけどその苦しみのためにさらにアルコールに逃げて、家族はずっと苦しみ続ける。
でもそんな由井に桐原という存在がいてくれてよかったし、逃げた先に幸太郎と幸太郎のお母さんがいてくれてよかった。
あわよくば、そういう大切な縁を切って逃げてきた由井のこれからは、そのご縁を少しずつ取り戻すものであってほしいな。
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由井の生い立ちを考えると、有島武郎『小さき者へ』に心を打たれる理由は分かりすぎる。
私も読んでみたい。
Posted by ブクログ
ハァー...。読んだことを後悔するくらい心に刺さる本だった。だいぶ好き。
無限の選択を繰り返す中で、過去の後悔や痛みごと包んでくれる人に出会ったり、抱えたまま堕落していったり。正しい選択をしたから幸せになれるわけでもないし、生きる道も出会う人もまた枝のように無限に広がっている。
私も久しぶりに初恋の人のことを思い出したわー。あの頃の感覚もまんま蘇ってきて不思議な気持ちになった。笑って生活できてるといいなぁ。
「潮時とは、漕ぎ出すのに潮が安定している、好いタイミングということ」
Posted by ブクログ
由井の言葉の世界に入ってる間、痛くて辛いのに
すごく居心地が良かった
言葉にしづらいというかできないけど、
こんな小説に出会いたかったっていつ一冊だった
Posted by ブクログ
その男とつがえという自分の核からの命令
という言葉がドキッとした。
恋をするということは
ごちゃごちゃ考えなくても
シンプルに、もっと本能で動いていいんじゃないだろうか
そう思いました。
林檎味の大玉の飴、シュワシュワする味
とか
尖った喉仏
とか
学生時代を懐かしく思い出した、1章が1番好き。
あとの章になるほど、どんどん息苦しくなってきた。
それにしても、涼しい切長の瞳、色白の骨ばった骨格の長身の男の子は、いつの時代もモテモテなんだなぁ。笑
自分も学生時代、そういう子が好きだったのを思い出しました。
Posted by ブクログ
最後の手紙で胸が苦しく切ない気持ちで一杯になった。1ミリの後悔もない、はずがないというタイトルもほんとにそうだよ、な…と思う。私も後悔している事はある。その気持ちは何年経っても心の中にあったりする。
Posted by ブクログ
少し生々しいところもあるけれども、男性の自分が読んでも共感できるところも多く、最後まですらすらと読めた。泣けた。
愛や恋とひとくちに言っても、身体の奥底から揺さぶられるもの、心が暖かくなるもの、分類などし尽くすことができないものだろうけど、それぞれ個々別々に多様な実態があって、個々別々に味わい深いものなのかもしれない。
そうしたことに、筆者は意識的であったのだろうか。
経験したことしか書けないのか。
経験したことも充分には書けないのか。
経験したこともないことすら、立ち表すことができるのか。
Posted by ブクログ
あの人と添い遂げていたら、告白していたら、想いに応えていたら、なぜあんな事を言ってしまったのだろう…様々な後悔を多角的に掬い上げる1冊。あの時ああしておけば、しなかったらーーそんな、「1ミリの後悔もない、はずがない」。そう、こんなにも人生はままならなくて、だからこそうつくしい。これだから本を読むのはやめられない。
Posted by ブクログ
ラスト1行が秀逸すぎます。
全部の短編漏れなく切ないです。
自分に重ねて読む場面も多くて、私だけが後悔に悩まされて苦しい訳じゃないのかと少し救われた気分になれました。
Posted by ブクログ
大好きな椎名林檎さんが帯を書かれていたので。
後悔、と聞くと重く感じられるけど文章はとてもなめらかで読みやすかった。
環境へ感じる苦悩、人間関係の歪みなど重さや深さを比較するものじゃないけど誰しも悩みがあって、悩む度に深くて暗い海に対峙した時のように先が見えないことに絶望するものだなと思った。
どんな環境に置かれていてもどんな年齢でも悩みの対象はある。
ガラス片が波に揉まれ角がとれて丸みを帯びるように、私たちの人生も時を流れ様々な環境で様々な人と触れ合うことで過去の苦しみがゆるやかに溶けて形作られていく。
そしてまた新たな絶望に向き合った時にふと思い出したように過去への後悔が込み上げてくるけれど、ゆっくり作り上げてきた今のこの愛おしい造形を投げ捨ててまで全てをやり直したいという勇気を持つ人はどれだけいるのだろうか。
大人に終わりが無いことを想像して時折恐ろしくなるけど、きっと今答えが出ない悩みへの答え合わせを長い時間を経て出来るかもしれないと思うと未来に向き合う気持ちが持てる。
答え合わせが出来なかったとしても由井が桐原と出会えて初めてうまれてよかったと思えたようにどんな出会いによっても何か得られるものはあるはずだから。
小学校から中学校へ上がった時の友人関係が変化するグロテスクさ、家庭の目を瞑りたくなるような不和や逆に暖かい愛情、正しくない恋の湿っぽさ、少女時代の恋と大人に近づいてからの恋の違いなどを登場人物達の生活の少しの切り取られ方で感じられて良かった。
また時間を置いて読みたい。
Posted by ブクログ
由井本人やその周辺にいる(いた)人たちをそれぞれの視点から描いた作品。
ひとことで言ってしまえば青春恋愛小説なんだけど、その枠に留まらないエピソードや読後感があった。
特に「潮時」に描かれた船乗りのお父さんの話がたまらなく切なくて好きだった。
慌ただしく日常を過ごしていて、ふとしたタイミングで思い出す過去の恋愛。
その人の隣で過ごす時間が何物にも代え難い幸せな時間だったこと。
いまは消息も知れないし、その人が死んだとしても知る手段がないのだけど、いまもどこかで幸せに生きていればいい、その生活の中で一瞬でも私と過ごした時間を思い出してくれたらもっと良い、と願ってしまう気持ちになりますね。
Posted by ブクログ
「うしなった人間に対して1ミリの後悔もないということが、ありうるだろうか。」序盤に出てくるこの問いに対して、章ごとに登場する様々な登場人物のうしなった人間と、後悔についての話が紡がれます。
序盤は由井の視点で始まり、最後の章で由井の娘の視点。最後の最後で由井に対して抱く感情が、1ミリの後悔もない、はずがない。になるのがとても綺麗な終わりであり、かつ読み手にも、もう少し何かが違えば行き着く未来は別のものになったんじゃないか……と後悔に似た感情を抱かせます。
特に心に残ってしまっているのは、大人を信じることをやめた由井が「初めて信じていい大人もいるんだ」と思えた同級生の母です。程よい距離で接する人だなと最初の印象では思っていた女性は、近付きすぎると壊れてしまいそうな繊細な少女と、世間体を気にする家族に悟られないよう、温かく辛抱強く守っていたんだなと分かって、胸が苦しくなりました。
途中で登場する男女の不倫の話も、先に高山のその先の人生を盗み見してしまっているため、もしかしたらこれが彼の人生の分岐点だったのかもなと思ってしまって読むのが少し苦しかったです。自業自得ではあるのですが。歪な始まり方をした関係がその形のまま終わってしまうのは仕方がないけれど、きっとあのとき完全燃焼出来なかった関係がその先の人生に響いているんだろうな、と読みながら思いました。「わたしたちの関係が完全燃焼って、どういうのだろう。」と泉も言ってますがね。
そして由井が父に言って欲しかった言葉が書いてある本『小さき者へ』。
中途半端に愛された記憶があるからこそだな、と思いました。難しい言葉で話す賢い父。そして、自分のことを愛してくれていた父から、言われたかった言葉。きっとどこか自分が幸せになることに罪悪感があったのでしょう。自分だけ幸せになっていいのか、と。だからこそ言われたかったんでしょう。自分を振り払って人生に乗り出して行け、と。自由に生きてもいいのだと背中を押して欲しかったんだろうな、と思いました。
とても良い本です。またいつか読み返すと思います。
Posted by ブクログ
一木けいさんの文章とてもすき。
等身大な感じがして、全身からすんなり沁みてくる。真冬のおでんみたいな嬉しい温かさ。
いろんな気持ちとタイミングが重なって変わっていく人生がそれぞれにあるって意外と忘れがちなことだった。
人の愛の形っていろいろだな、
葛藤もある、諦めもある。それでもその中で生活を営む。
みんな幸せでいてほしいと心から願った。
中学のとき好きだったあの人も。
Posted by ブクログ
一木けいさんの本は初めて読んだ。
1ミリの後悔もない、はずがない
の 、 が意味するもの。
子どもの頃に自分たちの力では何ともならなかったことが、大人になるにつれて自分の決断で人生を選んでいく。
それぞれいろんな事情がある人でも恋をする。
離ればなれになりたくても、その決断をしなければならない、自分以外のせいで。
生きるための強い意志を感じる。
足りない部分を埋め、誰かに埋めてもらう人生。
1人で生きていくのではなく、誰かと支え合うことのあたたかさを改めて感じた。
Posted by ブクログ
一編一編大切に読んだ。
絶対再読すると思う
一木けいさんの本、今まで読んだもの全て何度も読むぐらい気にいってる。
ストワリーはもちろん、心理描写巧みで心がきゅっとなるのに引き込まれる
Posted by ブクログ
学生の時の気持ちを思い出してしまった、黒歴史?も思い出的な。
タイトルも内容とマッチしている!
由井を周りの人の短編。どの話もすごくいい。
「西国疾走少女」の由井と桐原がすごいキュンとした。学生ならではの甘酸っぱさが何とも言えない。郷愁に浸った。
「千波万波」の最後がすごくよかった。ほっとした。最後にすべてをかっさらわれた。
Posted by ブクログ
戻りたいけど戻りたくない。そんな過去は、まさしくタイトルでもある「一ミリの後悔もない、はずがない」と表すことができると思う。
環境が変わったことによって今まで距離の近い関係であった人物がそうではなくなる。逆に、環境が変わったことで出会う新たな希望もある。
恋愛小説ではあるが、どこか寄り添ってくれる、そんな本でもあるのではないだろうか。
サラッと読めて、心にささる
サラッと読めるのに、一語一語が心に刺さります。学生時代の淡い恋、大人になった時の許されない恋、現実ってこんなもんかなぁと思う展開の中に、キラキラとした希望が散りばめられています。それが読んでいて良かった。ただ、終盤のもっていき方が、個人的に好みではなかった。なので、星四つです。
Posted by ブクログ
初めて読む一木けいさんの本、章ごとに時代や登場人物の視点が変わるので少し混乱したが文章は読みやすかった。
あのときのあの選択がこうだったら…
なんで今こうしているのか…
そんなふうに考えることはある程度年齢を重ねた人ならみんな思ったことはあるだろう。
ラストの手紙はせつないけど今が幸せそうでよかった。
Posted by ブクログ
1章目は良かった!
この人の文章好きかも!
青春時代独特のもどかしい感じが表現されてて、キュンとしながら読み終わった。あっさり終わりすぎて、物足りない。もっと読みたかった。
2章目からは、登場人物リンクされてたけど、
話があちこちに飛んで今何の話してるかわからなくなって流し読みしちゃった。笑
「今、何してる?という言葉は不思議で、相手に対する自分の気持がわかる。会いたい人なら絶対うれしい。会いたくない人なら絶対うれしくない。」
↑この文章めちゃくちゃ刺さった。
たしかに、ほんまにそう(´・ω・)
この小説は途中まで読んで読むの辞めちゃったけど、次はこの人の長編の作品読んでみようかな!
Posted by ブクログ
かつて
「うしなった人間に対して1ミリの後悔もないということがありうるだろうか」という雑談をした最愛の人と、後悔しかない別れ方を強いられた由井。
大人の事情に振り回されて、叶わなかったあの頃の思い
過去と今
あの頃の同級生たち
オムニバスで綴られるストーリー
私が今、人生で1番後悔してる事ってなんだろうな
もしもあの時、一瞬早く(遅く?)アレをしてたら運命は変わっただろう…って転機、実はみんなたくさん持ってるはず
そういうのを知っちゃったら、後悔することめちゃくちゃたくさんありそう~
ラストはてっきり彼の視点の章で締めくくられると思ってたのに…
でもそれがなかった構成が、より余韻を楽しませてくれました
Posted by ブクログ
筆者・一木けいさんのデビュー作で、『女による女のためのR-18文学賞』の読者賞受賞作。恋愛というか、青春というか。ほろ苦いです。連作短編ですが、主人公そして時代がズレるので、空想で補わざるをえなかった。
Posted by ブクログ
一木けいさんの作品を初めて読んだが、良かった。
連作短編集だが、緩くお話は繋がっており、最後まで楽しい。楽しいというか、じんわり感動する。群像劇でもあり、ひとりの少女が大人になる物語でもある。この作家さんは巧い、と思う。
個人的には「高山」の飄々とした中にある寂しさや優しさが好きだった。
オッサンが読んでも感動するのだから、女性が読んだらさぞ感動するのだろう。
有島武郎の「小さき者へ」を読みたい。
星は4つと悩んで、3つ。3.9とする。
Posted by ブクログ
星3.5
タイトルから受ける印象通りの本だった。
でも、この気持ちは分かるな。由井の中で美化された人との記憶、あの手紙をタイムリーに受け取れていれば…
あの時の一瞬のすれ違いが、判断が、選択が、と思うようなことが自分にもあります。
Posted by ブクログ
家庭環境が良くないけど強い由衣が好き。西国疾走少女が一番好きかな。そこまで悲しいことも起こらないし。どの話も悲しみや後悔を抱えている。人のタフさを感じられて良かった。
著者の隠喩が好き。そこまで物語がタイプでなくても苦痛に感じない
Posted by ブクログ
表現力が秀逸。若かった頃のカサカサした気持ち、ざわざわした気持ち、なげやりな気持ちなど、生々しく共感できる。それぞれの短編が緩く繋がっているけれど、主人公が目まぐるしく変わるのが自分としては落ち着かなかった。