三浦英之のレビュー一覧
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ネタバレ他書の引用で紹介されていたので、自分には珍しくドキュメンタリーを手に取りました。政府の隠蔽体質を暴く丹念な取材は、稲田大臣とは好対象なファクトを積み重ねた結果だったと言えるだろう。著書のようなジャーナリストが居なければ、政府の現実無視(南スーダンの戦闘状態)、実績作りありきで政策をを操る政府の危うい運営の結果、自衛隊から犠牲者が出ていたかもしれない。こんなご都合主義の政権が軍隊を操れる危うさを恐ろしく思う。ただ、著書の考える憲法9条を遵守すれば良いという考えには同意できない。平和は尊いけれども隣国中国と共存していくには、各国と協調しながら自国の責務を果たせるだけの武力は必要だろう。だからこそ、シビリアンコントロールも同時に機能させなければならないと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレこの手記が世に出されたことをとてもありがたく思う。一章ごとに、胸にズンと「私たちの」責任がかかるのを感じられた。本というのは、活字を読み込んでいくうちにある種の追体験をする、というものと私は捉えている。だから、「ゲームや映像としてモニター越しに」見るものとは(少しだけだけれど)異なって、読者のこころに引っ掻き傷をつけていける。著者が、ひととのかかわりを、おのれの筆になるままに書いてくれたことで、私たちは、著者とかかわったひとたちのことを「想像」できる。むろん実体験に勝るものはないだろうけれど……。それでも、読んでいるときは我がこととして痛みを感じられるだろう。「外からだけみるもの」とそれはきっと一線を画すと信じたい。
しかし。ジャーナリズムとはなんだろう。昨今はみえない「縦の分断」が起こっているときかれる。それはどこか遠い国のよそごとではなく、まさしく隣家や知り合いの中で起きる貧富の差ーーひいては考え方、教育、経験の差だと思う。それを冷笑することなく書き知らせなければならないとき、著者の留学先での問いは重くのしかかり、また私たちの想像力も少しは役立ってくれるだろう。 -
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身内に自衛隊員がいながら、今頃このようなもの読んでいる自分のアンテナを先ずは猛省。
フリージャーナリストの布施祐仁氏が防衛省・自衛隊の日報隠蔽を調査報道して稲田大臣達を辞任に追い込んだ事件は記憶に新しいが、隠蔽ばかりがフォーカスされた結果、肝心の南スーダン情勢そのものは然程クローズアップされずに森友・加計問題に突入してしまったから、三浦英之氏パートは貴重。
「自衛隊大事」ならぬ「自衛隊派遣大事」の日本政府には今更驚かないけれど、南スーダンでの状況を「武力紛争」と認めるかどうかの競り合いの側面に、国際法的な問題点のあることが指摘されている。
軍法会議が存在しない自衛隊。市街戦になって非戦闘員を誤射した場合、刑法に国外犯規定がないのに「業務上過失致死罪」で処理するのか?って…かなり無理がありませんか?
ウガンダ北部の難民キャンプ内にある「元少年兵」施設もすごい。そもそも、キャンプの6、7割が子ども、戦災孤児。
巻末対談で気になったのが、国連PKOの変質。それと、非軍事的な国際貢献。 -
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ジャーナリストの矜恃ここにあり!
大まかな推移は、「はじめに」で三浦英之さんが3pでまとめている。
それを更にまとめると、
2012年南スーダンに自衛隊が平和維持活動(PKO)で派遣される
2016年7月、大統領派と副大統領派の、首都ジュバでの大規模な戦闘が発生する。
当時、日本政府は「政府軍と反政府軍との間に散発的な発砲事案が生じている」と発表。
憲法9条は、海外での武力行使を厳しく禁じている。よってPKO派遣の原則は「現地で戦闘が起きていないこと」であった。政府は奇策を打った。南スーダンの事実を加工して「戦闘」を「衝突」と言い換えた。
「戦闘」か「衝突」か、国会やマスコミが不毛な議論を繰り返している時に、朝日記者の三浦さんは南スーダンに飛び込む。
一方、日本ではフリージャーナリストの布施さんが、情報公開制度を駆使して、政府の内部資料によって政府の嘘を次々と暴いていった。
そして、やがて追い詰められて、翌年7月現職の防衛大臣稲田朋美、事務次官、陸上幕僚長という国防トップ3の辞任に発展し、PKOは5月に撤収した。
2人のジャーナリストの共闘は、SNSという新しい時代のツールによって成し遂げられた。
事実とは何か。権力とは何か。(13-15p)
この書で、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。
これら簡単な経緯は、連日報道されていたので多くの方が今だに覚えていることだろう。本書を読む意義は、それを再確認することではない。
真実は細部に宿る。
「結論ありき」の為に、防衛省全体で事実を隠微した経緯。自衛隊への「駆けつけ警護任務付与の実績つくり」のために、国会で言葉遊びをすればやり抜けると思っていた稲田防衛大臣以下官僚、もしかしたら官邸も。南スーダンの現実に「臭いものに蓋をする」仕組み。国内では通用しても、自衛隊をあのまま南スーダンにおけば決定的な戦闘が起きて、隊員の命を脅かしていた。PKO現場では通用しない「平和ボケ」した対応。公文書に対する態度。不都合な真実を隠微する体質。‥‥は布施さんが詳細に描いた。
その間をぬって、三浦さんの、下手をすれば兵士に連行されるような取材や、悲惨な耳を覆いたくなるような戦争被害者の声が綴られる。そして現場の写真を見る。百聞は一見にしかず。
「戦争の最初の犠牲者は真実である」(アイスキュロス)
これらの細部を読み終わった私に去来するのは、これは3年前の出来事じゃない。今現在、官邸で起きていることだ。ということだ。しかも、この「失敗」を正しく学んで、この伏魔殿は、さらに分かりにくく強力な「隠微」を完成させたようだ。新型コロナの相談目安が厳しくて何人も人が亡くなっているのに、それは「誤解だった」と言って責任逃れをする大臣も出てきた。もはや、滅多なことでは新しい議事録などは出てこない。(←書評なので、日々変化する時事問題を評するのは反則かもしれないが、本書から連想される事柄を言わないのは又違う気もしている。それに、ここで書いたことは一年後に読んでも当てはまることだと確信している)
私たちは、私たちのアンテナを鍛えなくてはならない。
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単純ではない大東亜戦争の当時の姿。
第一章「真珠湾の空」: 「ヘルダイバーズ」と呼ばれた真珠湾攻撃隊の若者たちの青春時代に焦点。飛行機乗りから戦後は操縦教官となる。自由な空。
第二章「アフリカを攻撃した日本人」: 特殊潜航艇でアフリカを攻撃した日本兵の最期を描く。潜水艦伊16号。マダガスカル島北部のイギリス軍攻撃。島に漂着した日本人二人の運命。
第三章「ミッドウェイの記憶」: 空母「赤城」の整備兵が語るミッドウェイ海戦とその後の人生。
第四章「一〇一歳からの手紙」: 101歳まで生きた元満州国官僚が、死の直前に書き残した最後の「極秘計画」について。満州国に作られた建国大学。満州に残されていたアヘン密輸計画と岸信介の釈放。
第五章「東光丸の悲劇」: 回天が配備されていた八丈島から出港した疎開船「東光丸」の悲劇。
第六章「園井恵子の青春」: 原爆によって命を奪われた元宝塚歌劇団の女優、園井恵子(そのい けいこ)の希望に満ちた青春時代。
第七章「原爆疎開」: 国家の命令に背いて、全市民の「原爆疎開」を決断した新潟県知事の覚悟。 -
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三浦英之(1974年~)氏は、京大大学院卒、朝日新聞社の記者・ノンフィクションライター。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞(2015年)、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞(2018年)を受賞。
著者は、東日本大震災の直後から1年間、宮城県南三陸町に駐在し、2011年6月~2012年3月に朝日新聞に連載した「南三陸日記」をもとに、2012年に『南三陸日記』を出版し(更に、一部内容を追加して2019年に文庫化)、文庫版は平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞(2019年)を受賞している。
本書は、著者が2017年秋~2021年春に、現在も全域が帰還困難区域となっている浪江町津島地区(旧津島村)と、同地区に暮らしていた人々を訪ねた記録を掲載した、2020年9月~2021年3月に朝日新聞と朝日新聞のデジタルサイト「withnews」の記事を加筆修正し、まとめたものである(オリジナル文庫)。LINEニュースでも配信されだ記事のダイジェストは、2021年の「LINEジャーナリズム賞」を受賞した。
私はこれまで、『南三陸日記』をはじめ、辺見庸『瓦礫の中から言葉を』、門田隆将『死の淵を見た男』、眞並恭介『牛と土 福島、3.11その後』、奥野修司『魂でもいいから、そばにいて』、青木美希『地図から消される街』等、東日本大震災と福島の原発事故に関わる多数の本を読んできたが、著者の作品の特徴は、エピソード毎に、それに関連する写真が載っていることであろう。文章の力はもちろん大きいが、視覚を直撃する写真の力は、また別の強さを持っている。
それにしてもだ。現在も残る帰還困難区域の面積は約300㎢(東京ドーム7,200個分)で、旧津島村は全域がその中に含まれ、凡そ1/3を占めるのだ。行政単位で語ることにどれほどの意味があるかはわからないが、あの原発事故の影響で、この日本に「人の住めない村」ができてしまったこと(大規模な除染が行われない限り、今後100年は住めないと言われている)の衝撃はやはり大きい。
東日本大震災は、地震による直接的被害、津波による被害、原発事故による被害と、幅広い被害をもたらし、この十年間で様々な対策が取られてきてはいる。しかし、忘れてはいけないことの一つは、原発事故は人災の側面が大きかったということだ。地震と津波は、この日本列島に住んでいる限り避けることはできないが、原発事故は、原発がなければ絶対に起こらない。ドイツでは、福島の原発事故後、メルケル首相(当時)が、「日本ほど技術水準が高い国も、原子力のリスクを安全に制御することはできない」として、それまでの方針を180度転換し、わずか10年で(本年4月)原発の完全停止を実現した。私は強硬な原発廃止論者ではないが、他国の災害からでも学ぶドイツに対し、自国の大惨事すら喉元過ぎれば忘れてしまう日本(の政治家や原子力ムラの人々)を、本当に情けなく思う。
著者は、旧津島村の人々の思いを代弁して、「僕たちにできることはあまり多くはない。だから、少しだけでいい。この小さな本を読み終わった後に少しだけ、福島について考えてほしい。今も自宅に戻れないでいる、「帰れない村」の人々に心の中でエールを送ってほしい。」と書いている。しかし、こと原発事故に関して重要なのは、「忘れないこと」に加えて、「二度と起こさないこと」であろう。
震災から12年を経た今、読む意味のある一冊である。
(2023年6月了) -
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三浦英之『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』小学館文庫。
第25回小学館ノンフィクション大賞受賞作。余りにも普通過ぎる内容に拍子抜け。
確かに密猟によるアフリカゾウの絶滅の危機は由々しき問題であり、象牙の国際密輸の実態も捨ててはおけない問題だ。しかし、根底にあるのはアフリカの貧困と象牙を求める富裕国と象牙取引の抜け道の存在だろう。
象牙の売買のためにアフリカゾウを虐殺する国際密猟組織。密猟で動く金が貧困にあえぐアフリカ人の生活の糧となり、過激派テロリストの資金源となっている実態と背後にある中国の影に迫るノンフィクション。
本体価格780円
★★★