三浦英之のレビュー一覧
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三浦英之『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』集英社文庫。
22回新潮ドキュメント賞、第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞のダブル受賞作。
1970年代から1980年代にかけて日本がアフリカに残した大きな傷跡に迫ったルポルタージュである。
海外に出向した労働者が現地の女性と懇ろになり、女性が子供を産むという話はたまに耳にするのだが、まさかという衝撃的な話には驚愕した。
日本人は戦時中にも中国やフィリピンを始めとするアジアの侵略国で残留孤児を生み出している。もしも、アフリカでも同じような状況を作り出していたとしたら……
切っ掛けはフランスの国際ニュースチャンネルに掲載された動画付きの記事だった。
1970年代から1980年代にかけて、経済成長期にあった日本は豊富な資源を求め、アフリカ大陸で大規模な資源採掘を行う。しかし、巨大な開発計画は失敗に終わり、後に残されたのは錆び付いた採掘工場群とコンゴ人女性との間に生まれた子どもたちだった。
しかも、日本人労働者が帰国する直前に赤ん坊は連れては行けないと、多くの赤ん坊が日本人医師や看護師の手により殺害されたのだというのだ。
余りにも酷い記事の内容に衝撃を受けた著者は、さっそくコンゴに渡り、現地調査を行う。
現地では父親が日本人だという日本名を持つ人びとの殆どが貧困に喘ぎながら、父親と再会する日を夢見ていた。日本人の男性と結婚した現地の女性たちが結婚した時、13歳とか14歳だったというのだから驚くばかりだ。
アフリカの残留孤児というのは真実であったのだが、多くの赤ん坊が殺害されたという話は現地の証言者により、二転三転とし、真実なのか否か判然としなかった。
著者は、様々な伝手を辿り、当時のアフリカで採掘を行った企業の関係者、コンゴに赴任していた医師たちを探り当て、インタビューを行うと、ついに闇の中に埋もれていた真実が明らかになる。
本体価格1,150円
★★★★★ -
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1冊の本の中に戦争を生きた人たちの人生がギュッと凝縮された重い本だった。文章が読みやすいものだから、次々好奇心いっぱいでページをめくってしまうのだが、さすがにあいだあいだでは、その時、その場所、そこにいた人たちの心に思いを馳せた。
知らないことが多かった。私の無知もあるが、大方の人が知らないようなことを何年もかけて取材して本にしてくださってありがたいことだ。
本書にも書いてあるが、先の戦争を体験した人がどんどん亡くなっていく。それは仕方のないことで、101才まで生きて秘密を伝えてくださった先川さん、よくぞ長生きしてくださった。他の方も長生きしておられるからこそ証言してくださった方も多い。でも本当にギリギリの時期に来てるのだ。
戦争を生きた人たちが減っていくのに合わせるかのように、この国はまた戦争に近づいているように見える。
とても悲しいことだし、愚かなことだし、もっと力を入れて阻止していかなければいけないと思う。
信頼できる人の文章を読んで、自分で感じ、考えていかなければいけない。
どこに赴任しても、そこで人に知られてない話を見つけ出し、影が当たらなかった人々に光を当て、じっくり取材し、わかりやすい言葉で文章にしてくださる三浦さん。新聞記者を続けながら、どんどん異動してどんどん書き続けてほしい。 -
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沸騰大陸、、アフリカ大陸のこと。
これを朝日新聞記者、ルポライターが描く、というのだから、
政治的な内容、と身構えてページを開く。
が、はじめに を読んで、政治的なエッセイではなく、
生活を取り上げる内容なのか、とちょっと安心して中に入る、、
が、結局、凄まじい内容が、、、
虐殺、レイプ、、
ひとはなぜここまで残酷になれるのか。
これは、持って生まれた「性(さが)」なのか?
それとも、教育、洗脳によってついた悪知恵なのか。。
虐殺は古今東西至るところで生じているのを見ると、さが、なのかもしれない。
酷すぎる、、、
所詮命あるものは必ず死ぬわけで、日本ではむしろ医療が進みすぎて死ねないことが
問題になったりしているわけだが、まだ幼い子が生贄として殺されるとは、、
それも昔からの風習というのではない、資本が入ってきて、大きなビルを建てるには
大きな犠牲が必要ということで、当初は家畜でよかった生贄が、子供の躰の一部に
なり、さらに子供そのものになるとは、、
ある意味虐殺より残酷かもしれない。
海外資本の経済が生んだ殺人。
後半はショートエッセイになり、ここまでの酷い話は減っていく。
最後の世界一の星空の話には、私もあこがれを持たせてくれる。
ナミビアのナミブ砂漠一帯。
一生行けるかどうかわからないところだが、覚えておこう。
はじめに 沸騰大陸を旅する前に
第一章 若者たちのリアル
傍観者になった日――エジプト
タマネギと換気扇――エジプト
リードダンスの夜――スワジランド
元少年兵たちのクリスマス――中央アフリカ
九歳の花嫁――ケニア
牛跳びの少年――エチオピア
自爆ベルトの少女――ナイジェリア
生け贄――ウガンダ
美しき人々――ナミビア
電気のない村――レソト
第二章 ウソと真実
ノーベル賞なんていらない――コンゴ
隣人を殺した理由――ルワンダ
ガリッサ大学襲撃事件――ケニア
宝島――ケニア・ウガンダ
マンデラの「誤算」――南アフリカ
結合性双生児――ウガンダ
白人だけの町――南アフリカ
エボラ――リベリア
「ヒーロー」が駆け抜けた風景――南アフリカ
第三章 神々の大地
悲しみの森――マダガスカル
養殖ライオンの夢――南アフリカ
呼吸する大地――南アフリカ・ケニア
「アフリカの天井」で起きていること――エチオピア
強制移住の「楽園」――セーシェル・モーリシャス
魅惑のインジェラ――エチオピア
モスクを造る――マリ
裸足の歌姫――カーボベルデ
アフリカ最後の「植民地」――アルジェリア・西サハラ
第四章 日本とアフリカ
日本人ジャーナリストが殺害された日――ヨルダン
ウガンダの父――ウガンダ
自衛隊は撃てるのか――南スーダン
世界で一番美しい星空――ナミビア
戦場に残った日本人――南スーダン
星の王子さまを訪ねて――モロッコ -
Posted by ブクログ
著者は新聞社の海外特派員として アフリカ大陸に約三年間駐在した。文字どおりあの広大な大陸を東奔西走。いつも命の危険を感じながら、身体を張って。
日本に居ては想像すらし得ない事柄を見聞きし、体験した。三作品は本になり賞を貰っている。
そこからこぼれ落ちたアフリカの大自然や市井の人々暮らしに焦点を当てたものが 今作品。
とは言え それすらアフリカ大陸の人々が置かれている状況は 過酷。特に子供と女性。やはり弱い人たちの立場は 暴力と欲望が渦巻く世界においては ここまで人間はするか、してしまうのかと。読むのも辛く、何度も涙してしまった。
日本に生まれ育って 何と幸せなことかと思ったが、それで良いのか。アフリカ大陸の人々に悲惨な状況をもたらした一因、大本は西洋諸国、先進国。日本もその責任は逃れられない。
まさしく“沸騰大陸”
まったく知らなかった世界。
三浦英之氏の作品はほとんど読んでいるが
今作品も 私にアフリカという未知の世界に目を向けさせてくれる。
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Posted by ブクログ
未曾有の大災害が起きた時、離れた場所にいる私たちの知る権利と現地で絶望に打ちひしがれる被災者のプライバシーは絶対的に共存し得ない。
その間に立つジャーナリストの、ジャーナリズムという学問を介しても説明できない葛藤が切々と綴られている一冊だった。
報道する側もされる側も人間。
同じ不便な環境で生活を共にしつつも、一方は大切な人を失っていて一方は大切な人が安全で快適な場所にいる。
それでもカメラを向けることにノーと言われない関係性を築けるのは、ジャーナリストの人としての魅力と真摯な姿勢なんだと思う。
そしてそれはどの仕事にも言えることで、私はこれから何かに躓いた時この本の特にp201あたりを読み返して、自分のメンタルケアを自分で行いながらまた職務を全うしようとすると思う。 -
Posted by ブクログ
どの章でも、改行されて『2011年3月11日』と書かれたところに差し掛かると身体がぐっと強張る。
あの日、それぞれの方に降りかかった境遇がいかに悽愴か。
しかも彼らがあの日あの場にいることになるまでのストーリーが前述されているからこそ余計に苛烈で。
第四章にて、筆者が東日本大震災における外国人犠牲者を取材する理由が述べられており、そこからはもうページを捲る手のスピードが倍速となった。
もともと筆者の取材理由が気になっていた。
わかった途端、マイノリティ人種として海外在住経験がある者としての想いがぶわっと溢れ、私なりに知ることで弔いたくなった。
統計上正式に公表されていない彼らに日本人として敬意と謝意を表したくなった。
最終章は落涙しながら読んだ。
グリーフケアは、病院ではなくあらゆる生活の場で名を冠せず、昼夜問わず、行われているのかもしれない。
自然発生的に当事者自身が気づきや救いを見出す形で自身をケアするパターンもあるように思えた。
生きる意味や、死んだ意味を、遺された者は自問自答しつつ日々を営んでいる。
時に死んだように生き、時に生きながら死を願い、死んだ者の想いに必死に応えようと日々を営む。
その手探りの日々の中で、出会いや気づきを通して少しずつリカバリーしていく。
単純な経年変化ではない故人への気持ちの変化。
それは人間誰しも同じで、国籍は関係ない。
生きるってなんだろう。
ただ、生きている以上生きるしかないのかもしれない。
筆者の『生きる意味など存在しない』という言葉が、ずんと胸に響く。
"与えられた「命」をまっとうするために「生きているのだ」"。 -
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ネタバレもう何から書いていいか分からないくらい、濃い内容の本だった。
私はこのアフリカの問題に何が出来るだろうか。多分何も出来ない。知ることしか出来ない。
アフリカのいろいろな問題が提示されているが、共通するのは、人が不幸を感じるのは「貧しさ」ではなく「格差」、ということ。
アフリカにある豊かな資源を奪い合う。スマートフォンやゲーム機を使う私たち日本人も決して全くの無関係ではない。
ボコ・ハラム、イスラム過激派、ということは知っていても、ナイジェリアにいることを知らなかった。
ウガンダでは生け贄が求められ、子どもが犠牲になる。「ウガンダの人々から見れば、一部の富裕層は牛を増やしたわけでもなければ、農地を広げたわけでもない。にもかかわらず、都市部に億万長者が次々と現れるため、人々は「きっと呪術によるものだ」と信じ込んだ」そこでより強い魔力を持つとされる、性経験のない10歳未満の子どもを生け贄に求める。
こんな深刻な話なのに私の頭の中に出てきたのは吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」が思い出された。そして次に出てきたのは事件名は忘れてしまったが昭和の冤罪事件で冤罪となった人が無罪になったときに「故郷で牛を飼いたい」というような発言をしたが、長い間拘束されている間に故郷がもう都市になっていて、牛を飼える状況ではないことを知らされて、発言を変えた、という話だった。
「俺ら東京さ行ぐだ」がヒットしたのは都会の人が田舎の人の無知を笑っているところにあると思う(意地悪な見方かもしれない)。
理解が出来ないことが目の前で起こっているときに自分でも分かる説明を信じてしまうのは、誰でも思い当たることがあるのではないだろうか。ウガンダの人々を糾弾するだけでは問題解決にはならない。
コンゴでは2018年ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲのインタビュー。
「ここで起きている紛争は、欧米で言われているような民族同士の殺し合いなんかじゃない。国と国とが領土を奪い合う戦争でも、宗教的な対立でもない。豊富な地下資源をめぐって引き起こされている、純粋な経済戦争なんだ」
「私も「祖国を誇りに思う」とここで言いたい。でも、いまはそれができない。十六年間、五十万人の少女たちがレイプされ、六百万人の少年少女が殺害されているというのに、、明確なビジョンも掲げず、敵と戦うこともしない国家に所属することを、誰が誇りに思えるでしょうか」
このノンフィクションの中では女性がレイプされる、という話がたくさん出てくる。なぜこんなにレイプをするのだろう、と疑問に思うほどに。レイプなんて簡単にできるものなのだろうか。動物でも昆虫でも交尾の間は無防備になるので、捕食者に狙われる率が格段に上がる。こういった兵士による集団レイプは捕まる危険性がないとわかっているから簡単にできるのだろうか。
男尊女卑の考え方が根強くあるのだろう。「兵士が女性を汚す」とムクウェゲさんも言っていたが、レイプにあった女性を汚れている、というのは間違っている。汚れているのはレイプを行った兵士だ。性器に木の枝を入れられ、喉まで貫通し亡くなっていた、という女性の描写がこの本には出てくる。狂っている、としか思えない。
それでも知らなくていいこと、とは思えない。何も出来ないなら、知っておくべきことだ。ぜひ多くの人に読んでもらいたい本だ。 -
Posted by ブクログ
人に生きる意味など存在しない
我々はただ与えられた「命」をまっとうするために「生きている」のだ
東日本大震災における外国人の方々の犠牲者を追ったルポタージュ
私は、その多くの犠牲になった方々に、思いを巡らせたことがなかった。
三浦英之さんの、丁寧で愛情深く、圧倒されるその度重なる日々の取材によって、今になって、ようやく知ることができました。
すべて、深く心に残る文章でしたが、最後の章の「本棚のピエタ」は、更に深く深く哀しみと光ともに胸に残るものになりました。
ヒボさんの本棚から辿り着き、この1冊と出会えて感謝です。ありがとうございました。