三浦英之のレビュー一覧
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三浦英之氏は、1974年神奈川県生まれの新聞記者・ルポライター。京大大学院を卒業後、朝日新聞社に入社し、国内外の社会問題や紛争地・災害現場などを精力的に取材してきた。『五色の虹~満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞(2015年)、『牙~アフリカゾウの密猟問題を追って』で小学館ノンフィクション大賞(2018年)、『帰れない村~福島県浪江町「DASH村」の10年』でLINEジャーナリズム賞(2021年)、『太陽の子~日本がアフリカに置き去りにした秘密』で新潮ドキュメント賞と山本美香記念国際ジャーナリスト賞(いずれも2023年)等、受賞歴多数。
本書は、著者が2014~17年に、 -
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30~40年も前の出来事の残された糸をたぐりながら、爆撃や政変をかいくぐり、Twitterやメール、英語仏語を駆使して、希望を持ち続けて世の中の不条理と戦う。まるで冒険物語のようだった。
決して一足飛びに都合よく解決する問題ではなかったが、作者と、登場する2人の日本人たち、そして実際の日本人遺児たちの希望を持ち続ける明るさに作品全体が照らされて、自分もなにか世界に希望を抱くことができるような爽やかな読後感だった。
一方で、読むのに体力のいる一冊だった(頑張った)。
アフリカの地理、歴史、政治・経済についての丁寧な解説にかなりページが割かれていたので、興味深い反面、読み進めるのにかなり重量感 -
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ネタバレ朝日新聞の記者をされていて、特派員としてアフリカ駐在中の2014年8月から2017年8月までの3年間での取材の記録をもとにしたエッセイを収録しています。
10年たっているから、当時の取材対象になった人々や社会の状況は今はまた変わっているのだろうけれども、
個々のストーリーはとても短く、本当に取材しきれなかった断片、という感じで、具体的な社会的背景や全貌を知りたくなるようなところで終わってしまうのですが、著者の鋭い着眼点や、人間への強い好奇心を感じました。
圧倒的な現実を前に、つまり、ことが絡まりすぎて混沌すぎて圧倒されるような状況を感じるのですが、直視し続けるのは皆ができることではないな -
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筆者の綿密な取材から、本のタイトルにもあるように、ほとんど表に出ていないような戦時中の真実を知ることができ、新たな発見があった。
例えば原爆疎開にしても、新潟自体が原爆投下の可能性があったことは知っていたが、当時多くの人が知事の命令により疎開し、人が街から消えていたことは初めて知った。
結局は何事もなかった訳だか、自分が処罰の対象となることを恐れず、多くの市民の生命を守ろうとしたリーダーとしての判断は素晴らしかったと思う。
取材を受けた生き残った人達は、本当に奇跡的に生死の分け目から生き残った方達であり、戦争の悲惨さと平和の大切さを未来に引き継ぎ、伝えるため取材に応じたのだと思う。その想 -
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今年は戦後80年という節目でもあり、例年以上に報道の情報発信や著作の販売促進に注力されている気がします。ブク友さんたちも、私の知らない多くの関連本を読まれ、意識の高さに感心します。
三浦英之さんの新刊は7章立ての内容で、そのほとんどが私にとって未知の事実でした。タイトルに"最後の"と付してあるのは、世に送り出す"タイミング"としての意味合いのようですが、最後の生き証人の意も当然あるでしょう。
あの太平洋戦争を生きた人々の、知られざるエピソードに心震わせられ、力強く前向きな勇気をもらえます。三浦さんの文章には、いつも胸を熱くさせられます。それは、 -
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ある一人のフィリピン人女性が発した、何と悲痛なタイトルの言葉でしょうか。ふと海外での事件・事故のTV報道を思い浮かべてしまいました。
ニュースの最後、「なお、犠牲者に日本人は含まれていない模様です…」 邦人の安否を家族に伝えるメディアの役割も分かりますが、どうしても閉鎖的な同族意識、命の重さの軽重を感じてしまうのです。
被災地で記事を書き続ける三浦英之さんが、震災から10年以上過ぎて知り得た事実…震災による外国人犠牲者数が厚生労働省と警察庁で違い、正確に把握されていない! 三浦さんは、ここから辿って彼らが残した「生」の物語を丹念に紡ぎます。
犠牲となった外国人8名の関係者が語る悲痛 -
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カーボベルデという国もセザリオ・エヴォラという歌手も知らなかったが、私の大好きな感じの曲で、これからしばらく聴き続けるに違いない。教えてもらってありがたい。
そうなのだ。全然知らなかったアフリカのことをたくさん教えてもらった。
まず、カバーの写真から「なんじゃこりゃ」となる。「どうなってんだ、この頭?」見たこともない。三浦さんのことを知らなくても手に取りそうなインパクトがある。
想像を超える悲惨で残酷なエピソードが多く、なんという甘っちょろい世界で生きているのかと考えさせられた。
一つ一つの章の内容が濃く、もっと知りたくなる。一つ一つが短いからと言って、物足りないわけではないのだが、もっと詳 -
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本書は、三浦英之さんが、アフリカ特派員時代の取材を基に、「imidas」のweb上に連載したコラム「アフリカの長い夜」をまとめ書籍化したものです。
疲弊し冷め切ったような日本と、良くも悪くも欲望が渦巻き熱量のあるアフリカを対比することで、余りの隔たりの大きさを実感し驚愕します。まさしく、人口爆発、種々の不条理が入り乱れ「沸騰する大陸」アフリカのリアルが描かれていました。
小国それぞれの、悲しく辛い事実の数々に言葉を失います。この現実を広く知らしめるという点で、間違いなく価値ある一冊でしょう。
※本文中の、ノーベル平和賞受賞の現地医師の言葉
「私が欲しいのは、誰もが安心して暮らせる平 -
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三浦英之『災害特派員 その後の「南三陸日記」』集英社文庫。
『南三陸日記』の続編のルポルタージュ。
一年間、東日本大震災の津波被災地の南三陸町で暮らした災害特派員・三浦英之の「人を殺すのは『災害』ではない。いつだって忘却なのだ。」という結論は、確かにその通りだと思う。三陸地方に伝わる『津波てんでんこ』、宮古市重茂などに残る『此處より下に家を建てるな』という石碑など、先人たちの教えは受け継がれている。東日本大震災では、これらを忘れた者たちの多くが生命を落としたのだ。
千年に一度の大地震。生命を失っても仕方無い大災害だったと言えば、そうかも知れないが、自身と家族の生命を守る手立てはあったと思 -
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この作品は、東日本大震災後10年後の福島と、戦後基地問題にゆれる沖縄の問題をジャーナリストの三浦英之さんと、阿部岳さんが提起したものになっています。
折しも、東京オリンピックやコロナ禍…首相や福島や沖縄の各地域の首長はこの時期どのような対応をしたのか…。もう、私もずっと感じてきたことだけれど、首相の記者会見、原稿を読んでいるだけじゃん!国会も同じだし…見る価値あるのかな…?そんな思いを抱いてきました。だから見ないし…それじゃ、政治への不信感は私だけでなく皆が抱えるものになっていますよね!でも、かつての福島や沖縄の各地域の首長は、自らの命を縮めるような必死さを持って基地や原発者問題に真摯に