三浦英之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者、三浦英之さんの記者としての矜持をバシバシ感じる、衝撃のルポ。
巨大で、鈍重な、複雑に絡み合う問題の中に飛び込んでいき、半ば当事者になりかけながら紐解いていくエネルギーが凄まじい。
文字通り自らの命と、持てるすべての心を賭けて、困難に向かい合う。
そこから、著者本人も含めて、この問題の周辺で本気で生きる人間の姿が浮かび上がってくる。
こんなものは他ではなかなかお目にかかることはできない。
そういう種類の本。
まあ、自分が読んだ三浦英之さんの本ってみんなそうだったんだけど。
高度経済成長期、資源を求めてアフリカに渡った日本人たちが、
現地で子供をつくり、それを置き去りにしていた。(せざるを得なかった?)
その日本名を持った子供たちは、父系社会のアフリカで困難を抱えながら、
かつて父と交わした約束を信じ、いつか自分を迎えに来てくれるものと信じて生きている。
彼らは、自分の呼び名が苗字なのか名前なのか、どこかの地名なのかもわからないまま、
それを自分のアイデンティティとして、誇りを持って生きている。
自分は半分日本人だから、優しいんだ。清潔なものが好きで、ルールを守るんだと。
もうそれだけで泣けるんだけど。
問題は、かなり暗い部分にまで及んでいく。
日本の医師が日本人とアフリカ人の間に生まれた赤ん坊を殺していたのではないかという疑惑であったり、
当時の事業を請け負っていた会社ぐるみでそれらが黙認されていたのではないかという話が出てくる。
その真実にたどり着くため、アフリカでの綿密な聞き取り調査や、
当時の管理者や領事館への取材を敢行し、ついに責任を持つべき対象から一定の「態度」を引き出すことに成功する。
それは現地に残された子どもたちの人生を保証には全く十分ではないけれど、
少なくとも三浦さんの取材がなければ起きなかった事で、
取材を通じて真実を明らかにし、社会を変えるということが実際に起きている。
これをジャーナリズムと言わずして何というのか。
過去は過去だけど、その過去に起因する人生を、人は今も生きている。
それを知らなくていいはずがない。
知って、それについて思うことが大事なんだ。
それで自分が世界を見る目線が変わる。
人を見る解像度が変わる。
わかりやすくキャッチーな言葉をたくさん見る昨今の情報空間だけど、
人や、そこにまつわる問題は本来、複雑で割り切れないものなんだ。
複雑で割り切れない情報をちゃんと摂取していこうと思った。
人が見えなくなっちゃうからさ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本から遠く離れたアフリカのコンゴに、日本残留児がいるという事実を、この本を読むまで知らなかった。
コンゴに赴任していた日系企業の社員たちは、現地の10代女性(多くは10代前半)との間に子どもをもうけ、任期が終わると帰国し、その後は音沙汰がなくなる。
父親が去ったあと、残された母親と子どもたちは厳しい生活を強いられ、「日本人との子ども」であることを理由に差別を受けたり、就職が難しかったりする状況に置かれてきた。
彼ら「太陽の子」は、自分たちを日本人だと言い、いつか父親に会う日を信じて、わずかな父親の情報や思い出を大切に抱えながら今も生きている。
彼らが父親に会いたいと願うのと同じように、父親たちもまた、彼らのことを思い出しているのではないかと思う。会社から止められていたのか、家庭の事情があったのか、あるいは高齢のためにSNS上の投稿を確認できないのか。事情はさまざまだろうが、三浦さんの投稿や活動の話は、すでに何人かの父親の耳には届いているはずだ。
自分の父親に、日本に家族がいるかもしれないと知ったムルンダが、「家族と話したいから日本語を勉強したい」と語る場面が強く印象に残った。
「正しい」かどうかはさておき、人生も考え方も、結局は自分次第なのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
戦後80年…もう、80年なのか、まだ80年なのか、感じ方は人それぞれ!このタイミングで、三浦英之さんのこの作品を読めて感無量です。まだまだ、知らないことが沢山あるんだなぁ…と改めて感じました。
いずれは「五色の虹」も読もうと思っていたんですが、この作品を読んだらすぐに手にしたくなりました。満州の建国大学についてのノンフィクションです。この作品では第四章の「一〇一歳からの手紙」で触れられています。あと、第六章の「園井恵子の青春」は、原爆の犠牲になった元タカラジェンヌについて描かれていますが、こちらも別の作品で三浦英之さんの作品ではないんですが、一冊深堀りして読もうと思っている作品があります(だけど、読むのは年明けになりそうですけどね…)。
体験談として実際に取材したり、講話として聴いたりできるのはあと何年もないんですよね!取材をする方も、それを話す方もとってもしんどいと思います。だけど、こうして書籍という形で残っていると、私たちは自分のタイミングで読むことができます。戦争を知らない世代でも、この時代のことに興味をもってもらえるきっかけにこのレビューがなってもらえたら嬉しいけど、なかなかそうもいかないかな…。
※先月ずっと先の大戦関連の書籍を読んできて、レビューを作るがしんどくなっちゃいました。こんなに、前のレビューとから間が空いてしまったのは初めてです!それだけ、重かったんですよね…私にとって^^;
でも読書量は以前と変わらないし体調を崩してるとかそういうこともないないんです。徐々に以前のペースに戻していけたらいいと思ってます(^-^) -
Posted by ブクログ
三浦英之氏は、1974年神奈川県生まれの新聞記者・ルポライター。京大大学院を卒業後、朝日新聞社に入社し、国内外の社会問題や紛争地・災害現場などを精力的に取材してきた。『五色の虹~満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞(2015年)、『牙~アフリカゾウの密猟問題を追って』で小学館ノンフィクション大賞(2018年)、『帰れない村~福島県浪江町「DASH村」の10年』でLINEジャーナリズム賞(2021年)、『太陽の子~日本がアフリカに置き去りにした秘密』で新潮ドキュメント賞と山本美香記念国際ジャーナリスト賞(いずれも2023年)等、受賞歴多数。
本書は、著者が2014~17年に、特派員としてアフリカに駐在した際の取材記録をもとに、2023~24年に、集英社のウェブサイト「イミダス」に連載した「アフリカの長い夜」を加筆してまとめた、いわゆるエッセイ集で、2024年に出版された。
著者は冒頭で「取り憑かれたように大陸中を飛び回り、這いつくばるようにして写真機を構え、そこで暮らす人々と牛の血を飲みながら移動し、サバンナの雨にうたれて深く眠った・・・」と書いているが、34編のエッセイには、21世紀のアフリカの実に多様な面が取り上げられている。
登場する国は、マグレブからサブサハラ、及びインド洋や大西洋の島国まで、23ヶ国。
登場する人々は、アラブの春の後の軍事クーデターに反対する民衆(エジプト)、クリスマスに踊る元少年兵たち(中央アフリカ)78歳の老人と結婚させられた9歳の少女(ケニア)、イスラム過激派に誘拐され、体に爆弾を巻き付けられて自爆テロを強要される少女たち(ナイジェリア)、社会的成功を渇望する者に誘拐され、生贄にされる子供たち(ウガンダ)、全身に赤土と牛脂などを混ぜ合わせた「オカ」を塗り、伝統的な装具を身につけて、大型スーパーで買い物をするヒンバ民族の女王(ナミビア)、電気のない村で暮らす、しかし、明るく楽しそうな人々(レソト)、紛争地でレイプ被害に遭った女性たちの治療を続けている、ノーベル平和賞を受賞した医師デニ・ムクウェゲ(コンゴ)、人類史上最悪の大虐殺後、お互いに隣人として生きる加害者と被害者たち(ルワンダ)、アパルトヘイトを克服したはずの国で、今排斥の対象とされる移民たち(南アフリカ)、白人だけが暮らす街の白人たちと、その白人たちとも協力して国を成長させたいと語る、支局の黒人助手(南アフリカ)、エボラ出血熱の治療にあたる医師(リベリア)、スポーツハンティングの獲物として使用するライオンを「養殖」するハンティング業者(南アフリカ)、米軍基地建設のために、インド洋チャゴス諸島から強制移住させられた人々(セーシェル/モーリシャス)、泥のモスクを造る男たち(マリ)、アフリカ最後の植民地・西サハラから逃れた難民たち(アルジェリア)、ウガンダで50年間シャツを作り続け、「ウガンダの父」と呼ばれる日本人(ウガンダ)、戦闘の激化で自衛隊が撤収した後も、現地に残り避難民のために働く日本人シスター(南スーダン)等、である。(自然や文化を取り上げたものも一部にはあるが、大半は人に焦点が当てられたものだ)
改めて列挙してみると、著者の基本的な取材スタンスから当然とはいえ、暗くネガティブな印象を持つものが多く(中には、少々気分が悪くなるような描写すらある)、日本人からは、前時代的にすら見えるもの(文化・因習的なものに限らない)も少なくないのだが、著者はそうした一面的な捉え方をしていない。
著者はこう書いている。「人口が爆発し、人間の生と性、暴力と欲望が激しく入り乱れているアフリカは、まさしく「沸騰大陸」そのものです。・・・かの地のむき出しの日常の中にこそ、閉塞感に覆われた日本を生き抜くヒントのようなものが隠されているのではないか。人間の本質を真摯に見つめ直すことにより、我々はより正直に――そしてより強靭に――与えられた日々を主体的に過ごすことができるのではないか。人は人を殺し、人は人を愛する――。その大いなる矛盾の鏡に映っているのは、きっと「彼ら」ではなく、私たち「人間」の姿だと思うのです。」
私は、群れることを好まず、大好きな旅(国内外)をするときも多くの場合は一人だ。しかし、どこへ何をしに行くかというと、大自然の絶景を見に行くよりも、人の暮らしている様を感じに行くことが、はるかに多い(トランプが米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すと宣言した頃に、一人でエルサレムとヨルダン川西岸を訪れたのもその一つだ)。たとえ、その旅が多少快適さを欠くことが分かっていても。。。(少々僭越だが)私はおそらく、著者に近い感性と認知パターンを持っているように思う。
一般の旅人では到底することができない数々の体験を共有してもらえる、貴重な一冊といえるだろう。
(2025年10月了) -
Posted by ブクログ
30~40年も前の出来事の残された糸をたぐりながら、爆撃や政変をかいくぐり、Twitterやメール、英語仏語を駆使して、希望を持ち続けて世の中の不条理と戦う。まるで冒険物語のようだった。
決して一足飛びに都合よく解決する問題ではなかったが、作者と、登場する2人の日本人たち、そして実際の日本人遺児たちの希望を持ち続ける明るさに作品全体が照らされて、自分もなにか世界に希望を抱くことができるような爽やかな読後感だった。
一方で、読むのに体力のいる一冊だった(頑張った)。
アフリカの地理、歴史、政治・経済についての丁寧な解説にかなりページが割かれていたので、興味深い反面、読み進めるのにかなり重量感があり、時間がかかってしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ朝日新聞の記者をされていて、特派員としてアフリカ駐在中の2014年8月から2017年8月までの3年間での取材の記録をもとにしたエッセイを収録しています。
10年たっているから、当時の取材対象になった人々や社会の状況は今はまた変わっているのだろうけれども、
個々のストーリーはとても短く、本当に取材しきれなかった断片、という感じで、具体的な社会的背景や全貌を知りたくなるようなところで終わってしまうのですが、著者の鋭い着眼点や、人間への強い好奇心を感じました。
圧倒的な現実を前に、つまり、ことが絡まりすぎて混沌すぎて圧倒されるような状況を感じるのですが、直視し続けるのは皆ができることではないなーと思う。
また、アフリカというと最近はビジネス界を中心にポジティブなストーリーを強調するようなトーンが目立っているように思っていたので、そしてこの本のタイトルもそのようなノリな雰囲気があったので、内容が全力で負の側面押しだったので逆に新鮮でした。 -
Posted by ブクログ
筆者の綿密な取材から、本のタイトルにもあるように、ほとんど表に出ていないような戦時中の真実を知ることができ、新たな発見があった。
例えば原爆疎開にしても、新潟自体が原爆投下の可能性があったことは知っていたが、当時多くの人が知事の命令により疎開し、人が街から消えていたことは初めて知った。
結局は何事もなかった訳だか、自分が処罰の対象となることを恐れず、多くの市民の生命を守ろうとしたリーダーとしての判断は素晴らしかったと思う。
取材を受けた生き残った人達は、本当に奇跡的に生死の分け目から生き残った方達であり、戦争の悲惨さと平和の大切さを未来に引き継ぎ、伝えるため取材に応じたのだと思う。その想いを深く受け止め、二度と同じ過ちを犯さぬよう平和を願うとともに、まずは如何にあの戦争ははじまり如何に終わったかをしっかりと知ることから始めたい。
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Posted by ブクログ
今年は戦後80年という節目でもあり、例年以上に報道の情報発信や著作の販売促進に注力されている気がします。ブク友さんたちも、私の知らない多くの関連本を読まれ、意識の高さに感心します。
三浦英之さんの新刊は7章立ての内容で、そのほとんどが私にとって未知の事実でした。タイトルに"最後の"と付してあるのは、世に送り出す"タイミング"としての意味合いのようですが、最後の生き証人の意も当然あるでしょう。
あの太平洋戦争を生きた人々の、知られざるエピソードに心震わせられ、力強く前向きな勇気をもらえます。三浦さんの文章には、いつも胸を熱くさせられます。それは、誇張や美談による感動を誘引する作為的なものでなく、誠実さと温かな視点からくるのでしょう。だからこそ、単に新しい知識を得た以上に、感情が揺さぶられます。
本書の根幹とも言える第4章「101歳からの手紙」を読み、2015年刊行の開高健ノンフィクション賞受賞作『五色の虹』もいつか読んでみたいと思えました。旧満州に実在した「満州建国大学」の実情も、戦争の愚かさ、無情さを強烈に伝えます。
1947年に発表された「終末時計」がよく取り上げられます。核戦争や気候変動など、人類滅亡につながる脅威の象徴は、今年の1月に残り時間が89秒と発表されました。開始以来最も短く、人類が最も危険な状態にあり、待ったなし状態です。
同じ過ちを繰り返すか否かは、私たち自身にかかっていますね。