あらすじ
人は戦時下で、どう生きようとしたのか――。
「ヘルダイバーズ」と呼ばれた真珠湾攻撃隊の青春。
アフリカを攻撃した「特殊潜航艇」日本兵の最期。
「空母赤城」整備兵が語るミッドウェイ海戦とその後。
101歳の元満州国官僚が死の直前に綴った最後の「極秘計画」。
回天が配備された八丈島の疎開船「東光丸」の悲劇。
原爆に奪われた「元タカラジェンヌ」園井恵子の希望。
国家に背いて全市民の「原爆疎開」を決断した新潟県知事の覚悟。
「あの戦争」と「いま」をつなぐ7つの物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
第一章 の「真珠湾の空」から第七章 「原爆疎開」まで、どの章もそれぞれ驚きに満ち、語り継がなければならない物語だけれども、中でも満州について書かれた第四章の「101歳からの手紙」は圧巻。
「満州事変の夜」何があったか?その場にいたものにしか語ることのできない迫力と、その後のなりゆきは、高市政権が誕生した今こそ、多くの人々に読まれるべき。
Posted by ブクログ
1945(昭和20)年を知る人たちの、(おそらく)最後の証言。
え、こんなことがあったのか、という知られざるエピソードが満載だ。
とりわけ圧巻だったのが「101歳からの手紙」。
もと地方紙のワシントン支局長としてケネディ暗殺事件を伝えた人物から
著者に分厚い手紙が送られ来る。
差出人は、満州国の建国大学の卒業生であった。
建国大学は自由は教育で知られたが、満州の瓦解とともに7年で閉校・・・
あ、この話、知っている、知っている・・・
あたりまえ、『五色の虹 満州国の建国大学卒業生立ちの戦後』の
著者だったのだ。すっかり忘れていた!
ここでも満点★をつけているくせに!あ~、やだやだ。
ともかく、建国大学卒業生が語らなかった秘密に
度肝を抜かれ、戦後史の闇に深さに暗澹としてしまった。
あとがきでいう。
戦争を知る第一世代と数えるならば、今は第三世代の時代に入ろうとしている。
かつては第一世代が書かれモノについてクレームをつけることもできた。
でも、その世代がいなくなったら?
第一世代という「光源が失われたとき、わたしたちは未来に何を語れるのか。
困難な、新しい時代が始まろうとしている」
怖い。
歴史を歪曲して語ろうとする、声の大きい人たちが跋扈する時代が
やってくるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
1冊の本の中に戦争を生きた人たちの人生がギュッと凝縮された重い本だった。文章が読みやすいものだから、次々好奇心いっぱいでページをめくってしまうのだが、さすがにあいだあいだでは、その時、その場所、そこにいた人たちの心に思いを馳せた。
知らないことが多かった。私の無知もあるが、大方の人が知らないようなことを何年もかけて取材して本にしてくださってありがたいことだ。
本書にも書いてあるが、先の戦争を体験した人がどんどん亡くなっていく。それは仕方のないことで、101才まで生きて秘密を伝えてくださった先川さん、よくぞ長生きしてくださった。他の方も長生きしておられるからこそ証言してくださった方も多い。でも本当にギリギリの時期に来てるのだ。
戦争を生きた人たちが減っていくのに合わせるかのように、この国はまた戦争に近づいているように見える。
とても悲しいことだし、愚かなことだし、もっと力を入れて阻止していかなければいけないと思う。
信頼できる人の文章を読んで、自分で感じ、考えていかなければいけない。
どこに赴任しても、そこで人に知られてない話を見つけ出し、影が当たらなかった人々に光を当て、じっくり取材し、わかりやすい言葉で文章にしてくださる三浦さん。新聞記者を続けながら、どんどん異動してどんどん書き続けてほしい。
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筆者の綿密な取材から、本のタイトルにもあるように、ほとんど表に出ていないような戦時中の真実を知ることができ、新たな発見があった。
例えば原爆疎開にしても、新潟自体が原爆投下の可能性があったことは知っていたが、当時多くの人が知事の命令により疎開し、人が街から消えていたことは初めて知った。
結局は何事もなかった訳だか、自分が処罰の対象となることを恐れず、多くの市民の生命を守ろうとしたリーダーとしての判断は素晴らしかったと思う。
取材を受けた生き残った人達は、本当に奇跡的に生死の分け目から生き残った方達であり、戦争の悲惨さと平和の大切さを未来に引き継ぎ、伝えるため取材に応じたのだと思う。その想いを深く受け止め、二度と同じ過ちを犯さぬよう平和を願うとともに、まずは如何にあの戦争ははじまり如何に終わったかをしっかりと知ることから始めたい。
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今年は戦後80年という節目でもあり、例年以上に報道の情報発信や著作の販売促進に注力されている気がします。ブク友さんたちも、私の知らない多くの関連本を読まれ、意識の高さに感心します。
三浦英之さんの新刊は7章立ての内容で、そのほとんどが私にとって未知の事実でした。タイトルに"最後の"と付してあるのは、世に送り出す"タイミング"としての意味合いのようですが、最後の生き証人の意も当然あるでしょう。
あの太平洋戦争を生きた人々の、知られざるエピソードに心震わせられ、力強く前向きな勇気をもらえます。三浦さんの文章には、いつも胸を熱くさせられます。それは、誇張や美談による感動を誘引する作為的なものでなく、誠実さと温かな視点からくるのでしょう。だからこそ、単に新しい知識を得た以上に、感情が揺さぶられます。
本書の根幹とも言える第4章「101歳からの手紙」を読み、2015年刊行の開高健ノンフィクション賞受賞作『五色の虹』もいつか読んでみたいと思えました。旧満州に実在した「満州建国大学」の実情も、戦争の愚かさ、無情さを強烈に伝えます。
1947年に発表された「終末時計」がよく取り上げられます。核戦争や気候変動など、人類滅亡につながる脅威の象徴は、今年の1月に残り時間が89秒と発表されました。開始以来最も短く、人類が最も危険な状態にあり、待ったなし状態です。
同じ過ちを繰り返すか否かは、私たち自身にかかっていますね。
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戦後80年 戦争で実際に兵士として生きた人々の記録。御年90歳や100歳。この世に残していく最後の秘密。
満州国の阿片14トンの行方と岸信介の解放との関係が1番興味深い。白洲次郎は知っていたのだろうか。その阿片を海外に売り捌いていたら日本の復興はどのようになっていただろうか。その阿片はどの国の人の人生を破壊し、結局誰がその利益を懐に入れ何に使ったのか。今となっては歴史の闇の中。
80年目の終戦記念日の前後に訪れた鳥羽と海の見える丘公園が縁の地として出てきた。今はまだ戦後が続いているのであって、戦争前夜なのではないと思いたい。
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単純ではない大東亜戦争の当時の姿。
第一章「真珠湾の空」: 「ヘルダイバーズ」と呼ばれた真珠湾攻撃隊の若者たちの青春時代に焦点。飛行機乗りから戦後は操縦教官となる。自由な空。
第二章「アフリカを攻撃した日本人」: 特殊潜航艇でアフリカを攻撃した日本兵の最期を描く。潜水艦伊16号。マダガスカル島北部のイギリス軍攻撃。島に漂着した日本人二人の運命。
第三章「ミッドウェイの記憶」: 空母「赤城」の整備兵が語るミッドウェイ海戦とその後の人生。
第四章「一〇一歳からの手紙」: 101歳まで生きた元満州国官僚が、死の直前に書き残した最後の「極秘計画」について。満州国に作られた建国大学。満州に残されていたアヘン密輸計画と岸信介の釈放。
第五章「東光丸の悲劇」: 回天が配備されていた八丈島から出港した疎開船「東光丸」の悲劇。
第六章「園井恵子の青春」: 原爆によって命を奪われた元宝塚歌劇団の女優、園井恵子(そのい けいこ)の希望に満ちた青春時代。
第七章「原爆疎開」: 国家の命令に背いて、全市民の「原爆疎開」を決断した新潟県知事の覚悟。