三浦英之のレビュー一覧
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『事実ーこの国はまだ東日本大震災における外国人の犠牲者数を知らない。』
そんなことがあるのかと…正直思いました。だけど、私が心を動かされたのは、犠牲者数を把握できていないことではなく、ひとりひとりに生活があり大事なもの、大事な人がいて…それが、突然失われ、それでも生きていかなければならない人々の悲しみ、苦しみ、それでも見出したささやかな希望のような思いです。
全てを失ってしまった中国人青年に現在も「お前は一人じゃないんだぞ」と伝え続ける先輩職人、大人が無理しないと子どもたちを守れないと教壇に立つ教師たち…。日本人だから、外国人だから…ということでは決してないんです。
発災後に赴任し -
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原発事故で帰還困難区域になった福島県浪江町津島地区(旧津島村)。本書は、離散した旧津島村の人々を追ったルポタージュです。
著者の三浦英之さんは、この旧津島村に線量計を持ちながら3年半(2017年秋~2021年春)通い続けました。そして、多くの元住人から丁寧に話を掬い取り、自然豊かで美しい村が存在していた事実を記録し続けました。本書は、2020.9.16〜2021.3.31に、朝日新聞及びデジタルサイトに掲載された記事の書籍化で、元記事が「帰れない村(withnews)」でカラー写真とともに読むことができます。
基本的に、一人につき見開き2ページの記事と見開き2ページ×2枚のモノクロ写真 -
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映画「新聞記者」で描かれている現実が
加速している気が強くする。
ミャンマーのことが他人ごとでなく
アフガニスタンのことも他人ごとでなく、
良く言われることだが
気が付いた時には すでに遅し
になってしまわぬように
三浦英之さん、阿部岳さん、
宮崎園子さん、安田菜津紀さん
のような 記者さんが
特別ではなく
当たり前に活動している
そんな世の中を
私たち一人一人がもっと強く意識していかなければ
と 改めて思ってしまう
三浦さん、阿部さんたちが
つながっていくように
私たちも 私たちの隣人たちと
つながっておかなければ
と 思わせてもらった -
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2019年3月、著者の「文庫版 南三陸日記」を読んで、私はおそらく生涯で1番読書で泣いた。大震災直後の赴任先での、コラムと写真の記録だった。
本書は、岩手県ではなく福島県浪江町「旧津島村」の「(放射能で)100年は帰れない」と言われたその後の元村民たちを取材した記録である。3年半のWEB連載だった。「南三陸」同様のコラムと写真で構成されている。けれども、私は読書中一度も涙を流すことはなかった。代わりに、どんどん塞ぎ込みたくなった。
前著は、「直後」ということもあって、町民たちの心が、未来が激しく動いていた。悲しいことがたくさんあったからこそ、展望を持とうとしていた。一方、10年後の「旧津島 -
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ページをめくるたび、モノクロ写真を目にするたび、読むのがつらくなった。けれどたぶんそれは、私が普段「生き(て何かをす)る」ために、これら「帰れない村」のひとびとのことを(悪い言い方をしてしまうと)思考からシャットアウトしてしまっているからだと思う。いま、今、実際に、原発事故によって散り散りにさせられ、以前とまったく異なる生活を余儀なくさせられている方々が居られるにもかかわらず。
これだけの事故の、(これを書いているのはロシアにウクライナが侵略され、核攻撃を示唆されたとさえいわれる2022年2月28日である)また「核」ということばに背筋がふるえる広島長崎の、記録が記憶があるくにで。私たちはきょう -
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ネタバレ他書の引用で紹介されていたので、自分には珍しくドキュメンタリーを手に取りました。政府の隠蔽体質を暴く丹念な取材は、稲田大臣とは好対象なファクトを積み重ねた結果だったと言えるだろう。著書のようなジャーナリストが居なければ、政府の現実無視(南スーダンの戦闘状態)、実績作りありきで政策をを操る政府の危うい運営の結果、自衛隊から犠牲者が出ていたかもしれない。こんなご都合主義の政権が軍隊を操れる危うさを恐ろしく思う。ただ、著書の考える憲法9条を遵守すれば良いという考えには同意できない。平和は尊いけれども隣国中国と共存していくには、各国と協調しながら自国の責務を果たせるだけの武力は必要だろう。だからこそ、
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ネタバレこの手記が世に出されたことをとてもありがたく思う。一章ごとに、胸にズンと「私たちの」責任がかかるのを感じられた。本というのは、活字を読み込んでいくうちにある種の追体験をする、というものと私は捉えている。だから、「ゲームや映像としてモニター越しに」見るものとは(少しだけだけれど)異なって、読者のこころに引っ掻き傷をつけていける。著者が、ひととのかかわりを、おのれの筆になるままに書いてくれたことで、私たちは、著者とかかわったひとたちのことを「想像」できる。むろん実体験に勝るものはないだろうけれど……。それでも、読んでいるときは我がこととして痛みを感じられるだろう。「外からだけみるもの」とそれはきっ
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ネタバレ福島の被災地の人のほんの一部ではあるけど様々な多岐に渡る状況に置かれている人たちを知るととても苦しくなる。この本でもまた知らなかったことを少しでも知ることができた。
特に浪江町の元町長の葛藤は相当なものだったと思う。ガンで亡くなられてしまい無念でならない。
その時に最善の判断をした上で決断だったと思うけど当時、原発で起きたことをすぐに知らされていなかったり東電社長が浪江に来た時のやりとりは本当に腹立たしくなった。
原発ありきで進める考え方を根本から考え直さないとまた同じことを繰り返されるのに全然変わらない国の姿勢。
政府が掲げる復興五輪は原発被災地や津波被災地の復興ではなく東京の復興、東京に電 -
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「白地」それは福島原発事故によって作られた「帰宅困難地域」のうち、放射線量が極めて高く、住民の立ち入りが厳しく制限され、将来的にも居住の見通しが立たないエリアのことを示す隠語。
原発事故の直後から、朝日新聞の記者として福島原発事故の現場に入り込み取材を続けるルポライターの渾身の告発の書。
「政府が掲げる「復興五輪」 その言葉自体に偽りはない。ただ、その対象が彼らと私とでは違っていたのだ。彼らが掲げる「復興」とは、原発被災地や津波被災地の「復興」ではなく、彼らが暮らす首都・東京の「復興」。もっと踏み込んで言えば、その東京に電気を送る東京電力の「復興」ではなかったか。
最後の章で、筆者はこう考察 -
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身内に自衛隊員がいながら、今頃このようなもの読んでいる自分のアンテナを先ずは猛省。
フリージャーナリストの布施祐仁氏が防衛省・自衛隊の日報隠蔽を調査報道して稲田大臣達を辞任に追い込んだ事件は記憶に新しいが、隠蔽ばかりがフォーカスされた結果、肝心の南スーダン情勢そのものは然程クローズアップされずに森友・加計問題に突入してしまったから、三浦英之氏パートは貴重。
「自衛隊大事」ならぬ「自衛隊派遣大事」の日本政府には今更驚かないけれど、南スーダンでの状況を「武力紛争」と認めるかどうかの競り合いの側面に、国際法的な問題点のあることが指摘されている。
軍法会議が存在しない自衛隊。市街戦になって非戦闘員 -
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ジャーナリストの矜恃ここにあり!
大まかな推移は、「はじめに」で三浦英之さんが3pでまとめている。
それを更にまとめると、
2012年南スーダンに自衛隊が平和維持活動(PKO)で派遣される
2016年7月、大統領派と副大統領派の、首都ジュバでの大規模な戦闘が発生する。
当時、日本政府は「政府軍と反政府軍との間に散発的な発砲事案が生じている」と発表。
憲法9条は、海外での武力行使を厳しく禁じている。よってPKO派遣の原則は「現地で戦闘が起きていないこと」であった。政府は奇策を打った。南スーダンの事実を加工して「戦闘」を「衝突」と言い換えた。
「戦闘」か「衝突」か、国会やマスコミが不毛な議論を