Posted by ブクログ
2020年06月03日
2016年、南スーダンにPKO活動として派遣されていた自衛隊をめぐり、「文民駆け付け警護」等の任務が新たに付与されようとしていた矢先、その派遣先である南スーダンで政府軍と反政府軍との間で激しい戦闘が発生しました。
自衛隊をPKO派遣する前提として「戦闘状態にある現場には派遣しない」という原則があった...続きを読むため、安倍政権は頑として「戦闘ではなく”武力衝突”である」等の答弁を繰り返しました。事実確認のため、本書の著者である三浦氏が当時の日報を情報開示請求したところ、「日報は破棄されているため開示できない」との回答が出されます。以後の国会でも「日報は規則に従って破棄されており存在しない」と一貫して当時の稲田防衛相は答弁しました。しかし、のちに日報は自衛隊内で保存されている事が発覚し、最終的には日報の隠蔽であったとして稲田防衛相、陸上幕僚長、防衛事務次官などの最高幹部が辞任する事態へと発展しました。
本書はこの一連の事態の推移を追うのですが、その構成は、稲田氏の答弁を中心に布施氏による日本の国会での答弁を追った章と、三浦氏による南スーダンの現場ルポの章が交互になっています。実弾が飛び交い、政府軍による市民への暴行が絶えない南スーダンの現場が誰が読んでも危険な状況であることが明白であることと、実弾が飛び交う状況を「戦闘」ではなく「武力衝突」だと言い張る稲田氏の答弁をはじめとする国会でのまさに”言葉遊び”のような難解さとのコントラストがあまりにも際立ちます。
国会で稲田防衛相や安倍首相が、のらりくらりと訳の分からない答弁を繰り返している間にも、数百人規模の銃撃戦や、迫撃砲弾、ロケットランチャーを乱射するような戦闘が宿営地のすぐ傍で発生するような切迫した状況に自衛隊員達は置かれていました。少年兵も多い現地で、もしも少年兵が自衛隊へ発砲してきた場合について「相手が少年兵だったら、こちらが撃つよりも撃たれることを選ぶかもしれない」と証言する隊員もいました。
森友・加計学園、桜を見る会についても都合の悪いことについては記録が残っていないと言い倒し、つい最近もコロナウィルス感染対策の専門家会議も議事録を残していないと平然と言ってのける安倍政権。
毎日の報道だけでは、事態の全体像を掴み切れない事も多いですが、本書は日報隠蔽の事態を再構築して分かりやすくまとめてあり、少しでも多くの人に読んでもらいたいと感じました。