網野善彦のレビュー一覧

  • 歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」

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    1997~98年にかけて行われた対談をまとめた第1部と、1982~95年にかけての5つの対談を収録した第2部とで構成。「百姓=農民ではない」や「女性=被抑圧者とは限らない」など、網野さんの著名な説が繰り返し論じられているが、清水三男や渋沢敬三といった先駆者の仕事を語る部分が面白かった。

    第1部では網野批判への反論がかなり強く述べられており、本人曰くアルコールが少し入っていたとのこと。もっとも、それを削らずに活字化する当り、確信犯というか、よほど苛立っていたのだろうか。

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    2020年08月10日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    日本史を過去から遡って学びなおそうと思って購入したが、史実について順を追って触れていくのではなく、我々の歴史に対する思い違いについて文化的背景への考察をふまえて語るような内容だった。
    中でも、百姓=農民、ゆえに農業社会が日本の根源という思い違いについては興味深かった。

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    2020年07月05日
  • 日本社会の歴史 下

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    鎌倉から現代まで。
    上巻の前書きで述べられているように、江戸以降は著者の専門の関係からか駆け足で片づけられている。
    一方、室町時代の列島の風俗についての記述は著者の本領というものを感じさせた。

    天皇、貴族、武士、農民。これで日本列島の歴史の大部分を片づけてしまうことを、著者は強く拒んでいる。神社、寺、そこにまつわる職能民、海賊や漁撈民、悪党、様々な人たちが歴史のいたるところで活動し、それが現代の日本人にも確かにつながっているということをこの新書を通して、一般の読者に伝えたかったのだなあというのが、読んでいてすごく分かった。

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    2020年05月02日
  • 日本社会の歴史 上

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    有史以前から平安初期まで。
    日本の歴史ではなく、日本社会の歴史というタイトルにするだけあり、社会の運用と展開に焦点が当てられ、記述が進められている。日本社会と稲作の深い結びつき、それを基盤とした朝廷の統治形態について言及しつつも、決してそれだけでは片づけられない多様な要素の集合体が古代日本であったことも意識的にしっかりと書き出している。

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    2020年04月19日
  • 歴史の話 日本史を問いなおす

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    軍国主義の日本が太平洋戦争へ突き進む時代に生まれ育った2人の対談。網野氏は『日本の歴史をよみなおす』を読んで、その歴史観に感じ入った人。マルクスに関することや、天皇制に関する対談を読むと、左寄りの人なのかと思ったが、最後まで読めば、素直に日本の歴史、それも通史を考えている人であることが理解できる。ただ、自分には対談を読み理解するのが苦手なんだと痛感した。

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    2020年01月29日
  • 異形の王権

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    12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。

    先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。

    「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。
    シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。

    卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわ

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    2019年06月11日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    この人の言いたいことは
    「伝統的な日本社会=農村社会 というような単純で均質的な社会ではなく、日本とはもっと重層的である!」
    というかんじです。

    「百姓」は土をいじって作物育てる農民だけを指すのではないということは興味深かった。
    商人や職人、海の民や山の民もいっぱいいたんだね。

    そういう結論の部分は面白いけど、歴史学の論拠論証はあまり面白くない。そういうこまごました物証を並べられてもあまり関心は持てない。

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    2019年05月09日
  • 日本社会の歴史 下

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    下巻は建武の新政の失敗から江戸初期まで。個人的に、織豊期以降はあまり興味がないのだけど、こういう社会史として見るとなかなか面白い。武将が切った張ったしてるだけが歴史じゃないし、それよりもっとたくさんの無名の人々の営みがあって社会というのは動いていくんだなと。

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    2017年09月07日
  • 日本社会の歴史 中

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    中巻は後醍醐天皇による鎌倉幕府倒幕まで(建武の新政は下巻)。
    社会が高度化・複雑化していく様がよくわかる。個人的に為になったのは
    ・鎌倉幕府の政治体制・統治体制
    ・朝廷と幕府それぞれの権力基盤と相互関係
    ・東北などの辺境地域の動向と朝廷・幕府との関係
    ・中国大陸・朝鮮半島・アムール川流域など周辺諸地域の動向と日本の関係
    のあたり。鎌倉期は特に疎いのでとても勉強になる。

    ところどころ通説っぽくなさそうな議論もあるし、やたらとアウトサイダーを持ち上げるのが気になるが、それはそれで網野善彦の持ち味みたいなものなのでよしとしましょう。

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    2017年09月02日
  • 日本社会の歴史 上

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    日本人でも日本国でもなく、“日本社会“に関する通史。上巻は9世紀末、宇多天皇の治世まで。文化や技術、制度がどのよう変遷してきたかがよくわかる。

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    2017年08月28日
  • 日本中世都市の世界

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    網野さんの歴史学書は文庫で出ているものをいろいろ読んできたが、本書はちょっと難しい。歴史学の専門誌に掲載された論文ばかり入っているからだ。一般読者には知り得ない他の論文への言及が多く、それは解説されずに呈示されるので、私たちにはその箇所は虫食いのように不可知の穴が空いたままになり、論理を追うのが難しくなってしまう。
    日本中世都市の庶民の生活について知りたかったのだが、本書はまだその研究の導入期におけるものであり、私たちには窺いきれない状態である。
    「公界」等については他の著作でおなじみのテーマだし、「地」なる語の概念の変遷に関する辺りも興味深いものではあった。
    日本中世の庶民の生活に関しては、

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    2016年12月25日
  • 中世再考 列島の地域と社会

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    網野先生による日本の中世の本。といっても武士の話題ではなく、中世の民衆の生活ぶりについて、少ない史料から構築することを試行している。当然ながらハッキリした分かりやすい結論が書かれているわけではなく、内容も正直いって素人には難しいところが多い。雰囲気だけでも楽しめればいいかな、という感じの本。

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    2016年11月23日
  • 日本社会の歴史 下

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    江戸時代というより義満死後以降なのかな、本書でも急に内向きの描写に様変わり。日本人が好きな戦国時代の描写って詰まるところ内輪揉めやからなぁ。
    戦国時代を鉄砲とかキリシタンみたいな観点でなく、徹頭徹尾商業の観点から眺め直すと面白いような気がする。って全く根拠も何もないから全くもって無責任な素人考えですが。
    ところで明治時代の罪というか隠微な影響というのは注意深く自覚すべきなんだろう。これが本書の要点であり、そのことについては基本的には反論するところなしです。

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    2015年03月29日
  • 日本社会の歴史 中

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    上巻より若干ダイナミクスさに欠けるような気がしますが、日本も昔から国際社会の中で生きているんですなぁ。
    現代人には想像できない海上交通技術の高さとやはり富の吸引力なのか、日本イコール「閉鎖的社会」っていうイメージはいつの頃からのものなんだろか?やはり江戸時代の負の、いや正確には一つの特徴によるところ大なんだろうか。
    とにかく国際社会の動きと呼応する社会が描かれていてなかなか面白いもんです。

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    2015年03月28日
  • 日本社会の歴史 上

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    何の因果か再読。
    いつも不思議というか驚くのは、いわゆる縄文時代のような時代に海上交通(しかも長距離)が活発だったということ。博物館的な場所で見かける昔の船(あるいはその模型)で行き来することなんて今の(あるいは当方の)感覚からは信じ難い。人間の行動力ってのは凄いもんです。
    あとは昔から中韓とは色んな駆け引きがあったんですなぁ、改めて他の社会との関わりというのはなかなかに骨が折れると感じずにはおれません。

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    2015年03月22日
  • 日本社会の歴史 上

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    歴史小説を、時代を追いつつ読んでいくのと同時に、
    手引きとして併読した。

    上巻は平安時代初期まで。
    通史のためか、読むのが面白くてページがすすむ、
    というわけではないが、
    前半の「はじめに日本人ありき」という思い込みをなくし、
    日本列島の上で歩まれた社会を見ていこう、
    といった内容は面白かった。
    「日本」で縄文→弥生とひとまとまりに推移したわけではなくて、
    東と西では歩みの速さも違う。

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    2013年03月20日
  • 中世の非人と遊女

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    タイトルのごとく、網野本の中では非人扱いされる前の犬神人や遊女に少し考察がなされている
    ただ、他の著作とかなり被る部分は多く、散漫になったのは残念
    なんとなく、中世の人々は自由闊達な人々であったという結論から最初にきて逆算してるように感じるのは邪推なのでしょうかね

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    2013年01月16日
  • 増補 無縁・公界・楽

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    世間一般からの逃避所であり駆込寺でもあった"無縁"、肉親と縁を切り芸能と職人の道を担う"公界"、そして自治都市開かれる市を指す"楽"。こうした場に西洋でいうところの「アジール=逃避所」としての役割を見い出しその歴史と形成を明らかにしていくことによって日本固有の「自由」とは何だったのかを問い直していく網野史学の原点ともいえる本。ここで描かれる自由とは決して楽なものではなく、浮世との断絶を前提とし餓死と隣り合わせの世界。そんな零れ落ちてしまった人たちへの著者の暖かいまなざしに、何よりも心動かされる。

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    2012年08月05日
  • 日本社会の歴史 上

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    読者感想文指定の本。
    今まで読んだことのないジャンルだったけれどおもしろかった。
    教科書の行間を読んでいるよう。

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    2012年04月16日
  • 日本社会の歴史 中

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    新書で、通史で、網野善彦、ということでベストセラーになったシリーズだとか。
    密度高いけど、各項目が手軽に参照できるので助かる。
    網野さんの本を読んでると中世が面白くなってくる。

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    2011年08月14日