網野善彦のレビュー一覧

  • 異形の王権

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    異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。

    後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。

    後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。

    私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。

    私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。

    異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているのは最後の章だけなのである。大半は「異形の人々」を扱っており、随分長い導入という感じがしてしまう。

    ただ、それでも絵巻物からの歴史読解など、勉強にならないわけはないので十分読む価値はあるはずだ。

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    2021年10月05日
  • 日本社会の歴史 下

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    最終巻は何と室町時代から昭和まで。ものすごい掛け足で、この分量配分の異様ないびつさだけが他の日本史本と根本的に異なる所。「あとがき」で本書成立の経過を知ってその理由がよくわかった。最初から通史を書くつもりはなかったのね。
    口述本だからか無駄に接続詞で繋がれて一文が長く、読みにくいことこの上ないが、まあ勉強にはなったかな。「日本社会の」歴史なのだからもう少し支配者目線でない歴史観を期待したのだが、ちょっと期待外れ。

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    2021年02月28日
  • 日本社会の歴史 中

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    平安から鎌倉の終わりまで。
    専門用語が何の注釈もなく使用されていて読みにくい。
    内容もわざわざ『日本社会の歴史』と銘打つほどの特徴なし。ちょっと詳しい日本史のテキスト。

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    2021年02月27日
  • 日本社会の歴史 上

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    古代から九世紀まで。
    それにしても、古代社会の歴史をこんなに断定的に言い切るのも凄い。最近の研究で根底から覆される記述は多いのでは?

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    2021年02月25日
  • 中世の罪と罰

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     ちょっと前に「中世芸能講義」という本を読んで、久しぶりに網野善彦先生の著作に手を伸ばしたくなりました。
     本書は、網野氏をはじめ4名の中世史研究の大家の10編の論考を採録したものです。かなりマニアックなテーマを扱ったもので、正直、本書内で開陳されている4名の泰斗の方々の論考は、私の貧相な知識では、ついていくには専門的過ぎました。

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    2020年10月09日
  • 歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」

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    1997~98年にかけて行われた対談をまとめた第1部と、1982~95年にかけての5つの対談を収録した第2部とで構成。「百姓=農民ではない」や「女性=被抑圧者とは限らない」など、網野さんの著名な説が繰り返し論じられているが、清水三男や渋沢敬三といった先駆者の仕事を語る部分が面白かった。

    第1部では網野批判への反論がかなり強く述べられており、本人曰くアルコールが少し入っていたとのこと。もっとも、それを削らずに活字化する当り、確信犯というか、よほど苛立っていたのだろうか。

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    2020年08月10日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    日本史を過去から遡って学びなおそうと思って購入したが、史実について順を追って触れていくのではなく、我々の歴史に対する思い違いについて文化的背景への考察をふまえて語るような内容だった。
    中でも、百姓=農民、ゆえに農業社会が日本の根源という思い違いについては興味深かった。

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    2020年07月05日
  • 日本社会の歴史 下

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    鎌倉から現代まで。
    上巻の前書きで述べられているように、江戸以降は著者の専門の関係からか駆け足で片づけられている。
    一方、室町時代の列島の風俗についての記述は著者の本領というものを感じさせた。

    天皇、貴族、武士、農民。これで日本列島の歴史の大部分を片づけてしまうことを、著者は強く拒んでいる。神社、寺、そこにまつわる職能民、海賊や漁撈民、悪党、様々な人たちが歴史のいたるところで活動し、それが現代の日本人にも確かにつながっているということをこの新書を通して、一般の読者に伝えたかったのだなあというのが、読んでいてすごく分かった。

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    2020年05月02日
  • 日本社会の歴史 上

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    有史以前から平安初期まで。
    日本の歴史ではなく、日本社会の歴史というタイトルにするだけあり、社会の運用と展開に焦点が当てられ、記述が進められている。日本社会と稲作の深い結びつき、それを基盤とした朝廷の統治形態について言及しつつも、決してそれだけでは片づけられない多様な要素の集合体が古代日本であったことも意識的にしっかりと書き出している。

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    2020年04月19日
  • 中世の罪と罰

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    第一章として「お前の母さん……」から始まるのだけど、このトピックが衝撃的だった。

    「おまえのかーさん、でーべーそー」は幼い頃に受けた悪口の一つで、そういえば、お前の父さんや婆ちゃんみたいなバージョンはなかったなと思う。

    この悪口が、かの有名な「御成敗式目」では、軽くて拘禁、重いものだと流罪に値するというのだから驚きだ。
    そして、当時はお前の母さん……の悪口の真意として、インセストタブー(近親相姦)を示していたと思われる記載もあるようだ。
    共同体にとっては穢れをもたらす忌むべき事柄であり、その名残が今日に残っているのだと考えると、ちょっと背筋が冷たくなる。

    こうしたケガレ観は、場所にも現れる。(第二章「家を焼く」)

    第三章では、耳切り、鼻削ぎ刑について。
    焼印、刺青刑も同様に、容貌を変えることで通常の暮らしを出来ないようにするという意図だ。
    この耳切り、鼻削ぎについては、癩病との重なりにも言及している。

    その他「死骸敵対」「盗み」「夜討ち」「博奕」「未進と身代」など。
    それぞれの章はあまり長くなく、しかし偽りのないよう丁寧に論じられている印象がある。

    武士という、戦そのものを芸事、生計とする人々が台頭する時代で、いったい倫理とは何を指すんだろうと思いつつ。
    親と子との関係や、コミュニティと個人との関係には、時に緊迫するほどの重みを感じる。そして、そういう関係がある時点で社会なのだな。当たり前なのだけど。

    面白かった。

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    2020年03月20日
  • 歴史の話 日本史を問いなおす

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    軍国主義の日本が太平洋戦争へ突き進む時代に生まれ育った2人の対談。網野氏は『日本の歴史をよみなおす』を読んで、その歴史観に感じ入った人。マルクスに関することや、天皇制に関する対談を読むと、左寄りの人なのかと思ったが、最後まで読めば、素直に日本の歴史、それも通史を考えている人であることが理解できる。ただ、自分には対談を読み理解するのが苦手なんだと痛感した。

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    2020年01月29日
  • 異形の王権

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    12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。

    先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。

    「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。
    シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。

    卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわち異形を身にまとっていたのはなぜか? それが後世に与えた影響は? などが語られて行きます。

    一般啓蒙書ではなく学術論文で、専門用語が解説なく出て来たり、議論が極度に微細にわたったりしているので、若干読みづらくはあったのですが、当時の天皇がこうして一個の性格として見えて来るのはやはり面白いですね。

    高校時代とかにこういう本を読むようなリテラシーがあったら、日本史も楽しかった(し頭に入った)ろうなぁ、というのが率直なところです(´Д`;)。

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    2019年06月11日
  • 日本社会の歴史 下

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    下巻は建武の新政の失敗から江戸初期まで。個人的に、織豊期以降はあまり興味がないのだけど、こういう社会史として見るとなかなか面白い。武将が切った張ったしてるだけが歴史じゃないし、それよりもっとたくさんの無名の人々の営みがあって社会というのは動いていくんだなと。

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    2017年09月07日
  • 日本社会の歴史 中

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    中巻は後醍醐天皇による鎌倉幕府倒幕まで(建武の新政は下巻)。
    社会が高度化・複雑化していく様がよくわかる。個人的に為になったのは
    ・鎌倉幕府の政治体制・統治体制
    ・朝廷と幕府それぞれの権力基盤と相互関係
    ・東北などの辺境地域の動向と朝廷・幕府との関係
    ・中国大陸・朝鮮半島・アムール川流域など周辺諸地域の動向と日本の関係
    のあたり。鎌倉期は特に疎いのでとても勉強になる。

    ところどころ通説っぽくなさそうな議論もあるし、やたらとアウトサイダーを持ち上げるのが気になるが、それはそれで網野善彦の持ち味みたいなものなのでよしとしましょう。

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    2017年09月02日
  • 日本社会の歴史 上

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    日本人でも日本国でもなく、“日本社会“に関する通史。上巻は9世紀末、宇多天皇の治世まで。文化や技術、制度がどのよう変遷してきたかがよくわかる。

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    2017年08月28日
  • 日本中世都市の世界

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    網野さんの歴史学書は文庫で出ているものをいろいろ読んできたが、本書はちょっと難しい。歴史学の専門誌に掲載された論文ばかり入っているからだ。一般読者には知り得ない他の論文への言及が多く、それは解説されずに呈示されるので、私たちにはその箇所は虫食いのように不可知の穴が空いたままになり、論理を追うのが難しくなってしまう。
    日本中世都市の庶民の生活について知りたかったのだが、本書はまだその研究の導入期におけるものであり、私たちには窺いきれない状態である。
    「公界」等については他の著作でおなじみのテーマだし、「地」なる語の概念の変遷に関する辺りも興味深いものではあった。
    日本中世の庶民の生活に関しては、もっとまとまった形での、平易な書物を読んでみたい。

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    2016年12月25日
  • 中世再考 列島の地域と社会

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    網野先生による日本の中世の本。といっても武士の話題ではなく、中世の民衆の生活ぶりについて、少ない史料から構築することを試行している。当然ながらハッキリした分かりやすい結論が書かれているわけではなく、内容も正直いって素人には難しいところが多い。雰囲気だけでも楽しめればいいかな、という感じの本。

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    2016年11月23日
  • 日本社会の歴史 下

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    江戸時代というより義満死後以降なのかな、本書でも急に内向きの描写に様変わり。日本人が好きな戦国時代の描写って詰まるところ内輪揉めやからなぁ。
    戦国時代を鉄砲とかキリシタンみたいな観点でなく、徹頭徹尾商業の観点から眺め直すと面白いような気がする。って全く根拠も何もないから全くもって無責任な素人考えですが。
    ところで明治時代の罪というか隠微な影響というのは注意深く自覚すべきなんだろう。これが本書の要点であり、そのことについては基本的には反論するところなしです。

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    2015年03月29日
  • 日本社会の歴史 中

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    上巻より若干ダイナミクスさに欠けるような気がしますが、日本も昔から国際社会の中で生きているんですなぁ。
    現代人には想像できない海上交通技術の高さとやはり富の吸引力なのか、日本イコール「閉鎖的社会」っていうイメージはいつの頃からのものなんだろか?やはり江戸時代の負の、いや正確には一つの特徴によるところ大なんだろうか。
    とにかく国際社会の動きと呼応する社会が描かれていてなかなか面白いもんです。

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    2015年03月28日
  • 日本社会の歴史 上

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    何の因果か再読。
    いつも不思議というか驚くのは、いわゆる縄文時代のような時代に海上交通(しかも長距離)が活発だったということ。博物館的な場所で見かける昔の船(あるいはその模型)で行き来することなんて今の(あるいは当方の)感覚からは信じ難い。人間の行動力ってのは凄いもんです。
    あとは昔から中韓とは色んな駆け引きがあったんですなぁ、改めて他の社会との関わりというのはなかなかに骨が折れると感じずにはおれません。

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    2015年03月22日