網野善彦のレビュー一覧
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異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。
後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。
後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。
私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。
私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。
異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているのは最後の章だけなのである。大半は「異形の人々」を扱っており、随分長い導入という感じがしてしまう。
ただ、それでも絵巻物からの歴史読解など、勉強にならないわけはないので十分読む価値はあるはずだ。 -
Posted by ブクログ
第一章として「お前の母さん……」から始まるのだけど、このトピックが衝撃的だった。
「おまえのかーさん、でーべーそー」は幼い頃に受けた悪口の一つで、そういえば、お前の父さんや婆ちゃんみたいなバージョンはなかったなと思う。
この悪口が、かの有名な「御成敗式目」では、軽くて拘禁、重いものだと流罪に値するというのだから驚きだ。
そして、当時はお前の母さん……の悪口の真意として、インセストタブー(近親相姦)を示していたと思われる記載もあるようだ。
共同体にとっては穢れをもたらす忌むべき事柄であり、その名残が今日に残っているのだと考えると、ちょっと背筋が冷たくなる。
こうしたケガレ観は、場所にも現れる。(第二章「家を焼く」)
第三章では、耳切り、鼻削ぎ刑について。
焼印、刺青刑も同様に、容貌を変えることで通常の暮らしを出来ないようにするという意図だ。
この耳切り、鼻削ぎについては、癩病との重なりにも言及している。
その他「死骸敵対」「盗み」「夜討ち」「博奕」「未進と身代」など。
それぞれの章はあまり長くなく、しかし偽りのないよう丁寧に論じられている印象がある。
武士という、戦そのものを芸事、生計とする人々が台頭する時代で、いったい倫理とは何を指すんだろうと思いつつ。
親と子との関係や、コミュニティと個人との関係には、時に緊迫するほどの重みを感じる。そして、そういう関係がある時点で社会なのだな。当たり前なのだけど。
面白かった。 -
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12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。
先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。
「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。
シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。
卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわち異形を身にまとっていたのはなぜか? それが後世に与えた影響は? などが語られて行きます。
一般啓蒙書ではなく学術論文で、専門用語が解説なく出て来たり、議論が極度に微細にわたったりしているので、若干読みづらくはあったのですが、当時の天皇がこうして一個の性格として見えて来るのはやはり面白いですね。
高校時代とかにこういう本を読むようなリテラシーがあったら、日本史も楽しかった(し頭に入った)ろうなぁ、というのが率直なところです(´Д`;)。 -
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網野さんの歴史学書は文庫で出ているものをいろいろ読んできたが、本書はちょっと難しい。歴史学の専門誌に掲載された論文ばかり入っているからだ。一般読者には知り得ない他の論文への言及が多く、それは解説されずに呈示されるので、私たちにはその箇所は虫食いのように不可知の穴が空いたままになり、論理を追うのが難しくなってしまう。
日本中世都市の庶民の生活について知りたかったのだが、本書はまだその研究の導入期におけるものであり、私たちには窺いきれない状態である。
「公界」等については他の著作でおなじみのテーマだし、「地」なる語の概念の変遷に関する辺りも興味深いものではあった。
日本中世の庶民の生活に関しては、もっとまとまった形での、平易な書物を読んでみたい。