網野善彦のレビュー一覧

  • 異形の王権

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    鎌倉幕府を倒し「建武の新政」をおこなった後醍醐天皇を、旧来の天皇支持基盤(専ら貴族)を解体・再構築し、武士や楠木正成のような悪党までを取り込もうとした「異形の王者」としてえがく。世界歴史でも摩訶不思議な「天皇」という存在とはなんなのか、ここに謎のヒントがありそう。

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    2009年10月04日
  • 増補 無縁・公界・楽

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    今年(2004年)2月27日に亡くなった網野善彦の代表作。縁切寺や子どもたちの「エーンガチョ!」に見られるような「無縁」の原理は、原始のかなたから生きつづけているものだという、人類学的な拡がりを見せる日本中世史の本。普通は「縁」こそが日本独自の共同体の論理だと思われているが、「無縁」もまた「公界」という公共の領域を作り、「楽」と言われるように一種の自由を享受していた。しかし、その自由は近世になるにつれて「縁」の論理のうちに取り込まれていき、差別として固定化されていく(つまりエタ・ヒニン)。網野善彦がこの「無縁」の論理に一種の「希望」を見出し「自由」と形容したことに、抵抗と共感の両方を感じる。つ

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    2009年10月04日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    歴史本=睡眠導入薬の私であるが、この本は私たちが社会の授業で習ってきた日本史的常識に一石を投じるものでした。日本人の自然との関係性の変化、また、水上交通とそれを前提とした交易や商業等の発達、と言ったことが本書の視点だったように思います。へえ、そういう見方もありうるよなあ、と歴史学の面白さみたいなものを垣間見、興味を持ちながら読むことができました。

    …それでも途中で何度も眠たくなりましたが。(笑)

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    2025年01月31日
  • 中世の非人と遊女

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    もとは、川端康成などの小説に出てくる社会からはみ出た女性たちの存在に興味をもち、こういった女性はどこから出てきたどうゆう身分の人たちなのか不思議に思ったのがきっかけ。だから本書を読むにあたって一番期待したのは非人ではなく遊女だったが、読み終わってみて、主題は非人、遊女はどちらかというとオマケだと気づいた。
    近現代で差別の対象となった/なっている人たちの根源をさぐろうとするのが狙いなのか何なのか、とにかく種々の被差別民が登場する。今の被差別民は古代、すくなくとも中世までは職能民であり、その身分は天皇大王によって保障されていた、つまり元は被差別民どころか神聖な身分ですらあったが、室町戦国を境に天皇

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    2024年07月04日
  • 異形の王権

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    読みやすさ ★★★
    面白さ ★★★
    ためになった度 ★★

    扇の骨の間から見るしぐさのところと、後醍醐天皇のところが面白かった。

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    2023年09月30日
  • 日本社会の歴史 上

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    さすがに網野氏の書く歴史は、表層だけではなく、社会の深層からの分析が多く、新鮮な感覚で読むことが出来る。この巻は、有史以前の日本列島の成り立ちから当時の人類の動きにまで話が及ぶ。しかし、逆に人物像としては、大化の改新後の中大兄皇子が自ら天皇位に就かず、対立する古人大兄王子、蘇我倉山田石川麻呂、孝徳天皇などを排斥していく過程の描写は詳しく、天智天皇は陰湿な人物との印象を受けた。日本の古代は8世紀に多く登場した女性天皇の存在に見られるように女性の社会的地位が外国と比べて相対的に高かったとの説明は現在と比べて、皮肉なことである。

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    2022年02月27日
  • 歴史の話 日本史を問いなおす

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    -国史なんていっていると、いかに精密にやったって、国家と国旗が日常生活と連動しちゃうんです。そこが困るんですね。日常生活には国家の支配しきれない領域がある(鶴見)。

    国家の支配しきれない領域の存在を、海民や職能民の歴史を通じて解き明かそうとした網野善彦。本書は、哲学者・鶴見俊輔との対談。

    網野史学(と呼ばれるのを本書では拒否しているが)の仕事を、思想家の立場から解析すると何が見えてくるのか、というところが読みどころ。

    少々、年寄りの繰り言のようなページも目立つのだが、現代は「戦前、戦中にはなかった特別の鎖国状態にある」という指摘は頷ける。

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    2021年12月26日
  • 米・百姓・天皇 ──日本史の虚像のゆくえ

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    倭国=日本、律令制、農業=稲作、士農工商など、日本史上の「虚像」と目されるものを巡る批評。

    わたしの生半可な知識では十分ハードコアな内容なのだが、対談という形式に助けられ、割と苦も無く理解は進んだ。これが対談ではなく、論述式であったならば眉間にしわを寄せて読む時間は、倍はあったろうと思う。ビバ対談!

    網野史学を教導者として日本史に親しむ人口は多かったのではないか?
    かくいう私はまさにそう。
    高校の日本史の教師から研究者になり、「教科書の日本史」を否定し倒すという個性的な網野氏ももはや亡く。この分野でまた新たな教導者を探したい気持ちが募る。

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    2021年12月15日
  • 日本中世の民衆像 平民と職人

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    1979年に岩波市民講座でおこなわれた講演をもとにした本です。日本の中世史に社会史的な視点をとりいれた著者の関心の中心であったテーマについて、わかりやすく解説がなされています。

    著者は、「百姓」ということばが、中世以前には農民だけでなく平民身分の者を広く意味していることに注意をうながし、「日本人」という民族は稲作を中心とする歴史をあゆんできたという理解をくつがえします。そのうえで、中世の平民たちの負っていたいた年貢・公事にかんする事実を明らかにして、彼らの生活の実態にせまっています。

    さらに職人の多彩なすがたについてもとりあげられており、東国と西国の職人のありかたのちがいや、差別とのつなが

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    2021年11月23日
  • 日本社会の歴史 中

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    中巻では、平安時代から鎌倉時代の終わりまでがとりあげられています。

    平将門の反乱から源氏の台頭を経て、鎌倉幕府が成立するにいたる歴史を一貫したものとしてあつかい、京都を中心とする「西の王権」に対して鎌倉幕府を「東の王権」と位置づけるなど、著者特有の視点が示されています。同時に、この東西にならびたつ二つの王権がたがいにせめぎあいをおこなっていくことで、そのときどきの日本の歴史の局面が生みだされていったことが鮮明にえがかれており、単一の「日本史」という枠組みが解体されていくスリリングな体験をあじわうことができました。

    また、非農耕民の営みや芸能にたずさわる人びとの動向、あるいは中世における女性

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    2021年11月19日
  • 日本社会の歴史 上

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    中世を主要なフィールドとして、従来の「日本史」の枠組みの見なおしをおこない、「網野史学」と称される新しい観点を提出したことで知られる著者による日本通史の試みです。ただし17世紀の後半から現代にかけては、「展望」というかたちで著者の問題意識が示されるにとどまっています。上巻では、古代から平安時代初期までがあつかわれています。

    著者は「はじめに」で、従来の日本史のとらえかたが「はじめに日本人ありき」というべきものになっており、そのことがわれわれの歴史像をあいまいなものにしてきたと述べています。著者は、古代から日本列島とその周辺の地域とのあいだに切り離しがたいつながりがあったことに注目するとともに

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    2021年11月19日
  • 日本社会の歴史 下

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    下巻は後醍醐天皇から現代まで。

    新書一冊では扱えるわけが無いくらい広い範囲だと思われるが、実際その通りで江戸時代から太平洋戦争まで圧倒的なスピードで進んでいく。

    学校では近代史が等閑になっていると常々批判されているが、残念ながらこの本も同じである。

    これは筆者が日本の中世を専門にしているためであり、一人で書く以上仕方のないことである。

    いやむしろ、近代史の項目では琉球処分、偏向的な民族主義的な教育、アジア侵略などにしか触れられていないことを考えると、近代史が少ないのは幸運と言えるだろう。

    筆者は明治政府が江戸時代を否定したことを批判しているが、戦前の歩みを否定するのなら、それは同じで

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    2021年11月02日
  • 日本社会の歴史 中

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    中巻は9世紀末から13世紀末のモンゴル襲来まで。

    正直、物語としての面白さはなく、歴史的事実をずっと連ねているだけという感じがしなくもない。

    もちろん、東西の違い、交易の活性化や都市の誕生、都市の職能民や非人の活躍など、網野さんらしい視点がある所は愉しめる。

    そういうわけで、網野さんのファンや日本史を復習したい人は読んでもいいだろう。

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    2021年11月02日
  • 日本社会の歴史 上

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    網野善彦さんの日本の歴史概説書。

    従来の日本史では捉えられなかった事象にスポットを当てるという意味を込めて、タイトルを「(日本列島の)日本社会の歴史」にしたそうである。

    上中下巻に分かれており、上巻は人類誕生〜9世紀の弘仁貞観の頃まで。

    古墳や鉄器などへの朝鮮半島や大陸の影響、中央に従わない東北地方への遠征など、周辺への視点が多いのが網野さんらしい。

    高校日本史的な知識が多いので、日本史を復習したい方にもおすすめである。

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    2021年11月02日
  • 歴史としての戦後史学 ある歴史家の証言

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    日本中世史の大家、網野先生の目を通しての戦後の日本史研究史といった本である。あとがきで著者自ら「老人の思い出集、しかもくり事であり、いまさら書物として多くの人々の目にさらすのもはずかしく、躊躇する気持ちもあったが」とあるように、戦後の日本史学かいわいの事情とそれにまつわるテーマで著作された論述をまとめたものである。したがって少々まとまりに欠けるところがある。
    この本を読もうと思ったきっかけは、他の先生がかかれた中世史の本を読んでいるときに、まるでマルクス経済学者の書くような文章で、こんな文章を書く学者が出る背景とはどんなものかと疑問に思ったところにある。
    本書を読むと、そういった背景がうまれた

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    2021年10月27日
  • 異形の王権

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    異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。

    後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。

    後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。

    私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。

    私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。

    異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているの

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    2021年10月05日
  • 日本社会の歴史 下

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    最終巻は何と室町時代から昭和まで。ものすごい掛け足で、この分量配分の異様ないびつさだけが他の日本史本と根本的に異なる所。「あとがき」で本書成立の経過を知ってその理由がよくわかった。最初から通史を書くつもりはなかったのね。
    口述本だからか無駄に接続詞で繋がれて一文が長く、読みにくいことこの上ないが、まあ勉強にはなったかな。「日本社会の」歴史なのだからもう少し支配者目線でない歴史観を期待したのだが、ちょっと期待外れ。

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    2021年02月28日
  • 日本社会の歴史 中

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    平安から鎌倉の終わりまで。
    専門用語が何の注釈もなく使用されていて読みにくい。
    内容もわざわざ『日本社会の歴史』と銘打つほどの特徴なし。ちょっと詳しい日本史のテキスト。

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    2021年02月27日
  • 日本社会の歴史 上

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    古代から九世紀まで。
    それにしても、古代社会の歴史をこんなに断定的に言い切るのも凄い。最近の研究で根底から覆される記述は多いのでは?

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    2021年02月25日
  • 中世の罪と罰

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     ちょっと前に「中世芸能講義」という本を読んで、久しぶりに網野善彦先生の著作に手を伸ばしたくなりました。
     本書は、網野氏をはじめ4名の中世史研究の大家の10編の論考を採録したものです。かなりマニアックなテーマを扱ったもので、正直、本書内で開陳されている4名の泰斗の方々の論考は、私の貧相な知識では、ついていくには専門的過ぎました。

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    2020年10月09日