網野善彦のレビュー一覧
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ネタバレ私にとって目から鱗の書籍でした。
近年海外からの圧力もありジェンダーレス、多様性、男女差別等の議論が不可避のものとなっていますが
本書では、地道に地道に真摯に積み上げてきた研究者達の灯が霧を晴らすがごとく中世日本のの景色を浮かび上がらせてくれます。時折ルイス・フロイスのなんだこれは?!という叫びのような報告書も交えながら、世界的にも珍しい女性が広く識字する稀有な文化が社会変動によって変遷していく日本の姿を旅します。
特に心に残ったのは以下の部分
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未開の柔らかな特質を強く持つ社会が、それ自体の内発的な発展のなかで、畿内の政治権力を中心として、すでに高度の文明のなかで鍛え上げられてきた -
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学校で習う歴史の授業では知ることが出来ない、日本の中世について、文献や絵画から人々の地位や職業や文化を探る本である。興味深かった。
いろいろな考察があるが、名前や女性や天皇の地位について時代とともにどう変化したかが書かれていた。一番意外だったのは、えた・非人として習った身分制度の最下位にいるとされる人たちの仕事や立場である。目からウロコだった。
室町時代以前は、非人と言われた人たちは、穢れを扱う特別な職能として天皇制度とじかにつながっていたというのだ。イメージ的に被差別民というか、乞食のような印象だったのだが、遊女も同様な特別な(必要とされる)職業としてある種の地位を得ていたということも書いて -
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日本の歴史(通史)というには,あまりにも中途半端な終わり方…それをわかっていて,網野さんはなぜ本書をまとめようと思ったのか。それはもちろん,編集者からの強い要望もあったのだが,網野さんの「いま言っておかなければ…」という強い思いもあったのだと,わたしは,最終章を読んで理解した。
本書は,上・中・下の3巻もあるのだが,残念ながら17世紀前半までで終わっている。そう明治以降は書かれていないのだ。
いや,少し書かれてはいる。それは「第十二章 展望」と題して…である。わたしは,この十二章を読んだときに「網野さんが一番いいたかったことは,この第十二章に書かれている」と思った。日本歴史研究の大前提を -
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中巻は「10~14世紀前半,摂関政治から鎌倉幕府の崩壊まで」(カバー裏より)を扱っています。
わたしが網野さんの本を読み始めたのは,中世日本史の捉え方が新しかったからです。そういう意味では,本書は,その中心的な話題が載っているわけです。
武士が支配する東国(後に,本人たちも関東と呼ぶらしい)と,天皇を中心とする貴族の住む西国。この時代には,特に,この二つの権力のせめぎ合いが繰り広げられています。
わたしのような義務教育くらいの日本史しか知らないものは,ついつい,一番トップに立っているものたちだけをなぞってしまいます。要するに権力史観と言えばいいでしょうか。奈良時代(奈良)・貴族,平安時 -
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久しぶりに日本史の通史を読んでいます。それも,網野史学です。
網野さんの本は,さすがに視点が違います。それは初っぱなからわかります。網野さんは「はじめに」で次のように述べています。
「日本社会の歴史」と題してこれからのべようとするのは、日本列島における人間社会の歴史であり、「日本国」の歴史でもないし、「日本人」の歴史でもない。これまでの「日本史」は、日本列島に生活をしてきた人類を最初から日本人の祖先ととらえ、ある場合にはこれを「原日本人」と表現していたこともあり、そこから「日本」の歴史を説きおこすのが普通だったと思う。いわば「はじめに日本人ありき」とでもいうべき思い込みがあり、それがわれ -
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農民=百姓
授業ではそういうふうに習ったと思います。
いや区別しないで習ったというべきでしょうか。
ただ本書を読むとそうではないことがわかります。
百姓=武士や商人でない人
塩を作ってたり漁業や水運業をする人もみんなはいってるんですよね。
コレは目から鱗でした。
日本は農本主義で農業が国の基本で租税の中心と思ってました。
でも戦国時代や幕末もそうですが交易が日本を動かしてますよね。
楽市楽座もそうですし亀山社中や海援隊もそうですよね。
僕の今の仕事で考えるとやりたいことをやるためにはお金が必要です。
それは今も昔も同じですよね。
そのお金をどう増やすか。
やっぱり交易が大切なんですよ。
無い -