網野善彦のレビュー一覧

  • 増補 無縁・公界・楽

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    歴史書というよりも、思想、文化論。
    西洋の自由、平等、平和に対して、日本文化としての「無縁、公界、楽」を対置しているわけで、生物学で言えばドーキンスに対するグールドの論を読んでいるような感覚を覚えた。
    読みどころは本文よりも補注である。

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    2023年07月22日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    「穢れ」というキーワードは民族学っぽい文脈の本ではよく出てくるが、ここで描かれるケガレ、差別のとらえ方がとても腹落ちする。
    他文字や商業、女性、天皇という視点を見ると、その多くが(この本が出版されてかなり経つにも関わらず)一般的な理解とは離れている現実に少し驚く。

    後段では、百姓=農民、というなんとなくの積み重ねで漠然と持っているイメージが覆った。
    深く考える機会も少なく、なんとなくとらえていた過去の日本人の庶民像の解像度が上がった。

    よく考えれば、百姓という言葉の漢字を一つ見ても、農民に限定してしまうことの方が不自然だなあと感じたり。

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    2023年01月01日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    市場や河原、畏れや穢れの話、非人の話、女性の話、都市の話、河海を通した流通の話、百姓に持たれるイメージからくる5回の話。
    いずれもこれまでに学んだ歴史の中にはなく、興味を持って読むことができた。

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    2022年09月18日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    網野史観の入門書として相応しい一冊。

    網野さんの歴史観の捉え方は様々だが、一般の読者には日本史への多様な視点を与えてくれることは確かだ。

    百姓と呼ばれる人々の実態、室町時代の商業発展などをつぶさに見ていくことで、非農業国家としての日本を描きだす。

    また、差別階級と認識されがちな非人は、天皇や寺社に使える聖なる存在であったことなど、マイノリティに新たな視点を提供してくれる。

    歴史に多様な視点を持つことは、皇国史観やマルクス史観など画一的カルト的歴史観に陥らないために極めて有益である。

    そして、また、多様性が尊ばれる現代にも相応しいだろう。

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    2021年10月07日
  • 対談 中世の再発見

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    中世の再発見

    二人の中世史の巨人を招いた対談本。ワンピースに例える中カイドウとビッグマムの海賊同盟並みの二人。
    贈与や宴会、市場などのテーマに関しての対談から、日本とヨーロッパの精神の基層をなす中世の人々の考え方を浮かび上がらせるとともに、11世紀頃を境に他の諸国と全く別の文化的習慣を持つに至ったヨーロッパの特殊性についても触れる。特に贈与ではマルセル・モースの贈与論を引いた上で、贈与や互酬関係において人々が繋がりを持っていたとされる。貨幣は貨幣を媒介にしてこれまで関わってこなかった人々と新たな関係性を取り成すとともに、中世の人々は貨幣の持つ呪術性についても信じていた。ゆえに、彼らは死者への

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    2021年10月03日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    「ちくまプリマ―ブックス」から刊行された二冊の本をまとめて収録したもので、若い読者に向けて日本の歴史の新しい見かたをわかりやすく解説しています。いわゆる「網野史学」の入門書として読むことのできる本です。

    著者は、「非人」と呼ばれて蔑視されてきた人びとについて、神の「奴婢」という見かたがあったことを掘り起こし、彼らが社会のなかで果たしてきた役割について考察をおこなっています。また、「百姓」を農民とみなす理解が、これまでの歴史研究のなかで抜きがたく存在していたことを批判し、彼らのなかに非農耕民が多く含まれていたことに注目しながら、農村を中心に置いて日本社会を均質的なものとしてとらえる常識的な見か

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    2021年07月17日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    戦国時代の印象しかなかった中世史は、まだわからないことが多く教科書に載っていない事柄に溢れているらしい。職能民、海民、山民などが"百姓"として制度に組み込まれていくなかで、表には見えづらいけれど当時の歴史像としては重要な役割を果たしていたことが、史料から丁寧に読み解かれている。今までの先入観が覆るというか、違和感の正体がさまざまな躍動感とともに立ち上ってくるようで、もっと読んでいたかった。

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    2021年05月17日
  • 中世再考 列島の地域と社会

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    封建制度の中では自由がなかったように語られるが、中世には移動の自由や年貢等の交渉の自由があったそうだ。また、本来、「自由」の語義は「専恣横暴な振舞」でマイナスな意味であったが、戦国時代から「他に拘束されない」というプラスの意味が含まれるようになったということを知った。また、中世の庶民は年貢が苦しく貧乏で苦しい生活だったイメージを持っていたが、中層でも資産を持っているという。漁村でも、今では想像しにくいが、海洋交通で遠くの場所と直接つながっており、貿易・貨幣経済が広範囲に広がっていたことが面白い。村の成り立ちを考える際には、西国の横のつながり、東国の縦のつながりという対比は興味深い。確かに、西国

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    2021年01月07日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    いわゆる教科書に書いてある歴史とは違って、実際の人々の生活、宗教観などをテーマに日本の歴史を紐解いていて面白い。
    特に後半の百姓=農業従事者という訳ではないとのくだりが面白かった。
    貧農と言われていた人達の中には実は漁業をメインに営んでいて、実際は裕福な生活を送っていた人達もいたとか。
    日本の昔の人々をリアルに感じられた。

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    2020年09月12日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    まさに日本の歴史の読み直し。知的好奇心が刺激されまくった。
    「百姓イコール農民ではない」という指摘は、自分が学んできた歴史感覚を覆すもの。たしかに百姓っていう言葉自体からは直接農業を連想できないものな…
    また、たびたび応仁の乱以前と以降で日本は結構変わるみたいなことを言われてるのだけど、それが何故なのか?はこの本では触れられてなくて気になる。紹介されていた「異形の王権」「室町の王権」を読めば分かるだろうか。

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    2020年06月16日
  • 対談 中世の再発見

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    民俗学から法学、経済、宗教まで幅広く扱われていて面白い
    割と会話のドッヂボール感が強いけど、参考文献として色々読みたくなるので興味の入り口として良いかも

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    2020年05月13日
  • 増補 無縁・公界・楽

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    ネタバレ

    乱暴なことかもしれないが、「有縁」の代表たる武士と「無縁」の代表たる朝廷。戦国時代までは住み分けが出来ていたが、徳川幕府による朝廷や寺社への法度、さらに明治の近代化により、社会全体の「有縁化」が進んだ。現代の差別問題は、一部、この有縁化がもたらしているのでは。

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    2020年05月04日
  • 対談 中世の再発見

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    読むと面白いのだけども、自分の問題意識とはマッチせず、途中でストップ

    読みたい本が多過ぎて、ガッツリとこないものは、どんどん飛ばしてます

    いや、こういう本があるとかじって知ってれば、そういうタイミングがきたときにまた読めばいいのだ

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    2020年05月01日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    日本の歴史ついて、新しい考え方を教えてくれた良書。タイトルに「全」とあるように、本書は「日本の歴史をよみなおす」と「続・日本の歴史をよみなおす」の二本立てになっている。特に続編の内容が、驚きの連続である。網野氏の考察が色濃く出ており、なるほどそういう見方もあったのか、と開眼が止まらない。歴史をもう少し勉強してから読み直すと、さらに面白く読めそうだ。

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    2020年04月13日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

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    網野善彦氏(1928~2004年)は、日本中世史を専門とする歴史学者。文献史学を基礎として展開した独自の歴史観は「網野史観」とも呼ばれ、学術的には賛否両論があるものの、日本中世史研究に多大な影響を与えた。
    本書は、1991年刊行の『日本の歴史をよみなおす』と1996年刊行の『続・日本の歴史をよみなおす』を併せて、2005年に文庫化されたもの。
    網野中世史のポイントのひとつは「非人」である。日本の古代においては、奴隷と良民の区別と、ケガレに関わる人びととそれ以外の人びとの区別があった。「ケガレ」とは、人間と自然の均衡が崩れたときに、それによって人間社会の内部に起こる畏れや不安と結びついたもので、

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    2019年12月29日
  • 異形の王権

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    網野善彦 「 異形の王権 」 日本の中世史の本。中世史が こんなに人間的で 魅力的とは 思わなかった。

    後醍醐天皇の異質性、後醍醐天皇が目指して国家、後醍醐天皇の衰退と非人など差別の関係など 面白かった

    後醍醐天皇と 飛礫(つぶて) が印象に残った

    渋沢敬三 「 絵巻物による日本常民生活絵引 」
    *絵巻物を 歴史学、民俗学等の資料として読む〜画の意味
    *絵巻物から個々の場面を抽出し模写する→身辺雑事に見える問題を歴史の対象とする→歴史学を命あるものにする

    なぜ 蓑笠が非人、乞食の服装となったか
    *蓑笠=一つの変相服装→神、まれびとの衣裳→蓑笠姿のまれびとは 妖怪となり〜乞食となった

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    2019年06月01日
  • 海民と日本社会

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    網野先生の海民にまつわる論考と講演集。日本という国の姿が、個々の歴史学者の地道な努力により徐々に明らかになっていく過程を振り返る意味でも、読み返すべき好著。

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    2019年03月08日
  • 歴史の話 日本史を問いなおす

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    網野と鶴見という今は亡き二人の1993年の対談である。鶴見に引き出されて、網野の天皇制への主張の核がはっきりと示されている。内なる天皇制などとは言わず、生活の各層に潜む天皇制の在りようをつかまねばならないとする意志が明確である。平成が終わる今、以下の発言を記しておきたい。
    「王は自分に独自の力があるから王なのではなくて、まわりが王と思うから王になれるのだ、といわれますけど、全くそうだと思うんです」「権力は社会の合意があって初めて維持し得るので、その合意が崩れるような事態が起こり、それを多数の人民が意志として表現したらあっという間に消し飛ぶと思うんです。人間は断じて力だけで押さえつけられているも

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    2019年03月03日
  • 増補 無縁・公界・楽

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    暴力のシステムが、ある程度の力を持つとき、それは少数者の保護を約束する。
     道々の輩、異形異類と言われる特殊な技能を持つ人々が、かつては職農民同士で国のようなものを作り、他の組織あるいは国と交流していたと説く。

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    2018年02月12日
  • 対談 中世の再発見

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    メモ:
    日本の宴会の無礼講という考え方は、西洋では公的には失われている→キリスト教による社会統制が働いている
    また、忘年会というのは一年間で元に戻るという日本人の時間意識を表している行事で、西洋ではそういうものはない→キリスト教は終末論

    これらは、西洋で11世紀にキリスト教による意識の大転換が起こったことと無縁ではなく、これまで歴史学のものさしにされがちだった西洋の風習は、実は世界的に見れば特殊なあり方なのかもしれない

    メモ2(p221)
    "ヨーロッパがなぜ11世紀以降大きな変化を示したかというと、互酬の関係のなかで、お返しは天国でする、つまり死骸の救済というかたちでそれをいった

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    2017年05月07日