網野善彦のレビュー一覧
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中世を主要なフィールドとして、従来の「日本史」の枠組みの見なおしをおこない、「網野史学」と称される新しい観点を提出したことで知られる著者による日本通史の試みです。ただし17世紀の後半から現代にかけては、「展望」というかたちで著者の問題意識が示されるにとどまっています。上巻では、古代から平安時代初期までがあつかわれています。
著者は「はじめに」で、従来の日本史のとらえかたが「はじめに日本人ありき」というべきものになっており、そのことがわれわれの歴史像をあいまいなものにしてきたと述べています。著者は、古代から日本列島とその周辺の地域とのあいだに切り離しがたいつながりがあったことに注目するとともに -
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下巻は後醍醐天皇から現代まで。
新書一冊では扱えるわけが無いくらい広い範囲だと思われるが、実際その通りで江戸時代から太平洋戦争まで圧倒的なスピードで進んでいく。
学校では近代史が等閑になっていると常々批判されているが、残念ながらこの本も同じである。
これは筆者が日本の中世を専門にしているためであり、一人で書く以上仕方のないことである。
いやむしろ、近代史の項目では琉球処分、偏向的な民族主義的な教育、アジア侵略などにしか触れられていないことを考えると、近代史が少ないのは幸運と言えるだろう。
筆者は明治政府が江戸時代を否定したことを批判しているが、戦前の歩みを否定するのなら、それは同じで -
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日本中世史の大家、網野先生の目を通しての戦後の日本史研究史といった本である。あとがきで著者自ら「老人の思い出集、しかもくり事であり、いまさら書物として多くの人々の目にさらすのもはずかしく、躊躇する気持ちもあったが」とあるように、戦後の日本史学かいわいの事情とそれにまつわるテーマで著作された論述をまとめたものである。したがって少々まとまりに欠けるところがある。
この本を読もうと思ったきっかけは、他の先生がかかれた中世史の本を読んでいるときに、まるでマルクス経済学者の書くような文章で、こんな文章を書く学者が出る背景とはどんなものかと疑問に思ったところにある。
本書を読むと、そういった背景がうまれた -
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異形の王権とは後醍醐天皇の治世のこと。
後醍醐天皇は建武の新政で天皇自ら政治を行なったことは学校でも習うが、どういう改革をしたかを知っている(覚えている)人は少ないのではないか。
後醍醐天皇が密教興盛を図ったことは有名だが、それがどういう意図を持って行われたか、当時の経済事情や政治状態を明らかにした上で説得力ある解説をしている。
私は後醍醐天皇の改革を怪しく思っていたが、当時の政治経済状況を鑑みると、時代に即した偉大な改革だったのではないかと読後感を持った。
私はこの本をとても興味深く読んだが、タイトルと内容に齟齬があるのが気になった。
異形の王権=後醍醐天皇の治世を直接扱っているの -
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12~13世紀の習俗から、歴史の陰の部分を掘り起こそうという本。
先日読んだ本(「山の人生」)が民間伝承からそれを読み取るなら、これは現代に伝わっている図版を解いて行こうという(一応)趣向です。
「異形」というのは、卑賤の者たちの装いのこと。
シモジモの服装なんてのは、確かに文書には書かれにくく、“なんとか図絵”の片隅に描かれているのを拾って行く作業なわけです。
卑賤とは言ってもそれは金襴や覆面、柿色の山伏服で、それらがなぜ卑賤に貶められていったか?(被差別化の進行) や、名前くらいは知っている「後醍醐天皇」が、権力を我が手に奪還しようとしたときに、密教の法衣や法具を手にしていた…すなわ -
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網野さんの歴史学書は文庫で出ているものをいろいろ読んできたが、本書はちょっと難しい。歴史学の専門誌に掲載された論文ばかり入っているからだ。一般読者には知り得ない他の論文への言及が多く、それは解説されずに呈示されるので、私たちにはその箇所は虫食いのように不可知の穴が空いたままになり、論理を追うのが難しくなってしまう。
日本中世都市の庶民の生活について知りたかったのだが、本書はまだその研究の導入期におけるものであり、私たちには窺いきれない状態である。
「公界」等については他の著作でおなじみのテーマだし、「地」なる語の概念の変遷に関する辺りも興味深いものではあった。
日本中世の庶民の生活に関しては、