網野善彦のレビュー一覧

  • 日本の歴史をよみなおす(全)

    Posted by ブクログ

    戦国時代の印象しかなかった中世史は、まだわからないことが多く教科書に載っていない事柄に溢れているらしい。職能民、海民、山民などが"百姓"として制度に組み込まれていくなかで、表には見えづらいけれど当時の歴史像としては重要な役割を果たしていたことが、史料から丁寧に読み解かれている。今までの先入観が覆るというか、違和感の正体がさまざまな躍動感とともに立ち上ってくるようで、もっと読んでいたかった。

    0
    2021年05月17日
  • 中世再考 列島の地域と社会

    Posted by ブクログ

    封建制度の中では自由がなかったように語られるが、中世には移動の自由や年貢等の交渉の自由があったそうだ。また、本来、「自由」の語義は「専恣横暴な振舞」でマイナスな意味であったが、戦国時代から「他に拘束されない」というプラスの意味が含まれるようになったということを知った。また、中世の庶民は年貢が苦しく貧乏で苦しい生活だったイメージを持っていたが、中層でも資産を持っているという。漁村でも、今では想像しにくいが、海洋交通で遠くの場所と直接つながっており、貿易・貨幣経済が広範囲に広がっていたことが面白い。村の成り立ちを考える際には、西国の横のつながり、東国の縦のつながりという対比は興味深い。確かに、西国

    0
    2021年01月07日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

    Posted by ブクログ

    いわゆる教科書に書いてある歴史とは違って、実際の人々の生活、宗教観などをテーマに日本の歴史を紐解いていて面白い。
    特に後半の百姓=農業従事者という訳ではないとのくだりが面白かった。
    貧農と言われていた人達の中には実は漁業をメインに営んでいて、実際は裕福な生活を送っていた人達もいたとか。
    日本の昔の人々をリアルに感じられた。

    0
    2020年09月12日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

    Posted by ブクログ

    まさに日本の歴史の読み直し。知的好奇心が刺激されまくった。
    「百姓イコール農民ではない」という指摘は、自分が学んできた歴史感覚を覆すもの。たしかに百姓っていう言葉自体からは直接農業を連想できないものな…
    また、たびたび応仁の乱以前と以降で日本は結構変わるみたいなことを言われてるのだけど、それが何故なのか?はこの本では触れられてなくて気になる。紹介されていた「異形の王権」「室町の王権」を読めば分かるだろうか。

    0
    2020年06月16日
  • 対談 中世の再発見

    Posted by ブクログ

    民俗学から法学、経済、宗教まで幅広く扱われていて面白い
    割と会話のドッヂボール感が強いけど、参考文献として色々読みたくなるので興味の入り口として良いかも

    0
    2020年05月13日
  • 増補 無縁・公界・楽

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    乱暴なことかもしれないが、「有縁」の代表たる武士と「無縁」の代表たる朝廷。戦国時代までは住み分けが出来ていたが、徳川幕府による朝廷や寺社への法度、さらに明治の近代化により、社会全体の「有縁化」が進んだ。現代の差別問題は、一部、この有縁化がもたらしているのでは。

    0
    2020年05月04日
  • 日本社会の歴史 中

    Posted by ブクログ

    平安から鎌倉まで。
    藤原家が権勢をほしいままにするところからやがて武士が台頭する過程が細かく記述されている。
    印象に残った点としては、源頼朝が築いた鎌倉幕府を「東の王権」と称し、同時に天皇を中心とする「西の王権」と並立するものであると繰り返し強調しているところだ。
    藤原家➡平清盛➡源頼朝へと権力が移り、これ以降は武士の世になる、という直線的な見方で理解していたものだが、そう単純なものではなく、東西の権力が手探りで関係を作り、かつお互いを出し抜こうという綱引きを繰り返していたのかということが、これでもかというくらいに述べられている。

    0
    2020年05月02日
  • 対談 中世の再発見

    Posted by ブクログ

    読むと面白いのだけども、自分の問題意識とはマッチせず、途中でストップ

    読みたい本が多過ぎて、ガッツリとこないものは、どんどん飛ばしてます

    いや、こういう本があるとかじって知ってれば、そういうタイミングがきたときにまた読めばいいのだ

    0
    2020年05月01日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

    Posted by ブクログ

    日本の歴史ついて、新しい考え方を教えてくれた良書。タイトルに「全」とあるように、本書は「日本の歴史をよみなおす」と「続・日本の歴史をよみなおす」の二本立てになっている。特に続編の内容が、驚きの連続である。網野氏の考察が色濃く出ており、なるほどそういう見方もあったのか、と開眼が止まらない。歴史をもう少し勉強してから読み直すと、さらに面白く読めそうだ。

    0
    2020年04月13日
  • 日本の歴史をよみなおす(全)

    Posted by ブクログ

    網野善彦氏(1928~2004年)は、日本中世史を専門とする歴史学者。文献史学を基礎として展開した独自の歴史観は「網野史観」とも呼ばれ、学術的には賛否両論があるものの、日本中世史研究に多大な影響を与えた。
    本書は、1991年刊行の『日本の歴史をよみなおす』と1996年刊行の『続・日本の歴史をよみなおす』を併せて、2005年に文庫化されたもの。
    網野中世史のポイントのひとつは「非人」である。日本の古代においては、奴隷と良民の区別と、ケガレに関わる人びととそれ以外の人びとの区別があった。「ケガレ」とは、人間と自然の均衡が崩れたときに、それによって人間社会の内部に起こる畏れや不安と結びついたもので、

    0
    2019年12月29日
  • 異形の王権

    Posted by ブクログ

    網野善彦 「 異形の王権 」 日本の中世史の本。中世史が こんなに人間的で 魅力的とは 思わなかった。

    後醍醐天皇の異質性、後醍醐天皇が目指して国家、後醍醐天皇の衰退と非人など差別の関係など 面白かった

    後醍醐天皇と 飛礫(つぶて) が印象に残った

    渋沢敬三 「 絵巻物による日本常民生活絵引 」
    *絵巻物を 歴史学、民俗学等の資料として読む〜画の意味
    *絵巻物から個々の場面を抽出し模写する→身辺雑事に見える問題を歴史の対象とする→歴史学を命あるものにする

    なぜ 蓑笠が非人、乞食の服装となったか
    *蓑笠=一つの変相服装→神、まれびとの衣裳→蓑笠姿のまれびとは 妖怪となり〜乞食となった

    0
    2019年06月01日
  • 日本社会の歴史 下

    Posted by ブクログ

    なんとなくの日本史に対する思い込みを覆してくれる、刺激的な瞬間が何回かありました。面白いです。おすすめ。

    0
    2019年05月21日
  • 海民と日本社会

    Posted by ブクログ

    網野先生の海民にまつわる論考と講演集。日本という国の姿が、個々の歴史学者の地道な努力により徐々に明らかになっていく過程を振り返る意味でも、読み返すべき好著。

    0
    2019年03月08日
  • 歴史の話 日本史を問いなおす

    Posted by ブクログ

    網野と鶴見という今は亡き二人の1993年の対談である。鶴見に引き出されて、網野の天皇制への主張の核がはっきりと示されている。内なる天皇制などとは言わず、生活の各層に潜む天皇制の在りようをつかまねばならないとする意志が明確である。平成が終わる今、以下の発言を記しておきたい。
    「王は自分に独自の力があるから王なのではなくて、まわりが王と思うから王になれるのだ、といわれますけど、全くそうだと思うんです」「権力は社会の合意があって初めて維持し得るので、その合意が崩れるような事態が起こり、それを多数の人民が意志として表現したらあっという間に消し飛ぶと思うんです。人間は断じて力だけで押さえつけられているも

    0
    2019年03月03日
  • 増補 無縁・公界・楽

    Posted by ブクログ

    暴力のシステムが、ある程度の力を持つとき、それは少数者の保護を約束する。
     道々の輩、異形異類と言われる特殊な技能を持つ人々が、かつては職農民同士で国のようなものを作り、他の組織あるいは国と交流していたと説く。

    0
    2018年02月12日
  • 対談 中世の再発見

    Posted by ブクログ

    メモ:
    日本の宴会の無礼講という考え方は、西洋では公的には失われている→キリスト教による社会統制が働いている
    また、忘年会というのは一年間で元に戻るという日本人の時間意識を表している行事で、西洋ではそういうものはない→キリスト教は終末論

    これらは、西洋で11世紀にキリスト教による意識の大転換が起こったことと無縁ではなく、これまで歴史学のものさしにされがちだった西洋の風習は、実は世界的に見れば特殊なあり方なのかもしれない

    メモ2(p221)
    "ヨーロッパがなぜ11世紀以降大きな変化を示したかというと、互酬の関係のなかで、お返しは天国でする、つまり死骸の救済というかたちでそれをいった

    0
    2017年05月07日
  • 日本社会の歴史 上

    Posted by ブクログ

    ☆☆☆☆
    この程度の深さで、日本の成り立ちから平安時代初期までを振り返れたこの一週間は貴重な時間だった。
    「日本」という国の成り立ち、大陸(中国)や半島(朝鮮)との関係やその力関係による緊張感に影響される日本のありようは、昔に学んだ学校での歴史とは違った種類の知識を与えてくれた。

    また、国の型ができ、その組織が作られ、複雑になっていく過程では、権力闘争が繰り返されていく。穏やかな時代の印象持っていた平城、平安時代においても、どの時代、どの国の歴史同様の血生臭い権力欲をみせられた。

    この本が優れているのは「日本社会」の歴史を描いているところで、歴史のメインストリームに主眼が置かれてい

    0
    2017年04月28日
  • 増補 無縁・公界・楽

    Posted by ブクログ

    従来の、天皇と幕府の二重権力と農本主義に貫かれている日本史観を覆したというだけで、網野史観はスリリングだし、それだけで面白い。
    その上、それぞれの時代のアウトローな存在たちに光を当てているのだから、学術書でありながらエンターテイメントの要素をはらんでいて、活劇を読むようにわくわくして読み進めた。

    それが学術であれ、エンタメであれ、人の魂を揺さぶるものには、いつも無縁の原理が働いているという。


    「無縁」というのは、現代的な意味での無縁とはちょっとちがう。

    現代では「無縁仏」とか「無縁社会」とか、個人が社会の中で孤立している状態を指すのだが、網野史観による「無縁」の概念とは、「有縁」「有主

    0
    2016年09月18日
  • 増補 無縁・公界・楽

    Posted by ブクログ

    ネットで見かけて。

    面白かったし、読みやすかった。
    中世に寄進関係や主従関係で結ばれていない
    「無縁」のエリア、人々がいたらしいことは
    納得できた。

    その無縁所は
    ただ神聖な場所ということではなく、
    芸能に関係し、婚姻の無効に、借金の棒引きに有効なのはまだしも、
    犯罪をも帳消しにできるエリアだということが、
    今一つピンと来ない。
    納得できないというか。
    現代人の感覚なのか。

    0
    2015年11月23日
  • 日本中世の民衆像 平民と職人

    Posted by ブクログ

    網野先生はやはり偉大です。しかし日本人の歴史認識は五十年経っても進歩がないんだなぁ。別のIT関連(?)は凄い進歩しているのに。
    昔何があったか興味ない民族。忘れていく民族。今と先の進歩の方が大事な民族。それが日本人なのかも。思えば装飾されているとはいえ、中国人の方がその点両方(進歩も過去も)持っている。

    0
    2015年10月02日