あらすじ
日本中世史の諸説に様々な疑問を提出した小論集。「平民の自由」「民衆の生活史」「東国と西国」「百姓」「海民」など、著者が現在も徹底して追究し、多くの成果をあげている、数多くの研究主題の原点が提示されている。常民文化研究所で著者に強い影響を与えた民俗学者、宮本常一に関する論考も収録。
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Posted by ブクログ
封建制度の中では自由がなかったように語られるが、中世には移動の自由や年貢等の交渉の自由があったそうだ。また、本来、「自由」の語義は「専恣横暴な振舞」でマイナスな意味であったが、戦国時代から「他に拘束されない」というプラスの意味が含まれるようになったということを知った。また、中世の庶民は年貢が苦しく貧乏で苦しい生活だったイメージを持っていたが、中層でも資産を持っているという。漁村でも、今では想像しにくいが、海洋交通で遠くの場所と直接つながっており、貿易・貨幣経済が広範囲に広がっていたことが面白い。村の成り立ちを考える際には、西国の横のつながり、東国の縦のつながりという対比は興味深い。確かに、西国は同じ規模の家々が多くつながりが深いように思う。例えば、戦国時代の一基を考えると、中部地方から西国が多かったのではないか(山城、長島、加賀等)。一方、東国では、武士による支配層と庶民の関係、鎌倉時代に成立した御恩と奉公の関係が領地支配にも影響したのではないかと思った。
中世を様々な角度から述べたこの本は、一冊で多様な見方を知ることができて面白かった。