兼原信克のレビュー一覧
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エネルギー安全保障
•アメリカはシェールガス開発により中東依存を低下。むしろエネルギー資源国としての強みを持つようになった。
•ただし、イスラエル保護の立場は維持せざるを得ず、中東完全撤退は難しい。
•日本は国力の低下もあり中東関与を深めにくいが、石油依存は依然大きく、一定の関係維持は不可欠。
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食料安全保障
•戦後、日本人のカロリーの約4割を米が占めていたが、今は約2割にまで低下。
•小麦の多くをアメリカやオーストラリアから輸入している。
•これらの国との関係が維持されている限り、一定の食料安全保障は担保されている。
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再生可能エネルギー
•北欧諸国(スウェーデン、デンマーク)が -
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ネタバレおそらく21世紀では最高の外交・安全保障に関する政治力が高かった政治家・高村正彦による回想録。正直な話「外交の安倍」という評価の8割はこの人が後ろで支えていたお陰だと思っている。
冷戦が終結し、世界の枠組みが変わっていく中で旧来の「9条平和論」に拘泥していた政・官を根気強く変えていった著者の苦労が読み取れる。
当時はあまりそんな感じはしなかったけど小泉さんとはかなり険悪で安倍さんとはずっと仲良かったんだね。小泉時代に総裁選出てたとはいえそこは意外。
終盤は憲法9条論における芦田修正の根拠のなさと砂川事件の唯一の判例性に触れていたのが面白かった。判例を絶対視しすぎるのもどうかと思うけど、現状それ -
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知らなかったことや、頭から抜けていたことを知識として再インストールしながら思考の下地にすることが重要。本書には「日本の安全保障」に関する、そうしたベースとなる考え方や知識が溢れている。偏っているようにも見えるが、自国の安全保障を考えるという事は、原則的に自国第一主義で考えるという事で、軟弱な国際協調主義とは少し異なる。安全保障のための協調であるべきだ、という思考の順序が肝要だ。
その下地として、何を保有していて何が抜けているか、そのどの部分に強く重要性を感じるかは、読者の経験や立場によって異なる。少なくとも私にとって本書は、今までの経験を補完するものであり、考え直させるものだった。
例えば -
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【読書レビュー 647】
兼原信克『日本人のための安全保障入門』日本経済新聞出版、2023年
以下、本書より。
敗戦国の日本はGHQの指令の下で「平和国家に生まれ変わる」ために、国全体から軍事色を消そうとしてきました。そのため、経済官庁、産業界、学術界において安全保障リテラシーがゼロになってしまったことは先ほど説明しました。軍事に関する巨大な知的真空が日本政府の中枢にできてしまったのです。
さらに、1952年の独立後は、冷戦の冷気が東側陣営から学術界に深く入り込み、学識者の多くが、日米同盟反対、日本再軍備反対(非武装中立)に大きく傾きました。今では想像もできませんが、当時、マルクス・レーニ -
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<目次>
はじめに
第1部台湾有事シュミレーションン
序想定する背景
シナリオ①グレーゾーンの継続第3次台湾海峡危機
シナリオ②検疫と隔離による台湾の孤立化ベルリン危機
シナリオ③中国による台湾への全面的軍事衝突
シナリオ④危機の終結
第2部座談会ー台湾有事の備えに必要なものは何か
第1章台湾の価値を正しく認識せよ
第2章国家戦略上の弱点
第3章自衛隊は準備できているか
第4章戦時における邦人輸送と多国間協力
20225/20発行
2021/8/14-15に行われた日本戦略研究フォーラムに
よる政策シュミレーションの結果と、2021/11/11に
行われた参加者のうち4名の座談会の様子 -
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核の傘、核抑止、核不拡散、核廃絶etc.核をめぐる様々な議論について、各識者が意見を言い合う座談会の記録。
それぞれのテーマについての現状や課題を様々な立場から意見を出しているので、状況を把握するのに役に立った。
なにより、この座談会がウクライナ侵攻前の2021年9月に行われていて、この内容が語られていることに、まずびっくりした。
ロシアによるウクライナ侵攻の状況を見ていて、ロシアの核使用のハードルがものすごい低いことを痛感させられたし、それとは別に中国の核戦力を含めたあらゆる軍事力増大に恐怖を覚える昨今だが、そのあたりどのように対峙していくべきなのか、どういう議論をしていくべきなのか、考え -
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安倍総理が、30大綱を作る準備過程の冒頭で自衛隊最高幹部を前にして聞いた質問がタイトル。定番となっている4人のディスカッションシリーズ最新版。
台湾有事が切迫しているという認識のもと、日本の安全保障体制について話し合っている。彼らの話を聞いていると安倍総理の外交、安全保障面での功績は大きいのだと改めて知った。
NSCの活用、サイバー部隊の本格的な充実、サイバーについては民間の活用、普段から閣僚レベルで有事の図上演習を実施すべき、核シェアリング、防衛産業が防衛力そのものであることなど。
台湾有事についての政策シミュレーションの概要も付録として載せている。 -
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2022.02.24のロシアによるウクライナ侵攻の半年前の座談会だが、ロシア、北朝鮮、中国、アメリカをめぐる日本の状況について的確な議論がなされているのに驚いた.ジャーナリスト、元官僚2名、元自衛官の4名が文字通り本音で語り合っている.核抑止と核不拡散をいかにとらえるか.NPT:核兵器不拡散条約と核兵器禁止条約の問題.中国の核兵器の透明性、北朝鮮の内情等々、広範な議論が各人の得意分野と相手の意見を巧みに取り入れて、それなりの結論を導き出す.一流の人材だと感じた.それに比較して政治家のこの問題に対する明らかな不勉強が顕在化していると思った.中国の軍備拡張状況を踏まえて、日本の政治家が中国と東アジ
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元外交官が安全保障戦略について同志社大学法学部の学生に対して行った講義をまとめたもの。実務者として実際に関わってきたことについてはもちろん、国家論や歴史など幅広い分野への深い知見があるなと感じた。特に第1部の組織論は秀逸である。
55年体制下の日本では政治のリーダーシップを欠き、霞が関の各省が主権国家のように振る舞っていた。その後橋本政権以降官邸機能の強化が進む。小選挙区制の導入は派閥を弱体化させ、結果として族議員が弱体化した。これによって執行部、総裁の権限が強くなり、総理の力が強くなった。総理を補佐する官邸、内閣官房は政権と官界の結節点として重要となった。シビリアンコントロールの要となる国家 -
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【外交は常に連立方程式である。全体を見る力がない国は滅びる】(文中より引用)
安倍官邸外交を支えた前内閣官房副長官補が近代以降の日本の国際関係を敷衍しながら、最大の問題であったと指摘する「国務と統帥の断絶」について解説した作品。著者は、退官後に同志社大学特別客員教授として活躍する兼原信克。
「歴史の大きな流れをつかむ」という大きな視点から、あるべき国家安全保障戦略、そして近代日本が抱え込んだ統帥権の問題までが一本の糸でスッと連なっている様子がよくわかります。歴史一般の作品としても楽しめますが、本書を通して第二次安倍政権以降の外交がどのような方向性を志向していたかがなんとなく透けて見えたのも -
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著者は絶賛された安倍外交の屋台骨を7年に渡り支えてきたという元外交官。
本書に卓越した識見がちりばめられております。
15世紀にスペイン、ポルトガルが大航海を始めたあたりから現在までの「世界史」や「日本近現代史」のエッセンス、今後の「国際政治」で知っておくべき要点などをざっくり学びたいという方には是非、読んで欲しいです。
以下、本書より。
【二十世紀から掬い取るべき教訓は何か】
世界史の中の日本の来し方を振り返って見ると、昭和前期の日本が、あそこまで意地を張って頑張る必要があったのだろうかと、首をかしげたくなる。
人間は考える動物であるから、よほど頭に血が上った人でなければ、殺し合いや果し合 -
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友人に勧められて読んだが、すごく面白かった!
現実生活を送る中で、何が正しいのかよく分からなくなることが多々あるが、改めて何が正論なのかはっとすることも多く、頭が整理された。
特に印象に残ったのは、以下です。
・力(=軍事力、経済力)と道徳が、影響力を持つには、大切。即ち、良心の光。
・権力は、リーダーの優れた統率力と、服従するものの自発的な忠誠の組み合わせによって、機能する。よって、権力の目的は、あくまで集団の生存である。このような考え方は、法の支配や人間の尊厳と呼ばれる。
・力のある者は、指導的立場に立つ責任があり、指導的立場に立つ者は、自分だけでなく、社会構成員全ての幸福を守る責任がある -
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【レビュー】
『戦略原論』に引き続き、本シリーズは日本の大学教育の質向上につながる良書を送り出してくれた。本書は最近の日本人学者がよく出すマニュアル本・情報本とは一線を画し、著者の倫理観を反映しながら外交史・外交の要諦を詳説している。欧米の同種の書物とひけをとらない本を出してくれたことに感謝!
【特記事項】
●「常に自分の良心に戻ること」
・外交と軍事はつながっており、そのはざまに安全保障がある。そして両者を結合するのが総理大臣である。
●戦略=死活的利益の定義、情勢認識、利益実現手段を組み合わせて考えること。
●死活的利益とは:最高の国益=安全、経済的繁栄、価値観を守ること。
・真の海軍戦略