兼原信克のレビュー一覧
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【レビュー】
『戦略原論』に引き続き、本シリーズは日本の大学教育の質向上につながる良書を送り出してくれた。本書は最近の日本人学者がよく出すマニュアル本・情報本とは一線を画し、著者の倫理観を反映しながら外交史・外交の要諦を詳説している。欧米の同種の書物とひけをとらない本を出してくれたことに感謝!
【特記事項】
●「常に自分の良心に戻ること」
・外交と軍事はつながっており、そのはざまに安全保障がある。そして両者を結合するのが総理大臣である。
●戦略=死活的利益の定義、情勢認識、利益実現手段を組み合わせて考えること。
●死活的利益とは:最高の国益=安全、経済的繁栄、価値観を守ること。
・真の海軍戦略とは七つの海をまたにかけて支配する戦略。
・外交には原状回復の法則のようなものがあり、突出してきた国は周りからつぶされる。
●経済的繁栄:自由貿易、資源など
●価値観を守ること:なぜ国力の落ちた英仏に政治的指導力が残っているのか。それは、彼らが現代社会の基盤となっている、自由、人権、民主主義といった啓蒙思想を生み出し、依然としてその事実を上手に政治力に転化しているから。
・自分の良心の声を聞くには、古典を読むのが一番よい。
・21世紀日本の価値観とは:法の支配と人間の尊厳、民主主義、平和、自由貿易。 -
Posted by ブクログ
① 日本の予算・財政
●予算を作る総理指示が経済財政諮問会議を経て閣議決定される「骨太の方針」
●国家予算は100兆円であるが、国債償還費と地方交付税で半分を占めるため、中央省庁が使えるお金は50兆円
●米国やドイツとは違って、政治的な力は財政支出膨張の方向にしか働かない
② 内閣官房・官僚の役割
●内閣官房とは総理官邸の事務組織
●官僚には、与党の党内手続、マスコミの反応、野党の反応、支持率への影響、次の選挙への影響などに頭を巡らせて総理の立場に立って最善の案を持ち込むことが求められる
●特に内閣官房では少数精鋭のため、個人の企画力、問題解決力などが試される
③ 科学技術・CSTI
●CSTI(総合科学技術イノベーション会議)
ハイリスクハイリターンの研究開発への投資に意欲。問題は、日本学術会議等の学術会の反対で、防衛大臣等の安全保障関係の閣僚が排除されており、4兆円の予算が、安保系の研究開発に回されていない。
④ 戦後国際秩序・自由貿易体制
●WW IIの後、国際社会は戦間期(1920-30)の高関税ブロック経済による対立激化を経て、米国主導でIMF、世界銀行などの設立を経て、自由貿易体制が確立。
⑤ 中国
●中国の弱点は「人口減少」「社会格差」「ゾンビ企業」「少数民族」
●中国の経済規模は世界の16%。西側の規模には近づくだろうが、追いつくことはあり得ない。これはつまり、中国の覇権が地球規模ではなく、地域に止まることを意味する。西側が団結することで対中関与は依然として可能。
⑥ 日本外交・国家戦略
●日本外交の国益とは、日本の安全と繁栄を維持し、現代日本が拠って立つ基本的人権と民主主義という普遍的な価値観を守り広めること
●日本の戦略とは、米国との同盟を基軸として、韓国と豪州、さらにはASEAN諸国、インドとの戦略的連携を深めて、隣国ロシアとの関係を改善していくこと
⑦ 韓国・日韓関係
●韓国には小国意識があり、自分たちが国際政治を能動的にリードできるとは考えていない
●他方、中国に配慮しすぎるなど、フラフラすれば地域は不安定化する。結局これは米国との関係を損ない、国益にならない。
●日韓の歴史問題は、中国が利用していきていることに留意。(韓国との関係では、1956年に「完全かつ最終的に解決された」として、国交正常化も請求権交渉も終わっている)
⑧ 現代戦・安全保障技術
●現代戦は技術と情報の戦い。
●例えば次世代の戦闘機は無人機。これにより、パイロットの生物的な限界を無視した機動が可能に。
●サイバー攻撃は、莫大な火力の爆撃にも匹敵。 -
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第2次安倍政権で国家安全保障局次長だった兼原氏と、戦う駐中国大使として名を馳せた垂氏の、近代以降の日中関係に焦点を当てた対談集。
書名の「中国共産党が語れない」はそのとおりだが、中共が自分たちに都合の悪い事実に触れさせようとしないだけで、第三者からみれば普通の歴史を語っているに過ぎない。
孫文、周恩来ら中国の近代を築いた要人たちが日本に留学し、日本社会を通じて西洋の近代概念を学習したことや中共が近代化政策において日本を手本にしたことは周知の事実だ。(現代大陸人は知らないかも知れないが)
外交の最前線に身を置いた2人だけに、朝鮮戦争以降の日中(台米)関係についての両氏の会話は、兼原氏が聞き手から話し手に回ることもあり、当事者の肌感覚が直に知れて興味深い。
西欧発の悲観的な情報にも関わらず、例えば香港は中国本国がある限り金融センターとして健在で、習政権も本人が生きている限り存続するだろうという指摘は2人ならではだろう。 -
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中国による台湾有事を念頭に、安全保障の観点から食料、エネルギー、資源、経済の在り方を霞が関の元幹部たちが議論する。
省庁は安全保障の観点に立って、政策を考える必要がある。台湾有事の最前線に立つのは、自衛隊かもしれませんが、食料、エネルギー確保はもちろん、食料自給率のアップも考えないといけない。
経済面からも、安全保障に絡む分野には国が積極的に補助金を付与する必要がある。
各省庁への自衛官や防衛省幹部たちの派遣や人事交流も大切だし、各組織が連動して有機的に動けるようにする。
日本の力だけで、中国に対抗できなくなった現在、事態が発生した時に、生活がどれだけ制限されるのかを真剣に考えないとですな。
安心と安全は過去のものになりけりですね。 -
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台湾、朝鮮半島の有事は対岸の火事などではないし、米軍基地をいくつも抱えた日本は大きなダメージを受けるだろう。これまでは戦後の新憲法と冷戦という対岸の煙のおかげで殆ど何もしてこなくても問題にならなかった。しかしながら現時点では中国、北朝鮮の軍事行動がますます活発化し、日本に居る米軍がターゲットになることを考えると、ヤバいと思わなければいけない。ロシアのウクライナ侵攻でフィンランドやスウェーデンはNATO加盟に舵を切ったが、日本も周りが問題児ばかりなんだから、この議論を活発化させないといけない。兼原信克氏の別の本「歴史の教訓」も読んでみたい。
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兼原さんが一流の軍人と見る自衛隊OB陸海空からそれぞれ1名と諸々のテーマについて議論。
コロナ禍で明らかになった後方支援体制の脆弱さ、防衛装備工業会は飽くまで任意団体で統制する力はないこと、米台共同作戦は日米ですら常々共同でやっても不具合出るのだから相当難しい、朝鮮有事では船がそんなにないので北からの難民はせいぜい数千人程度ではないかという推測、核抑止の複雑さが高まっているのに核戦略の専門家がいない自衛隊、防衛装備庁は想定したメリットより欠点が目立っている等々。
政軍関係についての議論や自分達が幕僚長として創設に関わった防衛装備庁の問題など彼らだから話せる内容は面白かった。防衛大綱の改正や統合司令官の創設はその方向で話が進んでいて、こういった人たちが意見を公にしていくことが改革への推力になるのだろうな。