兼原信克のレビュー一覧
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羅森という広東人が、日米和親条約でウィリアムズ共に大きな役割を果たした事は知らなかった。しかも、吉田松陰とも関係していたとは驚き‼️ロシアの沿海州は元々中国に属していたとは知らなかったし、中ソ対立は存じたもののダマンスキー島事件が地図の何処にあるのかは地図で確認して初めて知った。日本の尖閣諸島について、なぜ神経質な態度を取らねばならないのか、訳が分からない。しかも尖閣諸島って、実は台湾が最初に主張し始めていた事もあって、中国がその後に主張していたとは知らなかった。日中戦争時に、日本と戦ってたのは主に中国国民党て、中国共産党は逃げ回って計りだったのは、現在の中国共産党は耳が痛いので無いか?
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■ 台湾・中国・戦後史
● 台湾の歴史的位置づけ
* 台湾はもともと統一的な国家による恒常的支配が弱い地域
* 17世紀にオランダが進出し、拠点化(インドネシアと一体的に扱われる側面)
* その後、鄭成功 → 清 → 日本 → 中華民国へと支配が変遷
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● 米国の対外姿勢の変化
* 第二次世界大戦以前:孤立主義・平和主義
* 戦後:世界秩序を支える役割を自認
* 初期は新参的立場で、対外関与において試行錯誤・失敗も多かった
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● 中国内戦と台湾の分断
* 日本敗戦後、米国は国共を仲介し統一国家を模索 → 失敗
* 翌年から全面内戦へ
* 結果:
* 中国共産党が勝利(戦力温存が背景)
* 中国国民党が台湾へ移転
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● 台湾の位置づけ
* 中国国内の未承認政府ではなく
* 中国とは別個の未承認国家とみる立場(兼原的整理)
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■ 現代中国の対日認識・外交
● 中国における日本の位置づけ
* 日本は一つの「極」とは見なされなくなっている
* 大国外交の対象ではなく、周辺外交に位置付け
* 米国に追随する日本と交渉するより、米国と直接やる方が合理的という判断
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● 世論と外交
* 外交は世論に基づき判断される
* 対中強硬姿勢が取れる背景には政治家個人だけでなく世論の後押し
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● 天皇の外国訪問原則
* 懸案が解決した後に訪問するのが原則
* 「君主は政治に巻き込まない」「君臨すれども統治せず」が基本
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■ 尖閣問題
● 歴史的経緯
* もともと中国の関心は低かった
* 1970年代頃から問題化
* 井上清の著作が中国側主張の根拠の一部として利用
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● 論争の推移
* 兼松氏による論理的反論以降、法律戦は相対的に低下
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● 日本がICJに持ち込まない理由
* 日本の立場:紛争は存在しない
* ICJは双方の同意が必要(中国は消極的)
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● 最近の議論
* 中国公船の常態的接近によりグレーゾーン事態が継続
* 「紛争がない」との立場の見直しやICJ活用論も一部で存在
* フィリピンの仲裁事例が参照される
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■ 台湾内部と対中関係
● 統一戦線・影響工作
* 中国共産党中央統一戦線工作部や公安と関係が指摘されるネットワーク
* 台湾の暴力団や沖縄の一部勢力との接触が指摘されるケースあり
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● 台湾社会の変化
* 経済・生活重視の傾向が強まっている
* 民衆党など中間勢力への傾き
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● 中国側の認識
* 独立派以外は取り込み可能と認識
* 統一戦線工作の対象として重視
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■ エネルギー・安全保障(台湾)
● エネルギー政策
* 2025年に原発を廃止
* 再生可能エネルギーへ移行
* 電力需給は逼迫気味
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● 半導体と国家安全保障
* TSMCを中核とする産業構造
* 電力停止が起きた場合の影響が極めて大きい -
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国家安全保障会議の設立に関わった人が著者だが
著者は政府の国家安全保障会議の設立に携わった元内閣官房副長官補の兼原信克氏。本書の「はじめに」には、こうある。一貫して私の脳裏を離れなかったのは、有事の本番で国家安全保障会議が本当に機能するのかどうか、という一点であった。国家安全保障会議は有事の際の国の要だ。中国の脅威が増している今、さぞかし生々しい話が読めると期待した。なんせ、その「頭脳」たる人が書いた本なのだから。しかし、中身の大半は教科書的な歴史のおさらいだった。機微に触れる話を望むことに無理があったかもしれない。著者の主張は全7章のうち、最後の2章に詰め込まれている。ただ個人的には、その言わんとする方向性にやや危うさも感じないではなかった。団塊世代後の外務省出身の方らしいというのかな。こんな記述にも出くわす。戦前の日本は、人類の理性や霊性が徐々に覚醒し、それが地球的規模で広がり、普遍的な価値観が歴史を突き動かしていく姿が見えなかった。(中略)二十一世紀を生きる私たちが、二十世紀の歴史からくみ取るべき教訓の第一は(中略)人類の歴史を貫く普遍的な価値観とは何かを見極めることである。リアルタイムで人類の歴史の流れが分かるか! というツッコミも入れたいところだが、置いておく。危うく感じたのは「普遍的価値観」というものを絶対視している姿勢そのものだ。これが現代の「行き過ぎたポリコレ」の母体になり、普遍的価値にそぐわないとみなしたものを排除し、社会に息苦しさをもたらしていないか。まあ、著者は、「普遍的価値観」とは個人の尊厳の平等であり、その関係で第一に重要なのは「優しさ」だと指摘している。そうやって最初から、削ぎ落とした表現で書き進めてほしかった。 -
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エネルギー安全保障
•アメリカはシェールガス開発により中東依存を低下。むしろエネルギー資源国としての強みを持つようになった。
•ただし、イスラエル保護の立場は維持せざるを得ず、中東完全撤退は難しい。
•日本は国力の低下もあり中東関与を深めにくいが、石油依存は依然大きく、一定の関係維持は不可欠。
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食料安全保障
•戦後、日本人のカロリーの約4割を米が占めていたが、今は約2割にまで低下。
•小麦の多くをアメリカやオーストラリアから輸入している。
•これらの国との関係が維持されている限り、一定の食料安全保障は担保されている。
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再生可能エネルギー
•北欧諸国(スウェーデン、デンマーク)が主導。
•中国も大気汚染を契機に再エネ導入を加速。
•台湾有事を見据え、海上輸入ルートに依存しない体制構築が重要視されている。
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人材と安全保障
•他国では退役後も民間で一定の地位や待遇を得られる仕組みがあり、人材循環に寄与。
•日本はその仕組みが弱く、人材活用に課題。
•アメリカ防衛研究では予算規模が日本の数倍以上。政府がベンチャー投資し、成功時はリターン、失敗しても一定の吸収が可能。
•技術者の約8割は通信・ネットワーク系、残り2割が戦略や対策業務を担当する構造。
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通信・量子技術
•国際通信の多くは海底ケーブルに依存。
•量子コンピュータによって将来暗号が解読されるリスクがあり、過去通信も含め安全性が崩れる恐れ。
•日本ではNICTが量子暗号を研究する一方、予算減少や半減期問題で弱点となっている。
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イスラエルの事例
•イスラエルには8200部隊というサイバー精鋭部隊がある。
•数学的才能ある若者を兵役で選抜 → 部隊経験 → 退役後にベンチャー設立。
•国家全体としてサイバー分野が強化される仕組み。
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ネタバレおそらく21世紀では最高の外交・安全保障に関する政治力が高かった政治家・高村正彦による回想録。正直な話「外交の安倍」という評価の8割はこの人が後ろで支えていたお陰だと思っている。
冷戦が終結し、世界の枠組みが変わっていく中で旧来の「9条平和論」に拘泥していた政・官を根気強く変えていった著者の苦労が読み取れる。
当時はあまりそんな感じはしなかったけど小泉さんとはかなり険悪で安倍さんとはずっと仲良かったんだね。小泉時代に総裁選出てたとはいえそこは意外。
終盤は憲法9条論における芦田修正の根拠のなさと砂川事件の唯一の判例性に触れていたのが面白かった。判例を絶対視しすぎるのもどうかと思うけど、現状それ以上のエビデンスが無いのは確か。
あとはまぁ、やっぱり総理大臣やるなら財務大臣か外務大臣は経験してないと厳しいよなぁとつくづく思った。岸田さんについては(悪い話も含めて)全く触れてないけどどう思っていたんだろうか。 -
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【読書レビュー 647】
兼原信克『日本人のための安全保障入門』日本経済新聞出版、2023年
以下、本書より。
敗戦国の日本はGHQの指令の下で「平和国家に生まれ変わる」ために、国全体から軍事色を消そうとしてきました。そのため、経済官庁、産業界、学術界において安全保障リテラシーがゼロになってしまったことは先ほど説明しました。軍事に関する巨大な知的真空が日本政府の中枢にできてしまったのです。
さらに、1952年の独立後は、冷戦の冷気が東側陣営から学術界に深く入り込み、学識者の多くが、日米同盟反対、日本再軍備反対(非武装中立)に大きく傾きました。今では想像もできませんが、当時、マルクス・レーニン主義は世界中で一世を風靡していました。日本のアカデミアやメディアも例外ではありません。学術界が防衛省との協力を頑なに忌避するのは、終戦直後のGHQの日本非武装方針だけではなく、社会党の「非武装中立」のスローガンのように、冷戦初期の東側陣営による日本の軍事力弱体化及び対米同盟廃棄の工作の影響を強く受けているからです。
安全保障こそは、本来国家が果たすべき役割のうち、一丁目一番地にあり、その基盤は科学技術、産業技術なのですが、残念ながら、上記のような事情で、日本では学術会が、国家安全保障、特に防衛省との関わりを強く忌避するようになってしまいました。 -
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<目次>
はじめに
第1部台湾有事シュミレーションン
序想定する背景
シナリオ①グレーゾーンの継続第3次台湾海峡危機
シナリオ②検疫と隔離による台湾の孤立化ベルリン危機
シナリオ③中国による台湾への全面的軍事衝突
シナリオ④危機の終結
第2部座談会ー台湾有事の備えに必要なものは何か
第1章台湾の価値を正しく認識せよ
第2章国家戦略上の弱点
第3章自衛隊は準備できているか
第4章戦時における邦人輸送と多国間協力
20225/20発行
2021/8/14-15に行われた日本戦略研究フォーラムに
よる政策シュミレーションの結果と、2021/11/11に
行われた参加者のうち4名の座談会の様子。
・サイバー攻撃はななり想定され日本のインフラへの
攻撃がある。
・在外(中台)の邦人の救出は無理
・在日工作員の活動はかなり想定している
・アメリカが関与するシュミレーションであり武器供与
だけのケース(ウクライナパターン)は考えていない
・ロシア・北朝鮮が関与するケースの想定がない
⇒日本は自国は自分で守れ、である
政府はこれを見て考え、動いたのか?
特にサイバーと工作員への対応が見られないが
それらが一般国民には身近である -
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核の傘、核抑止、核不拡散、核廃絶etc.核をめぐる様々な議論について、各識者が意見を言い合う座談会の記録。
それぞれのテーマについての現状や課題を様々な立場から意見を出しているので、状況を把握するのに役に立った。
なにより、この座談会がウクライナ侵攻前の2021年9月に行われていて、この内容が語られていることに、まずびっくりした。
ロシアによるウクライナ侵攻の状況を見ていて、ロシアの核使用のハードルがものすごい低いことを痛感させられたし、それとは別に中国の核戦力を含めたあらゆる軍事力増大に恐怖を覚える昨今だが、そのあたりどのように対峙していくべきなのか、どういう議論をしていくべきなのか、考える参考になった。 -
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安倍総理が、30大綱を作る準備過程の冒頭で自衛隊最高幹部を前にして聞いた質問がタイトル。定番となっている4人のディスカッションシリーズ最新版。
台湾有事が切迫しているという認識のもと、日本の安全保障体制について話し合っている。彼らの話を聞いていると安倍総理の外交、安全保障面での功績は大きいのだと改めて知った。
NSCの活用、サイバー部隊の本格的な充実、サイバーについては民間の活用、普段から閣僚レベルで有事の図上演習を実施すべき、核シェアリング、防衛産業が防衛力そのものであることなど。
台湾有事についての政策シミュレーションの概要も付録として載せている。 -
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2022.02.24のロシアによるウクライナ侵攻の半年前の座談会だが、ロシア、北朝鮮、中国、アメリカをめぐる日本の状況について的確な議論がなされているのに驚いた.ジャーナリスト、元官僚2名、元自衛官の4名が文字通り本音で語り合っている.核抑止と核不拡散をいかにとらえるか.NPT:核兵器不拡散条約と核兵器禁止条約の問題.中国の核兵器の透明性、北朝鮮の内情等々、広範な議論が各人の得意分野と相手の意見を巧みに取り入れて、それなりの結論を導き出す.一流の人材だと感じた.それに比較して政治家のこの問題に対する明らかな不勉強が顕在化していると思った.中国の軍備拡張状況を踏まえて、日本の政治家が中国と東アジアの問題を議論し、世界にアピールする といったイベントが企画できないものだろうか.無理かな? いずれにしても、中国・北朝鮮の問題をいつものように先送りするパターンはいい加減にやめてほしい.
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元外交官が安全保障戦略について同志社大学法学部の学生に対して行った講義をまとめたもの。実務者として実際に関わってきたことについてはもちろん、国家論や歴史など幅広い分野への深い知見があるなと感じた。特に第1部の組織論は秀逸である。
55年体制下の日本では政治のリーダーシップを欠き、霞が関の各省が主権国家のように振る舞っていた。その後橋本政権以降官邸機能の強化が進む。小選挙区制の導入は派閥を弱体化させ、結果として族議員が弱体化した。これによって執行部、総裁の権限が強くなり、総理の力が強くなった。総理を補佐する官邸、内閣官房は政権と官界の結節点として重要となった。シビリアンコントロールの要となる国家安全保障会議と国家安全保障局が、機能しなかった大本営とは違って、常設された。今後は統合運用の深化が求められ、統合司令官ポストの創設、総隊司令官の四つ星への昇格、SCの強化を主張する。日本のインテリジェンスサイクル自体は回り始めた。今後はインテリジェンスコミュニティの風通しを良くし、内閣情報調査室を中心にオールソースアナリシスを実行しなければならない。
筆者は個人の尊厳の平等、自由主義、民主主義、法の支配を普遍的価値と呼び、それは仏教や儒教の伝統が長い日本でも共有できるものであるとする。戦略は人間が力を合わせて生き延びるための実践的思考であり、安全、繁栄、価値観からなる国益を守るために必要なものである。そのために重要な日米同盟は冷戦の中で変遷を続け、平和安全法制でまた変化した。シーレーンは日本の生命線であり、地球規模の海軍戦略と自由貿易と地域経済統合が自由主義である。中国はナショナリズムという虎を乗りこなせないかも知れず、中国がピークアウトするまでいかに中国と向き合い関係を安定させるかという大戦略を考えねばならない。韓国も重要な隣国だが、まだナショナリズムが若く、国内冷戦が始まったばかりという内実をよく押さえたうえで付き合わなければならない。
サイバー、宇宙、技術覇権争いが米中の間で起きており、日本の産業も安全保障への無関心を改め、必要な技術を守り、育て、活かすことがさらに重要となっている。歴史戦も米中韓とそれぞれの国内事情がある。 -
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【外交は常に連立方程式である。全体を見る力がない国は滅びる】(文中より引用)
安倍官邸外交を支えた前内閣官房副長官補が近代以降の日本の国際関係を敷衍しながら、最大の問題であったと指摘する「国務と統帥の断絶」について解説した作品。著者は、退官後に同志社大学特別客員教授として活躍する兼原信克。
「歴史の大きな流れをつかむ」という大きな視点から、あるべき国家安全保障戦略、そして近代日本が抱え込んだ統帥権の問題までが一本の糸でスッと連なっている様子がよくわかります。歴史一般の作品としても楽しめますが、本書を通して第二次安倍政権以降の外交がどのような方向性を志向していたかがなんとなく透けて見えたのも興味深かったです。
単語のチョイスとか独特☆5つ -
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著者は絶賛された安倍外交の屋台骨を7年に渡り支えてきたという元外交官。
本書に卓越した識見がちりばめられております。
15世紀にスペイン、ポルトガルが大航海を始めたあたりから現在までの「世界史」や「日本近現代史」のエッセンス、今後の「国際政治」で知っておくべき要点などをざっくり学びたいという方には是非、読んで欲しいです。
以下、本書より。
【二十世紀から掬い取るべき教訓は何か】
世界史の中の日本の来し方を振り返って見ると、昭和前期の日本が、あそこまで意地を張って頑張る必要があったのだろうかと、首をかしげたくなる。
人間は考える動物であるから、よほど頭に血が上った人でなければ、殺し合いや果し合いはなかなか決断しないものである。
人類社会は、弱肉強食の社会から自由と民主主義、平和と繁栄へと向かって徐々に成熟してきた。
それが十九世紀から二十世紀にかけて起きたことである。
二つの世界大戦の後、核兵器の登場もあり、総力戦の愚かさは誰の目にも明らかになった。
植民地支配も人種差別も、みな廃れていった。
日本人が戦前、心の底から腹を立てたのは、欧米のアジア支配と人種差別であったはずである。
国際秩序の根源的な不義こそが、日本人が最も悩んだことであったはずだ。
戦後の日本人は戦争に負けたので口をつぐみがちだが、戦前の日本人はこれが不満だった。
しかし、戦後になると植民地支配も人種差別も消えてなくなった。
アジアやアフリカの植民地はほとんど独立した。
そうするとやはり、なぜ日本人はこの新しい人類社会の実現を忍耐強く待っていられなかったのか、という疑問が出て来る。
二十一世紀に生きる私たちは、昭和前期の日本はどうしてあそこまで性急だったのか、どうしてもう少し待って様子を見ることが出来なかったのかということを、突き詰めて考える必要がある。
政策的な過ちなのか、道徳的な過ちなのか。
戦略的な過ちなのか、戦術的な過ちなのか。
軍事的な過ちなのか、外交的な過ちなのか。
それとも日本の統治機構に根本的な制度的欠陥があったのか。
当時の日本人には、歴史の流れが見えない。
私たちには二十世紀の世界史の流れがくっきりと見える。
戦後、日本人は生まれ変わったと信じ、そう諸外国に言ってもきた。
しかし、何をどう間違えたのかを分析し、今の安全保障政策や制度に生かすことができなければ、本当に反省したとは言えない。
それでは日本の未来を私たち生き残り組に託して無念に死んでいった三百万の英霊や同胞に対して、そして希望の欠片もなかった終戦直後の混乱の中で家族を守り、生きぬいて、今日の繁栄の基礎を築いてくれた私たちの祖父母、父母の世代に対して、あまりにも申し訳ないと思う。
本書は、その問いに答えを与えようと言うささやかな試みである。
ここまで描いてきたように、世界史の中での近代日本の振る舞いを見た上で結論を言えば、日本が誤った根本にして最大の原因は、憲法体制の脆弱さ、特に「国務と統帥の断絶」である。
それによって軍部の暴走に歯止めがなくなり、正しい政軍関係が破壊され、シビリアン・コントロールが全く効かなくなった。
軍が政府と切り離され、政治も外交も壟断するようになれば、大局的な国益を見据えた外交戦略の視点は失われる。
国家は統一された意思を持ちえず、自壊する。
それだけではない。
戦前の日本は、人類の理性や霊性が徐々に覚醒し、それが地球的規模で広がり、普遍的な価値観が歴史を突き動かしていく姿が見えなかった。
それでは国際社会を味方につけ、世界史を牽引するような外交戦略は出てこない。
日本は、欧米諸国の一部が工業化に先駆けて激しい権力闘争に入った際、ただ一人アジアから遅れて先行組に入り込んだ国であった。
米国の主張する戦間期国際協調主義は、米国自身が孤立主義の殻に籠り、力によるコミットをしなかったために、絵に描いた餅になった。
また、人種差別や植民地主義が横行している中で、国際政治における普遍的な価値観を信じろと言われても難しかった。
更に日本人は、世界恐慌の後、悲惨な社会格差是正のための急進的社会変革と全体主義的な独裁政権待望の熱に冒された。
日本人は、十九世紀から二十世紀後半にかけて進んだ、剥き出しの力の政治や革命や戦争と言った暴力を、古典的な自由主義、或いは普遍的価値観がゆっくりと繭のように包み込んでいく過程を、信じることができなかったのである。
第二部では、第一部で得られた知見を踏まえ、二十一世紀の日本外交の戦略について考えてみたい。 -
Posted by ブクログ
友人に勧められて読んだが、すごく面白かった!
現実生活を送る中で、何が正しいのかよく分からなくなることが多々あるが、改めて何が正論なのかはっとすることも多く、頭が整理された。
特に印象に残ったのは、以下です。
・力(=軍事力、経済力)と道徳が、影響力を持つには、大切。即ち、良心の光。
・権力は、リーダーの優れた統率力と、服従するものの自発的な忠誠の組み合わせによって、機能する。よって、権力の目的は、あくまで集団の生存である。このような考え方は、法の支配や人間の尊厳と呼ばれる。
・力のある者は、指導的立場に立つ責任があり、指導的立場に立つ者は、自分だけでなく、社会構成員全ての幸福を守る責任がある。また、指導的立場にある者は、個としての利益だけではなく、社会全体の利益を考える必要がある。
・国際社会全体を引っ張っていくには、いつかは国際公益のために身を切る度量の大きさと、地球社会全体、特に弱者をかばう責任感と、地球社会全体の人々を引っ張っていく明るい理想が必要である。