あらすじ
国家戦略の基本となる外交。国益をどう守るか、国際環境をどのように読めばよいのか、日米同盟をどうとらえれば良いのか――。日本に必要な戦略的外交の思考法を第一線の外交官が体系的に解説する待望のテキスト。
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Posted by ブクログ
友人に勧められて読んだが、すごく面白かった!
現実生活を送る中で、何が正しいのかよく分からなくなることが多々あるが、改めて何が正論なのかはっとすることも多く、頭が整理された。
特に印象に残ったのは、以下です。
・力(=軍事力、経済力)と道徳が、影響力を持つには、大切。即ち、良心の光。
・権力は、リーダーの優れた統率力と、服従するものの自発的な忠誠の組み合わせによって、機能する。よって、権力の目的は、あくまで集団の生存である。このような考え方は、法の支配や人間の尊厳と呼ばれる。
・力のある者は、指導的立場に立つ責任があり、指導的立場に立つ者は、自分だけでなく、社会構成員全ての幸福を守る責任がある。また、指導的立場にある者は、個としての利益だけではなく、社会全体の利益を考える必要がある。
・国際社会全体を引っ張っていくには、いつかは国際公益のために身を切る度量の大きさと、地球社会全体、特に弱者をかばう責任感と、地球社会全体の人々を引っ張っていく明るい理想が必要である。
Posted by ブクログ
【レビュー】
『戦略原論』に引き続き、本シリーズは日本の大学教育の質向上につながる良書を送り出してくれた。本書は最近の日本人学者がよく出すマニュアル本・情報本とは一線を画し、著者の倫理観を反映しながら外交史・外交の要諦を詳説している。欧米の同種の書物とひけをとらない本を出してくれたことに感謝!
【特記事項】
●「常に自分の良心に戻ること」
・外交と軍事はつながっており、そのはざまに安全保障がある。そして両者を結合するのが総理大臣である。
●戦略=死活的利益の定義、情勢認識、利益実現手段を組み合わせて考えること。
●死活的利益とは:最高の国益=安全、経済的繁栄、価値観を守ること。
・真の海軍戦略とは七つの海をまたにかけて支配する戦略。
・外交には原状回復の法則のようなものがあり、突出してきた国は周りからつぶされる。
●経済的繁栄:自由貿易、資源など
●価値観を守ること:なぜ国力の落ちた英仏に政治的指導力が残っているのか。それは、彼らが現代社会の基盤となっている、自由、人権、民主主義といった啓蒙思想を生み出し、依然としてその事実を上手に政治力に転化しているから。
・自分の良心の声を聞くには、古典を読むのが一番よい。
・21世紀日本の価値観とは:法の支配と人間の尊厳、民主主義、平和、自由貿易。
Posted by ブクログ
第二次安倍内閣でも、中心に近い場所に入った兼原氏の外交戦略論の本。
佐藤優氏が週刊東洋経済で、兼原氏を紹介し、本書も挙げていたので読んでみた。
元々は、早稲田大学の講義の教科書として書かれた本であり、その意味では一般的な話(人とは何か、価値観とは何か、日本の価値観とはなにか)などを歴史的な具体例を挙げて定義して、それらを守るためには孫子の「戦わずして勝つ」を理想としながら、軍事と外交の内、主に外交面を取り上げている。
イントロダクションとして、人間や国家戦略の基本 を説明している。
これを受けて、1部で、安全、繁栄、価値観を守る、日本の価値観について具体例を挙げて説明している。2部では、東アジアを中心とした、現在の国家情勢を歴史的に、地理的に、説明している。3部では、国益を守るためには、何を国益とするか、そのための戦略を挙げている。
あくまで大学の(補助)教科書ではあるが、このような本はなかったのでいろいろと勉強になった。