松井今朝子のレビュー一覧

  • 吉原手引草
    もう文章の秀逸さとプロットには脱帽、文句のつけよう無し。吉原入門の歴史書とも言える。ただ少し残念なのは葛城の人間像がもう少し多重で感じられたらもっとよかったと思って。関係する他人の証言から人間像を炙り出す手法の最高峰は、有吉佐和子の「悪女について」だと思ってるので、どうしてもそれと比較してしまいます...続きを読む
  • 壺中の回廊

    大切なものを守るということ

    戦前、昭和が始まったばかりの話で、最初はその時代背景のせいかなかなか読み進められなかった。
    木挽座での歌舞伎の話が始まってから、俄然引き込まれました。

    多くの登場人物に犯人を特定するのが難しい、ミステリーとしてもとても楽しめました。

    歌舞伎が伝統を繋ぐ大変さや、新しい事へ挑戦することの難しさなど...続きを読む
  • 円朝の女
    落語が好きで、「塩原多助」も、「真景累ヶ淵」も、昔、『明治文学全集』で読んだことがある。
    まったく読んだことがない作家の作品だけれど、数年前からずっと気になっていた。

    円朝のおかみさんとなったお幸、円朝の子を産んだお里、ひょんなことから関わりを持った長門太夫、養女お節などの女性たちとのかかわりを通...続きを読む
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    菅原伝授手習鑑 三浦しをん 訳
    実際の出来事を後年、娯楽として楽しみながら市井の人間は、知って行ったのだなということがよく感じられる人形浄瑠璃。これが、今、私たちが普通に使う言葉に置き換えられているのだから臨場感あふれるのは当たり前。ここまで持って来てくださった役者三浦しをんさんに感謝。
  • 仲蔵狂乱
    歌舞伎好きの人にはお馴染なのだろうが、あいにくそっち方面の趣味がないので、中村仲蔵と言えば落語しか知らない。噺の中での仲蔵は、斧定九郎の役作りに悩み、ついに現代に伝わる黒羽二重に朱鞘の大小、破れ傘を傾げて血反吐を吐くというスタイルを確立して、江戸中の話題をかっさらった人物として描かれる。

    『仲蔵狂...続きを読む
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    能・狂言(岡田利規)
    説教節(伊藤比呂美)
    曽根崎心中(いとうせいこう)
    女殺油地獄(桜庭一樹)
    菅原伝授手習鑑(三浦しをん)
    義経千本桜(いしいしんじ)
    仮名手本忠臣蔵(松井今朝子)
    月報:酒井順子・後藤正文
  • 仲蔵狂乱
    中村仲蔵の波乱万丈の人生。
    芝居に、踊りに生きた人生。
    挫折しそうになっても、「芸があの子を見捨てない」の言葉通り、叩き込まれた芸が仲蔵を助けてくれる。
    七両役者から千両役者へのサクセスストーリーなわけだけれども、一心に芸を求めた男の物語、人の一生の儚さとか脆さとかも含めて、最後は無常観に尽きた。
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    タイトルは知っているものの
    中身は案外知らない
    有名、名作、古典がズラリとそろった
    分厚い一冊。

    読めるのかな?
    と、少し心配しながら手にとったところ
    これがさすがに、現代作家にかかると
    すいすいと読めてしまう。
    ストーリー展開のおもしろさに
    「こんな話だったの?」と驚かされたり。

    物語に、古い...続きを読む
  • 壺中の回廊
    関東大震災の影響が残り、世界恐慌に労働争議という昭和5年の社会情勢。いつの世でも世の中を映す歌舞伎の世界。
    そんな社会情勢の影響を受け、歌舞伎のバックステージで起きた殺人事件。
    事件の決着の付け方は、歌舞伎の台本の様にも思える。
  • 吉原手引草
    読んでいる間廓言葉やら越後弁やらと脳内再生が止まらず、サクサク読めた。
    消えた葛城の謎を追え!に対するイケメンの情報収集力が素晴らしい。しかし、みんなペラペラ話し過ぎだよ!
    着地点にそこまでの驚きはなかったけれど、小出しの情報は先が気になる撒き方で面白かった。
  • 幕末あどれさん
    旗本の次男坊、宗八郎は武士に嫌気がさして狂言作者の道に入り、どうしようもない兄を持つ源之助は幼なじみの許嫁を待たせつつ創設されたばかりの陸軍に志願する。時代に翻弄された、あどれさん(フランス語で若者の意)を描く。

    読み始めたら止まらない。江戸から明治にかけて、刻々と変わっていく江戸と日本と市井の人...続きを読む
  • 吉原手引草
    消えた花魁の謎を追いながら、吉原の光と影をもつまびらいてゆく。
    巧い。流石。
    松井今朝子氏、廓好きの私には鉄板。
  • 吉原手引草
    登場人物の聞き取り形式の構成に最初は苦手意識があったが、慣れるほどに引き込まれた。吉原のルール、内情なども知ることができてなかなか良かった。
  • 吉原手引草
    嘘で塗り固められた男の夢と欲望の世界。
    その中で生きてゆく女の辛さ、切なさを様々な角度から巧みにサラッと描かれていた。
    花魁だけではなく、芸者や船頭まで、吉原全体を見渡せて、面白かった。
    葛城の視点ではなく、その周縁の話しを綴ることで、より葛城が神聖化されているのもまた巧い。
  • 師父の遺言
    松井今朝子さんの作品は直木賞を受賞した「吉原手引草」を読んだことがあるだけだ。ミステリーめいて非常に面白い作品だったけれど時代小説が苦手なせいでなかなか手がのびす。

    ところが先日読んだ「直木賞受賞エッセイ集成」で彼女の生い立ちやら小説を書くようになったきっかけに興味を持ったのと、あの直木賞受賞のエ...続きを読む
  • 師父の遺言
    「歌舞伎」の物語を
    たっぷり 楽しませてもらっている
    松井今朝子さん

    なるほど
    書かれるべくして
    書かれた ものがたりたち なのだ
    と 改めて
    「腑に落ちた」気がします

    作家の生い立ちというものは
    否応なく
    その作品世界に反映してしまう

    むろん
    その 作品が生まれるまでの過程の中に
    言いしれぬ...続きを読む
  • 師父の遺言
    松井今朝子の本には、個人的に、ものすごく引き込まれる作品と「いや、これはどうか・・・?」と思う作品が混在している印象がある。
    前回読んだ『壺中の回廊』は、1つの作品にすばらしいところと今ひとつに思われるところがあり、全体にバランスが悪いと感じた。背景となっている歌舞伎界の描写は傑出しているのに、ミス...続きを読む
  • 吉原十二月
    内容(「BOOK」データベースより)
    大籬・舞鶴屋に売られてきた、容貌も気性もまったく違う、ふたりの少女。幼い頃から互いを意識し、妓楼を二分するほど激しく競り合いながら成長していく。多くの者が病に斃れ、あるいは自害、心中する廓。生きて出ることさえ難しいと言われる苦界で大輪の花を咲かせ、幸せを掴むのは...続きを読む
  • 道絶えずば、また
    「非道、行ずべからず」(時代設定 1809年)の5年後、萩野沢之丞がなくなったところから始まる。今度は歌舞伎にお寺を絡めたミステリー。

    沢之丞という偉大な親を亡くした、市之介と宇源次の心情の揺らぎが丁寧に描かれ、沢之丞の跡目相続など、前の2巻での人・出来事が絡み、風姿花伝3部作の締めくくりの巻らし...続きを読む
  • 家、家にあらず
    大名奥御殿が主な舞台の犯人捜しミステリー
    「非道、行ずべからず」(1809年)から遡ること35年、萩野沢之丞はまだ若く、笹岡平左衛門は未だ14歳、父親の笹岡伊織が同心として働いている頃の話

    「非道、行ずべからず」の中で、沢之丞が、以前同心の手伝いをしたことがある、と言っていた事件が描かれている。
    ...続きを読む