松井今朝子のレビュー一覧

  • 料理通異聞
    江戸時代後期、お寺の御斎の精進料理がメインの福田屋の倅善四郎が、店を将軍家斉が御成をするほどの名料理屋「八百善」へと発展させる物語。
    出てくる料理やその素材の描写も美味しそうだが、善四郎自身も卓越した料理人でもあり、客はその時代の文人墨客が名を連ね、その時代の文化を堪能することができたと思う。
    一杯...続きを読む
  • 吉原手引草
    前にもこんな構成の本読んだんだけど思い出せない。登場人物がすべて読者=主人公に語り掛けてくるような感じで主人公のセリフをすべて対面の登場人物が
    「え?あんたはそんな風ににみえないよ、だって?言ってくれるじゃねーか!」
    みたいな感じでそれが自然な流れなので違和感がなくテンポよく読める。また、タイトルに...続きを読む
  • 吉原手引草
    松井今朝子による、第137回直木賞受賞作。

    十年に一度、五丁目一と謳われた、吉原・舞鶴屋の花魁、葛城。
    全盛を誇り、また身請けも間近だった葛城が、ある日、忽然と姿を消した。
    いったい何が起きたのか。

    物語は葛城を取り巻く幾人もの証言からなる。
    引手茶屋の内儀、舞鶴屋の見世番、番頭、番頭新造、葛城...続きを読む
  • 愚者の階梯
    松井さんの昭和初期歌舞伎座3部作の最新の1冊。歌舞伎「勧進帳」のセリフにケチをつけた国粋主義者の言動がきっかけで、老舗の劇場で不幸な事件が起こる。さらに、明確な意図のないまま、第二第三の事件が起こる。タイトルにある愚者の階梯は、ちょっとしたことで悪に手を染めたものが、どんどん深みにハマる状況をよく描...続きを読む
  • 愚者の階梯
    昭和10年の頃の出来事、第ニ次世界大戦前の日本はこんな時代だったろう。映画は無声からトーキーへ関東大震災があり、特高がバッコし住みにくい時代だった。殺人事件を追う刑事と歌舞伎役者、そしてかけだしの映画俳優の絡むミステリーだった。
  • 愚者の階梯
    散りばめられた謎に引き込まれ、読むのを止められず。
    作品の時代の空気が、現代と重なる部分が多く見られ、恐ろしくも興味深かった。
    作中、いくつもの階梯を見た。感じた。
    とりわけ心に残ったのは、内在する光源によって照らされた階梯。
    それを昇るべきか否かを見極める力、勇気が、真に生きるためにいかに大切か。...続きを読む
  • 吉原手引草
    物凄い面白かった

    数年に一度レベルの本!

    大好きだった

    主役は全く出てこず

    周りの登場人物から 本当に少しずつ少しずつ輪郭が浮かび上がっていく様は見事で

    楽しく楽しくて一気に読んでしまった

    もともと 吉原ネタが大好きだが
    男女の性や業みたいなものまで
    とにかく豊かに彩られ

    素晴らしかっ...続きを読む
  • 吉原手引草
    失踪した花魁・葛城のことを、吉原の内外で尋ね歩く男を通して、葛城というミステリアスで気高い女性の半生が語られる。と同時に、失踪事件の影に隠されたもう一つの物語が徐々に浮かび上がってくるという仕掛け。
    読み終わってみたら、人情ものだったな~としみじみ感動した。
    遊郭の仕組みも分かりやすく説明されており...続きを読む
  • 吉原手引草
    語り手が章ごとに変わっていく語り口です。
    語り手ごとに多様な面を見せる花魁。
    語り手ごとに、同じ事象に対しても見方が異なっていたり。

    何が嘘で何が真実なのか、誰が真実を知っているのかいないのか、読むたびに楽しめそうです。
    最後は楼主ではないですが、天晴れと言いたくなりました。
    一つの志のために10...続きを読む
  • 師父の遺言
    歌舞伎の注釈も多く、歌舞伎の知識のない
    自分にも読めるだろうか?
    と、思ったものの、一気読み。

    松井今朝子さんの幼少期から、今に至る
    生き方、運命、巡り合わせ。
    どれも、普通の人には味わえないもので
    一つ間違えば、またガラリと違う人生
    それもまた、普通の人にはないようなものが
    待ち受けたいただろう...続きを読む
  • 吉原手引草
    Audibleで。ちょっとびっくりしたおもしろさ。

    吉原の人々に話を聞いて回りながら、かつらぎ花魁の事件の真相に迫っていくという体裁。事件の解決させるミステリーもおもしろかったが、吉原の風習や江戸の人々の考え、カルチャーなどが差し込まれるところが、二度おいしい感じ。
    かつらぎ花魁のあっぱれな生きざ...続きを読む
  • 吉原手引草
    吉原の売れっ子花魁が企てた復讐劇。終盤までは吉原の内情が描写され、何が起こったのかは分からない。終盤に怒涛の展開、面白かった。葛城は復讐のために花魁になったのだろうか?
  • 吉原手引草
    落語でよく聞く言葉が字で書いてあり、うんちくものになっていた。

    ミステリとしての欠点、語り口の変わり映えのなさを指摘する意見もあるみたいだけど、楽しく読めた。

    新聞小説で筆者を知り、まずは賞を取ったものだから面白いだろうと手にした。別のも読んでみたい。

    映画化されたら誰が葛城になれるだろうかと...続きを読む
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    純粋に面白く読めました。
    説教節、曽根崎心中、女殺油地獄、菅原伝授手習鑑、
    義経千本桜、仮名手本忠臣蔵
    それぞれ有名な作品ですが、しっかり読んだことが
    今までなかったのですが
    現代語訳で非常に読みやすく一気に面白く読めました。
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    能も狂言も人形浄瑠璃も見たことないので、
    実際にどのような”動き”をするのかは全く想像するしかないのですが。

    後書きでは「舞台での人形は本当に死ぬ。首が飛ぶ、崖から落ちればそのまま動かなくなる」とありそれを想像しながら読むと心に迫ります。

    【「能・狂言」新訳:岡田利規】
     能「松風」
    磯に立つ一...続きを読む
  • そろそろ旅に
    奥付は2011年3月15日第1刷。この頃読んだ本(何かは失念!)に触発されて江戸の紀行に関連する本を数冊購入したうちの一冊。変な先入観が無かった分、十返舎一九の伝記的小説ということも意識になかったため、読む驚きがあった。山東京伝、馬琴、写楽、豊国、北斎等々、教科書に出てくる有名人が同時代にいた凄さ。...続きを読む
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵
    どれも訳が素晴らしく、非常に楽しめた。特に能・狂言では現代的な表現がちりばめられていて、思わず笑わずにはいられなかった。
    作品の中では説教節の「かるかや」。説教節といえば「小栗判官」や「山椒大夫」を想起するけれど、かるかやもこれらにおとらず壮絶かつ深い内容であった。
  • 吉原十二月
     小夜衣と胡蝶の成長日記を12か月になぞらえて その時の吉原の行事や風習を紹介してくれる。 話手は廓の主
     吉原物って 親に売られて苦界と呼ばれる廓のなかで 外に出ることも許されず 身請けされるか年季が明けるその日を待ちわびるという かなり暗い話になりがちだけど この本は小夜衣と胡蝶のちいさないざこ...続きを読む
  • 仲蔵狂乱
    旦那が買ってきた本。何となしに手に取ったら面白くて一気読み。歌舞伎の世界。中村仲蔵。

    私は彼の名前も知らなかったようなずぶの素人だけど、そんな私でも入り込める歌舞伎の世界の面白さと読ませる仲蔵の人生ストーリー。

    松井今朝子さんの作品他にも読んでみたくなった。

    読みながら昔習った日本史をチラチラ...続きを読む
  • 吉原手引草
    これは、直木賞とかそういう付加価値を抜きにしても、十分に楽しめる作品だった。やっぱり自分は、こういう色んな視線からひとつの事件を見た、的なストーリーテリングが好きだな、という思いを新たにした次第。中心となる花魁や、主人公たる聞き手が、実際には物語中に登場せず、周りの評判などからその姿を浮かび上がらせ...続きを読む