松井今朝子のレビュー一覧
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匿名
購入済み落語好きなら読む価値あり
たまたまBookLiveのアプリで値下がりした本の紹介で出会った本。
小学生の時、親父に連れられていった上野鈴本演芸場で見た三遊亭円楽の落語【中村仲蔵】。粋でかっこいい噺だなと子供心に思った記憶がよみがえり、今回読んでみた。著者の松井今朝子も初めて知った作家。
いや、実に面白い!ぐいぐい仲蔵の話に引き込まれてしまった。あぁ、落語に出てくる仲蔵はこんな人生を送った役者だったのか。当時の芝居小屋を取り巻く環境や人々の生活、千両役者の由来など興味深いものばかり。NHKの「べらぼう」の時代と重なり、浅間山の噴火や米騒動、仲蔵に関係する人物として田沼意次、松平定信、田沼に仕える三浦や土山、現代でも有名な歌舞伎役者の名前も出てくるので、なおさら感情移入できた。
出会えてよかった小説のひとつになった。
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Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
木挽町の仇討ちを読んでこの本を思い出し、数年前に聞いたのを再度。(木挽町よりかなり好き。)初回も驚いたけれど、全貌がわかってから聴き直すと、いろんなことの裏がとれてさらに感動、感心。
映像化したらヒット確実と思うけど、されていないのは、映像化すると勝手にストーリーを変えられたりするから、松井氏がOK出さないのかなと思った。
外見や頭の良さはもちろん、ちょっとやそっとの努力ではトップになれない世界で、お職に登りつめ、思いを果たした彼女の執念に圧倒される。
最後のタネ明かしも秀逸。是非映像化してほしい。葛城は柴咲コウの若い時のイメージが浮かんでました。今なら誰だろう。。 -
ネタバレ 購入済み
江戸時代後期、お寺の御斎の精進料理がメインの福田屋の倅善四郎が、店を将軍家斉が御成をするほどの名料理屋「八百善」へと発展させる物語。
出てくる料理やその素材の描写も美味しそうだが、善四郎自身も卓越した料理人でもあり、客はその時代の文人墨客が名を連ね、その時代の文化を堪能することができたと思う。
一杯一両二分で有名なお茶漬けの逸話も出てくる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前にもこんな構成の本読んだんだけど思い出せない。登場人物がすべて読者=主人公に語り掛けてくるような感じで主人公のセリフをすべて対面の登場人物が
「え?あんたはそんな風ににみえないよ、だって?言ってくれるじゃねーか!」
みたいな感じでそれが自然な流れなので違和感がなくテンポよく読める。また、タイトルにも手引と書かれているように全く吉原を知らない人間がこの本を読めば通風を気取れるくらいに詳しくなれる。つい、ああ、ちょっと行ってくるかってなる。もちろん花魁相手にするような甲斐性はない笑
吉原に関する役職が順に登場し、その会話の流れから失踪した名うての花魁の失踪事件の核が見えてくる。またここにも時代小説特有の人情物語が漂い、やがてようやく主人公の正体も明らかになり失踪に隠れたこの物語の全体が見渡せる。ああ、角も武士の血とは....と唸らせる顛末に吉原花魁遊びをウフフと思っていたのを反省させられた笑 -
Posted by ブクログ
松井今朝子による、第137回直木賞受賞作。
十年に一度、五丁目一と謳われた、吉原・舞鶴屋の花魁、葛城。
全盛を誇り、また身請けも間近だった葛城が、ある日、忽然と姿を消した。
いったい何が起きたのか。
物語は葛城を取り巻く幾人もの証言からなる。
引手茶屋の内儀、舞鶴屋の見世番、番頭、番頭新造、葛城と枕を交わした男たち、遣手、舞鶴屋の主人、床廻し、幇間、女芸者、船頭、女衒、葛城を身請けするはずだった男、葛城の上得意。
彼らは葛城の思い出とともに、自らがなぜ廓にいて、どのような役割を果たしているのかも語る。耳慣れぬ仕事もあるが、無理なくその内実がわかる。同時に、異なる視点から映し出された廓が立体的に立ち上がるという巧みな構成である。
読み手は廓というある種の異世界の奥へと自然に誘われる。もちろん、葛城の謎の奥底へも。
葛城は不思議な花魁である。
廓に来たのは13、4のころで、花魁になるために仕込むには年を取り過ぎていた。そこから誰もが驚くような稼ぎ頭になった。
容貌は美しく、怜悧で床あしらいもうまい。頑固で子供のように負けず嫌いな一面も見せれば、相手の懐にすっと入り込み、心を捉えてしまう人たらしな面もある。
だが、それだけではない。葛城の心の奥には、底知れぬ「闇」がある。
その闇に、あるいは人は魅入られてしまうのかもしれない。
聞き手はさまざまな語り手の元を回る。次第に事件の全貌が見えてくる。
あれやこれやと聞き回っていた聞き手とは誰だったのか。
証言者が最後に見た葛城の表情に息をのむ。
消えた葛城の後ろ姿が、物語の余韻とともに鮮やかに脳裏に焼き付けられる。
*『木挽町のあだ討ち』を読んでいて思い出しました。
複数の人物が、ある人物について語る。その人物はある事件のかなめであり、謎を抱えている。多くの人々の証言が、その人物の人となりとともに、芝居小屋なり廓なりといった小さな社会を多面的に描き出す。さらには意表を突く背後の真相。・・・といった点で、構造としてはよく似た2作だと思います。
『吉原手引草』は昔読んでおもしろかった覚えはあったのですが、レビューを書いていませんでした。よい機会なので読み直してみました。 -
Posted by ブクログ
能も狂言も人形浄瑠璃も見たことないので、
実際にどのような”動き”をするのかは全く想像するしかないのですが。
後書きでは「舞台での人形は本当に死ぬ。首が飛ぶ、崖から落ちればそのまま動かなくなる」とありそれを想像しながら読むと心に迫ります。
【「能・狂言」新訳:岡田利規】
能「松風」
磯に立つ一本の松の木。
行平中納言の一時の寵愛を受けた二人の女の情念。
能「卒塔婆小町」
若き日は美しかった。
その昔戯れに扱った男の怨念が憑り付いて、
いまでは卑しく年を取った。
能「邯鄲」
”邯鄲の夢”の能舞台化。
狂言「金津(かなづ)」
「はい、こうして登場したのが誰かと言いますと、金津というところに住んでいる人です」
新築したお堂に置くための地蔵を求める金津の住人と、
詐欺師”すっぱ”の悪巧み。
”すっぱ”の子をお地蔵様として金津に送り込んだ!
狂言「木六駄(きろくだ)」
伯父へのお使い品を使い込んでしまった太郎。
さあどうやって誤魔化す?!
狂言「月見座頭」
座頭と男は気が合って楽しい時間を過ごすが、
男には相手が盲目と言うことで意地悪心が湧き上がり…。
【「説経節」新訳:伊藤比呂美】
語り物「かるかや」
刈萱(かるかや)の総領、加藤左衛門重氏は、花見の最中に浮世を離れることを決意し、妻と幼い子供たちを残して出家する。
父を恋う子供たちは、長じて父を探しに出る。
すれ違う親子。
しかし僧門に入った重氏は、現世への思いを断ち切る。
立ち去る父の哀れ、追えない子らの哀れ、待つ身の妻の哀れ。
【人形浄瑠璃 近松門左衛門「曽根崎心中」新訳:いとうせいこう】
天満屋の遊女お初と将来を誓い合った平野屋の手代徳兵衛は、
金銭詐欺にひっかかり身動きが取れなくなってしまう。
弁明は聞かれず、無実にして死罪は免れなかろう。
お初と徳兵衛はあの世への道行を進む…。
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最後の道行の文章が美しく美しく。
これは近松門左衛門がすごいのか、
いとうせいこうがすごいのか。
舞台で見たらさぞかし胸に迫るだろう。
【人情浄瑠璃 近松門左衛門「女殺油地獄」新訳:いとうせいこう】
油や河内屋の次男与兵衛は、生来の遊興癖、怠け癖とズル賢い気質から借金を重ねる。
向いの小さな油問屋豊島屋(てしまや)の嫁のお吉は娘三人を育てる気風のいい女。
良からぬたくらみを持った与兵衛は、豊島屋へと忍び入る…
***
動きのある文章でテンポよく話も進み、
お吉の明るさで弾みもつき、
そんななかで何も考えないかのごとく
与兵衛の行動がひたすら深みに堕ちていく様相が
不穏さを見せ続ける。
激しくしかし密かな家族の愛、
クライマックス”油殺し”惨劇の迫力、
そして殺人が露見するミステリー要素…
これは確かに見事な脚本。
【「菅原伝授手習鑑」新訳:三浦しをん】
梅は飛び 桜は枯るる世の中に 何とて松のつれなかるらん
菅原道真の領地の四郎九郎の三つ子、梅王丸、松王丸、桜丸は、
それぞれ菅原道真、藤原時平、斎世の宮の牛車番。
斎世の宮は道真の娘刈屋姫と駆け落ちし、
時平は道真の筆法伝授を巡り道真を失脚させる。
主人たちの関係が変わった三つ子たちは、それぞれの主人に従うこと気持ちを示す。
梅王丸は道真の流罪先を訪ね、桜丸は自害する。
道真への忠誠を指した梅と桜に対し、あくまでも彼らを追及する松。
しかし松王丸は、誰よりも苛烈な方法で道真への忠誠を示していた。
これらの話がのちの世まで知られているのは、天神さまとなられた菅丞相の御恵みであろう。
…という、シリアスな話を「少年少女名作文学集」かなんかで読んだのですが、いざ全体版を読んでみたら、以外に軽妙だったりユーモラスだったり色艶っぽかったりという場面も多かった。
悪役時平公が、牛車で大立ち回りを演じる場面などさぞかし迫力であろう。きっと人形の首がクルッとかわって怒髪天を抜くかのような顔面に変わり…などなど頭に浮かんできます。緊迫場面、ゆったりした場面、人間心理の妙、じつにバランスが取れています。
【人形浄瑠璃 ・歌舞伎 「義経千本桜」新訳:いしいしんじ】
壇ノ浦にて平家を滅ぼした義経だが、兄の頼朝に追われることになる。
義経の正室卿の君の犠牲、暴れる武蔵弁慶、義経を慕う静御前、そして忠臣の佐藤忠信。
捕る者逃げる者らの思惑を経て、義経一行は北上する。
海の上で義経以降は、壇ノ浦に沈んだはずの平知盛の襲撃に逢う。
知盛は壇ノ浦を逃げ延び、安徳天皇を擁し再起を図っていた。
宿敵との戦いは、共通の目的を持ち…
清盛の直径でありながら、平一門からはぐれた平維盛は、 正室若葉の内侍はわが子六代との再会を目指し、身を潜めていた。
そしてやはり壇ノ浦から逃れた平教経との邂逅…
後白河法皇から賜った鼓に情を寄せる狐の思慕、
男女、親子、そして主従の情景が絡み合い…
…ということで、「●●は生きていた!」「▲▲は実は※※だった!」などなど、想像を広げまくって自由闊達に書かれた脚本でした。
【人形浄瑠璃・歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」新訳:松井今朝子】
「江戸時代の赤穂事件を足利尊氏の執権高師直に置き換えて上演」ということは聞いていましたが、高師直相手に仇討なんてしたらさすがに歴史を変えすぎないか…?と思っていたのですが…いやあ、筆は強かった、史実なんてかっ飛ばして仇討しちゃいましたよ(笑)
高師直は、塩谷判官の妻”顔世”に恋慕するが、袖にされた恨みを判官にぶつける。
塩谷判官は高師直に切り付け、切腹と家の取り潰しを申し付けられる。
塩谷判官の家老大星由良助は、遊びに興じる振りをして仇討の機会を探る。
由良助の嫡子力弥は、判官の同僚桃井若狭守の加古川本蔵の娘小浪と婚約していたが…
…えーっと、高師直を討ち取ってしまいましたが、今後の歴史をどうするつもりなんだ(笑)。人がエンターテイメントを求める気持ちは史実を超越する(笑)