松井今朝子のレビュー一覧
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京都は南座近くの老舗料亭の家に生まれた今朝子さん。恵まれた環境で大切に育てられたのかと思いきや、幼い頃から住処を転々とし、両親と離れて暮らす時期もあるなど、子供ながらに気苦労の多い生活を送っていた。そのせいか、とことん頑固で人に左右されない、腹の据わった子供だった。大学進学で上京し、学生運動の真っ盛りだった大学生活の話は、学生運動を知らない世代にとってはとても貴重。著者が師と仰ぐ武智鉄二は、一筋縄ではいかない変わり者だが、歌舞伎の脚本を書かせたらピカイチという天才肌の人。著者はその師に振り回されながらも、いくつもの大役をやってのける。最後まで師に弟子として仕える著者だが、その奥底には表に出さな
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ネタバレ江戸末期から明治まで、近代落語の祖と言われた大名人、三遊亭円朝と関わりの深かった女性たちを、身近にいた五厘の目線で噺家の語り口で綴る。
面白かった〜。
落語のことはほとんど知らないのですが、
噺家の生活、江戸時代においては身分などもなかったこと、
吉原のこと、明治になってからの戦争のこと、
鮮やかに情景が目に浮かぶほど細やかな描写で、
それでいて噺家の語り口なので飽きずに楽しく読めました。
円朝を愛した女たち、吉原の花魁、芸者、旗本の娘、など、
複雑な心情を側で見ていた語り手の優しさがいい。
円朝の本心はわからないけれど、語り手が円朝の表情を
話すだけで、その空気感が伝わってくる。
絶頂 -
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おもしろい。
インタビュー形式っていうのが面白い。インタビュアーの人のセリフは全然なくて、相手のセリフのみで形成されているんだけど、違和感は全くない。遊郭の専門的なことも、セリフの中ですんなりと説明できていて、難しくないしスラスラと読める。中で働いている人はもちろん、遊郭へ通っていた人や、関わっている人…など、いろんな視点での遊郭を感じれて新鮮だった。
行方不明の花魁自身も出てきたらもっとよかったのになぁ。それと、事件の真相は分かるものの、彼女がどこへ行ったのか語られていないのが、腑に落ちなかった。
でも、とっても面白いので迷っている方はぜひ。 -
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「十返舎一九」といえば「東海道中膝栗毛」。
恥ずかしながら、これまで単なる知識としての名前しか知らなかった。
「弥次さん」「喜多さん」に至るまでの、人として、男として、
そして、作家としての苦悩が、ていねいに描かれていて、
読後、ずっしりとした感動に満たされる・・・。
当時の歴史についても、くわしく描かれていて、
そうした背景を知ることも楽しみを増幅させてくれた。
主人公・一九さんが、
どうしても旅に出たくなってしまう心・・・
ひとところにとどまっていられない心・・・
強く共感して、一層、読後哀しみが深くなり、
感動も心の奥底に沈み、読後まだまだ、ひろがり続けている・・・。 -
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近松門左衛門の生涯を描く時代小説。江戸時代は歌舞伎や浄瑠璃がこれほど身近にあったのか、と驚き、また、羨ましかった。
杉浦信盛(後の近松)は浄瑠璃の発展とともに自身でも驚くような速さで売れっ子になっていく。それは、若い頃から古典文学や歴史への造詣が深く、また、考え方が柔軟で、切り替えが早い、ポジティブシンキングの人だった事が大きいように思った。
この作者はまるで近松が目の前にいるかのように生き生きと描いていて、読んでいて楽しかった。火事になればあっという間にすべて焼けてしまう江戸時代。何度も大火に遭うが、簡単に建てられる芝居小屋はしぶとくすばやく再開するところも、あの時代の人々のバイタリティの表 -
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吉原一の花魁・葛城が失踪した。
その謎を探るため、ある男が関係者に聞き取りを行う。
引手茶屋の女将、店の男衆から馴染みの客まで、さまざまな者から事情を聞く男。
どうやら葛城の失踪には彼女の過去が絡んでいるらしい。
葛城が失踪したその日、何があったのか、核心に迫る男が聞かされた真相とは。
そして、謎の男の正体は…。
失踪事件の謎を追いながら、吉原のすがたを鮮やかに描き出した、時代ミステリーの傑作。
選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作。
「吉原手引草」というタイトルどおり、吉原の裏の裏までが詳細に書かれていて面白かった。
ただ、聞き慣れない言葉が多く出てくるので、その都度調べながら読み進めた