松井今朝子のレビュー一覧

  • 師父の遺言

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    京都は南座近くの老舗料亭の家に生まれた今朝子さん。恵まれた環境で大切に育てられたのかと思いきや、幼い頃から住処を転々とし、両親と離れて暮らす時期もあるなど、子供ながらに気苦労の多い生活を送っていた。そのせいか、とことん頑固で人に左右されない、腹の据わった子供だった。大学進学で上京し、学生運動の真っ盛りだった大学生活の話は、学生運動を知らない世代にとってはとても貴重。著者が師と仰ぐ武智鉄二は、一筋縄ではいかない変わり者だが、歌舞伎の脚本を書かせたらピカイチという天才肌の人。著者はその師に振り回されながらも、いくつもの大役をやってのける。最後まで師に弟子として仕える著者だが、その奥底には表に出さな

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    2014年12月17日
  • 吉原十二月

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    まさに「千花繚乱~大江戸草子~」のイメージ!

    作者の今井今朝子さんのお名前は大学時代の日文の授業でお聞きしました。

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    2014年06月29日
  • 仲蔵狂乱

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    久々に手応えのある面白い作品を読んだ。
    登場人物が活き活きと描かれていて、ぐいぐい惹きこまれました。

    ラストの三浦氏との場面に思わず涙が出そうになりました。
    こんな絆を持てる誰かと巡り合えたら、人生で悔いなど残らないでしょう。
    何回もグッとくる場面があってとてもドラマチックな作品で
    これを読んで、歌舞伎を生で観たくなりました。

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    2013年09月06日
  • 円朝の女

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    ネタバレ

    江戸末期から明治まで、近代落語の祖と言われた大名人、三遊亭円朝と関わりの深かった女性たちを、身近にいた五厘の目線で噺家の語り口で綴る。

    面白かった〜。

    落語のことはほとんど知らないのですが、
    噺家の生活、江戸時代においては身分などもなかったこと、
    吉原のこと、明治になってからの戦争のこと、
    鮮やかに情景が目に浮かぶほど細やかな描写で、
    それでいて噺家の語り口なので飽きずに楽しく読めました。
    円朝を愛した女たち、吉原の花魁、芸者、旗本の娘、など、
    複雑な心情を側で見ていた語り手の優しさがいい。
    円朝の本心はわからないけれど、語り手が円朝の表情を
    話すだけで、その空気感が伝わってくる。

    絶頂

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    2014年09月27日
  • 仲蔵狂乱

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    初代中村仲蔵の一生。
    歌舞伎に全く興味がなかったけれどぐいぐいと引き込まれました。
    ダジャレのような名前の方ですが、忠臣蔵の新しい5段目の演技や血糊等歌舞伎界の技術革新を起こしたすごい方なのです。
    落語の題材にもなっているのでそちらもぜひともお聞きくださいな。

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    2012年09月24日
  • 吉原手引草

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    おもしろい。
    インタビュー形式っていうのが面白い。インタビュアーの人のセリフは全然なくて、相手のセリフのみで形成されているんだけど、違和感は全くない。遊郭の専門的なことも、セリフの中ですんなりと説明できていて、難しくないしスラスラと読める。中で働いている人はもちろん、遊郭へ通っていた人や、関わっている人…など、いろんな視点での遊郭を感じれて新鮮だった。
    行方不明の花魁自身も出てきたらもっとよかったのになぁ。それと、事件の真相は分かるものの、彼女がどこへ行ったのか語られていないのが、腑に落ちなかった。
    でも、とっても面白いので迷っている方はぜひ。

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    2020年01月23日
  • 家、家にあらず

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    ネタバレ

    集英社文庫のナツイチ、2008夏の一冊に選ばれていました。
    集英社のWEBには、BOOKNAVI 書籍試し読みのサイトがあり、
    見出しの1ページ程度の本文が掲載されています。
    神田川を17歳の瑞江が通っていく。
    弟の平左衛門は家に残っている。
    そんな出だしが分かる。
    家ではないものはなんだろう。

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    2011年12月23日
  • 仲蔵狂乱

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     10年くらい前の正月、初めて歌舞伎を見ました。その時の演目が『義経千本桜』。このなかの見せ場が「碇知盛」で、壇ノ浦で最後を悟った平知盛が碇をかついで海に飛び込むシーン。
     『仲蔵狂乱』の中には、このシーンの誕生の逸話が描かれています。これを読んで、この場面みたい!と思ったのがきっかけでした。
     歌舞伎の世界の事細かなところまで、詳細に書かれていて、どっぷり浸れます。どろどろとしていて、人間臭いところがリアルでいいです。
     歌舞伎に行く前に解説本を読むより、これを一冊読んだほうが、よっぽど感応できます。


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    2017年08月15日
  • 吉原手引草

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     吉原一の花魁が惹き起こしたある事件を、戯作者が関係者に聞きまわり、次第に真相が明らかになっていくという話です。

     手引草という題名からもわかるとおり、読み進むうちに吉原と言う特異で絢爛な世界が徐々に浮かびあがり、そこに暮らす人々の営みが手に取るようにわかるようになります。

     時代ミステリーとしても絶品で、直木賞にふさわしい作品です。

     時代的に男性上位社会の中で、鮮やかに世の男の鼻を明かしたラストは、女性読者には爽快なのではないでしょうか。

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    2017年08月15日
  • 仲蔵狂乱

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    二代目役者ではもなく、まさに腕一本で、千両役者に駆け上っていく仲蔵の人生、そこにある芸の道に生きる孤独・・・。
    調べぬかれた時代考証のもとに、人物像の強さとはかなさが際立つ。
    ときに人の情けにぐっときたり、芸の道の情け容赦ない仕打ちに
    胸をつかれたり・・・。
    心があちらこちらと揺さぶられただけに、ラストシーンの美しさに
    胸うたれる・・・。
    美しい人、仲蔵の姿がまるで観たかのように心から離れない。

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    2011年05月23日
  • そろそろ旅に

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    「十返舎一九」といえば「東海道中膝栗毛」。
    恥ずかしながら、これまで単なる知識としての名前しか知らなかった。
    「弥次さん」「喜多さん」に至るまでの、人として、男として、
    そして、作家としての苦悩が、ていねいに描かれていて、
    読後、ずっしりとした感動に満たされる・・・。
    当時の歴史についても、くわしく描かれていて、
    そうした背景を知ることも楽しみを増幅させてくれた。
    主人公・一九さんが、
    どうしても旅に出たくなってしまう心・・・
    ひとところにとどまっていられない心・・・
    強く共感して、一層、読後哀しみが深くなり、
    感動も心の奥底に沈み、読後まだまだ、ひろがり続けている・・・。

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    2011年05月03日
  • 非道、行ずべからず

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    先日読んだ「道絶えずば、また 」の前(々?)作です。
    歌舞伎の世界を舞台に、謎や、人の業がうずまく、読み応えありのミステリに仕上がっています。
    松井さんの作品はキャラが薄いのが惜しかったのですが、本書は登場人物のキャラクターもしっかりしていて、良かったです。
    やはり、こちらを先に読んでおくべきでした~。

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    2009年10月29日
  • 似せ者

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    いずれも芸人がらみの短編集。心残してだけ、幕末の武士がらみ。

    似せ者(にせもん) 
    狛犬
    鶴亀
    心残して

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    2009年10月04日
  • 家、家にあらず

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    家、家にあらず。継ぐをもて家とす。人、人にあらず。知るをもて人とす 「風姿花伝」
    この前書きだけで「この本あたり!」と思ったけど、まさかそういう展開とは。

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    2009年10月04日
  • 仲蔵狂乱

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    2/12 日曜の夜に読み始めてはいけない本でした。イッキ読み。なぜ今朝子さんの人物造形はこんなにも深いのだろう。仲蔵がひどい目に遭うたび「ガンバレ」と応援しながら読んでいた。それぞれの人物との生涯通じての関わり方に感じるところがあった。一生を一冊でうまくまとめていたところもすばらしい。

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    2009年10月04日
  • 奴の小万と呼ばれた女

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    11/9 今から何百年前の人でも悩みはさして変わらないなー、と。そのなかでこんだけアッパレな結末を自分で導いたのには感服。いつもちょっと私の予想を裏切る、(というか予想を挟む余地なく読ませる)松井今朝子の作品にはまっている。

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    2009年10月04日
  • 非道、行ずべからず

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    10/13 今まで読んだことのない感覚だった。時代物なのに現代っぽいリアルさが不思議。骨組みがしっかり。あと「非道」に対する考察の貫かれ方。

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    2009年10月04日
  • 仲蔵狂乱

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    孤児に生まれた歌舞伎役者、中村仲蔵の一代記。舞台は安永から天明期の江戸時代で、老中田沼意次の栄枯盛衰、浅間山の噴火や一揆の多発など、幕末の動乱に続く不安定な時代。この時代にあって、最後まで「仲蔵」という名と自身の芸のみに依って歌舞伎の頂点を極め、激動の人生を送った仲蔵。複雑で不安定な社会と、それに翻弄されながらも真直ぐな人生を送った仲蔵の対比が楽しめました。

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    2009年10月04日
  • 一場の夢と消え

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    近松門左衛門の生涯を描く時代小説。江戸時代は歌舞伎や浄瑠璃がこれほど身近にあったのか、と驚き、また、羨ましかった。
    杉浦信盛(後の近松)は浄瑠璃の発展とともに自身でも驚くような速さで売れっ子になっていく。それは、若い頃から古典文学や歴史への造詣が深く、また、考え方が柔軟で、切り替えが早い、ポジティブシンキングの人だった事が大きいように思った。
    この作者はまるで近松が目の前にいるかのように生き生きと描いていて、読んでいて楽しかった。火事になればあっという間にすべて焼けてしまう江戸時代。何度も大火に遭うが、簡単に建てられる芝居小屋はしぶとくすばやく再開するところも、あの時代の人々のバイタリティの表

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    2025年12月09日
  • 吉原手引草

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    吉原一の花魁・葛城が失踪した。
    その謎を探るため、ある男が関係者に聞き取りを行う。
    引手茶屋の女将、店の男衆から馴染みの客まで、さまざまな者から事情を聞く男。
    どうやら葛城の失踪には彼女の過去が絡んでいるらしい。
    葛城が失踪したその日、何があったのか、核心に迫る男が聞かされた真相とは。
    そして、謎の男の正体は…。
    失踪事件の謎を追いながら、吉原のすがたを鮮やかに描き出した、時代ミステリーの傑作。
    選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作。


    「吉原手引草」というタイトルどおり、吉原の裏の裏までが詳細に書かれていて面白かった。
    ただ、聞き慣れない言葉が多く出てくるので、その都度調べながら読み進めた

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    2025年10月31日