松井今朝子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
同じ行儀見習いをするのでも、部屋子なら長局にいて部屋の主に行儀作法を教わり、茶の湯や音曲や聞香といった習い事をするだけですむ。身のまわりの世話もすべて部屋方の召使いがやってくれる。部屋子とは、つまりわが子のいない御殿女中の娘分のようなもの(p32)つまりはお滝のいう二通りの道で、殿様のご寵愛を得て若君をもうけることが念願とされるいっぽうで、浦尾や真幸のように何かと忙しく立ち働く女中たちがここには大勢いた。むしろ殿様の寵愛が得られるのはごくわずかで、殿様といえど役付の女中にはお手をつけられない建前だから、たとえば表使の真幸はあれほどの美人であっても断じて殿様に肌を許すようなことはないのだという。