松井今朝子のレビュー一覧
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松井今朝子の「銀座開化おもかげ草子」シリーズの前段に当る作品。
同シリーズは2010年10月刊行の「西南の嵐」で遂に完結となってしまったのだが大好きなシリーズ。本書もそして「銀座開化おもかげ草子」シリーズも共に既に単行本では読んでいたのは記憶にあったものの再購入・再読。
読んでみると結構内容を忘れていたもので、予想以上に楽しめた作品だ。例えば、「銀座開化おもかげ草子」では口数こそ少ないもののなかなか爽やかな印象を与える宗一郎だが、デビューの舞台である本書では武士を捨てられそうで捨てられない旗本次男坊として屈折する随分とややこしい性格に描かれているのに今更ながら気が付いた。
その後の宗一郎 -
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大阪屈指の豪商の娘、長身で美人。
頭もよく、両家の娘のしてのたしなみの覚えもよく、
しかも、ひとたびことあらば、火のような情熱で
愛しい男を守るために角材を手にして大立ち回りもやってのける。
世が世なら大活躍のスーパーウーマン・・・されど
お雪が生きるのは、まだまだ女性の地位が低い江戸の昔。
やることなすこと、人々のおったまげること、この上なし!
でも、それを楽しんでいる。苦しいときも、負けてない。
胸がすかっとするような、でも、読後、なんとなく
哀しみがにじみ出てくるような・・・。
お雪が子供のころに祖母から言われた言葉
「嬉しいときは誰でも笑う。哀しいときも笑うがよい。
ほんまに嬉しいとき -
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文庫化を待っておりました。嬉しい‼
本書の前半は大阪が舞台で、「プリンセス・トヨトミ」を読み終わったばかりの自分は「大阪」らしさとはなんぞやとか思いつつ読んだりしました。
本作もさまざまな情報がてんこもりで、しかもそれが香道だったり江戸時代の出版界だったり旅であったりといちいちツボにはまるので楽しく嬉しく。
ただ、一九のことをあまりにも自分が知らなかったせいか、仕掛けがどうもピンときません。たぶん感の良い読者だったら文庫本裏表紙の紹介や書評を読んでから手に取ると、半分すぎたあたりでハハアと思うはず。ただ、それがうまく生きているのかどうか判らないんです。
人生再生の物語と読んじゃうと単純すぎ -
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時代物。
母を亡くした17歳の娘・瑞江は、遠縁の伯母が勤めている大名の砥部家に奉公に出ることになる。
父の笹岡伊織は江戸北町奉行同心。つまり八丁堀勤め。これが1年ごとの契約というか奉公とは驚きました。
おば様と呼んでいた浦尾は、表の老中に匹敵する御年寄職という大奥のトップ。威厳があり、何度か会ってはいたが親しみまではなかった。
大奥にいったん入ると出られないのが原則だが、江戸城ではないので、行儀見習いの腰掛けも多くいたという。
もちろん殿様のお手つきともなれば、出られないが。
瑞江は三の間というところに配属され、御年寄の姪にしては下といぶかられる。
下働きのお末よりは上だが、かなり下の方の勤め -
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江戸時代の歌舞伎役者、仲蔵を描いた小説。
中村仲蔵は、親を亡くして身元もはっきりしない。
どことなしに愛嬌のある子だったのは知らない大人に養って貰うほかなかったためもあった。養母に踊りを仕込まれ、厳しい下積みに耐え、出世しようとしかけるとねたまれて辛酸をなめる。
それもいつしか演技のすごみに繋がり…
定九郎の役の工夫で出世。
田村意次の時代、自殺しかけたところを助けてくれたお侍がその配下といった時代背景も織りまぜられて、巧み。
四代目を父に持つお坊ちゃんの五代目・幸四郎とは幼い頃に面倒を見た仲。
ライバルの錦次は色子あがりで策謀家。染五郎、高麗蔵と名を変えていく。
団十郎、菊五郎、勘三郎といっ