時代物。
母を亡くした17歳の娘・瑞江は、遠縁の伯母が勤めている大名の砥部家に奉公に出ることになる。
父の笹岡伊織は江戸北町奉行同心。つまり八丁堀勤め。これが1年ごとの契約というか奉公とは驚きました。
おば様と呼んでいた浦尾は、表の老中に匹敵する御年寄職という大奥のトップ。威厳があり、何度か会っては
...続きを読むいたが親しみまではなかった。
大奥にいったん入ると出られないのが原則だが、江戸城ではないので、行儀見習いの腰掛けも多くいたという。
もちろん殿様のお手つきともなれば、出られないが。
瑞江は三の間というところに配属され、御年寄の姪にしては下といぶかられる。
下働きのお末よりは上だが、かなり下の方の勤めになる。
半端な立場から無視されたり、嫉妬されたり。
それ以上に不可解な出来事に、勝ち気な瑞江は巻き込まれていく‥
一方、町では花形歌舞伎役者の心中事件が起きていた。相手が砥部家の女中と知って心穏やかではいられぬ父。
しかも心中は偽装?
若い頃に親しかったという歌舞伎の女形・沢之丞に聞き込みをすると‥
大奥の中でも怪死事件が!大名家の奥には容易に手を出せない。
御年寄の浦尾はお家騒動の核心に関わっている可能性があり、真相に近づけば瑞江の身が危ない。
父に手紙を書く瑞江、娘の身を案ずる父は?
ぐいぐい読めてしまいました。
著者は1953年、京都府生まれ。実家は祇園の老舗料理屋で、祖母は初世中村雁治郎の娘。早稲田の演劇科を出て、松竹に入社。歌舞伎の脚色・演出を手がける。97年に「東洲しゃらくさし」でデビュー。