松井今朝子のレビュー一覧

  • 仲蔵狂乱

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    みなしごから歌舞伎の千両役者にまで上り詰めたかと思えばまた振り出しに。他人の世話を受けて生きてきた仲蔵の人との関わり方が興味深いが、複雑な歌舞伎界の仕組み、役者の格や襲名の仕組みなど、歌舞伎を知らない自分にもとてもよくわかる興味深いオススメの一冊。

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    2012年07月17日
  • 幕末あどれさん

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    松井今朝子の「銀座開化おもかげ草子」シリーズの前段に当る作品。

    同シリーズは2010年10月刊行の「西南の嵐」で遂に完結となってしまったのだが大好きなシリーズ。本書もそして「銀座開化おもかげ草子」シリーズも共に既に単行本では読んでいたのは記憶にあったものの再購入・再読。

    読んでみると結構内容を忘れていたもので、予想以上に楽しめた作品だ。例えば、「銀座開化おもかげ草子」では口数こそ少ないもののなかなか爽やかな印象を与える宗一郎だが、デビューの舞台である本書では武士を捨てられそうで捨てられない旗本次男坊として屈折する随分とややこしい性格に描かれているのに今更ながら気が付いた。

    その後の宗一郎

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    2012年07月08日
  • 奴の小万と呼ばれた女

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    ★3.5という感じではあるが、なかなか面白かった。
    意識的か無意識のうちかは不明だが、現代のフェミニズム(もうこの言葉も死語かも)を刷り込ませようとするきらいはなくもない。
    しかし自らの体調不良+睡眠不足での旅中での読書を考えれば、上出来の娯楽作。

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    2012年07月01日
  • 円朝の女

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    江戸から明治への市井の人々の姿。
    円朝をめぐる女を描きながら、世相を描く。

    あー、累ヶ淵、もしくは牡丹燈籠を観たい、聞きたい。

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    2012年05月20日
  • そろそろ旅に

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    ネタバレ

    それなりの地位につきながらも違和感を感じていた男が本願を果たすまでの物語。日常から離れてみたいという願望は誰でも持つと思います。「こことは違うどこかに行こう。」と呼びかけているような題名に思わず本書を手にしました。最後、夢をかなえたはずの主人公に寂しさが漂っているのが現実的です。

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    2011年10月25日
  • 奴の小万と呼ばれた女

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    大阪屈指の豪商の娘、長身で美人。
    頭もよく、両家の娘のしてのたしなみの覚えもよく、
    しかも、ひとたびことあらば、火のような情熱で
    愛しい男を守るために角材を手にして大立ち回りもやってのける。
    世が世なら大活躍のスーパーウーマン・・・されど
    お雪が生きるのは、まだまだ女性の地位が低い江戸の昔。
    やることなすこと、人々のおったまげること、この上なし!
    でも、それを楽しんでいる。苦しいときも、負けてない。
    胸がすかっとするような、でも、読後、なんとなく
    哀しみがにじみ出てくるような・・・。
    お雪が子供のころに祖母から言われた言葉
    「嬉しいときは誰でも笑う。哀しいときも笑うがよい。
    ほんまに嬉しいとき

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    2011年06月15日
  • 幕末あどれさん

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    あどれさん、とは、仏蘭西語で、「青年」のことをさすとか。筆者は、歌舞伎等江戸文化の研究に秀でた方である。この方の描いた、幕末は、一味違う。有名所(土方さんとか)は、脇役である。主人公は、旗本の家に次男坊として生まれた、二人の青年。一人は、黒船以降、武士という階級に不思議を抱き、歌舞伎、戯作の世界へと逃げこもうとする。もう一人は、ただひたすらに、武士として、幕府の歩兵への道を歩む。二人の青年の生きざまをあざ笑うかのように、時代は急速に走り始める。それぞれも、始まりの終わりを、めざすことになる。

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    2011年04月25日
  • そろそろ旅に

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    「東海道中膝栗毛」の十返舎一九の若いころを描いたもの。前半はなかなか読み進めないなーとちょっと思っていたりしたけれど、真ん中くらいから、一九が江戸に出て戯作者となっていくあたりから、なぜだか急にすごくおもしろくなった! 当時の江戸の出版界?の話とか、蔦屋重三郎とか馬琴とか式亭三馬とか出てくるあたりとか。いきいきとしていて。やっぱり「吉原手引書」も読まなきゃ、と思った。

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    2011年09月18日
  • そろそろ旅に

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    文庫化を待っておりました。嬉しい‼

    本書の前半は大阪が舞台で、「プリンセス・トヨトミ」を読み終わったばかりの自分は「大阪」らしさとはなんぞやとか思いつつ読んだりしました。
    本作もさまざまな情報がてんこもりで、しかもそれが香道だったり江戸時代の出版界だったり旅であったりといちいちツボにはまるので楽しく嬉しく。

    ただ、一九のことをあまりにも自分が知らなかったせいか、仕掛けがどうもピンときません。たぶん感の良い読者だったら文庫本裏表紙の紹介や書評を読んでから手に取ると、半分すぎたあたりでハハアと思うはず。ただ、それがうまく生きているのかどうか判らないんです。
    人生再生の物語と読んじゃうと単純すぎ

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    2011年04月29日
  • 家、家にあらず

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    最近お気に入りの松井今朝子さん。時代小説が好きなのもあるけど、読みやすい!出てくる言葉とか舞台は現在の生活からは離れているから少し難しいけど、ストーリーがうまいと思う。
    現代では『家』って感覚は昔よりずっと穏やかなものになったけど、その時代は一大関心事であったことは確か。いずれは生家を嫁いで出ていく運命の女性。様々な『家』のありようを見ていくなかでこれまた『家』を背景にした事件が勃発し…。

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    2011年02月11日
  • 家、家にあらず

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    時代物。
    母を亡くした17歳の娘・瑞江は、遠縁の伯母が勤めている大名の砥部家に奉公に出ることになる。
    父の笹岡伊織は江戸北町奉行同心。つまり八丁堀勤め。これが1年ごとの契約というか奉公とは驚きました。
    おば様と呼んでいた浦尾は、表の老中に匹敵する御年寄職という大奥のトップ。威厳があり、何度か会ってはいたが親しみまではなかった。
    大奥にいったん入ると出られないのが原則だが、江戸城ではないので、行儀見習いの腰掛けも多くいたという。
    もちろん殿様のお手つきともなれば、出られないが。
    瑞江は三の間というところに配属され、御年寄の姪にしては下といぶかられる。
    下働きのお末よりは上だが、かなり下の方の勤め

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    2010年09月08日
  • 非道、行ずべからず

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    江戸の3座のひとつ・中村座の焼け跡から一人の男性の死体が見つかる。当代とっての女形・沢之丞の名跡を息子のどちらかに継がせるかが話題になっていた。戯作者、劇場主、帳元、金主など、中村座をめぐる不穏な空気が流れる中、次の殺人が。

    いや~、おもしろかった!同じ時代小説のミステリーでも、宮部さんとは違って、歌舞伎界の裏の裏まで描かれているから、表面的なミステリーだけじゃない、芸の道を追い求めるあまりの犯行というのが見え隠れして。深いわ。

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    2010年02月10日
  • 似せ者

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    江戸時代の歌舞伎役者をめぐる短編集。テンポの良い語り口で、読ませます。名優・坂田藤十郎の番頭を30年もつとめた与市がそっくりな旅回り役者に二代目を継がせようとする「似せ者」対照的な若い役者の微妙な葛藤と皮肉な盛衰を幼馴染みの女性を絡めて描いた「狛犬」一世一代のはずの引退興行を繰り返す人気役者と興行師の関わり「鶴亀」、囃子方の見習いとお侍の出会いと別れ「心残して」まるでその時代に生きていたよう?2005年発行。

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    2009年10月07日
  • 仲蔵狂乱

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    江戸時代の歌舞伎役者、仲蔵を描いた小説。
    中村仲蔵は、親を亡くして身元もはっきりしない。
    どことなしに愛嬌のある子だったのは知らない大人に養って貰うほかなかったためもあった。養母に踊りを仕込まれ、厳しい下積みに耐え、出世しようとしかけるとねたまれて辛酸をなめる。
    それもいつしか演技のすごみに繋がり…
    定九郎の役の工夫で出世。
    田村意次の時代、自殺しかけたところを助けてくれたお侍がその配下といった時代背景も織りまぜられて、巧み。
    四代目を父に持つお坊ちゃんの五代目・幸四郎とは幼い頃に面倒を見た仲。
    ライバルの錦次は色子あがりで策謀家。染五郎、高麗蔵と名を変えていく。
    団十郎、菊五郎、勘三郎といっ

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    2009年10月07日
  • 似せ者

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    役者と芝居にまつわる4つの短編集。どの話も江戸庶民の日常や打算、ほろ苦さが溢れていて面白く読めた。最後の明治維新への過渡期を芸人の視点から描いた「心残して」が一番心に響いたかな…

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    2011年09月17日
  • 仲蔵狂乱

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    田沼意次の時代、孤児から役者の養子となり、厳しい修行、役者同士の妬み、争いなどを乗り越えて人気役者への道を歩き続けた稀代の歌舞伎役者の話。時代の荒波に揉まれ続けた動乱の役者人生を味わえた。松井今朝子の時代物は相当に痛いところもあるけれどやはりじっくり魅せてくれる。役者として大成する話を期待して読むとガッカリするだろうが、人気という水物に支えられた一人の役者の波乱に満ちた人生を読むという感じ。読む人を選ぶかもしれないが、心に残る話だった。

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    2011年09月17日
  • 家、家にあらず

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    外様大名家に奉公に出た同心の娘が主人公。いやおう無くイジメや勢力争いに巻き込まれていく。おりしもその大名家に勤める女が役者と心中事件を起こし・・

    前半、冗長でだれましたが、後半は面白かったです。「子を産むための道具」としての女の哀しさをよく描いています。それに反抗していく主人公のかっこよさも・・。
    「むやみに贅沢する女はたいがい心にぽっかり穴が開いていて、そこにどんどんものをつめようとするのだ」という言葉が印象的。

    大きなテーマ「家とは何か」ということについて考えさせられる作品でした。

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    2009年10月07日
  • 幕末あどれさん

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    5/7 おもしろかった。一つ一つの章はわりと短いのに、分断されている感じもせず。一人一人の物語が大きなうねりとなって時代を作っていた感じが伝わってきた。幕末にはじめて興味をもったかも。あと、江戸時代って私たちはひとくくりにわりかし見ているけどそれぞれの時代があって、それに合った芝居が存在していたんだなあと思った。黙阿弥の芝居、原文で読んでみたい気も。

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    2009年10月04日
  • 似せ者

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    4/24 良質の短編集を読んだときというのは長編とはまた違った感覚になる。一つ一つの物語が短いのにどっぷり引き込まれていろんな世界を行ったりきたり。あー今朝子さんよいわ。好きだわ。もっともっと読みたいわ。そんでなんでこんな色気が描けるんでしょうと失礼ながらも不思議に思う。ご本人がそういう感じに見えないだけに。

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    2009年10月04日
  • 二枚目 並木拍子郎種取帳

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    4/14 ひさしぶりの今朝子さん。前作(シリーズの)に比べて話が進むにつれ、明るい、おもしろいところだけじゃなくてキャラクターの深いところにまで触れていて楽しいだけではない哀愁があった。目に浮かぶような江戸時代の描写、演劇を知り尽くした上での謎解き。飽きないなあ。

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    2009年10月04日