久永実木彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すばらしいー泣2025こういう短編SFが読みたかったんだよ私賞受賞!曖昧で含みを持つラストは短編でこそ輝くと思う
生きづらさと葛藤を抱え停滞していた主人公たちの人生に突然と現れる非日常。「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」が個人的に刺さった。怪獣の話もそうだったけど、責任も因果もなくても唐突に押し付けられる理不尽は存在する。本文で引用されてた『IQ84』の一文。「ー誰もが心の奥底では世の終末の到来を待ち受けてもいるのだ。」わかる、明日にでも隕石が降って地球が終わってもいいと思ってる。が現実はそうはいかず私は明日からも停滞している日常を消費していくはずだ。怪獣が現れずともトマトゾンビが街に溢れずとも、忘れているだけでわたしたちの世界では生が実像を結んでいる。
絶望の淵で初めて光っていることに気がつく小さな温もりに日々目を向けていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんて素晴らしい作品なんだろう。
SFヒューマンドラマ、と言えば良いのか。
とにかく、SFなのに現実的。
非現実の中に巻き込まれているのに、自分に関わる狭い範囲の事に悩んで苦しんで、乗り越えようとする。
怪獣が現れようと、ゾンビや吸血鬼が現れようと、目の前にある生命の危機、世界危機よりも、自分の中の悩みを見続けている。
まさに、現実から逃げるのではなく受け止めようとしている。世界の異変なんて些細なことでかのように。
世の中でどんな未曾有の事態が訪れようと、実際に自分が体験をしないと分からない。目の前で死に直面する時まで、実感することはできない。
世界が壊れ始めても、まず自分自身の悩み苦しみ、それをどう受け止めて乗り越えるのか。
そんな風に感じることができた。
とても人間らしく、どこか皮肉めいているのに心に入り込んでくる本当に素晴らしい作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバラシにはならないよう気を付けますが、私の文章を読んでいる暇があるなら、ぜひ作品を読みましょう。傑作です。
人口三万人程度の閑静な住宅街にある奥石大学で発生した銃乱射事件。教員、学生合わせて31名の命を奪った無差別大量射殺事件によって、映画同好会〈幻燈〉の部員だったスミヒコの人生も一変する。映画同好会の仲間たちを事件で失い、その場にいて生き延びた友人も重傷を負ったこの事件を記録に残しておきたい、と迷いはありつつもスミヒコはドキュメンタリー映画の制作を考えるようになる。そんな折、大学で行われた追悼式で、深紅の女優帽を被った女性の姿がスミヒコの目に留まる。不適切な美しさを持った彼女がその場に置いていったのは、ライフル用の銃弾だった。
というのが本書の導入。銃を捨てよ、呪いを解け、愛を信じろ。こんな悲痛な恋愛小説を人生で読める機会は中々無いんじゃないか、と一読忘れがたい余韻が残る作品です。罪の意識を抱えてしまったふたりは、ゆるやかに、あるいは急速に距離を縮めていく。このやり取りがほほ笑ましいからこそ、後半の凄絶な展開が苦しく胸に響きます。訪れてほしくないことは、容赦なく、唐突に、自分の意志など無関係に訪れる。静謐な文章も魅力的で、とても苦しいけれど、どこまでも美しい小説でした。 -
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ネタバレ前作『わたしたちの怪獣』がとても素晴らしかったので、新刊をすぐに読んだ一冊。
とても重く、考えさせられる内容なのに、どこか愛おしさを感じるストーリーだった。
親の不条理によって心を壊し、銃乱射事件を起こしてしまった兄・アオと、その妹・ベニの物語。ベニは事件の遺族や様々な人々と関わりながら、少しずつ人間らしさを取り戻していく。
先の読めない展開に引き込まれ、特にベニがだんだんと年相応の女の子らしくなっていく過程に強い愛おしさを感じた。
架空の設定でありながら、作者が伝えたい想いがしっかりと心に届くのが久永さんの強みだと思う。
重いテーマを丁寧に、しかし優しく描く力量に改めて感動した。
今後もこの作者さんの新作は絶対に読みたい。 -
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読み終えて表紙を見返してはため息。
ベニちゃん…
1Qさんの本棚からどーしても読みたくてリクエストで取り寄せた一冊です。
言わせられてる感がしますが、紛うことなき真実です。
久永さんは1Qさんに教えて頂いて『わたしちの怪獣』がツボにハマった作家さんで、新作を楽しみに待っておりました(その割に出てるの知らなかったけど)
なんかね、今回は優しさが滲み出てる文体なんですよ。
作中にも例として出てますが、マイケル・ムーア監督の『ボーリングフォーコロンバイン』のようなドキュメンタリー映画を作ろうとする話です。この映画をご存知の方は、どんな事件のドキュメンタリーかは察しがつくと思いますが、これがオープニングからして悲しい…
待ってるのは絶対に悲哀しかない…筈なのに、でもどこか優しい。
悲しいのに静かな海に包み込まれて穏やかになるような気持ち…
一抹の希望を持っていよいよ読み始めます。
前作でも思ったのですが、癖のない読みやすい文章ではあるのですが、語り口が独特なのと映画の例えがバンバン出てくるので合わない方にはとことん合わない作家さんだと思います。
逆にここが刺さる方は、私と1Qさんのように「あぁあー!!!ええわぁー!!!」となる訳です(1Qさんの実際の温度感は知りませんが、まあこんな感じでしょ?)
暴力に対して愛の力で抵抗する物語を描いた久永さん。
猫と奥様を愛していらっしゃる久永さん。
そんな久永さんだからこそ『レディーインザウォーター』をあんな風に評価出来るんですね。
私にとってシャマラン監督作品は、予告編が本編やん!!と失礼な事を言いながらも毎回何故か観てしまうという、スルメイカ的な存在なのですが(特に好きではないのに癖になって気づくとクッチャクッチャしてしまう)久永さんは恐らく私とは違う深い目線で監督の作品を観ている筈です。
だからこその本作。
上手く伝えられなくてもどかしいのですが、もう少し映画のネタを分かりやすく、抑え気味にして、もう何作か連続で書かれていけば凄い作家さんになられるのではと、クッチャクッチャしながらレディーインザウォーターを見返した私は強く思ったのです!!(ちょっと8さんのまねっこ)
結論。
あぁあー!!ええわぁー!!!
(レビュー放棄ではありません、満員電車の中で愛を叫んでいるだけです)
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Posted by ブクログ
ネタバレものすごく切なく余韻が残る作品
終始、重い雰囲気が漂うのに読みやすい
ただ、銃乱射事件の詳細が思ってる以上に生々しくって、ちょっと目を逸らしたくなった
途中、ほのぼのするシーンもあったけれどそれが結末の悲しさを際立たせていていてなんだか引きずりそう
色々と悲しいところはあるけど、一番辛かったのは親友のフジオが自死してしまったところ
あれは誰も悪くない気もするし、やっぱりスミヒコとキミドリの配慮が足りなかったからなのか
原因は分からないけれど、フジオはベニを見ておそらく銃撃犯と何かしら関係あるのかもと気づいてしまったのか?
それに気づけない親友(スミヒコ)がやってほしくもない気遣いをしてくるものだから、もう何もかもに絶望したのかもしれないし、それと同時に自分の不自由な身体に対して先を見出す希望を失ってしまったのかもしれない
スミヒコは親友と好きな女性、大切なサークル仲間を一気に失ってしまって、この先立ち直ることなんてできるのだろうかと思ってしまう
あらすじ読んでなんとなく読んでみた作品だったけど、とても面白かった -
Posted by ブクログ
『わたしたちの怪獣』『ぴぴぴ・ぴっぴぴ』『夜の安らぎ』『アタック・オブ・ザ・キラートマトを観ながら』の4本の短編が収録されたSF短編集。
この作者には初めて触れたが、どの作品も読み心地が良くて他の作品も読んでみたくなった。
良い意味で既視感があるというか、具体的にこの作品とは言えないんだけど、昔観たような読んだようなそういう既視感を感じた。勿論、読んでいて「ああ、このシーンはあの映画っぽいな」って要素も多いのだが、それに合わせて記憶の中のノスタルジーというか、ありそうでない、なさそうであるみたいな作品を作るのが上手いのかもしれない。
他の人のレビューにはSFじゃなくてファンタジーなんて意見も多いが、確かにこの作者は幻想小説とか書いたら面白いかもしれない。
文章の美しさからも親和性高そうな気が。そういった作品が出てくるのを期待したくなった。
あと最後のあとがきがとても良い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ困った、これは面白かった。
表題作はスケザネさん紹介をきき
「B級映画みたいで笑えそう」と(失礼ながら)
興味本位で買って読み始めた。
けれど、ぴぴぴ・ぴっぴぴを読み
(これも失礼ながら)キャッチーなSFだけでなく、繊細な五感を振るわせるような
SF小説を書かれる人だと惹き込まれました。
4作品の中で特に
ぴぴぴ・ぴっぴぴが好きで、
これはまた読み直したい。
ドラキュラもよかった、し
ゾンビは普段あまり惹かれないが
星乃さんの映画連想ラリーのキレが良すぎて
楽しくて一気に読みました。
「わかるでしょう?わたしはこういう連想でしか、ものごとを考えられないの」最高。
『アタックオブザキラートマト』って言葉の響きがまたいい。Z級らしい絶妙な名前の冗長さ。そしてリズム、言いたくなる。
短編と思えないくらい、どっぷり浸かって
一気に泳ぎきって楽しかった。 -
Posted by ブクログ
噂に違わぬ傑作短編集でした。いやー面白かった!
特に良かったのは表題作「わたしたちの怪獣」とラスト「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」。前者はおそらくシン・ゴジラにインスピレーションを得た作品だと思いますが、元の作品より破滅的な現実と向き合う市井の人に焦点を当てた構成が実に見事。救いのありそうなラストに思わせてからの現実は甘くないというオチも非常に良かったですね。そして後者は映画のオマージュを散りばめた作品となっており、映画好きならニヤリとするシーンばかり。と言っても表題作の元ネタを見たことがなかったので全力で楽しめたかというと怪しんですが、それでも虚構と現実を対比しながら、荒廃に向かう世界と人々を襲う絶望を、短編という構成の中でしっかり描ききったのが素晴らしいです。
上記2作品が特に素晴らしいんですが、個人的に好きなのは3作目の「夜の安らぎ」だったり。SFではなく、ライトなファンタジーという感じなんですが、オチも含めてかなり綺麗なお話だったので、作者の後書きに期待して次作を楽しみに待ちたいと思います。