あらすじ
宇宙空間でのワープに際して生じる、空白の七十四秒間。この時間の存在を認識し、襲撃者の手から宇宙船を守ることができるのは、マ・フと呼ばれる人工知性だけだった――ひそやかな願いを抱いた人工知性の、静寂の宇宙空間での死闘を描き、第8回創元SF短編賞を受賞した表題作と、独特の自然にあふれた惑星Hを舞台に、乳白色をした8体のマ・フと人類の末裔が織りなす、美しくも苛烈な連作長編「マ・フ クロニクル」を収める。/【目次】七十四秒の旋律と孤独/マ・フ クロニクル/一万年の午後/口風琴/恵まれ号 Ⅰ/恵まれ号 Ⅱ/巡礼の終わりに/文庫版解説=石井千湖/*本電子書籍は、『七十四秒の旋律と孤独』(創元SF文庫 2023年12月初版発行)を電子書籍化したものです。
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Posted by ブクログ
別の本で久永さんの存在を知り、文章がとても好きなので本書を手に取りました。
やはり文の調べが美しく、大好きです。
胸が苦しくなるようなストーリーでもあるのですが、世界観にうっとりする気持ちのほうが勝ります。
最後は泣いてしまいました。
何度も読み返したくなるような本です。
Posted by ブクログ
とても美しく、まとまりがある物語だった。
ピュアなマ・フに対して人間の負の側面である暴力性などの醜さが際立ち、心が痛かった。最後の章で若い巫女がかつてのマ・フのような真っ直ぐな気持ちで生きて、それがしっかりと報われたことでこちらまで救われた思いがした。
SFというよりは、SF的な単語が出てけるだけの物語メインの小説であった。話は本当に面白かったが、各キャラクターが典型的で画一的な感じもしたので惜しいなとも感じた。
Posted by ブクログ
出てくるロボに愛着が湧いてくるゆえに、人間が愚かしくてごめんねという気持ちになった どうしたらいいんだろうね人間
人間がやり直すにはいったん全部破壊しなきゃダメなんだ……でも歴史はやっぱり繰り返すんだ……という思想(?)は、自分がよく読む萩尾望都のSFチックな作品にも似ていると感じるので、自分もうっすらそう思ってるんじゃないかという問いを発見した。
Posted by ブクログ
表題作にある七十四秒とは、ワープの際に人間が知覚できない空白の時間をいう。そして、マ・フとよばれるヒト型の人工知性が襲撃者から宇宙船を守っていた。
表題作は、そのマ・フの最初で最後の戦闘と彼のもつ密かな願いを描いている。第8回創元SF短編賞受賞作で、リリカルであり意表を突く結末が待っている。ちなみに作者は愛猫家だそうだ。
そして連作長編になるマ・フ クロニクルは、惑星Hを舞台に8体のマ・フと人類の末裔たちとの関係を描いている。
最後はやはりそうなるのか。そして人間は宗教(神だのみ)に走る。
Posted by ブクログ
他のレビューに表題の七十四秒以降は蛇足だとありましたが、私もそう思いました。思いましたが、同じ日々を繰り返していたマ・フが人間との接触から、仲間同士に順列と亀裂、人間のような感情が芽生え、美しくも同じ無機質な日々が崩れ去ってしまう。この手の話で人間みたいな感情が人工知能に芽生えていくのは似たようなのを何度も見たり読んだりした事がある。しかして、その行為は、作中の人物であるオク=トウは、マ・フの一体であるナサニエルを友としながら、それでも下に見ていた。それが、「目をかけてやったのに」という言葉だ。人間は結局どうあがいても人間以外を同列には、いや人種で上だの下だのやっているのだから、人間は結局のところ、他者(生物、無機物)まとめて悪影響のある種なのだろう。最後に、ナサニエルが踏み潰し絶やした筈のアイス・ブルーが、一万年を越えて存続していた植物と生物のしぶとさと変わらぬ美しさに、ナサニエルの心が救われた事を見届けられた事が私は嬉しかった。
Posted by ブクログ
こちらもまた初読みの作者さん。
久し振りにSFを読み、ちょっと読み辛いところもあったが、全編に亘っての抒情溢れる語り口には惹かれるところもあった。
◼️七十四秒の旋律と孤独
宇宙船がワープをする際にできる空白の74秒。人間や宇宙船が無防備になるこの間、海賊の襲撃から船を守るマ・フと呼ばれる人工知性〈紅葉〉の物語。
“美”を理解し愛する人工知性の孤独と死闘。
宇宙空間に立つ〈紅葉〉の姿が彷彿される冒頭のシーンに加え、静謐な世界で奏でられる旋律が聞こえるかのような戦闘のシーンがとてもきれい。
◼️マ・フ クロニクル
人類が滅亡した後の宇宙で、ヒトが遺した聖典を遵守して惑星Hを観測し続ける8体のマ・フの日々を綴る5つのお話。
“特別をつくらない”という掟のもとで、しかし、一万年もの体験の蓄積は個体の差を生じさせ、あるアクシデントをきっかけに特別な関係性を意識せざるを得なくなる。
第一話「一万年の午後」での、全く同じ外見で表面上は“特別なこと”を排する彼らに生まれる葛藤とやるせなさが興味深い。
単体で書かれたその話から膨らまされたと思しき残る4話は、そうして自己を確立していくマ・フと思いがけずも復活したヒトとの関わりあいを描き、小さいながらもひとつの創世記あるいは神話の世界を思わす。
ただ、表題作や第一話の美しさからすると蛇足感を感じないでもなかった。
いずれにしても、いつの時代もヒトがいるところには争いが起こるのが悲しいね。
Posted by ブクログ
どこかで好意的な書評を見かけ、『74秒間の戦慄と孤独』というタイトルや「マフ クロニクル」と言うキーワードに惹かれて購入。
しかし、SFにありがちな美文調の文章は上手く頭に入ってこないし、いまいちでしたね。「クロニクル」と言う言葉から大河小説的な年代記を期待してしまうのですが、この物語は期間こそ2万年と長期ですが、宇宙の辺境の一部落の物語であり。しかもその歴史的背景についてはほとんど記述が有りません。流石にアシモフのロボット~ファウンデーションの様な壮大さを期待するのは無理にしても、唯一過去にロボット対人間の戦争があったらしいという事だけでは、歴史的背景がいかにもプアすぎます。そこを期待したのが不味かったか。
マ・フ(ロボット)たちはなかなか良いのですがね。