高原英理のレビュー一覧

  • 夕凪姉妹と怨霊お祓い記

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    ネタバレ

    単行本時の題は「神野悪五郎只今退散仕る」。
    これは稲垣足穂の「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」の対になっていた。
    宇野亞喜良のカバーイラストが素敵だが、積読になっていたのが、加筆・改題の上文庫化されたので、読んでみた。

    カバーイラストから、ヤングアダルト向けかなと想像していたら、後半、結構スゴい展開になって驚いた。
    読後、ざっと単行本と見比べたら、まさにそこが加筆された箇所らしい。
    あとがきに曰く少年漫画を参考にしたとか。確かに「ジャンプ」的な。「ダンダダン」的な。痛快な。
    ぐいと引き込まれて、なかなかのショックを受けて、でも読み終えた身を爽やかにしてくれて、実にいい読書だった。

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    2025年09月24日
  • 不機嫌な姫とブルックナー団

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    姫とブルックナー団の絆がが深まっていく様子は微笑ましかったけれど、クラシックにもっと造形が深ければもっと楽しめたのかもしれない。推しの自伝を自筆しようとするオタクの熱量がすごい

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    2025年09月20日
  • ブルックナー譚

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    「ブルヲタ」には堪えられない楽しい読み物で534頁に及ぶ大著を一気に読んだ。彼の幼少期から教師時代、教会オルガニスト時代、ウィーン大学時代、作曲家としての不遇の時代、そして晩年の交響曲作家として大成功を収め、ウィーンの誇りになった時代。ブラームスそして派・代表者ともいうべきハンスリックからの酷い仕打ちの数々が詳細に書かれている。ブルックナー支援者の指揮者レーヴィが交響曲第8番を演奏不可能と伝え、改訂せざるを得なかったとの記載は今から考えられないような話だが、当時の演奏技術、常識を破る作品だったということを示して言うのだろうか。しかし、晩年はブラームスからも評価され、ブラームスはブルックナーを追うように半年後にこの世を去ったらしい。
    そして実に数多い女性たち(少女たちというべき)への恋慕と失恋!彼女たちの実名が記されていることに、事実であったことを痛感した。その中では70歳の時に出会ったイーダ・ブーツというベルリン娘との婚約の話には救いを感じさせられる。結局生涯を通して独身を貫きプロテスタントの牧師補となったイーダとカトリックのブルックナーの信仰の違いが結婚の中止を呼んだという事に、2人の信仰の忠実な姿勢を感じる。
    著者の作曲家への評価が次の序の一文に集約されていると思う。「彼の耳にだけ響く別の宇宙から来たような荘厳な音楽に彼があまりにもとらわれ、どうにかしてそれを現世の音として聴こえるようこの世界にある音楽技術の限りを尽くすことに懸命なあまり、自分の生活のほとんどに気が回らなかった人であった。彼の自作改訂の多さと、ときに不見識とも言える迷い、そしていつまで経っても完成に至りえないかのような訂正の連続も、彼の内なる何かへの接近の難しさかえるならいくぶん納得がゆく。おそらくそれは近似的に表現することはできても完璧にることはできない響きなのである。」

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    2025年08月02日
  • 不機嫌な姫とブルックナー団

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    作中の「ブルックナー伝(未完)」を軸に、ブルックナーオタク三人組に出会った主人公が案内するブルックナーとブルックナーオタクの音楽小説。
    ブルックナーってなかなかオタクだったんですね。

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    2024年05月25日
  • 歌人紫宮透の短くはるかな生涯

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    ネタバレ

    穂村弘が帯にいわく「極度に文系な魂のための青春のバイブル、ただし80年代限定版。」
    豊崎由美が書評にいわく「1960年代生まれのサブカルクソ野郎が泣いて喜ぶ仕掛けがたっぷり」
    作者1959年生まれ、ほむほむ1962年生まれ、トヨザキ社長1961年生まれ。
    自分の母親の世代なのだなー。

    作りとしては、
    ・ある作家、による、プロローグ(とエピローグ)。
    という枠物語の間に、 
    ・評伝作家、による、代表的な和歌の紹介と、脱線多めの記述。
    ・各回、評伝作家が行ったインタビューや、歌人自身の文章を引用。
    という各章が挟まれる、という構成。
    下段の注釈の情報も豊富。(という点では、田中康夫「なんとなく、クリスタル」っぽくもある)
    だんだんと歌人の年齢が上がっていくが、伝記小説と単純には言い難い。
    ボツッと出てきてブツッと途切れた伝説的歌人、というには、先行研究多すぎじゃねという疑問が浮かんでしまう。
    また謎としての歌人を浮かび上がらせるには、カバーイラストはむしろ邪魔なのではないかと思う。
    とはいえ深甚なる謎を提示するというよりは、ポップで軽薄な時代と、そんな中でゴシックを体現しようとした人物とを、折衷的に描いている、ということなのだろう。
    各章が断片的すぎて深みがない、と思ったが、その浅さこそに意味がある作品なんだろう。
    ……と、いまひとつ乗り切れなかったが、それは自分の現状に拠るから、とは判る。
    著者の近刊「詩歌探偵フラヌール」にも手を伸ばしたい。

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    2023年01月17日
  • 少年愛文学選

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    ・高原英理編「少年愛文学選」(平凡社ライブラリー)は折口信夫や稲垣足穂等、15人の作家の作品を収める。日本人 だけである。しかもここには塚本邦雄や春日井健の歌人もゐる。折口も歌人だが、2人とは毛色が違ふ。塚本、春日井は戦後日本を代表する歌人である。塚本は1ページだけの作品「贖」(381頁)、所謂ショートショート、あるいは塚本の瞬編小説であらう。かういふのは塚本には、たぶん、いくつもある。春日井は例の歌集「未青年」からの抄出、いかにもそれらしいのが並ぶ。最後の「わが手にて土葬をしたしむらさきの死斑を浮かす少年の首」(387頁)は、最初の「大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむら さき」(383頁)と見事に呼応してゐる。抄出の仕方にもいろいろと工夫があるのだらう。もしかしたらこれだけで春日井健ファン が生まれるかもしれない。と、書いてゐてふと思ふ、これは少年愛小説のアンソロジーなのだと。塚本は例の思はせぶりだが、春日井は直球である。ただし小説ではない。だからこそ、小説とは違ふ少年愛の形が生きてくるのであらう。
    ・「編者解説」に三島由紀夫のエピソードが出てゐる。簡単に書けば、knabenliebeの訳として「男色」はきたないが、 「少年愛」は清らかに感じる(410頁)といふのである。これは「前近代の性制度である『男色』は性欲の名称であ」(同前)り、 「近代に発生した(プラトニック・ラブを含む)恋愛の形としての『少年愛』」(同前)はさうではないことによる。確かに、web で検索すると、近世の衆道は男色の道だとある。男色とは何か。男性の同性愛である。日本の近世ではここに若衆歌舞伎が絡むし、陰間も出現する。三島にはこれが頭にあつたのであらう。だから男色はきたない、knabenliebeは少年愛だと言つたのである。もしかしたら三島には、古代ギリシァの「誠実な少年愛paiderastiaを不誠実なものと区別し,奴隷との男色は禁じたが自由民どうしのそれは公認している。」(世界大百科事典)といふ事情があるのかもしれない。最近の少年愛はどうなのでらうか。 少年愛と言はずにboys loveと言ふのであらうか。「美少年同士の恋愛や性愛を題材とする、おもに女性向けの小説や漫画、アニメ、ゲームなどにおける作品ジャンル。」(日本大 百科全書)、略してBLとある。さうするとこの「少年愛文学選」の作品は最近流行のBLではないらしい。当然のことである。巻頭 の山崎俊夫「夕化粧」(9頁)には角書きの「市彌信夫」の2人の名前がある。近松のお初徳兵衛の類である。実際、最後に2人は心中をする。そして絶世の美少年であつた。折口の「口ぶえ」も美少年である。最後は「今、二人は、一歩岩角をのり出した。(前篇 終)」(122頁)で終はる。しかし、「後篇が書き継がれることはなかった」(415〜416頁)といふ。これも心中物である。 以下、少年愛の物語が続く。しかし、個人的におもしろかつたのは、巻末の編者高原英理「青色夢硝子」であつた。これは「かつての少年愛文学が現代の作品にどのような影響をもたらしたかという一例として」(421〜422頁)載せられた作品である。言はば少年愛文学の変奏曲であるといふ。SFなのであらう。夢物質、夢粒子、夢結晶、夢想結界等の見慣れない語が出てくる。夢結晶が「あれば、時間を超えて未来を見通せるじゃないだろうか。」(403頁)といふわけで、少年愛を読み続けてきていささかくたびれた人間にはありがたい作品であつた。ある意味、一服の清涼剤である。これでこの選集も救はれたとのではないかと思ふのである。

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    2021年09月12日
  • 怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影(立東舎)

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    こわい話をめぐるエッセイ集、あるいは不定期に更新されるマニアックなブログの記事だと思って読むと面白い。連想ゲームのように、筆者の持つ智識が羅列されるため、読者は置いてけぼり感を覚えるが、その辺りは好みの問題か。

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    2018年11月12日