高原英理のレビュー一覧

  • 夕凪姉妹と怨霊お祓い記

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     うわーん。感動したー。稲生物怪録と、それを題材とした足穂の思いをこの二十一世紀に、少女たちの物語として語り継ぐのすごい! しかも、今現在の、なんだか不穏な国内国外の政治の動静をも取り込んでいる。そして、その混乱の原因である元人間の女の怨念がほんとしょぼい。そんなしょぼい怨念が、今、どれだけ人の命を奪っているか、と、暗澹とする。ところが、そんなしょぼい怨念を抱えた女は、実は。悪意ばかりの人などいないのだ。人間が生きていくこととは、人間や、人間以外のものたちの善性を信じることだ。

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    2025年11月19日
  • 夕凪姉妹と怨霊お祓い記

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    妖怪にも物怖じしない13歳の少女紫都子は祖母から見込まれて彼女が子供の頃果たせなかった怨霊払いを頼まれるが…。少年漫画を参考にして加筆修正しただけあって、ラストに向けて一気に盛り上がっていくバトル漫画的展開にグイグイ引き込まれ、一気に読み終わってしまった。漫画やアニメ化したらきっと面白いだろう。

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    2025年10月13日
  • 不機嫌な姫とブルックナー団

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    ブルックナーは演奏したことなく、ちゃんと聴いたこともなかったが、今年よく演奏会で演奏されてることもあり知るために手に取った。小説ではあるものの人柄が分かり、ブルックナーに興味を持った

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    2024年09月16日
  • 不機嫌な姫とブルックナー団

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    表紙カバーとタイトルに惹かれて手にしたけれど…読み始めて数ページで…なにこれ?はい、おもしろい。
    作者さんもはじめましてだったので、数十ページ読み進めたところで、そでを確かめる…なに、私より結構年上ではないか、しかも男性だと?俄然興味が湧く。
    この本によると、ブルックナーという音楽家はツウ好みなのだとか。クラシック音楽に疎い私には、知らないワードや音楽家や曲名のオンパレードだったけれど、それでも読み進めるのが楽しい。

    本文でもあとがきでも、ブルックナーは“格好悪い人”として描かれているけれど、ブルックナー団のタケが書く『ブルックナー伝(未完)』を読む限り、どうにも憎めないキャラのようにも感じ

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    2024年05月06日
  • 水都眩光 幻想短篇アンソロジー

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    ネタバレ

    •『ラサンドーハ手稿』高原英里
    この作品が最初で良かった。退廃的な世界観、暗い路地裏から話しかけてくる仮面たち、ひょっとして私たちの世界でも起きているかもしれないよと錯覚させるような精神が入れ替わるストーリー。百点満点です。

    •『串』マーサ•ナカムラ
    奇妙なお役目がグロい!
    連綿と続いていくんだなと主人公の微笑みで感じます。なんだか鬱りたくなるのに爽やかで奇妙な読後感。

    •『うなぎ』大木芙沙子
    あーっ、純文学!うなぎが臍から出てくる超自然的現象はさておき、不良と仲良くしているところをいい子ちゃんの家族(になりかけの人と母親)に見られたくないっと顔を背けてしまった…小さなしこりが今も残り続け

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    2024年02月18日
  • 高原英理恐怖譚集成

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    得体の知れない恐怖感が詰まってる一冊。
    グロい表現が多いですが、殺され方とか想像すると恐ろしすぎて怖い。
    『 闇の司』と『水漬く屍、草生す』が個人的には好きでした。怖いけど。

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    2023年09月04日
  • ゴシックハート

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    やっぱりこの本に戻ってきます。他のゴスカルチャー書も読むようにはなってきましたが、やはり本書ほど私の意志に即した「ゴシック」を唱える本はありません。本書(と、やはり高原さんの『少女領域』)から呑み込まれるようにして、私には縁のないとばかり思っていた読書を始めましたし、そのようにして蒐められた私の本棚の半分以上の本もまた、本書に感化されて揃えたものです。つまり、他の感想にも書きましたが、『ゴシックハート』こそまさしく私にとっての聖書なのですね。「誇張し過ぎ」と思われるかもしれませんが、初読の折はものすごく衝撃を受けたし、世界への向き合い方、ほんとに変わりましたし、私の思考の中枢には、確実に本書が

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    2022年10月30日
  • 少年愛文学選

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    ネタバレ

    古本価格が高騰しているので手に入れていないが『無垢の力』をベースにして選ばれた作品群なのだろう。
    『無垢の力』を文庫化してほしいなあ。
    編者あとがきに《少年が、愛される客体としての性を知ることで、国家的暴力・家長的暴力を批判しうる「美しい弱さ」という価値を発見する》とある。
    こんな価値を提示してくれる評論を、読みたいのだ。

    単にカワイイなあ(萌)、ということではない。
    近代日本文学にこういう脈があったのだ、ということを明示する、意義深い仕事だと思う。
    十代で足穂を読んで珍紛漢紛なまま迷宮に憑かれた。
    当時の私にこの本を渡してあげたい。(いや二十年かけて我流で読んできたのも、また意義あるだろう

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    2021年07月20日
  • 乱歩心象作品集

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    江戸川乱歩、高原英理・編『乱歩心象作品集』中公文庫。

    江戸川乱歩の没後60年。江戸川乱歩の長中短編から「夢遊」「恐怖」「人形」「残虐」「身体」「錯視」「浅草」の7つの切り口で分類、セレクトした作品集。

    恐らく大半の作品は既読であるが、小学校時代にポプラ社のの『少年探偵団シリーズ』を読み、中学校時代に江戸川乱歩の魅力にハマり、高校時代には春陽堂文庫の『江戸川乱歩全集』全9冊を読んでいることもあり、定期的に読み返したくなる。ちなみに高校1年の時の読書感想文では『陰獣』の感想文を書いて、高校生感想文コンクールの応募作に選ばれている。

    また、序文の中で高原英理が述べている通り、江戸川乱歩は短編に

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    2025年11月03日
  • ゴシックハート

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    ゴシックについてたんまり語る本。ゴシックとは何か、何を好んで何を嫌うのか。実際に作品を取り上げながら、詳しく説明してくれる。中には首肯しがたい、というか認めたくないような部分もあったが、全体的には自分の心にしまっていたものと通ずるようなところがあるように感じた。

     特に面白いと感じたのは6-8章の身体や美醜に関する部分。肉体と意識の関係から生まれる肉体の呪縛、呪縛からの解放としてのサイボーグ化、そこに美醜が絡み整形をサイボーグ化として捉える考え方に妙に納得してしまった。外見の美醜と内面の美醜の関係も興味深かった。

     文学、芸術に限らず著者の作品を解釈する力がものすごいなと感じた。

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    2025年06月07日
  • 不機嫌な姫とブルックナー団

    購入済み

    カバー絵がとてもいい

    オタクっぽい雰囲気を漂わせたカバー絵がまず人目を引く。決して人好きがする作品ではないブルックナー交響曲とこれまた人好きするはずがないブルックナー本人を題材にした作品にしては、なかなかに面白い作品に仕上げている。劇中劇というか作品中にブルックナー伝を紛れ込ませた構成も大変に効果的である。ただ「あれっもう終わりか」ちょっと読みたらない感じがする。

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    2025年01月02日
  • ゴシックハート

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     著者は言う、これからゴシックな意識を語ろうと。それではゴシックな意識とは何か?それは「形」に依存して示される精神であって、初めから抽象的に語ることはできないと言う。具体的には、次のようなものだ。かなり長くなるが、イメージが良く掴めるので引用したい。

     「色ならば黒。時間なら夜か夕暮れ。場所は文字どおりゴシック建築の中か、それに準ずるような荒涼感と薄暗さを持つ廃墟や古い建築物のあるところ。現代より過去。ヨーロッパの中世。古めかしい装い。温かみより冷たさ。怪物・異形・異端・悪・苦痛・死の表現。損なわれたものや損なわれた身体。身体の改変・変容。物語として描かれる場合には暴力と惨劇。怪奇と恐怖。猟

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    2024年06月04日
  • 高原英理恐怖譚集成

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    理不尽な展開と怖さ。
    エログロというにはあまりにもグロが勝っている。メンタルが落ちているときにはきついかも。

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    2024年04月17日
  • ゴシックハート

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    ネタバレ

    ゴシックには惹かれるけれど、うまく言い表せずにぼんやりと認識していた好きなものについて、そのすべてを言語化してくれる本だった。
    紹介されている作品について、知っているもののほうが少なかった。本当にぼんやりとした認識しかなかったのだと改めて思ったのと同時に、そういった知識が少ないのにも関わらずゴシックハートがここにあるという不思議を思った。
    歴史を含め流れをすべて把握するのは難しいかもしれないけれど、文学・芸術方面で沢山の作品を知れたのは良かった。
    エピローグで、相反する心を持ち葛藤していた女性の話を読んで、二階堂奥歯さんじゃないかと思ったらやはりそうだった。こういう交流があったのですね。

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    2023年11月09日
  • 少年愛文学選

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    死と隣接する。「少年愛」という共通のテーマのもと集められているが故に、語り口の違いが際立つ。よかった。

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    2023年11月04日
  • ゴシックハート

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    立東舎文庫版も持ってるのに、ちくま文庫版も買ってしまった。凄く好きな本。あらゆるテーマから「ゴシック」について語られている。改めて自分の中にも「ゴシックハート」はあるな…と再確認。

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    2022年12月31日
  • 歌人紫宮透の短くはるかな生涯

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    満ちきたる波の大きを見上げたり見上ぐるままに溺れてゐたり (紫宮透)

    本作はあくまでフィクショナルな人物として1980年代を活躍した「天才ゴス歌人」こと紫宮透の、短く、そしてはるかな生涯を追っていく作品です。メタ的な読み方は慎むべきですが、それでも、本文中の紫宮の短歌からそれに関する批評から註釈までが、著者である高原さんから産み出されたのだと考えると圧巻ですよね。実在の人物や歴史的背景に造詣があるからこそ、本作のような「極度に文系な魂」のこもった素晴らしい作品が出来上がったのだと思います。
    ここからは作品自体の感想ですが、本作、何よりも紫宮透という人物の魅力が間然とすることなく際立っています

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    2022年11月15日
  • 少年愛文学選

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    男性作家による「少年愛」をテーマに編まれたアンソロジー。面白さでいえば川端康成の「少年」だ一番でけど、初めて読んだ山崎俊夫の「夕化粧」の雰囲気が印象深い。ちょっと他の作品も読んでみたい。収録作の中では編者である高原英理の「青色夢硝子」がやや浮いている印象が拭えずこれはない方が良かったように思う。
    しかし、それ意外の作品のチョイスは良く、いずれも読んで面白く収録作の構成も良く考えられている。また、編者による解説もなかなか読み応えのあるもので良かった。

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    2021年05月17日
  • 歌人紫宮透の短くはるかな生涯

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    ゴス歌人・紫宮透という架空のニューウェーブ・アイコンを中心として紡がれる80年代サブカル曼荼羅。

    別に「エモコア水墨画」とか「グラムメタル演歌」とかでも良かったのかもしれないが、別の時代では咲きえなかった徒花として「ゴス」の刹那性に説得力がある。

    人生の終え方が「らしいなぁ」と思わせる。

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    2019年03月28日
  • 夕凪姉妹と怨霊お祓い記

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    ネタバレ

    単行本時の題は「神野悪五郎只今退散仕る」。
    これは稲垣足穂の「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」の対になっていた。
    宇野亞喜良のカバーイラストが素敵だが、積読になっていたのが、加筆・改題の上文庫化されたので、読んでみた。

    カバーイラストから、ヤングアダルト向けかなと想像していたら、後半、結構スゴい展開になって驚いた。
    読後、ざっと単行本と見比べたら、まさにそこが加筆された箇所らしい。
    あとがきに曰く少年漫画を参考にしたとか。確かに「ジャンプ」的な。「ダンダダン」的な。痛快な。
    ぐいと引き込まれて、なかなかのショックを受けて、でも読み終えた身を爽やかにしてくれて、実にいい読書だった。

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    2025年09月24日