内館牧子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『老害の人』は、老害扱いされた高齢者たちが迫害に屈せず、たくましく逆襲する様子をコミカルに描いた物語。
物語の主人公(80代)は、中小企業を一代で大きくした自負を持つ激烈な性格の持ち主である。娘婿に社長を譲った後も会社に頻繁に出社しては老害を振りまくが、本人にその自覚はない。ある時、重要な取引先にも老害を発揮して契約を解除されてしまい、娘のサキから激しく叱責されて深く落ち込む。しかし、似たような境遇の老人仲間たちとともに「老人のためのボードゲームカフェ」を開設し、新たな生きがいを見出していく。
本作を通じて改めて考えさせられるのは、「老害」の本質だ。それは、昔の自慢話を相手の迷惑も顧みず、上から目線で延々と満足するまで語り続けることである。そのターゲットになるのは、元の従業員や接客業者、子供や孫といった「立場上、言い返せない人々」だ。年齢に関わらず、人は話し相手に敬意を持って接するべきであり、どれほど過去の実績があっても老害が許容されるわけではない。
著者は、老害の根本的な原因を「生きがいの不足」と捉え、それに伴う承認欲求の暴走を描いている。そして、老人が自らの手で新たな居場所と生きがいを作り出すという解決策を提示しており、この視点には共感した。
また、作中で描かれる孫の進路を巡るドタバタ劇は、テーマからすると一見脱線しているようにも思える。しかし、「親や祖父母が子供の進路にどこまで口を出してよいか」という問題は、世代間の価値観の押し付けという点において「老害」と地続きの興味深いテーマだ。結局のところ本人の進路は本人が決めるものであり、外野が口を出しても始まらない。それでも親は子供の幸せを願うがゆえにあれこれと言い、子供はそれに反発する。このやり取りを読みながら、私自身も娘の大学受験のころを思い出し、少しだけ切ない気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「終わった人」、この言葉は負債を抱えすぎて首が回らなくなった人、妻子共に逃げられて自分自身の立場がわからなくなった人…とかではありません。
自分の仕事を全うし、やり切ったサラリーマンが定年で退職したところから、主人公は社会より「終わった人」となるのです。
私はまだまだ社会に投げ出されたばっかりのこの作中で言うのならば、桃の子なのですが、
この作品を読んで私はどう定年を迎えたいのかなあ。としみじみ将来を考えるきっかけとなる1冊となりました。
もしかしたら定年まで頑張らず途中でリタイアして、のんきに低空飛行している人生かもしれないし、その時は自分の両足で立てるように生きていける方法を身につけておきたいと思索しますし。
主人公は退職後の今までの時間の使い方と自分の立場のギャップにめめしくなっており、プライドが邪魔をしてなんにでも冷笑している様子にはイライラしたけれど、自分が新たに息を吹き替えせる場所を見つけた時の流れを一緒に覗かせてもらって、そんな六十代もあるよね、結局は自分が好きなことをするのが楽しいんだよね。と、実感しました。
主人公の奥さんが、予想外の出来事(資産が無くなる)には確かに当てにしていた資金が無くなることに驚きを隠せなくなるのはわかる。
自分の店を構える、その後の人生設計に狂いが生じて、冷たくなるのはわかる。
けれど、自分の行いは後に奥さんが「終わった人」になった時に、そのとき返ってくるんじゃないかな、と危うく思っていました。
そのときには二人ともぽっくり。。な年齢ではあると思うけどね。
最後のシーンでは、ギクシャクした空気が流れていてもそれまで紡ぎあげてきた関係性は強い繋がりとなっていて簡単には断ち切られないんだな〜と、穏やかな自然を二人で感じつつ、故郷へ向かう様子は綺麗な終わり方だなーと感じました。
改めて、私も今の人生どんな風に生きていくか、どんな散り方をしたいかなんて考える余裕がないほど目の前のことに精一杯だし、知らないことがたくさんで色んな情報にのまれるし。
結構あまちゃんな考えでのんきに生きているから、意見を伝えたら、人間の先輩に厳しい事を言われたりして上手いこと行かんなあ、と拗ね気味に受け取っちゃうけれど、
大往生はいい人生だったなーって穏やかにおれるように、生き方を考えていこーって思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ30代になってようやく「この人生はおばあちゃんの歳まで地続きなんだ」と実感をした。それまでは自分のおばあちゃんを見てもどこか他人事のようで、自分がおばあちゃんの歳になるとは信じられなかった。
老後の夫婦生活や生き方に関する本作。夫が亡くなり生きる希望を無くし意気消沈していた主人公が、夫の知らなかった一面を知り、そこから生きる活力を見出していく姿がとても興味深く、一気に読んだ。同窓会や同級生や近所の奥さんとの会話など、自分の将来を考えると他人事ではないので身につまされる。
主人公の素直な本音や語尾の「ッ」や「ァ」といったくだけた感じが日常会話のリアルさを感じるのか、とてもテンポよく読める。
岩太郎が母に変わり掛け軸を返しに来たシーンは、岩太郎自身は何の落ち度もないのに、四面楚歌になっているのが少し不憫ではあった。未亡人となったハナさんの幸せな生活を願う。 -
Posted by ブクログ
この手の本はたぶん自分から読むことはないけれど、知り合いから紹介されて手に取った。
定年後の紆余曲折や、その中で変化する夫婦の関係が生々しい。これは定年後に起きる危機の話ではなく、人生に訪れる(超主観的な)困難や変化への向き合い方の1ケースの話と思いながら読み進めた。目指す先を考えながら今をどう対処するのか。どんな判断をする自分でいたいのか。主人公は虚栄心をもっているがメタ認知もしている。それは自身を変化させていくために必要なことで、だから最後はアイロンがけもできたのだと思う。
また、本当に悪いのは不払い起こしたミャンマー企業だけど、人は目に見える誰かのせいにしないと気が済まないのでしょう。それは自分も含めて人の思考はそうなりがちということを学んでおきたいと思う。