田辺青蛙のレビュー一覧

  • 生き屏風

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    「皐月はいつも馬の首の中で眠っている」と衝撃の一文で始まり、一瞬で物語に引き込まれる。
    里を守る小鬼の皐月と、死後屏風に取り憑いた気高い女性の邂逅と融和、そしてその結末とは。
    切なくても心温まる一冊です。

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    2022年02月07日
  • 人魚の石

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    ネタバレ

    かつて祖父母と共に暮らした寺に住職として帰ってきた「私」。庭掃除のついでに池の水を抜くと、そこには真っ白な体をした〈人魚〉が眠っていた。「うお太郎」と名付けた人魚は「お前にはこの山に埋まる〈石〉を見つける能力があるはずだ」と言い、幽霊が封じられた石や嫌いな人間の最期が見える石など不思議な力を持つ石を見せる。心当たりがない「私」は困惑するが、ついには天狗まで現れて「石を探しだせ」と言ってきて……。


    西洋の鉱物幻想が硬質で建築的なイメージを持つのに比べて、中国や日本の鉱物幻想はどこか有機的で柔らかさすら感じるのはなぜだろう。どんなに石が巨大になろうと、手のひらで弄ぶことのできる玩具のようなぬく

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    2021年10月27日
  • 人魚の石

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    面白かったです。
    不思議で、ひんやりしてるのに生々しさがありました。
    主人公がぼんやりしすぎてる、と思いましたが、彼の記憶が彼自身のものではないということを考えるとそうなのかな…って思います。
    人魚、今まで物語で読んできたそれとはかなり違ってるような生物でしたが、うお太郎もヤグロも確かに人外の冷たさがあります。永く生きてそうなヤグロの方が闇が深そう。元人間だったらしい天狗の方がちょっとだけわかりやすい気がします。
    人ではないものの近くにいると、どうしても影響されておかしくなるのかな。石も不思議だし、薄っすら怖い。
    田辺青蛙さんの本初めて読みましたが好みの世界でした。

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    2020年10月15日
  • 生き屏風

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    連作短篇集。表題作と「雪猫」「狐妖の宴」の三篇収録。妖怪中心のちょっと不思議な物語。艶のある優しい怪談がお好きな方に。意外と凡庸な扱いをされる妖鬼・皐月と喋る屏風の関係がよい。出会いと別れと少しの希望があり、全編通して後味のよい小説でした。とくに「狐妖の宴」は春が幸せを運んできたような終わり方で、恐怖心を煽るホラーとは対極にあります。また余談ですが、食べ物やお酒が美味しそうに感じられました。

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    2020年09月18日
  • 人魚の石

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    若い僧侶、人魚、不思議な石、天狗…
    怪奇譚のファンタジー要素しかないと思っていたけど、やられた…。
    殺人、妬み、取引、欲望、絶望…不思議な石に導かれた人々の黒い部分でできた物語。
    ミステリーというよりホラー。
    なれど、僧呂のユキオは頼りないし、人魚のうお太郎は雑で若者口調だし、天狗は横柄だしで、怪奇譚ファンタジーのようにさらりと進むホラー。

    祖父の残した寺で僧侶として生きて行く道を選んだユキオ。庭の池に沈んでいた人魚とのおかしな生活が始まる。
    石にまつわる一話一話のエピソードが読み進むうちに徐々に全貌を表してゆく。
    付箋回収しても謎の部分は多く、何かが終わったのではなく、これからも続く彼らの

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    2020年04月09日
  • 怪談実話系/愛 書き下ろし怪談文芸競作集

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    辻村深月さんの話は怪談だけど、ちょっとホッとする。
    香月日輪さん、初めて読んだ。人間がこわい。
    加門七海さん、福澤さんはさすがの貫禄。
    高野秀行さんのタイのピーの話。数年前も映画になっていたが、ピーがどういうものかよくわからなかった。ちょっとわかった気がする。

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    2019年12月13日
  • 生き屏風

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    ホラーというより、しみじみした寓話だった。しかし、にゃんこ先生ってどこにでも出てくるのな。ビジュアルが頭に浮かぶ作品だし、アニメ化したらいいんじゃないだろか。

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    2019年11月23日
  • 魂追い

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    2015年、24冊目は田辺青蛙『魂追い』。『生き屏風』の続編となります。

    県境守りの妖鬼、皐月は森で魂魄(たましい)を捕らえる「魂追い」の少年、縁(えにし)と出会う。魂魄が漂う「道」に入ってしまった縁と皐月、そして、皐月の愛馬、布団。それを契機に皐月の体は変調をきたす。皐月の体調を戻すため、皐月と縁は「火の山」を目指し旅に出る。

    連作短編四編収録だが、四章構成の皐月と縁との出会いから「火の山」への旅の物語 と捕らえることもできる内容。

    前作の世界を踏襲しつつ、新たに縁という少年の登場で物語は展開していく。皐月の、そして、縁の想いは友情なのか?淡い恋心なのか?はたまた、他の……?さらに、「

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    2015年05月19日
  • 生き屏風

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    2015年17冊目は先月まとめ買いした初読みの作家、田辺青蛙。

    第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作含む、三編の連作短編にして、三部作の始まり。

    あらすじ:「生き屏風」
    県境で一人暮らす妖鬼、皐月。彼女の所へ、造り酒屋の奥さんの霊の話相手になって欲しいという依頼が持ち込まれる。

    「猫雪」
    若くして隠遁生活 を送る次郎。皐月の先代の県境守りである猫先生と出会い、変化(へんげ)の術で雪となる体験をする。約1年後、次郎は再び猫先生の術で雪となることを望むのだった。

    「狐妖の宴」
    惚れ薬を作って欲しいと皐月の所へ依頼がある。しかし、皐月はその調合を知らない。思い当たるのは、里の外れに住

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    2015年04月01日
  • 生き屏風

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     妖鬼の皐月と様々な人や妖怪との不思議な触れ合いを描く日本ホラー小説大賞受賞作を収録した連作短編。

     すごくとぼけた味わいのある短編集です。ホラー小説大賞の受賞作ですが、怖さはなく皐月と人は普通に会話しています。

     話をするだけでなく皐月は色々な頼みごとをされます。表題作「生き屏風」では霊が憑りついた屏風の話し相手、「狐妖の宴」では女の子に頼まれ惚れ薬を作るため一緒にヤモリを探します。

     こうして読んでいると日本昔話を読んでいるよう。登場人物たちみんなほのぼのしていて、肩ひじ張らず穏やかな気持ちで読むことができました。

     個人的に印象的だったのが「猫雪」の冒頭。皐月の先輩(?)の妖怪が

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    2015年01月26日
  • 生き屏風

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    ほのぼのした優しい空気の流れる和製ファンタジー。むかしむかし妖怪と人間が共に暮らしていた時代、ある村のはずれに、馬の首で眠ることで知られる少女の姿の妖鬼が住んでいました。村人は彼女に依頼や相談事を持ち込むこともしばしばで。という感じの話。民話のようなお伽話のような淡々としつつも懐かしい雰囲気にひたり、ゆったりとした気分で物語を楽しめました。
    続巻もあるようなので読みます。

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    2014年12月02日
  • 生き屏風

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    【本の内容】
    村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。

    病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。

    屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。

    そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。

    嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき―。

    しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。

    第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作に、書き下ろしの二編を加えた連作短編集。

    2作目の「猫雪」や続く「狐妖の宴」も、魅力的な、一癖もふ

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    2014年09月02日
  • 怪談実話系/愛 書き下ろし怪談文芸競作集

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    今回のテーマは「愛」。
    うすぐら~い印象になりますね、怪談のテーマが愛だと。そういう印象持つのは、愛っていうハッピーなイメージと同じぐらいに、どろどろした憎しみのイメージがあるからでしょうね。

    そんな恋愛したことないですが。

    全話通じて、過ぎたるは及ばざるが如し、っていうのが思い浮かびます。なんかもう、気持ち悪いさが酷い。
    怪談って、怖さなんだけども、今回は気持ち悪さです。
    そういうお話になるきっかけの心の動き自体は、理解できないものではなかったりするので、余計に。
    行き過ぎた愛欲の気持ち悪さ。異性・同性・家族・他人問わず。

    「犬小屋のこと」が一番怖く。
    「ある姉妹」「隣のベッド」で人の

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    2014年04月10日
  • 生き屏風

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    ぱらぱら読むうちに何となく気になって、最後は 物語にゆらゆらと気持ち良く取り込まれてしまった。妖達や生き霊が変に超然としていないのが良い感じ。書き下ろしの「猫雪」は、本当に湯豆腐でも食べながら一杯やりつつゆったりと頁をめくりたくなります。

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    2012年10月03日
  • 魂追い

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    皐月シリーズの二作目です。

    相変わらず里に住み、県境の守りを続けていた皐月は、魂魄を捕らえて売る事を生業とする、魂追いの少年、縁と出会います。

    最初は、妖鬼と人間、という関係なのですが、色々な事を経て、徐々に二人の距離は縮まっていきます。
    縁の成長の描かれ方も細かくて、最初は本当に子供、という感じなのですが、最後には、かなり大人になっています。

    今回は、前作に登場した生き屏風の謎も少し語られ、この物語の世界が、よりくっきりと感じられました。
    先生の事も、少しずつわかってきて、ますます好きになりました。

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    2012年02月01日
  • 生き屏風

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    第15回日本ホラー小説大賞の、短編賞受賞作品で、妖怪好きにはたまらない内容です。

    悪いものから集落を守る、県境の守りを務める妖鬼の皐月は、翠色の瞳と額の小さい角以外は、普通の少女のような外見です。
    実は、集落に住むどの人間よりも長く生きているのですが、他の妖たちから見ると、まだまだ半人前で、頼りないところもあるようです。

    皐月と集落の人間達、そして他の、人ではない者達との関わりが、淡々と描かれています。
    大きな事件が起こる訳でもないのですが、すーっと引き込まれて行く世界でした。

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    2012年02月01日
  • 生き屏風

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    日本ホラー大賞短篇賞授賞作。ホラーとついているので怖いのかと思っていたが、可愛い妖鬼が主役のほんわか昔話。文体も読みやすく、出てくるキャラクターも皆、愛らしい。私は凄く好きです!

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    2012年01月17日
  • 魂追い

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    暗い様な、なごやかな様な、なんとも言えない雰囲気がある。
    "妖怪"と言う単語に惹かれるなら買って損はないはず。
    あと、食べ物の描写がやけに美味しそう。そばが食べたくなった。

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    2012年01月15日
  • 生き屏風

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    恒川光太郎を彷彿とさせる、不思議系ホラー小説
    一人の妖鬼に焦点があてられているけど、短編がいくつも入っている感じ

    主人公が結構魅力的で、ドキドキとかスリルとか、ホラーらしい怖さ(?)は無いけど面白かった!
    ちょっと昔話みたい

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    2011年11月03日
  • 生き屏風

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    ホラーというより妖怪ファンタジー。 軽めの文体だけど結構面白かった。たやすく漫画化・アニメ化されてしまいそうな雰囲気だけど著者が漫画好きそうだから別にいいや。
    二つ目の『猫雪』が好き。描写が上手くて、何回も読み返してしまった。

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    2011年03月25日