あらすじ
村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき――。しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。第15回ホラー小説大賞短編賞受賞作。
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どの話も好き。
死んだ奥方が屏風にただ憑依したのではなく、屏風の中で煙草をふかし、屏風から手を伸ばして飲み食いすることができる。
妖鬼・皐月が語るお話も面白い。
奥方の望みで屏風は海に沈んだんだけど、別の夏に皐月が家で真っ赤な屏風と笑いながら話してたとあるから、戻ってきちゃったのかな??
雪になった男と猫に化けてた元里守りの妖の話とか、恋する村娘とアドバイスする妖狐の話とか好きがいっぱい。
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「皐月はいつも馬の首の中で眠っている」と衝撃の一文で始まり、一瞬で物語に引き込まれる。
里を守る小鬼の皐月と、死後屏風に取り憑いた気高い女性の邂逅と融和、そしてその結末とは。
切なくても心温まる一冊です。
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連作短篇集。表題作と「雪猫」「狐妖の宴」の三篇収録。妖怪中心のちょっと不思議な物語。艶のある優しい怪談がお好きな方に。意外と凡庸な扱いをされる妖鬼・皐月と喋る屏風の関係がよい。出会いと別れと少しの希望があり、全編通して後味のよい小説でした。とくに「狐妖の宴」は春が幸せを運んできたような終わり方で、恐怖心を煽るホラーとは対極にあります。また余談ですが、食べ物やお酒が美味しそうに感じられました。
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ホラーというより、しみじみした寓話だった。しかし、にゃんこ先生ってどこにでも出てくるのな。ビジュアルが頭に浮かぶ作品だし、アニメ化したらいいんじゃないだろか。
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2015年17冊目は先月まとめ買いした初読みの作家、田辺青蛙。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作含む、三編の連作短編にして、三部作の始まり。
あらすじ:「生き屏風」
県境で一人暮らす妖鬼、皐月。彼女の所へ、造り酒屋の奥さんの霊の話相手になって欲しいという依頼が持ち込まれる。
「猫雪」
若くして隠遁生活 を送る次郎。皐月の先代の県境守りである猫先生と出会い、変化(へんげ)の術で雪となる体験をする。約1年後、次郎は再び猫先生の術で雪となることを望むのだった。
「狐妖の宴」
惚れ薬を作って欲しいと皐月の所へ依頼がある。しかし、皐月はその調合を知らない。思い当たるのは、里の外れに住む狐妖であった。
本書解説、東雅夫氏の「癒しのホラー」とは言い得て妙。一編目の冒頭の皐月の眠り方こそグロテスク(その割に筆致が軽く感じる)ではある。しかし、全体的には、鬼や妖(あやかし)と人とが共生する、日本昔話のような感覚。恒川光太郎とは少々ベクトルが異なる、和風ファンタジーかな?!
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妖鬼の皐月と様々な人や妖怪との不思議な触れ合いを描く日本ホラー小説大賞受賞作を収録した連作短編。
すごくとぼけた味わいのある短編集です。ホラー小説大賞の受賞作ですが、怖さはなく皐月と人は普通に会話しています。
話をするだけでなく皐月は色々な頼みごとをされます。表題作「生き屏風」では霊が憑りついた屏風の話し相手、「狐妖の宴」では女の子に頼まれ惚れ薬を作るため一緒にヤモリを探します。
こうして読んでいると日本昔話を読んでいるよう。登場人物たちみんなほのぼのしていて、肩ひじ張らず穏やかな気持ちで読むことができました。
個人的に印象的だったのが「猫雪」の冒頭。皐月の先輩(?)の妖怪がある男に「何になりたい?」と問いかけると男は「雪になりたい」と答えるのですが、
ここで雪という答えを持ってくるのがとてもセンスがあるなあ、と思いました。確かに雪のようにひらひらと落ちて、そして地面に落ちてそっと溶けゆく、ってなんだかロマンチックですもんね。
雰囲気の非常にいい作品だったので皐月の出てくる次巻以降も読んでみたいなあ、と思いました。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞「生き屏風」
Posted by ブクログ
ほのぼのした優しい空気の流れる和製ファンタジー。むかしむかし妖怪と人間が共に暮らしていた時代、ある村のはずれに、馬の首で眠ることで知られる少女の姿の妖鬼が住んでいました。村人は彼女に依頼や相談事を持ち込むこともしばしばで。という感じの話。民話のようなお伽話のような淡々としつつも懐かしい雰囲気にひたり、ゆったりとした気分で物語を楽しめました。
続巻もあるようなので読みます。
Posted by ブクログ
【本の内容】
村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。
病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。
屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。
そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。
嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき―。
しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
[ 目次 ]
[ POP ]
日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作に、書き下ろしの二編を加えた連作短編集。
2作目の「猫雪」や続く「狐妖の宴」も、魅力的な、一癖もふた癖もある妖怪や人間達が登場して面白いが、なんといっても「生き屏風」が良かった。
「皐月はいつも馬の首の中で眠っている」
まずこの冒頭から掴まれる!
村境に住む皐月は、飼っている馬(その名も「布団」)の首の中でないと寝られない妖鬼だ。
物語は鬼や妖怪が人間と共存しているいつかの時代の日本が舞台のようだが、丁寧な時代背景や設定の説明はない。
だからこそ、読者をすっと物語世界に引き込むこの一文は秀逸だと思う。
皐月は、死んでから屏風に取り付きわがまま放題の酒屋の奥方に、話し相手として雇われる。
シェヘラザードよろしく皐月が奥方に語る不思議な体験や出逢った妖怪の話は、過度に面白そうに描写しているのではなく、むしろ淡々としている。
ただその淡白なリズムが、作品全体の独特の雰囲気を生み出している。
皐月と奥方が親密になっていく様子や、じんわりと心に広がる結末もいい。
短編だけではなくぜひ長編も読んで見たいと思う作家だ。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
ぱらぱら読むうちに何となく気になって、最後は 物語にゆらゆらと気持ち良く取り込まれてしまった。妖達や生き霊が変に超然としていないのが良い感じ。書き下ろしの「猫雪」は、本当に湯豆腐でも食べながら一杯やりつつゆったりと頁をめくりたくなります。
Posted by ブクログ
第15回日本ホラー小説大賞の、短編賞受賞作品で、妖怪好きにはたまらない内容です。
悪いものから集落を守る、県境の守りを務める妖鬼の皐月は、翠色の瞳と額の小さい角以外は、普通の少女のような外見です。
実は、集落に住むどの人間よりも長く生きているのですが、他の妖たちから見ると、まだまだ半人前で、頼りないところもあるようです。
皐月と集落の人間達、そして他の、人ではない者達との関わりが、淡々と描かれています。
大きな事件が起こる訳でもないのですが、すーっと引き込まれて行く世界でした。
Posted by ブクログ
日本ホラー大賞短篇賞授賞作。ホラーとついているので怖いのかと思っていたが、可愛い妖鬼が主役のほんわか昔話。文体も読みやすく、出てくるキャラクターも皆、愛らしい。私は凄く好きです!
Posted by ブクログ
恒川光太郎を彷彿とさせる、不思議系ホラー小説
一人の妖鬼に焦点があてられているけど、短編がいくつも入っている感じ
主人公が結構魅力的で、ドキドキとかスリルとか、ホラーらしい怖さ(?)は無いけど面白かった!
ちょっと昔話みたい
Posted by ブクログ
ホラーというより妖怪ファンタジー。 軽めの文体だけど結構面白かった。たやすく漫画化・アニメ化されてしまいそうな雰囲気だけど著者が漫画好きそうだから別にいいや。
二つ目の『猫雪』が好き。描写が上手くて、何回も読み返してしまった。
Posted by ブクログ
ホラー大賞といいつつ、いわゆる恐怖やグロテスクさを売りにするホラーとは全くかけ離れた上質のファンタジー。淡々とした中にある儚さや切なさ、諦観はどこか『夏目友人帳』や『キノ』シリーズに通底するものを感じる。続編の《魂追い》が飛躍的に完成度があがった反面、輪郭がはっきりしすぎて一作目の魅力になっていた不安定な消えてしまって残念。表紙イラストも谷山彩子のイラストの方がフィットしていた。《生き屏風》と《猫雪》が秀逸。
Posted by ブクログ
「皐月はいつも馬の首の中で眠っている」
この書き出しで、掴まってしまった。
主人公は妖鬼の皐月。
県境で余所の土地から好くないモノ(病とか)が
来ないように守っている妖である。
この作品世界では、人が妖の存在を認めていて、
ほどよい距離を保ちながら生活している。
人と妖がそれぞれに振り返る思い出や想いは
淡々と語られながらもどこか滑稽で切なくて、
それでいて結末が優しい気持ちになれるのがいい。
飲み食いのシーンがもの凄くそそられます。
癒し系ホラー?というか「家守綺譚」のような
ファンタジーだと思う。
楽しませていただきました。
Posted by ブクログ
ホラー小説大賞短編賞。ホラー、といってもあまり怖くはないです。どこかユーモラスでほんわかとした、メルヘンめいたお話。キャラクターもユニークで魅力的。これはシリーズとして読みたいですね。
やはり表題作が良いです。読んでいると情景が目に浮かぶよう。ラストの海のシーンでかなりしんみりとした気分になったのですが。この結末は良いよなあ~。ありうる結末だったのだろうけど、思いつきませんでした。
Posted by ブクログ
ホラーと聞いて、読む前に少し身構えてしまった自分が馬鹿らしい。
人ではないものがそこにいて、ただ生きている。人をどうにかしようなど、そのような思惑なく、人と微妙な距離感を持って生活をしている。
人でないものが人や同じく人でないものと会話をしている。確かにそこには各々の物語があるのだろうが、本としてはそれだけが内容だ。
しかし、それでも感じられる雰囲気はほんのりと暖かく、気付けば語り手の話を聞きもらさないように耳を近づけ、ところどころ首肯し、それでそれでと話を促している、そんな不思議な体験ができた。
Posted by ブクログ
第15回ホラー小説大賞の小説中「庵堂三兄弟の聖職」と「粘膜人間」と本作とどれにしようか悩んだ末、
「庵堂三兄弟の聖職」は書評がどうも微妙だし、「粘膜人間」はサイコー!とのことだが、非常に描写がグロそうで読むのに勇気が要りそうなので
こちらを購入。
雰囲気的には夏目友人帳くらいのホラーさで程よかった。
主人公の妖鬼の性格描写が非常に人間味があって、妙に読みやすい。
3話あるうちどれも良かったが、やはり標題の屏風の話が一番好きかも。
最後のエピソード(オチ?)がすごく暖か。ベタかもしれないけどこういうのが好き。
Posted by ブクログ
ペンネーム?も凝ってますこと。ジャンルとしてはホラーですが、帯にも書いてあるように、しみじみ泣ける人情モノに仕上がっています。まだ新人さんのようなので、あまり作品出てないようですが、他のも探してみたいと思います。
Posted by ブクログ
県境で里を守る妖鬼の皐月と、そのまわりの妖や人との関わりを描いた、耽美で静かな物語。
連作短編のような3つのお話。
妖や霊などホラーの要素はあるけれど、怖さは一切なく、どちらかというとやさしいお話。すこし、主人公の皐月がうすい気がした。シリーズを重ねればもっと皐月も魅力的になるかしら。
ふたつめの「猫雪」がよかった。
Posted by ブクログ
あらすじ
↓
村の酒屋の死んだはずの奥方が、あの世から戻ってきて家の屏風に取り付いてしまった。
「村はずれに住む妖鬼の皐月」は、屏風の奥方の相手をして、
退屈を紛らわしてほしいと頼まれ、しぶしぶ出かけていったのだが――。
↑
あらすじ終了
「村はずれに住む妖鬼の皐月」←これ重要
だって、この娘が主人公の話だから(他の短編も、この先も)
物語に登場する者達は怪異側の生き物ですが、
話自体はもの悲しさを感じる話です
怖くは無い
むしろ、登場する人間の方が恐ろしいかなと
屏風の方に感情移入してしまいますよ
ただ、この皐月の寝方が……
グロいというか、不可思議と言うか
作者の方の文書で理解は出来るのですが、本当に合ってるのか納得出来ない……
是非、そこは読んで欲しい
ちなみに、続刊として、
「魂追い」「皐月鬼」が出てます
全3部作になっているようなので、続きも読む予定
Posted by ブクログ
優しい妖怪もの。
馬の首で眠る皐月という少女の鬼は村境に住み、わるいものの侵入を防いでいる。
村人からのお供えをもらったり、依頼を受けたりして暮らしている。
ある日、亡くなったおかみさんが屏風に憑いて、その話相手をして欲しいとの依頼があり…「生き屏風」
作者は遠野物語や民俗学、妖怪ものが大好きなんだなあ、と思った。
妖怪と人間がつかず離れずで暮らしている、のほほんとした世界観でした。
続編がありますが、表紙はこちらが一番雰囲気があって好きです。
Posted by ブクログ
全く怖くない妖怪短編集。
大きな事件が起こる訳でもなく
人と妖怪がなんとなく交わりながら
でもお互いに深入りしないよぅに暮らしてる
そんな世界のお話です。
淡々としてて
不思議な雰囲気があって
もぅちょっと長い作品が読みたくなる。
Posted by ブクログ
■村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき―。しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
■■柔らかく優しい、そして少し切ない。妖怪をテーマにした短編集。
Posted by ブクログ
作者の名前、読めるかね? 私しゃ思いっきり「タナベ アオガエル」と読んでおった
シャレで付けた名前かの~とか思ったもんでの(ハハハハハハ)
どうやら京田辺市に在住し、蛙好きってことで決定したペンネームらしい
本来「タナベ セイア」と読むそうな~(笑)絶対に読めん!(ハハハハハ)
ちなみに…女性だそうな。
村はずれに人間に良く似た妖鬼の「皐月」が住んでおる。
村に悪い気や物の怪が入ってこないようにと、目を光らせておる。
ある日、村にある大きな酒屋から使いが来る。
「死んだはずの奥方が…あの世から舞い戻り、家の屏風に取り付いた」と言うのだ。
へ~~~~~~。そりゃ~見てみたい!っと思ったのは私だが…(ハハハハハ)
使いの者が「奥方の相手をし、退屈を紛らわせてほしい」っと頼んで来たのを
皐月は、ちょっと嫌がる。
村を守っているハズの「皐月」に対し、酒屋から来た使いの者は恐れる風もなく
また、あり難がる風もなく、むしろちょっとした「こずるい人間」を出してくる
「ガオ~~!」と脅して人間を撃退するかと思いきや
皐月は渋々と出かけて行くことにする。
死んだ奥方が、家の屏風に乗り移り「酒を持ってこい」とか「美味いもん食わせろ」だとか
あ~だ、こ~だと家人をこき使う(笑)
いっそのこと屏風を縄で縛って押入れにでも入れたらエエのに、とも思ったが
それが出来ない「家庭の事情」とかがあるらしい(笑)
さても妖しとしては若い「皐月」は、どうするんじゃろう??ってなお話しと
皐月の先任者であった猫に化けた妖怪が、人間の男に一瞬の夢を与えた「猫雪」
ホレ薬を作って欲しいと言う少女に、恋多き狐の妖怪を紹介する「狐妖の宴」
など、3編が収録されておる。
リズミカルでノホホ~ンとした文体に、怖さは微塵も感じられないが
そこそこ気持ちが安らぐのはナゼだろうか。
人と妖しがこうも巧く付き合える世界なら、少し参加してみたくなる(笑)
私が育った北海道の地にも妖怪は沢山居た。
元はアイヌ民族の伝承なので、日本語の妖怪という言葉が当てはまるかどうかは解らん
有名ところで言えば「コロポックル」。
アイヌの人達が北海道に移住してくる以前に住んでいた先住民族だったらしい
さて、それとは別に先に住んでいたアイヌ民族に疱瘡を司る神と共に訪れた我等和人。
沢山のアイヌの人々が疱瘡で死ぬのを見たアイヌの神が疱瘡神と戦い
最後の最後に打ち勝った神が、水死して生まれたのが「ミンツチ」と言う妖怪である。
私が育った地域の、そばに流れる石狩川に住んでいた。
形状はカッパと変わりない。北海道全域に広がる河童伝説の「祖」じゃないかと思う(笑)
豊漁も司るが、年に数人川へ引きずり込み水死させるので困ったもんじゃと考えた人々が
「もそっと、上流へ行ってくれねぇ~べか」とお願いしたところ
あっさりと上流へ引っ越してくれたそうだが、それと同時に魚も採れなくなったらしい
確かに私が生まれた頃には「ミンツチ」は既に引っ越した後だったようで
生活用水に汚染された石狩川には、魚の影なんぞまったく居なかった(笑)
それでも川は氾濫し、年に数人死亡者を出していたもんで
上流にデッカイダムを作り、高い堤防も作り、生活用水を浄化し
私が成人するころには、人が溺れることもなく、シャケが遡上する綺麗な川となっていた
多分…世界中で一番信用の置けない私の父が言うことだから、まったく当てにはならないが
石狩川の堤防がまだ低く土で出来ていたころ
氾濫した川の様子を見に行った父が、川の真ん中あたりで濁流をものともせず
ボ~っと立っておる人影を見たとか言っておったことがある。
その後その人影は、ジャボジャボと川を渡り向こう岸へ渡ったかっと思ったら…
フっと消えたそうな。
バー様を筆頭に家族全員「そりゃアンタ。誰か溺れてたんだべさ」と考えたが
行方不明になった人は居なかったそうだ。
だいたい、河が氾濫しそうじゃっと聞くと…わざわざ危険な川へ出かけていく男性がおるが
こういう時こそ「ミンツチ」がテグスネ引いて待っておるのかもしれん(笑)
あんまし最近暑いもんで、川にまつわる妖怪の話をしてみたが…
はて、涼しくなったかの?(ハハハハハ)
私が育った頃は、既に妖怪の類は奥地へ引っ越してしまった後だったが
それでも時々は里へ現れておった(笑)
今、彼らは何処でどうしておるんじゃろう? なんて思っていたら
しっかりと人間に混じって会社経営しておる(ブワハハハハハ)
まさか、そんな会社に就職するとは思いもせなんだがの~~~(笑)
Posted by ブクログ
第15回の日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
ホラーといっても妖怪とかファンタジックな要素があるからそう分類されているだけで、別に怖いわけではなく、「癒し系幻想小説」とでも言うべき内容だった。人とつかず離れずの微妙な距離感で暮らす妖たちの日常。