鳥飼玖美子のレビュー一覧
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2019年の大学入試改革/高大接続改革反対運動は、多くの静かなスピーカーとアクティヴィストを生みだした。本書は、中でもとくに注目され、重要な役割を果たした3人の大学生と高校生それぞれに著者が行ったインタビューをまとめたもの。インタビュイーの3人がとてもクレバーなのは当然として、著者の問いかけから、その人となりというか、魅力的な個性とバックグラウンドが伝わってくる。個人的には、音晴君が高校現代文でソシュールやバルトを読むことで、「言葉を紡ぎながら思考を考える」「言葉に運ばれている」という認識を実感をこめて語っているところが、まさに「我が意を得たり」という感じだった。
ただ、これはむしろ編集 -
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日本人に根強い「ペラペラ」コンプレックス。入試制度、学習指導要領の改訂(改悪?)が進む中、日本人のとっての英語コミュニケーションのあり方を考える一冊。
読書論関係の著作のヒットの多い齋藤孝氏。専門は教育学、コミュニケーション論。一方の鳥飼玖美子さんは通訳、翻訳の大御所。この二人による対談。中央公論に掲載されたものを膨らませた内容。
日本人の英語教育の問題点の指摘だけでなくメリットも多く挙げているところが良い。近年は会話を重視する姿勢であるが、日本語で英文法を学ぶことや、英文解釈の英語学習に留まらない利点など。また英語を学ぶ前に日本語の骨格、日本に関する智識が必要であることなど示唆に富む内容 -
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2016年講談社現代新書。
2011年『国際共通語としての英語』の続編として「英語格差」を飛び越える英語学習の提案として書いたという。
英語よりまず話す内容をとの出張も。
第1部 英語は基礎力-発音、語彙、コンテクスト、文法
第1講 「なんで英語やるの?」
第2講 「発音」は基本をおさえるー「国際共通語」はハチャメチャ英語ではない
第3講 先立つものは「語彙」
第4講 「コンテクスト」がすべてを決める
第5講 話すためにこそ文法
第2部 英語の学習法―訳す、スキル、試験、デジタル、そして映画
第6講 訳すことの効用
第7講 英語はスキルか内容か
第8講 英語力試験にめげない -
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ネタバレ臨教審第二次答申を受け1989年に告示された「学習指導要領」以来、英語教育の迷走が続く。この時、英語教育の目的が「コミュニケーション」にあると明記され、その能力の要素は「文法的能力・談話能力・社会言語能力・方略的能力」だったにも拘わらず、当時提示された選択科目「オーラル・コミュニケーション」という科目が注目を集め、コミュニケーション=「聞く・話す」という大きな誤解を生じてしまった。
そもそも「コミュニケーションというのは、数値では表れない、いわば人間力が反映されるものである。多様な人間と接し、多様な事柄に挑戦し体験することで人間として成長し、語るべき内容を持って初めて、コミュニケーションの必要 -
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ALTに「面白いよ」と教えてもらって読んでみました。
単に,現代の英語教育についてもの申す本ではなく,日本人と英語との出会いの話もあって,英語教育の歴史的な流れもわかりました。単純に,おもしろかったです。
今の早期英語教育の問題は,100年前にもあったことがわかります。著者は,1894年に,すでにこのときから岡倉天心の弟であり英語学者の岡倉由三郎によって指摘されていた弊害を列挙した後で次のように述べています。
条件整備が不十分なまま,問題山積であるにもかかわらず小学校英語の教科化が始まろうとしている現状を見ると,100年前にも同じようなことをしていたのに,なぜ歴史から学ぼうとしないの -
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英語教育、国語教育、社会学のプロの方が、それぞれ異なる立場からことばの教育について論を交わしている本。議論の中心となるのが、大村はまさんという国語教師の方が実践した教育方法。半世紀の間、ひたすら、言葉を使うことの重要さを子供に感じてもらうような実習を自ら考えだしては実践したらしい。
論点としては想像以上に幅広く、面白かった。国語教育・英語教育に共通する現在の問題点や重要な点は何か?ことばの力を育てるために有効な方法は何か?そもそも教育について考えるとき、「理論」とはどんなふうにつかうべきものか?
最後にまとめられていた通り、ことばの教育=考える力の教育という点が印象的だったし納得した。
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本書の主題を一言でいうと、英語で会話するにあたっての「暗黙のルール」と、それについて気づくことの重要性、ということになるかと思います。
私は、ふだん英語で会話する機会は多くありませんが、時折「セカンドライフ」というウェブ上のゲームで外国人の人とチャットをします。その際気づくことには、相手の言っていることがさっぱりわからないときというのは、難しい単語が出てきた時ではなく、むしろ、やさしいけど多義的な単語が出てきた時です。ネイティブであれば、「その文脈ではこの意味で決まりだろう」というのは常識なのでしょう。しかし、日本人をはじめとするノンネイティブは、その単語が使われるコンテクストをネイティブ -
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鳥飼先生のNHKのニュースで英会話いつも見ていて、日本の英語教育(グローバル人材育成)が根本的にずれている政策に警鐘を、鳴らし続けている。日本の英語教育の早期化への問題や英語での授業推進による英語学習のさらなる低下や生徒のみならず英語教師への負荷やそのために学習ご深くならず浅くなっていまう危惧、民間の英語検定を受験対策に、するなど、単なる受験対策では英語教育向上には繋がらないことなど、説明してくれている。鳥飼先生は、真のグローバル人材とは、単に英語が話せると言うだけでなく、その国の背景や文化なども、理解することをいつも一貫して話してくれている。これからの日本の英語教育、流されずに考えたいテーマ
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「あとがき」で著者は、「どのように学ぶかは学習者が個々に考えて選択すべきことだと考えてきた私が、あえて学習方法に踏み込んだ」と述べており、本文中ではとくに、「英語を覚えようとするのではなく、知りたい内容、興味のある内容を英語で学ぶ」というアプローチが取り上げられています。
ただしそれも、自分なりの英語学習の目的を設定し、自分にとって適切な学習法を自分自身で考える「メタ認知ストラテジー」の重要性から導かれる学習方法であり、著者の基本的なスタンスは少しも変わってはいないと言ってよいと思います。とくに、音読やシャドーイング「だけやっていればいい」といったような、目標もない盲目的な英語学習を反省して -
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ネタバレ同著者による『国際共通語としての英語』(2014年),『本物の英語力』(2015) (いずれも講談社現代新書)に続く続編です。
英語を使うには単語やフレーズ,そして単語の適切な並べ方(いわゆる文法)を学ぶ必要がありますが,英語でやり取りする場合には日本語で行う場合と多少異なるコミュニケーション上の約束事があります。本書はそのようなコミュニケーション・ストラテジーを紹介したもので,特に鳥飼氏の前著『本物の英語力』(2015)と対を成すものと解釈できます。
鳥飼氏の言う「コミュニケーション・ストラテジー」とはどのようなものかというと,うなずきやあいづちに関する日本語と英語の差や,エレベータ -
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英米人などのように、英語を母語とする人たちは4億人程度なのに対し、インドやシンガポールなどのように英語が公用語の人たちと、英語を外国語として使う国の人たちを合わせると、十数億人になるという。なので、我々が英語を使う相手もそれら十数億人になる確率がはるかに多く、そのような時代では英語は英米人の基準に合わせる必要はない時代になっていると著者は主張する。つまり、英語はネイティブレベルを目指す必要はなく、言語としての最低限のルール(文法、発音、アクセント、イントネーション)が守られていれば十分で、それを前提とした英語教育をすべきである、というのが本書の主張である。
英語に限らず、語学学習にはネイティブ -
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TOEIC批判?
日本の企業が社内英語を公用語にするってどうよ?とは誰でも思うところ。
社内が人員的にもグローバル化していて必要があって英語が公用語化している会社ならまだしも、
今後グローバル展開に必要だといって日本人の会議や書類を英語化するなんて、そりゃおかしいでしょ。
ということいついて専門家の立場で一刀両断しているのが本書です。
特にそれらの会社が判断基準にしているTOEICは槍玉に挙がっていて、
たとえば700点以上、というのがどの程度のものなのか、
ビジネスとして使える程度なのかについて相当厳しいご意見を述べられています。
まあ、実際そのとおりなんでしょうね。
英語力がどうという前