大島弓子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『グーグルは猫である』を除いてはじめて大島弓子を読んだ。そして恋した。
『バナナブレッドのプディング』の主人公、衣良(いら)は幼いころから彼女の「神さま」同然であったお姉さんの沙良(さら)の結婚にショックを受ける。転校先、幼なじみの御茶屋さえ子と再会し、精神的不安定さを埋める為に恋愛を進められる。しかし衣良の理想の男性像は「うしろめたさを感じている男色家」。さえ子の兄をその理想の男性だと勘違いした衣良は翌日、姉の結婚式に自分の結婚式をする。一方さえ子は自分の想い人であるサッカー部の部部長奥上くんが、コーチである兄を好きだと知る。
結婚のかたち、それぞれの恋の模様、切実に生きる祈りが描かれて -
Posted by ブクログ
「きょうはあしたの前日だから・・・だからこわくてしかたないんですわ」
最初のページにある、この衣良ちゃんのセリフが大好きです。
繊細で、不器用で、孤独を抱えながらも自分を納得させながらけなげに生活する彼女が愛おしい。
そんなちょっと浮世離れしている彼女を見守る峠さん、さえ子ちゃん始めとする登場人物もきらきら輝いてみえます。
漫画ってほとんど読まないんだけど、この作品だけは特別で、何度も読み返しています。自分の中の抽象的な悩みや疑問に抽象的な答えを与えてくれる、そんな作品です。
「ぼくはきみがだい好きだ 薔薇のしげみのところからずっとね」
「ミルクを飲んで『あしたね』『またあしたね』」
こうい -
Posted by ブクログ
大島弓子は何を読んでも素晴らしい。
素晴らしいのだが、それを百も承知で言うとすれば、今回初めて読んだこの短編集は最高傑作(のひとつ)だと思う。
平成になってからの作品ばかりだが、とにかくどれもこれも恐ろしいほどクオリティが高い。そして、彼女らしい幻想と哲学が全開だ。
そこで描かれるのは、世界の終りと向き合う田舎の女子高生、都会から田舎へ移住した若いカップル、若年性痴呆症にかかった女子大生などなど、なにかしら欠落を抱えた、あるいは欠落に向き合おうとする人々だ。
残酷な現実とそれを乗り越えるための幻想。
そして、跳躍はいつも意図せずふいにやってくる。
欠落はなにも変わらない。
だが世 -
Posted by ブクログ
「8月に生まれる子ども」
青春の真っ只中で、急に老化が始まる少女。
肉体的にも、精神的にも加速度をつけて、変化していく。
症状が進み、ついには自分が何者かということも細切れの意識のなか、ゆがんだ字で手紙を書く。
たとえこうこうと眠るだけになっても、どんな姿になろうと、最後の最後まで生かして欲しい、という内容だったと思う。
自分なら、そんなこと思えない。絶望すると思った、、、。
初めてこの本を読んだときは、まだ学生だった。
30代の今、読み返せば、生きたいというその少女の言葉に救われる思いがする。
また、時間を置いて読み返したい。
生をまっとうすることについて、色々思いを馳せます。 -
Posted by ブクログ
痛い、あまりに痛い。何度読んでも涙がこらえられず、海に向かって叫ぶ場面で号泣してしまう。なぜなら、私もそうなっていたはずの少女時代だったから。
周りが見えず、自分のこと(大好きなこと)だけに一直線になって、気がついたら取り返しのつかないことがすべて自分のせいでおこっている。その恐怖、そんなふうにして大人になりたくなかった、なぜ一度やり直させてくれないの。
周りを傷つけ、だけど助けられ、うんとうんと愛されている主人公は前に進んでいけたけど、もしかしたら大島弓子は救いなんか描きたくなかったかもしれない。だって、救いがないのが現実だから。でも、これは少女マンガなのだ。私の大好きな、ハッピーエンドにな -
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須和野家に拾われた捨て猫・須和野チビ猫の目を通して描かれる、人間と猫の日常。決して異世界の話ではないのだが、猫の視点から描くことでファンタジックな雰囲気を帯びている。
猫は人間の姿で描かれているが、行動や思考はあくまで猫である。
小猫の命を抱いてるようで、愛おしむように一話一話丁寧に読んだ。
チビ猫の可愛らしさも凄まじいのだが、ただの「猫が可愛いだけの漫画」にせず、厳しさをもって猫や人間の生活を描いている点が素敵。
大島弓子さんのマンガって絵柄なんかもふんわりしていて少女趣味が強い感じだけど、そのシビアで切実な内容に毎回驚かされる。家族関係が破綻しそうだったり、社会に馴染めない苦悩だったり、