曽根圭介のレビュー一覧
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作者の小気味よい底意地の悪さ、
もとい小説という表現の舞台に対する一種の軽薄さが実に中毒性がある
本作に収録されている「熱帯夜」「あげくの果て」「最後の言い訳」のどれもがきれいにまとまった短編作品
ただ作品全体に漂う退廃した雰囲気、
特に「最後の言い訳」ラストのちゃぶ台返しには
「小説とは格式高いものである」なんて高尚な思い込みを持っている奴ほど面喰らう
直球勝負などはせず、超山なりのスローボールやふにゃふにゃ曲がるナックルボールで打つ気満々の四番バッターを手球に取ってグローブの裏でニタニタ笑いながら悠々とベンチに帰っていく
テクニックのある人間が本気で読者を舐め切ってやろうとしたため -
Posted by ブクログ
ネタバレ連続幼女殺害事件の犯人逮捕に苦戦をし、やっとの思いで容疑者に辿り着き、逮捕をした警察たち。
刑事の勘、容疑者の怪しい態度、過去の容疑など疑うポイントは山ほどあるが決め手がない。
最終的には自白をもぎとったものの、達成感を味わう主人公に横槍がはいる。
本当に逮捕したのは真犯人なのか。
2年後、また同様の事件が起きる。
この2件だけではなく、昔の事件も別で犯人がいるのでは?
疑惑にかられ調べてば調べるほど怪しい点が出てくる。自分が過去に巻き込まれた事件も本当は…?
最後の終わり方がびっくり。
結局真犯人も宇津木も資産家の遺族に始末されたのか…?
こんな冤罪は本当にあるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
「暴落」、「受難」、「鼻」の3編からなる。
暴落
人に価値を結びつけるとどうなるか、暴落するとどうなるか、というもの。
メガバンク勤務の主人公が法令に抵触しまくるあたりに疑問を抱く。
またミステリの読みすぎか、オチが読めてしまう。
ただその世界観から漂う臭気には、息の詰まるような凄まじいリアリティを感じた。
受難
都会の闇に閉じ込められる男。
ビルの間に構築したディストピア。
世界不信になる恐れのあるほど、重みのある現実味を帯びた描写。
様々な人が関わりながらも負の底へ落ち込んでいくさまが、受難一言では明らかに足りていない。いい意味で。
鼻
うまい。初読は意味がわからない。再読。
真実と -
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江戸川乱歩賞受賞作品には、好みのものが多いので読んでみました。
基本的にはに日本と中国、少々米国が絡むスパイものです。
公安の外事二課に所属する刑事・不破が主人公。
群れることを好まず、また出世欲もなく、表情に乏しく、人を疑うような目付きの持ち主。
読み手としても、これと言って好感を持てるタイプではありませんが、淡々とした感じ、軸がブレない感じは、読み進めるうちに受け入れられるようになります。
日本の国会議員が、国家機密情報を中国に漏洩している、といった記事が新聞に載ったことから話が始まります。
中国のスパイは誰か、その記事の情報源である米国に亡命した中国人外交官は何者なのか。
仲間意識の低 -
Posted by ブクログ
2022.05.07
「熱帯夜」に引き続き2作目。
熱帯夜と同じくテンポ良くほどよくグロいブラックユーモアな作風はそのまま。
ちょっとSF的な架空の近未来のような設定も新鮮で面白い。
「受難」は登場する助け?に来る奴ら3人とも話が通じなさすぎて混乱するし主人公と同じく絶望する。でもそこが面白かった。
「熱帯夜」の時も思ったけど、「鼻」もそれぞれ別の視点からの話がどうつながるんだ?と思いながら読み進んで、最後に見事に無理なく伏線が回収されてとても上手いなあと感心する。気持ち良い。
この作者さんの小説はすごく大好きな作風というわけじゃないけどどれも後味が悪くて次もなんとなく読みたくなる後引く