曽根圭介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「暴落」、「受難」、「鼻」の3編からなる。
暴落
人に価値を結びつけるとどうなるか、暴落するとどうなるか、というもの。
メガバンク勤務の主人公が法令に抵触しまくるあたりに疑問を抱く。
またミステリの読みすぎか、オチが読めてしまう。
ただその世界観から漂う臭気には、息の詰まるような凄まじいリアリティを感じた。
受難
都会の闇に閉じ込められる男。
ビルの間に構築したディストピア。
世界不信になる恐れのあるほど、重みのある現実味を帯びた描写。
様々な人が関わりながらも負の底へ落ち込んでいくさまが、受難一言では明らかに足りていない。いい意味で。
鼻
うまい。初読は意味がわからない。再読。
真実と向き合った時に訪れる反転。
ただアンフェアといえばアンフェア。
主人公の狂い方、世界の捉え方に、作者の意図した脚本上の調整を感じる。 -
Posted by ブクログ
江戸川乱歩賞受賞作品には、好みのものが多いので読んでみました。
基本的にはに日本と中国、少々米国が絡むスパイものです。
公安の外事二課に所属する刑事・不破が主人公。
群れることを好まず、また出世欲もなく、表情に乏しく、人を疑うような目付きの持ち主。
読み手としても、これと言って好感を持てるタイプではありませんが、淡々とした感じ、軸がブレない感じは、読み進めるうちに受け入れられるようになります。
日本の国会議員が、国家機密情報を中国に漏洩している、といった記事が新聞に載ったことから話が始まります。
中国のスパイは誰か、その記事の情報源である米国に亡命した中国人外交官は何者なのか。
仲間意識の低い公安ならではの、身内を欺く二重スパイ、三重スパイといった存在の出現や、各刑事の情報源であるスパイ(ニックネームでしか呼ばれない)、中国サイドの人物設定など、かなり複雑になっていくので、途中からは自分が正しく話を理解できているのか自信を失いました。
つまらなくはないけど、先が知りたくて読んだわけでもなく、不思議な魅力のある作品ですね。
終始、とにかく暗くて重い雰囲気を放っています。
本を読んでいて、情景ではなく、色をイメージするのは個人的には珍しいケースなのですが、この作品はまさしくそのケース。
限りなく黒に近い群青色が頭に刷り込まれるような感覚でした。
終盤に差し掛かる頃に、
「もしかしたらあの人が黒幕じゃないかしら」と思った人がそのまんま黒幕だった事は、やや残念でしたが、公安という特殊な組織と、よく耳にする警察の体面を重要視する特徴を上手く融合させて仕上げたなと思います。
最後の不破の行動、選択は好き。
このラストでちょっとだけ、爽快さが味わえました。
何の解決にもなってないんだけど、いいじゃない、相手が地団駄踏んでそうで、気持ちいいじゃない?
そんな感じ。
オススメ度は高くないけど、まずまず、といったところです。 -
Posted by ブクログ
2022.05.07
「熱帯夜」に引き続き2作目。
熱帯夜と同じくテンポ良くほどよくグロいブラックユーモアな作風はそのまま。
ちょっとSF的な架空の近未来のような設定も新鮮で面白い。
「受難」は登場する助け?に来る奴ら3人とも話が通じなさすぎて混乱するし主人公と同じく絶望する。でもそこが面白かった。
「熱帯夜」の時も思ったけど、「鼻」もそれぞれ別の視点からの話がどうつながるんだ?と思いながら読み進んで、最後に見事に無理なく伏線が回収されてとても上手いなあと感心する。気持ち良い。
この作者さんの小説はすごく大好きな作風というわけじゃないけどどれも後味が悪くて次もなんとなく読みたくなる後引く読後感。
巻末の解説は滅多に読まないけれど、解説まできちんと読んでしまった。
作者さんの経歴と、仕事への動機が面白い。