曽根圭介のレビュー一覧
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ネタバレ表題の「鼻」だけでなく、他短編も秀逸。
「暴落」
・人の価値が株価のように市場に左右される社会。自分がいくら善行を行なっても、周りの人間の悪行によって自身の市場価値にも影響されてしまう。自分を守るためだったら平気で人を裏切られるだろう。道徳心や思いやりの心など存在するだろうか。
・完璧な資本主義の社会に染まりたい人はこの世界に住んでみたらどうか。
・主人公はクズのようだが正直彼の生きている世界皆クズだ。彼らのような性格はこの世界の標準なのではないか。
「受難」
・宗教に心酔した女性が聖行為だと信じて虐待を行うストーリー。
「鼻」
・最下層の「テング」を救おうとする最上層の「ブタ」である医 -
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一番悪いのだ~れだ?
こすっからいロクデナシたちが繰り広げる悲喜劇。
そうくるか! のどんでん返しまで楽しめる痛快ミステリー傑作集!
【内容紹介】
社会復帰したシリアルキラー“腸詰小僧“の独占インタビューに成功した西嶋の元を被害者の父が訪れ、本人に会わせろと迫る。一方、警察官をしている弟が浮気相手を妊娠させてしまったと泣きついてきた。追い詰められていく西嶋は……。(表題作)ジコチューな小悪人たちが、あっけらかんと起こす事件。まさかのどんでん返しに舌を巻くミステリー傑作集!
7話からなる短編集
フォロワーさんとのコメント欄でのやりとりで気になった作家さんなんですが これが2冊目
め -
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少々練られすぎというか、出木杉くんというか、展開速くて情報量多いのに文字数少なすぎて厚みがないというか。
などと言いつつも面白いよね。やっぱ日本でスパイといえば、米国と中国は欠かせない。くだらんかもしれないけど、やっぱ孫氏も言うとおり、兵は詭道なりなのであって、無駄でも良いから無駄なことに血道を上げることこそ盛り上がるわけですよ。もちろん他人事の場合に限るけど。
しかしまたいつものハニートラップか。。中国といえばハニートラップというのが日本人の常識になりつつあるけど、大丈夫か、中国。いや、日本人が海外で性的に羽目を外すのも、一般知識化してるな。酷い話ですよ。 -
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曽根圭介『腸詰小僧 曽根圭介短編集』光文社文庫。
7編収録の短編集。登場人物の殆どが悪者で、読者のミスリードを誘う様々な仕掛けが施された短編ばかりが並ぶ。イヤミスの極致と言って良い程、後味が悪く、それでいて最後にヤられたと唸らされる。
『腸詰小僧』。結局のところ、登場人物の誰もが悪者。秘かに仕掛けられていた爆弾が最後に爆発するような展開が面白い。『腸詰小僧』が最後にチラリと姿を見せるだけというのがミソだ。9年前に日本を震撼させた未成年のシリアルキラー『腸詰小僧』が社会復帰する。『腸詰小僧』の独占インタビューに成功したフリーライターの西嶋の元を被害者女性の父親が訪れ、『腸詰小僧』に会わせて欲 -
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「熱帯夜」「あげくの果て」「最後の言い訳」の3作品。
叔父から譲り受けた電子書籍に入っていたのでどのような作品かも知らずになんとなく読め始めたが、どれも色んな意味で気持ちが悪かった(褒めてる)。
非現実的なグロい描写と、現代社会を皮肉ったリアリティのある描写とが混在していることで独特な世界観になっていると思った。ラストにかけて想像をいくつも裏切っていき、綺麗にオチるところでさえも気持ち悪く感じる(ほんとに褒めてる)。
バッドエンドものに耐性がない私でも、なんとも言えない読後感と引き換えに3作品続けて読んでしまうほどの不思議な面白さがあった。
私は「最後の言い訳」が好き!他の2作とは異なり -
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―――タイムリミットは2時間。
美鈴とボクをヤクザの人質にして金策に走った美鈴の夫は戻ってくるのか?
ボクは愛する美鈴を守れるのか!?
緊迫の展開、衝撃のラスト。ミステリとホラーが融合した奇跡の傑作。
日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む3篇を収録。
久々にホラーの新規開拓
曽根圭介完成度高いなー
・熱帯夜
上記参照
まさしくミステリとホラーの融合
叙述のしかたも丁寧
・あげくの果て
近未来の日本が舞台の、ブラックすぎてシャレになりきれてないホラー
夫婦がそれぞれ金の鎖と櫛を贈り合うあの寓話を、5段階ぐらい救いのないものにした感じ
・最後の言い訳
いわゆるゾンビもの -
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自分の株価を上げるためにダメ兄の株を売ると
インサイダー取引だと告発され、そこから転落していく「暴落」
気づいたらビルの間に手錠でつながれていて、
助けを求めた女も少年も紳士も当てにならない「受難」
テングをブタに変えるモグリの医師を名乗る男と
少女行方不明事件を捜査する刑事の「鼻」
カバーイラスト:磯良一 カバーデザイン:大武尚貴
夏だからホラー、と思ったけれど特に夏向けではなかったです。
受賞作「鼻」は構成がすごい。
全然かみ合わない2人の話がパラレルだと思ったけれど
そんな繋がり方をしていたなんて。
恥ずかしながら水割りとオレンジジュースを出すまで気づきませんでした。
文体だけでは人を -
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ホラーとミステリの融合。その言葉通りなのですが、やはり曽根圭介の作品群は、ホラーの色が濃い気がする。しかし、真っ当なホラーではなく、こう、ぞわぞわっとさせるのではなく、ぬめぬめっと背筋を這い回る半透明の温いスライムみたいな作品群というべきか……。気持ち悪いけど気持ち良い……そんな感慨を抱く。本書に収められた三編も、それぞれが、ぬめぬめっとした柔らかくて気持ちの悪い味をした物語。だけど、凄くそれが良い! なんてなってしまった私は既に曽根中毒に陥っているのでしょう。
表題作の『熱帯夜』にはやられました。ここまでスパーンと上手いこと書き切ってくれると、本当に清々しい気持ちになります。クスリと笑わせな -
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この作者には驚いた。何はともあれ、天才だろ! って思った。この不条理さは、かの筒井康隆を彷彿とさせる。収録された三つの短編、全てが馬鹿みたいに面白かった。先を気にさせる展開、とにかく発想が凄い。特に気に入ったのは『暴落』だ。人間に直裁<株>の概念を付与し、その上がり下がりによって人の価値を計るなんて……恐ろしいが面白い、面白いが恐ろしい……。しかし、矛盾を挟むことなく、秀逸な筆致によって、世界観を「本当にこんな世の中もあるかも……」と思わせるくらいの書きっぷりには恐れ入った。曽根圭介という作家が一番怖いのかも知れない。
また、これは蛇足に違いないが、どの話も(鼻は無理かも知れないが)是非『世に