宮下遼のレビュー一覧

  • 赤い髪の女

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    父と息子。男と女。それを取り巻くトルコの政治的あるいは文化社会的な状況。イスタンブールの変貌ぶり。いろいろな要素を複雑に組み上げていて、ストーリーとしては読みやすいものの、内容的には結構ゴツゴツした印象。すぐには消化できない。もう何冊かこの作者の作品を読んでみたいと思う。

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    2021年05月05日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    西洋の絵画と細密画では、根本の芸術に対する考え方が違い、それがオスマンの絵師には脅威に写り、自分の存在基盤を揺らいでいく。
    時代は遠近法の西洋が、個性を盾に細密画を飲み込んでいく。

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    2020年11月11日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    カラとシェキュレの恋愛と殺人、イスラムにとっての絵とは?が同時並行で綴られている。
    下巻で物語は急に動く。

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    2020年11月11日
  • 赤い髪の女

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     面白かったです。
    「オイディプス王」「王書」と主人公がうまく絡み合って物語が進行していきます。なのに、読んでいて頭がこんがらがるということはありません。
     主人公の最後はまるで映画の予告編のようでした。

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    2020年08月28日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    全く予備知識のないトルコの作家の長編小説。2002年の発表で世界中でベストセラーとなったノーベル賞作家の作品。イスラム世界の辺縁が少しでも垣間見れるかと思う。しかし圧巻は主人公の密告、報復による死という結末であった。私にはどうしても手放したくない宝物を手中に収めるための覚悟の行動に思えた。一気に読ませる快作ではある。

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    2019年09月25日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    1591年冬。偉大なスレイマン帝没後半世紀を経たイスタンブールで、細密画師が殺される。
    豪華な細密画の世界を下敷に、お伽噺とサスペンスが混淆する物語。文明の衝突というテーマはやはりあるのだけど、エンタメとして十分に面白い。
    パムクの『雪』には忍耐を強いられたけど、こちらは読みやすい作りになっている。端々に言及される歴史的背景も華があって楽しめました。

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    2017年12月22日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    タイトル通り各文学賞について複数の方たちが好き勝手(?)話をしたものが1っ冊の本にまとめられている。面白かったのは文学賞の背景であったり、審査の仕方であったり文学賞の周辺まで考察したり説明があったりで、なかなか読み越えのある本だった。世の中にはまだまだ知らない本がたくさんあるのでとても勉強になった。

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    2016年12月11日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    いや、これきたね。上巻読み終わった時は、音読したら文字が途切れず酸欠になるほどの圧倒的文字量と、のべつまくなし面倒くさすぎる登場人物に心折れそうになるも、ジワジワくるものあり、下巻を時間を空けて読み始めたら、まぁ、これがのっけから、上巻の凪がいっきにぐらんぐらんと大きな渦になって、あれれって間に巻き込まれちゃって、どんどこ先が読みたくなって、あれよあれよと完読してしまった。
    誰が殺人を犯したかとか、東西の相克とか、そんなんはどうでもよくなって、坩堝な地相のイスタンブールそのものの物語として、その甘美で残酷な美を堪能しようではないか、なんてな。

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    2016年12月09日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?

    そのノーベル

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    2016年10月24日
  • 僕の違和感 下

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    (承前)対立するのは、イデオロギーだけではない。親友と従兄弟、妻ライハと義妹サミハ、首都イスタンブルと故郷アナトリア、無神論と神秘主義、進学と就業、と数え上げていけばきりがないほど、メヴルトは相反するものの間に立たされる。あちらを立てればこちらが立たないという二律背反状況をどうさばいて見せるか、というのがこの小説の見所だ。どちらかといえば、さばくどころか、あっちへよろよろ、こっちへよろよろと腰の定まらないメヴルトの迷走ぶりを面白がるという方があたっているが。

    よくよく考えてみれば、メヴルトが肩に担いでいる担ぎ棒はその両側に盥を吊るしている。荷の重さで片側に傾けばまともに担ぐことはかなわない。

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    2016年05月04日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    イスラム文化の頂点たるコーランの特徴はアラブの民族性に由来したその視覚・聴覚的側面にある。それは視覚的表現に満ちた内容を指すと同時に翻訳されたコーランを経典として拒絶する理由となる。しかしながら偶像崇拝禁止の教義は絵画文化の発展を抑止し、結果として書体や挿絵に意匠を凝らすイスラム文化が確立した。パムクはヒジュラ暦ミレニアム直前における細密画職人の文化を現代に再構築することで、失われた技術への憧憬とイスラム文化のルネサンスを喚起する。芳醇な文化的背景に裏打ちされながらも、歴史推理ものとして楽しめる娯楽小説。

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    2013年06月13日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    トルコはイスラム圏でありながらEUの加盟を目指しており、古くから東洋と西洋の出会う文明交差点としての役割を果たしている。それ故に生じる文明間の葛藤や衝突をテーマに著作活動を続けるトルコ作家、オルハン・パムクの代表作は16世紀末のオスマン帝国を舞台とし、細密画士の殺人と男女の恋愛話を軸としながらも屍や犬、馬や貨幣までもが語りだす「無数の一人称小説」。興味深いのは遠近法の技術に対して"異教徒の技法"として反発する場面。章ごとに入れ替わる「わたし」とはつまり、中心点を排した非遠近法的な小説であると言えるだろう。

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    2013年06月12日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    イスタンブルと細密画の濃密な描写の背景に、近代化・世俗化というテーマが見え隠れし始める。
    「東も西も、神のものである。」

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    2013年03月03日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    近世トルコのイスタンブル、細密画と呼ばれる芸術の工房が舞台。皇帝から極秘に依頼を受けていた一人の絵師が殺された。その犯人は誰か。理由は何だったのか。複数一人称で描かれるイスタンブルの濃密な空気に圧倒される。

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    2013年03月03日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    “わたしたちは他人の苦悩であるとか、愛であるとかを理解することが、果たしてできるのだろうか?自分よりもなお深い苦悩を抱え、貧困にあえぎ、虐げられる人々を理解することができるのだろうか?”
    作中で問いかけられるこの言葉について考える。
    そして舞台である中東の情勢や、宗教などについて自分はまだまだ知らないことが多く、理解するにはほど遠いことを思い知る。それでも、知らないことに気付き、考え、知ろうとするきっかけをこの本に与えてもらえたと思う。

    灰色に沈む雪に閉ざされた街の陰鬱さが、何故か美しく思えてしまった。
    雪と共にKaに詩想が舞い降りたのだろうなぁ。

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    2013年01月27日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    上巻の「赤」が恍惚として扇情的で、色鮮やかな原色の「赤」だったとしたら、下巻の「赤」は暗く、深く、いくつもの色が混ざり合った「赤」なのだろう。
    幾つもの血が流され、混じり合い、赤は濃さを増していく。トルコという地で東と西が混ざり合い、16世紀という時代に旧い様式と新しい手法が交わり合ったみたいに。

    『お前はどうして純粋であろうとする? わたしたちのようにここに留まれ。そして交わり合うんだ』
    一つの文化が失われていく瞬間が、一人の絵師の死という形で語られているように思った。その絵師に掛けられるこの言葉は、混じり合う文化の中で失われてしまった「細密画」そのものへの哀惜と追悼の辞に思える。

    今度

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    2013年01月25日
  • 雪〔新訳版〕 上

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    詩人のKaを主人公として、政治と宗教と恋を軸に物語が進む。
    何故かお芝居を観ているような気にさせられるのは、(Kaの知人であると思われる)第三者の視点で語られているからか。
    詩人Kaが出会う多種多様な人々と、雪に降りこめられたカルスの風景。深々と降り続ける雪の音が聞こえてきそうな空気を感じながら、下巻に続く。

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    2013年01月17日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    下巻になると俄然面白くなってきた。
    イスラムの細密画と、
    その宗教的背景に強くひき込まれた。
    思索し苦悩する人間の、
    多視点の物語は圧倒的な作品であった。

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    2012年09月26日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    イスタンブールに行きたくなる。
    表紙の鮮やかさどおり、作品も極彩色。
    翻訳も秀逸。
    (2012.8)

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    2012年08月31日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    イスラム教では偶像崇拝が禁止されている。そしてそれが徹底しているが故に絵画芸術の発展が非常に限定的になってしまった。
    神を現した像も、絵もその制作は許されない。絵に描けるものは神の眼で見られたものだけに限られる。このため、描かれるものは、先人が描いたものの範囲を超えることはなく、絵を描く者はひたすら模倣し続けるしかない…

    そうした中でも細密画というものは発展し、名人と呼ばれる芸術家を輩出もする。

    しかし、西洋絵画の発展が、細密画を追い詰めていく。
    作品を芸術家そのもののものとすること、すなわち署名。そして、遠近法。
    細密画は神の眼を通したものであり、細密画師個々人の手によるものの、無名(ア

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    2012年03月20日