宮下遼のレビュー一覧

  • 雪〔新訳版〕 下
    上巻では恋敵であるはずのムフタルの伝言を素直にイペキに伝えるKaの純真さに、恋心の薄さや幼稚さを感じたけれど下巻になってからはKaの想いにはくるおしさを感じた。

    イペキもKaから詩を読んでもらった時にしきりに自分の感情的感想は述べずに「綺麗な詩ね」とばかり答えていた。

    イペキはKaのようにはまだ...続きを読む
  • 赤い髪の女
    イスタンブールのオンギョレンで物語は始まる。
    主人公ジェムの父、その恋人。母、赤い髪の女。
    物語が次々と進み思いもよらなかった結末へと。

    マフムト親方のその後がとても気になりつつ読みました。
    まさかね。
  • 物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年
    【イスタンブールは、歴史がその頭上を駆け抜けていく通過点にあらず、歴史がまさにこの都に収斂して紡がれる世界の中心でもあったわけだ】(文中より引用)

    その都市を治める統治者や文明が変われども、一貫して歴史の表舞台に立ち続けてきた帝都・イスタンブール。複雑な歴史が折り重なったその都市に歩を進めつつ、イ...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下


    物語の挿絵を様式に則って描くことを是としてきた細密画師が16世紀イタリアルネッサンス期の肖像画(テッィツィアーノか)を見てその手法のみならず,画家とのその対象の自意識(Identity)に触れた衝撃を記している。

    パムクは,万華鏡のように視点を変えて物語を紡いでいく中で,命なき者にも語らせてい...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    真実の芸術表現とは、神が与えた日の概念を定着させることであるから、個人の着想(様式)などは必要なく、ましてや、描く対象のものさえ見る必要がない。美の概念を定着させるのだから、目が見えていることさえ、障害になるという発想は、とても東洋的なのだろうか。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    単行本が出た時に、オスマン帝国の美術が扱われていると知って購入しました。
    出版当時から旧訳版は読みにくいという評判でしたが、私にはそのたどたどしい文体が、異国の謎に満ちた物語の雰囲気を盛り上げてくれるように感じ、楽しく読むことができました。
    (じっくり時間をかけて読む必要はありましたが)
    今回...続きを読む
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今
    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど...続きを読む
  • 雪〔新訳版〕 下
    Kaのめんどくさいところ、理屈っぽいところがまるで自分。読んでいて辛かった。これを読むとトルコに行きたくなる。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    Twitterのフォロワーさんが感想を書かれていて面白そうだなと思い、読んでみました。すごくよかったです。訳者あとがきにもあったように薔薇の名前にも通ずる展開があり、自分は伊坂幸太郎の夜の国のクーパーを思い出しました。これからパムク作品を全部読もうと思います。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    [「私」を語らせてほしくて]16世紀末のイスタンブール。皇帝直属の細密画の工房で、その道の名人として知られる「蝶」が何者かにより殺害される。長年留守にしたイスタンブールに戻るなり、犯人の探索をおじ上から命じられたカラは、おじ上の娘であるシェキュレに心引かれながらもその依頼を引き受けるのだが........続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    「雪」「わたしの名は赤」とパムク作品を続けて読んだ。物語のあとのそれぞれの主人公たち、Ka、カラ。どちらの男も物語のそのあと、魂を抜かれたように生きていった気がして、哀れで心に残った。そういえば、どちらもKだ。
    それに対して女たちは逞しい。イベッキもシェキュレも恋をしても自分を見失わない。父を殺され...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    細密画なんて全く知らない私でも、この本で語られる緻密かつ繊細な描写を読んでいくうちに、心の中に自然と筆で線や色が引かれ、画が浮かびあがり、その美しさに、ただただ圧倒されました。

    「私の名は紅」と両方読みましたが、やはりこちらの方が読みやすかったです。
  • 雪〔新訳版〕 下
    トルコ文学。未知の世界。
    トルコと聞いて連想することと言えば、
    ヨーロッパとアジアの中継地。イスタンブール。ケバブ。
    せいぜいこの程度の知識しか無かった。

    本著はオルハン・パムクの初にして最後の政治小説のようだ。
    冒頭でバルザックの引用を用いて
    文学に政治を持ち込む事への遺憾を表明しつつ、
    地理的...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    どんどん引き込まれていく。。。
    16世紀末のイスラム世界なんていう、21世紀日本の平凡な読者としては相当に遠い世界が舞台にもかかわらず。
    たくさんの登場人物に共感し、最後は悲しみというよりも悲しくないことが悲しいというような、不思議な感覚を登場人物の一人と深く共感できた。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    この人の文章力というか、構成力というか、こういうカタチを作りあげる力はすごいなぁ。。
    まさに傑作。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    「盲目とは悪魔や過ちが入り得ない至福の境地なのだ」
    「巨匠たちは、細密画への情熱や色彩、そして視覚が神の闇から生じたことをよく心得ていて、色彩をもって神の闇へと回帰しようとしたのだ。記憶を持たない者には、神もその闇も思い出すことができない。名人たちの作品はどれも、時の流れからは外れたあの色鮮やかな漆...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    ゆっくり味わうように一日に一章か二章ずつ読んで最後の数章は一気読み。続きが気になって早く先を読みたいのだけれども、物語の世界の濃密さに足を絡め取られて「先を読むのがもったいない」と思ってしまう不思議な本でした。先が気になると寝食忘れて読みふけるタイプなのでこんな風に「先が気になる」「でもこの文章の余...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    ノーベル賞受賞の時にいくつか書評を読んで、気になっていた作家さん。初めて手にとってみたけど思った以上に読みやすくて面白い‼

    ある装飾写本に関わる人々や物がかわるがわる一人称で語っていくのだけどどれも個性豊かで、イスラム世界の濃密な妖しさもふんだんでうっとり。

    下巻も気になるところ、ゆっくり味わっ...続きを読む
  • 赤い髪の女
     トルコで初のノーベル文学賞受賞者となった小説家による2016年の小説。ギリシャの古典『オイディプス王』と、ペルシャの古典『王書』で共通して描かれるテーマが描かれる作品。読む前に悲劇、というのは知っていたけど、思ってたのとは違う形で悲劇が用意されていた。
     これも雑誌「英語教育」のアジア文学特集で紹...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    トルコ作家は初めて読んだ。ノーベル賞作家だけど、ミステリーとして読めて面白かった。読み返したら、伏線とかあるのかも。
    細密画を語るにもイスラム教の価値観は避けられず、知らなかった世界も垣間見れて新鮮。絵画やイスラム文化に全く興味がないと、しんどいかも。