宮下遼のレビュー一覧

  • オスマン帝国全史 「崇高なる国家」の物語 1299-1922

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    多民族・他宗教が混在する国の統治の難しさ
    オスマン語の成り立ちと、トルコ国での位置付け
    王国における軍隊の扱いの難しさ
    現在の中東、東欧の紛争、課題の根の一部が理解できた気がする。知ることができてよかった。

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    2025年05月17日
  • 無垢の博物館 上

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    p445
    「もしわたしとあなたがもっと現代的だったら、本当のヨーロッパ人だったら、きっとそれは問題にもならないんでしょうね。でも現実にはわたしたち、伝統に縛られているし、娘の純潔というのは、あなたにとってはとても大切なものでしょうし、他の人たちも敬意を払うべきものなんですものね。

    明治時代における日本人の心情に通ずるような気がして、異世界ながらも親近感が湧いた。「西欧的近代化」に対する違和感、焦燥感、反発など、旧式の伝統から脱することができない場面が至るところで感じられる。イスタンブールという街自体が「西欧-イスラム」を象徴していて美しさも感じられた。

    恋人を想起させる物品を片っ端から収集

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    2025年05月13日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    トルコ初のノーベル賞作家オルハンパムクの代表作。
    様々な登場人物の独白によってまさに細密画やモザイク画のように物語が紡がれていく。死者や野良犬、絵に描かれた一本の木や貨幣までもが雄弁に語る。壮大な歴史絵巻であり人間ドラマでありサスペンスでもあり。
    イスラム世界における芸術または世界観というべきものを垣間見る。自分とは全く違う人生を追体験するという読書の醍醐味を堪能できる一級の小説である。
    おじ上がヴェネツィアの絵画に出会った時の衝撃、「わしは自分が他人とは別の異なった存在だと感じてみたかった」という告白。アラーこそ全てというイスラム世界において純粋な人間性が表出してくる瞬間。偶像を禁じたイスラ

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    2024年09月30日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    上巻では恋敵であるはずのムフタルの伝言を素直にイペキに伝えるKaの純真さに、恋心の薄さや幼稚さを感じたけれど下巻になってからはKaの想いにはくるおしさを感じた。

    イペキもKaから詩を読んでもらった時にしきりに自分の感情的感想は述べずに「綺麗な詩ね」とばかり答えていた。

    イペキはKaのようにはまだKaを愛していなかったけど、幸せになりたかったし、Kaはムフタルや他の男性とは違うと思って愛せると思ったのだろう。

    純真そうで幼さも感じるKaには身勝手さを感じたけれど、嫉妬心を感じだしたKaの方が好きだった。

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    2024年02月10日
  • 赤い髪の女

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    イスタンブールのオンギョレンで物語は始まる。
    主人公ジェムの父、その恋人。母、赤い髪の女。
    物語が次々と進み思いもよらなかった結末へと。

    マフムト親方のその後がとても気になりつつ読みました。
    まさかね。

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    2023年09月03日
  • 物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年

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    【イスタンブールは、歴史がその頭上を駆け抜けていく通過点にあらず、歴史がまさにこの都に収斂して紡がれる世界の中心でもあったわけだ】(文中より引用)

    その都市を治める統治者や文明が変われども、一貫して歴史の表舞台に立ち続けてきた帝都・イスタンブール。複雑な歴史が折り重なったその都市に歩を進めつつ、イスタンブールの歴史に迫った一冊です。著者は、オルハン・パムクの翻訳などで知られる宮下遼。

    一言で評するとすれば「読むブラタモリ」といった趣の作品。イスタンブールの街を脳内でお散歩しつつ、そのスポットごとの秘められた歴史が明かされていくため、イスタンブールを訪問したことがある人にとってはたまらない一

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    2022年02月04日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    物語の挿絵を様式に則って描くことを是としてきた細密画師が16世紀イタリアルネッサンス期の肖像画(テッィツィアーノか)を見てその手法のみならず,画家とのその対象の自意識(Identity)に触れた衝撃を記している。

    パムクは,万華鏡のように視点を変えて物語を紡いでいく中で,命なき者にも語らせている。絵画に書かれた犬,大木,金貨,そして"赤"

    シェキュレとカラの愛の駆け引きもとても奥深く,官能的。

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    2019年12月19日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    真実の芸術表現とは、神が与えた日の概念を定着させることであるから、個人の着想(様式)などは必要なく、ましてや、描く対象のものさえ見る必要がない。美の概念を定着させるのだから、目が見えていることさえ、障害になるという発想は、とても東洋的なのだろうか。

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    2019年12月19日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

    購入済み

    単行本が出た時に、オスマン帝国の美術が扱われていると知って購入しました。
    出版当時から旧訳版は読みにくいという評判でしたが、私にはそのたどたどしい文体が、異国の謎に満ちた物語の雰囲気を盛り上げてくれるように感じ、楽しく読むことができました。
    (じっくり時間をかけて読む必要はありましたが)
    今回新訳版が出たということで、電子書籍を購入。
    確かにこちらの方が読みやすいですし、旧訳版と違和感が無いように気を使われていることにも好感を覚えました。
    パムクの素晴らしい作品を、二通りの翻訳で楽しめる。これは贅沢な体験です。

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    2019年11月17日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど、芥川賞と直木賞の章も設けられていて、それはそれで日本人なら気になるものではあるし、ちょっとした息抜きみたいにもなっていて、高感度高しでした。毎度のことながら、また読みたい本・作家がたくさん見つかって、嬉しい悲鳴再び。

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    2018年05月10日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    Kaのめんどくさいところ、理屈っぽいところがまるで自分。読んでいて辛かった。これを読むとトルコに行きたくなる。

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    2016年08月21日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    Twitterのフォロワーさんが感想を書かれていて面白そうだなと思い、読んでみました。すごくよかったです。訳者あとがきにもあったように薔薇の名前にも通ずる展開があり、自分は伊坂幸太郎の夜の国のクーパーを思い出しました。これからパムク作品を全部読もうと思います。

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    2016年07月24日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    [「私」を語らせてほしくて]16世紀末のイスタンブール。皇帝直属の細密画の工房で、その道の名人として知られる「蝶」が何者かにより殺害される。長年留守にしたイスタンブールに戻るなり、犯人の探索をおじ上から命じられたカラは、おじ上の娘であるシェキュレに心引かれながらもその依頼を引き受けるのだが......。ニューヨーク・タイムズ紙が推す、2004年のベスト・テンにも選出された長編小説です。著者は、ノーベル文学賞も受賞しているトルコ人の作家、オルハン・パムク。訳者は、『無垢の博物館』といったパムクの他作品の翻訳も手がけている宮下遼。


    安っぽい表現になってしまいますが、とにかく上手い。殺人や恋愛と

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    2015年12月14日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    「雪」「わたしの名は赤」とパムク作品を続けて読んだ。物語のあとのそれぞれの主人公たち、Ka、カラ。どちらの男も物語のそのあと、魂を抜かれたように生きていった気がして、哀れで心に残った。そういえば、どちらもKだ。
    それに対して女たちは逞しい。イベッキもシェキュレも恋をしても自分を見失わない。父を殺されたあとのシュキュレの判断の早さと行動力には驚いた。一人で自由に外を出歩くこともできない女たちの処世術なのか。イスラム世界の女たちのしたたかさと逞しさは、パムクの描く女だけの特徴なのか。
    しばらくパムクを読んでみよう。
    「薔薇の名前」を思いだした。ストーリーの面白さだけでなく細密画の世界、イスラムの世

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    2014年03月31日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    細密画なんて全く知らない私でも、この本で語られる緻密かつ繊細な描写を読んでいくうちに、心の中に自然と筆で線や色が引かれ、画が浮かびあがり、その美しさに、ただただ圧倒されました。

    「私の名は紅」と両方読みましたが、やはりこちらの方が読みやすかったです。

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    2013年04月20日
  • 雪〔新訳版〕 下

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    トルコ文学。未知の世界。
    トルコと聞いて連想することと言えば、
    ヨーロッパとアジアの中継地。イスタンブール。ケバブ。
    せいぜいこの程度の知識しか無かった。

    本著はオルハン・パムクの初にして最後の政治小説のようだ。
    冒頭でバルザックの引用を用いて
    文学に政治を持ち込む事への遺憾を表明しつつ、
    地理的、文化的、宗教的に特殊な国柄がもたらす
    トルコの問題を文学を通して我々に伝えてくれる。

    ドイツに長らく亡命していた
    主人公であり詩人のKa(カー)が取材を名目に、
    トルコ辺境の地カルスを訪れるが、
    様々な人間との出会いを通じて
    宗教、政治の問題に翻弄されることになる。

    そして、このカルスに住む

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    2014年03月15日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    どんどん引き込まれていく。。。
    16世紀末のイスラム世界なんていう、21世紀日本の平凡な読者としては相当に遠い世界が舞台にもかかわらず。
    たくさんの登場人物に共感し、最後は悲しみというよりも悲しくないことが悲しいというような、不思議な感覚を登場人物の一人と深く共感できた。

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    2012年12月15日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    この人の文章力というか、構成力というか、こういうカタチを作りあげる力はすごいなぁ。。
    まさに傑作。

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    2012年12月15日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    「盲目とは悪魔や過ちが入り得ない至福の境地なのだ」
    「巨匠たちは、細密画への情熱や色彩、そして視覚が神の闇から生じたことをよく心得ていて、色彩をもって神の闇へと回帰しようとしたのだ。記憶を持たない者には、神もその闇も思い出すことができない。名人たちの作品はどれも、時の流れからは外れたあの色鮮やかな漆黒の闇を志向している」
    「細密画とは知性の静寂であり、目の音楽である」

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    2012年09月13日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    ゆっくり味わうように一日に一章か二章ずつ読んで最後の数章は一気読み。続きが気になって早く先を読みたいのだけれども、物語の世界の濃密さに足を絡め取られて「先を読むのがもったいない」と思ってしまう不思議な本でした。先が気になると寝食忘れて読みふけるタイプなのでこんな風に「先が気になる」「でもこの文章の余韻に浸りたい」という葛藤を感じる本はとても久しぶりに読んだ気がします。
    殺人犯はだれなんだろうというミステリー要素や遠近法が発明されたルネッサンス期の絵画に触れたことによって生じるトルコの細密画家達それぞれが抱える苦悩、カラとシェキレの恋の行方ももちろん気になるし、一章ごとに変わる物語の語り手達の個

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    2012年03月09日