宮下遼のレビュー一覧

  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ノーベル賞受賞の時にいくつか書評を読んで、気になっていた作家さん。初めて手にとってみたけど思った以上に読みやすくて面白い‼

    ある装飾写本に関わる人々や物がかわるがわる一人称で語っていくのだけどどれも個性豊かで、イスラム世界の濃密な妖しさもふんだんでうっとり。

    下巻も気になるところ、ゆっくり味わって読みます。

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    2012年02月12日
  • オスマン帝国全史 「崇高なる国家」の物語 1299-1922

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    600年に及ぶオスマン帝国の誕生から滅法まで。
    現在の中東情勢やヨーロッパとの関わりなど。
    イスラム教徒を優位としながらも、イスラム教やキリスト教、ユダヤ教など、様々な宗教を包括してきた強権国家
    兄弟であっても、帝国を維持するために殺し合うと言った非道な一面や、どんなに高位な立場でも、失政したら処刑されるという側面は、今の中東諸国にも通じるものがある。
    栄枯盛衰。ヨーロッパ諸国を圧倒した中世の様な時代から、ヨーロッパの列強諸国に蹂躙され、滅亡に向かうことまで考えると、切ないものを感じます。

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    2025年06月18日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    決して小難しい小説ではない。むしろ平易で、ほんの少しだけでも時代背景やイスラム教の知識があれば読むのに苦労はないはず。さらに言えばミステリーあり恋愛ありの堂々たるエンタメ小説である。それでも、まだ何か掴みきれていないように感じさせる奥行きがある。イスタンブールの丘と路地を思い起こす






    偶像崇拝が禁じられている文化での絵師の立ち位置
    あくまでも物語の挿絵として
    細密画に絵師のサインを残すべきか否か
    神の恩恵として盲目を渇望する老絵師
    西洋文化への警戒と憧憬
    多民族国家オスマン帝国
    他視点での語り。くわえて死者が語る、物が語る、絵が語る
    第4の壁をうちこわして読者へ語りかける

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    2025年06月09日
  • オスマン帝国全史 「崇高なる国家」の物語 1299-1922

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    トルコ文学(史)者が書いた約600年にわたるオスマン帝国の歴史。新書ながら500ページの分量。だが小説のように読みやすく、サクサクと読み進めることができた。また、ここまで詳細なオスマンの歴史の本は初めて読んだ。帯の紹介文に「歴史のダイナミズムをとことん味わう」とあるが、多民族、多宗教の大帝国がいかに繫栄し、そして滅亡の道を辿るのか。そのダイナミズムを本当に十分に味わうことができた。

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    2025年04月19日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    オスマン帝国における細密画絵師たちの世界。名人絵師は対象を実際に目撃することなしに描くことを良しとし、いずれは盲目になることをむしろ望んだ等々のくだりは我々の理解の範疇を超えているが、自身の個性などは超越し神の目線で描くことに徹するという絶対的な価値観には瞠目させられる。宗教の待つ矛盾や理不尽と本来誰もが持つヒューマニティの葛藤。
    上巻から不穏なまま続く殺人事件の犯人探しは最後の最後に判明するが、エンディングはやはりほろ苦く悲劇的だ。歴史の理不尽さに唸らされる。
    我々の常識とは全く異なる異世界と価値観世界観。読書の醍醐味を存分に楽しめる長編。

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    2024年12月14日
  • ペストの夜 上

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    架空の歴史物。うっかり本当の話かと思って読み始めたものの、文中で「作者は女性」といいつつ、著者近影は明らかにおじさんだったので、なるほど架空歴史ね!と気づきました。笑
    とはいえ、地中海の穏やかな海と温暖な気候、豊かな自然とバラの香りに包まれたミンゲル島の景色が目に浮かぶようです。
    その綺麗な景色が、感染症に侵食されてじわりじわりと変貌していく。特にその人間の心理…感染症への対策をする政府、見て見ぬ振りをする一般の人、周りの人々がなぜそんな行動をするのか理解できずに嘆く知識人……コロナ禍で散々見た光景でありながら、それを一つ俯瞰したところから見れるのが面白いです。この災厄がどう収束するのか楽しみ

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    2024年11月19日
  • 物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年

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    イスタンブール旅行に行くことになったため、歴史や風習を知りたいと思い手に取った
    まず気付かされたのが、ローマ帝国の東西分裂以降、イスタンブールが1600年もの間、世界帝都として存在していたこと。ヨーロッパとアジアを結び、黒海と地中海に囲まれ、貿易や政治・統治の要衝地として、誇り高い歴史を持った街であることが分かった。同時に、マスタファ・ケマルによるトルコ共和国成立以降の、西洋と融合した複雑な文化・アイデンティティーについて学ぶことができた。
    本著では有名なモスクからマニアックなカトリック教会まで、建設当時の歴史を深い洞察で説明されていてとても勉強になり、興味深かった。実際にイスタンブールに言っ

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    2024年07月20日
  • 赤い髪の女

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    ネタバレ

     トルコで初のノーベル文学賞受賞者となった小説家による2016年の小説。ギリシャの古典『オイディプス王』と、ペルシャの古典『王書』で共通して描かれるテーマが描かれる作品。読む前に悲劇、というのは知っていたけど、思ってたのとは違う形で悲劇が用意されていた。
     これも雑誌「英語教育」のアジア文学特集で紹介されていて読んでみたいと思ったが(「井戸掘り職人」なんて職業の小説、なんか東大の小説問題で出てきそう、とか思ったり)、この前のタイの小説、『パンダ』の時よりもインパクトが強く、この小説家の作品をもっと読んでみたいと思った。あとこの翻訳した人が本当に違和感ない日本語にしているところも読みやすい。
     

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    2024年02月21日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    トルコ作家は初めて読んだ。ノーベル賞作家だけど、ミステリーとして読めて面白かった。読み返したら、伏線とかあるのかも。
    細密画を語るにもイスラム教の価値観は避けられず、知らなかった世界も垣間見れて新鮮。絵画やイスラム文化に全く興味がないと、しんどいかも。

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    2023年12月24日
  • 物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年

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    イスタンブールを舞台にした歴史探訪。ガイドブックや「コンスタンティノープルの陥落」など読んでからだと、更にイメージしやすかった。

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    2023年10月20日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ー 「絵や挿絵、美麗な書物に耽溺するあらゆるハーンや王、皇帝たちの関心には三つの季節があるのだよ。はじめの季節には、物おじせず夢中になって、心惹かれる。そして、他人に見せるためや、名声のために絵を求める。

    最初の季節で絵についての見識を深めたなら、第二の季節には自分好みの絵を描かせるようになる。 絵を眺めるという真摯な喜びを学び、名声もおのずと高まり、死してのちも語り継がれるような事績をこの世に残そうと、それに見合った書物を集めはじめるのだ。

    しかし人生の秋が訪れる。もはや、いかなる皇帝もこの世における不死には興味を示さなくなる。この場合の不死とは、続く世代や子孫たちの記憶に留まるという意

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    2023年07月08日
  • 無垢の博物館 下

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    心と時間にゆとりがないと読み続けられないのは 確か。
    ノーベル賞プライズ☆彡と噛みしめ読むに値するか否かは、読み手の想いに添うと。
    他者が「この素晴らしさ」を解いたところで圧になるのは笑止。

    ラストの盛り上がり?が一番納得した展開だった。
    「神の思し召しが一番最後となりますように」とまで言われて取り組んだ 来し方の総決算とは。。。
     ケマルが「自らの物語を綴れる」と確信した相手 オルハン氏が登場する所が愉しい~もっとも 会って話したかったのはフェスン(100%の人がそう思うだろう)ネスィベの語りに、新たな発見は皆無~当然



    上下巻通じて重奏低音のイスタンブールの空気感は素晴らしい。上下2

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    2022年12月16日
  • 無垢の博物館 上

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    ノーベル賞の対象がかくのごとき 主観の結晶もあるという事を発見した大作。
    病、餓えと貧しさ 不安定な立ち位置・・何れもない若さという宝も手にした30歳の青年が 不倫と横恋慕という大海原に堂々と漕ぎ出でる 妄想が大半の主観の総決算★

    中世~近世ではこういった小説が堂々と第一位を占めていたことを思い出す。

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    2022年12月16日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    西洋美術の卓越と限界、そして、イスラムの細密絵師の世界を対比する形で、物語は進み、終わる。

    謎解きの要素は少ない。

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    2022年11月07日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    テーマは近代?個性の尊重を是とする欧米的な価値観のオルタナティブを示すことか?長かったが、まだ設定変更という感じがする。
    最後にシェキュレという女性がポストモダンになっていくのが不思議。

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    2022年11月02日
  • 赤い髪の女

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    ネタバレ

    p11
    ところで話は変わるが、そもそも私たちがよく口にする「考える」という行為はいったい何なのだろう?

    p15
    辺りにはまだ甘い火薬の匂いが漂っている。

    p150
    イラン人は、西欧化するあまりに過去の詩人たちや物語を忘れてしまったトルコ人とは違うんですよ、と彼女は言いたかったのかもしれない。確かに彼らイラン人は詩人のことを決して忘れないから。

    p163
     つまるところ私は、頼りがいのある父親から、人は何をすべきで、何をすべきではないのかを教えて欲しかったのだ。

    p167
    私たちはいまさら勇者とかロスタムとかが出てくる古い物語を読んで喜ぶような世界で暮らしていないもの。

    p264
    どち

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    2022年07月28日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    門井慶喜氏の「マジカル・ヒストリー・ツアー」を読んで興味を持った作品。細密画やイスラム教について、多少予備知識があった方が分かりやすいと思う。一人称多視点という珍しい形態のミステリで、犯人が分かったところでもう一度読み返してみたくなった。

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    2022年05月14日
  • 物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年

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    「イスタンブール」の歴史を年代順ではなく、地区ごとに見ていく。その記述は旧市街から新市街、新都心というように、都市の拡大の順序に沿っている。著者の専攻はトルコ文学ということで、扱う物事の由来がビザンツやローマにある場合以外には、ほとんどオスマン以降を軸に話が進む。オスマン帝国、トルコ共和国下のこの街を知る手引き書と言える。現代史にあたる部分は確かに類書が少なく、また、一夜建ての話、現代の都市計画など興味深く読んだ。

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    2021年10月14日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下

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    後半、怒涛の展開。最後まで先が読めなかった。
    ストーリや作品全体の仕掛けも、なるほど面白い。
    他の作品も読んでみたい。

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    2021年05月14日
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上

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    ネタバレ

    『藪の中』in イスタンブール。
    そこに芸術論と文明論が差し込まれている。モザイク画を見ているような印象を受けるのは、語り手が章ごとに異なるから。
    もしかしたら登場人物全員、実は挿絵の中に描かれた絵で、写本の読み手に話しかけている、という趣向の小説なのかも。

    この作品が成功しているのは、作中で語られる「一人称視点」の問題が構成とストーリーの両方に深く関係しているからだと思う。
    小説において「三人称」は「神の視点」、「一人称」は「個人の視点」というのは論を待たないだろう。この小説では一つの出来事が「一人称」で語られるために、いつまで経っても真実が明らかにならない。それぞれの人物に、それぞれの真

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    2021年05月09日