宮下遼のレビュー一覧

  • 赤い髪の女
    東洋とも西洋の間で揺れ、都市化の波が押し寄せる地で、「オイディプス王」「王書」のそれぞれを手がかりに父殺しについて考える作品。
    強く感情移入しきれない部分もあったが、それはトルコにおいては子が父親を殺すことの意味が、日本とは異なるセンテンスを持っていることが要因だと思う。
    章が細かく別れており読みや...続きを読む
  • 赤い髪の女
    ノーベル賞作家の最新作。3部構成で、それぞれに受ける印象が異なる。第1部は学費を稼ぐため井戸掘りの見習いとして働く少年の体験談。第2部は大人になった彼が過去と向かい合う話。第3部は語り手が変わり、すべての真実が明かされる。神話や叙事詩に描かれた父殺し、子殺しのエピソードが繰り返し語られ、物語もその方...続きを読む
  • 赤い髪の女
    ファム・ファタールものって、肝心のファム・ファタールに納得がいかないことが多いので、あんまり好きなジャンルではないのだけど(女は男性作家の女性描写には厳しいのである!!)、この表紙の女性の写真が素敵で「赤い髪の女」ってタイトルにピッタリな感じなので、手が伸びた。

    あと、ついでに、最近エルドアンのお...続きを読む
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今
    知らない作家読んでない本が沢山、そして読みたい本も沢山。
    まずはやはりブッカー賞あたりから制覇すべきか、それともエルサレム賞あたりか。
  • 雪〔新訳版〕 上
    オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。

    題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。

    オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義と...続きを読む
  • 雪〔新訳版〕 下
    オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。

    題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。

    オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義と...続きを読む
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今
    名前は聞いた事があっても、どういう賞か知らない。
    有名な賞8つ。
    それぞれの過去の受賞作が紹介されている。
    かまえずに読んでみようと思う。
  • 僕の違和感 上
    イスタンブールの路上で呼び売りをする少年。田舎から父について出てきて以来、いろいろなライフイベントを経験しながら年齢を重ねる姿を描く。
    田舎出身の貧しい主人公の意識や親戚づきあいなどの有り様と、40年前から現在へ至るイスタンブールの変遷が興味深く読めた。
    貧しいけれど主人公は素直で優しい男だ。いつま...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    訳文が、流れるようで美しい。
    中東やイスラムが何かと騒がれることの多い昨今、あちらの文化・風習・考え方に触れ、カルチャーショックを自分に与えるには良い機会になった。
    西洋人が考え出した遠近法を、「皇帝陛下と他の事物を同じ大きさに描くとは何事か」となったり。
    細密画は古の名人のものを完璧に写すことこそ...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    とにかく文字が多くて執拗だ。登場人物もいいやつが1人もいない。女は面倒くさい。男も面倒くさい。読むのが億劫になるけど、半分超えると、段々途中で諦めるのがもったいなくなる。でも、下巻読むのはもう少しあいだを空けよう。。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    人だけでなく、屍、犬、絵に描かれた木、金貨、「死」そのもの、さらには「赤」と、次々に入れ替わる話者の独白により物語が進んでいく。
    その形式はまるで、別々の絵師によって描かれた細密画を組み合わせ、一つの写本を完成させようとする作中の「企み」を、そのまま小説で表現しているみたいに思える。

    彼らの独白を...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    東西の交点であるイスタンブール自体に、
    独特の雰囲気がある。
    馴染みの薄いイスラム文化と細密画。
    多視点で語られる物語。

    2003 年 国際IMPACダブリン文学賞作品。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 下
    ひとつの細密画の製作にかかわる人たちのそれぞれの視点で、殺人事件とその犯人探しを語らせている。この中で、実在の細密画の絵師も登場させ、細密画の歴史と、細密画の絵師について丁寧に語られている。
    この話の16世紀末から17世紀初めにオスマン=トルコに珈琲が広まったとされており、珈琲店での噺家による小噺や...続きを読む
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    冒頭で殺人事件がおこり、犯人探しが主題になっているので、ミステリーだが、16世紀末のオスマン=トルコの情勢、細密画の絵師の世界が細かく描かれていて、歴史小説に分類。しかし、恋愛の駆け引きがその背景に絡まり、男たちが美しい女性にひきずり回される恋愛小説ともいえる。
  • わたしの名は赤〔新訳版〕 上
    オルハン・パムク。
    イスラム圏発のノーベル賞作家です。

    殺人事件を下地にしていますが、なにより美しい文章でつづられる細密画の傑作と細密画師の言い伝えが素晴らしい。

    海外文学はこういったまったく異なる文化や世界を見せてくれるのがとても好きです。

    イスラム圏の文化にあまり馴染みがないので、絵と偶像...続きを読む