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Posted by ブクログ
トルコ文学。未知の世界。
トルコと聞いて連想することと言えば、
ヨーロッパとアジアの中継地。イスタンブール。ケバブ。
せいぜいこの程度の知識しか無かった。
本著はオルハン・パムクの初にして最後の政治小説のようだ。
冒頭でバルザックの引用を用いて
文学に政治を持ち込む事への遺憾を表明しつつ、
地理的、文化的、宗教的に特殊な国柄がもたらす
トルコの問題を文学を通して我々に伝えてくれる。
ドイツに長らく亡命していた
主人公であり詩人のKa(カー)が取材を名目に、
トルコ辺境の地カルスを訪れるが、
様々な人間との出会いを通じて
宗教、政治の問題に翻弄されることになる。
そして、このカルスに住む
古くから恋慕を寄せていた
イペキとの恋愛と彼が書く詩を通して
これらの問題が濃密に結晶化されていく。
国民の99%がイスラム教徒でありながら、
世俗主義(日本もそうです)を標榜するトルコは、
正に西(欧州)と東(アジア。特にアラブ諸国)が混在し、
その特殊性が齎す問題は我々日本人には到底考えが及ばない。
Kaがカルスを去るまでの三日間が描かれているのだが、
この限定した期間、そして雪のために道路も封鎖された
カルスという閉鎖された街を舞台装置として描かれる人間劇は
どこかカラマーゾフの兄弟を連想させる。
ノーベル文学賞作家という冠は名ばかりではなかった。
素晴らしい小説です。
Posted by ブクログ
“わたしたちは他人の苦悩であるとか、愛であるとかを理解することが、果たしてできるのだろうか?自分よりもなお深い苦悩を抱え、貧困にあえぎ、虐げられる人々を理解することができるのだろうか?”
作中で問いかけられるこの言葉について考える。
そして舞台である中東の情勢や、宗教などについて自分はまだまだ知らないことが多く、理解するにはほど遠いことを思い知る。それでも、知らないことに気付き、考え、知ろうとするきっかけをこの本に与えてもらえたと思う。
灰色に沈む雪に閉ざされた街の陰鬱さが、何故か美しく思えてしまった。
雪と共にKaに詩想が舞い降りたのだろうなぁ。
Posted by ブクログ
オルハン・パムクは、ノーベル文学賞を受賞した、トルコを代表する作家です。
題名から受ける印象とは違い、この小説ではトルコにおける政治の複雑な状況が描かれています。
オスマン帝国後に誕生したトルコ共和国が国是とする共和主義や世俗主義、そしてそれに対するイスラム教や民族主義、更に社会主義や共産主義といったそれぞれの政治信条が絡み合い、主要な登場人物達の思惑が交錯します。
久しぶりに帰郷した主人公のKaは、ある事件についての記事を書く目的で地方都市カルス(トルコとアルメニアの国境付近)に来ますが、そこでかつて恋心を抱いていたイペキ、イスラム主義運動家「群青」など、さまざまな政治背景を背負った人々に出会います。
詩人であるKaに思想はないのですが、イペキと結ばれて幸福を得ようとする過程で、図らずも思想対立に絡めとられていきます。
パムクは作中でKaにこう言わせています。「人は何かの信条を守るために生きているんじゃない、幸せになるために生きているんだよ」
この一言に作家の普遍性が垣間見える思いがしました。個人の幸福の希求の前に、政治信条や思想の構図が一気に後退するシーンでした。
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