戸高一成のレビュー一覧
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『海戦からみた日清戦争』『海戦からみた日露戦争』に続く『海戦から~』三部作の最終作。前2作に比べて若干質は落ちるが、なかなかの良作。
日本近代史の3つの海戦は、後世の人は「日本近代史の50年戦争」と名づけるであろうが、その成功と失敗を俯瞰するにもってこいの『海戦史』である。その中でも、範囲・量・質においてずば抜けてるこの太平洋戦争は世界史上においても稀有の技術合戦であった。世界最初の空母艦隊(機動部隊)による攻撃、イギリスの誇りであった戦艦をあっという間に撃沈した航空攻撃、世界初で最後の空母対空母による決戦、レーダーやVT信管による防御の成立、あらゆる戦いが最先端であり、最大規模の海戦が行われたのが太平洋戦争である。
日本軍は、緒戦において斬新で統率の取れた無敵の軍隊であったが、1年もしないうちに全ての面でアメリカ軍に超越されていった。
零戦、酸素魚雷、機動部隊、邀撃作戦用の潜水艦部隊、戦艦空母、潜水空母といった世界最強の技術をもちながら、敗れていった日本軍について語るのは本書の頁数では足りないが、真珠湾からミッドウェー、ガダルカナル、サイパン、レイテ、沖縄へと続く総力戦による海戦の経緯を眺めていくと、技術が人間の身体を依拠とするものへと変化していく様が思い浮かぶ。私はすでに神風特攻、回天、桜花、震洋などの自爆兵器への経緯は理解できるようになったが、この理解不能の戦闘が日本で行われたという事実は我々日本人が最も学ばなければならない戦争の事実である。
海洋国家日本に住む日本人は常に海を見なければ世界を把握することはできない。 -
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英雄譚では読み解けない日本「完全勝利」の真実。
東郷ターン、丁字戦法の陰で戦史から消された最高機密
とは。
日本海海戦は、天才秋山真之が立案した丁字戦法と、
聖将東郷平八郎の指揮により完勝したということが、
一般的には定説とされている。
著者は、伝説化されてきた戦闘の実相を明らかにする。
当時、日本海軍の主力艦は、イギリス製であった。当然
の事のように考えていたが、本書を読むと、イギリス側
の事情がわかる。艦艇建造においては後発であった、ア
ームストロング社が本国の戦艦建造入札への参加を可能
とするための実績を積むために、外国の軍艦発注を受け
た事。そのため、外国向けに建造された軍艦は、必然的
に最新鋭艦となったことは興味深い。
著者によると、日本海海戦は、東郷長官や秋山参謀が、
わが身を削るようにして立てた計画のすべてが無となっ
てしまい、白紙の状態で戦った結果の勝利であったとい
う。軍機保持のため真相が歴史から抹消され、神話が作
られ、歴史が歪められ事が、後世にあだをなしたという
ことは皮肉といえる。 -
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ネタバレ[ 内容 ]
「対米戦争の目的は何だったのか」、「陸軍エリートはどこで問違えた」等、戦後六十余年、「あの戦争」に改めて向き合った六人の論客が、参戦から敗戦までの疑問を徹底的に掘り下げる。
「文藝春秋」読者賞受賞。
[ 目次 ]
第1部 座談会・あの戦争になぜ負けたのか(対米戦争の目的は何だったのか;ヒトラーとの同盟は昭和史の謎;開明派・海軍が持つ致命的欠点;陸軍エリートはどこで間違えた ほか)
第2部 あの戦争に思うこと(空しかった首脳会議;八月九日の最高戦争指導会議;私の太平洋戦争観;果たされなかった死者との約束 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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毎年この時期(終戦記念日8月に近く)になると、書店は多くの太平洋戦争関連の書籍が出版され、店頭に専門のコーナーが設けられ、沢山並んでいる。かつては半藤一利氏だけで本屋の一角を占領するくらいあったのだが、その半藤氏も数年前にお亡くなりになられた。他にも太平洋戦争関連を描く研究者たちが、同じ様な題材で新しいものをリリースしてくれるのだが、毎年似た様な顔ぶれであって、なんだか安心してしまう。
本書はこの時期になると書店を賑わす太平洋戦争の著名な研究者たちの座談会形式の様な内容となっている。顔ぶれは、保阪正康氏、戸高一成氏、大木毅氏の3名だ。個々が記してきた書籍もかなり読んできたので、私としては本書内でどの様な会話がなされているのか、買わずに通り過ぎる事は出来ない。
大きなテーマとして扱っているのは、海軍善玉論、石原莞爾、山本五十六、黒島亀人や源田実に代表される戦後生き残った人々についてであるが、いずれも高名なお三方であるから、一体どの様な話が飛び出すのか、通説とは異なる側面や裏話が盛りだくさんとなっている。戦後何故陸軍が悪玉に仕立てられ、海軍は先見性のあるインテリの様なイメージで戦争に反対した善玉と見られたのか。真珠湾を急襲し緒戦の大勝利を齎し、その後も数々の名言を残した山本五十六、彼は本当に英雄だったのか、はたまた単なる博打内だったのか。戦後天才戦略家として最もその名を上げた石原莞爾は天才だったのか。そして、宇垣纏の日記を盗んで焼いたと言われる黒島亀人や、戦後の自衛隊でもその名を轟かせた源田実。戦後はひっそり身を表に出さなかった黒島と、書籍まで出して表舞台に立ち続けた源田。対照的な2人であるが、いずれも戦争中は重要なポジションで作戦の成否に重要な影響を及ぼしてきたが、結果的に日本は敗戦した。2人が消し去りたかった戦時中の黒い歴史とは何か。
わざわざこうした本を出すのであるから、一般的に知られている様な事実や描写、人物像に止まらず、様々な戦争関係者へのインタビューなどから得られた、知られざる話(あまり知られていないという意味で。どこかで既出の話であることには変わりない)中心に進められる会話。読み手にも様々な思い入れや考え方があるであろうが、一つの側面を捉えたものとして、どの話も興味深い。
「またこの人たちか」という感覚の方もいるとは思うが、戦争経験者が減り、口頭での伝承が難しくなる今後に備え、こうした経験者へのインタビュー経験のある研究者から我々は学びたい。毎年同じ様な顔ぶれに私は安心感しかない。 -
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本書は元帝国海軍の左官級の中堅幹部が戦後に集まり、先の大戦について反省を踏まえて振り返った「海軍反省会」をベースに、本書タイトルにあるように「特攻」について語る部分を抜粋した内容である。筆者は大和ミュージアムでお馴染み、呉市にある海事歴史資料館館長であり、様々な海戦史に関する歴史書物を書いた戸高一成氏である。
元海軍関係者という事もあり、自身が関わった作戦に対して、また、当時の上司にあたる将官クラスの人々に対して、どの程度否定的な意見を述べているのか、興味を持って読んでみた。当時の作戦立案や戦争指導にあたる様な高い地位にいた人々の中には、自刃したり裁判で死刑になったり、すでに発言の機会を失ってしまった者も居る中、生き延びた人々はその責任について如何に考えているのか。中にはかなり中枢で指揮を採ったにも関わらず、死人に口なしとばかりに、居なくなった人間に責任を押し付ける様な内容の書籍を出すなど、やりたい放題の者もいる。現場におらず直接それを見たわけではなくとも、様々な書籍を読んで、ある程度客観性を持って見れる状況で、改めてそうした人間の書籍を読むと、腹立たしくなる以上に、滑稽に見えてしまう(誰とは言わないが)。
早速わくわくしながら本書を読んでみると、敢えて録音をそのままの言葉で文字にしたので、些か読みづらい箇所も多いものの、内容には怒りや悩みや悔しさや反省が感じられてリアルさが出ている。また話した方に対する反論などに臨場感が感じられて、あたかも自分がその場で聞いている様な感覚に陥る。中には戦後出版された書物からの引用が多すぎて、本人の考えなのか、戦後後天的に備わった知識を述べているのか判らない意見もある。だが、裏を返せばそれ程に自分たちが先導してきた戦争への強い想いや後悔、真実を探りたいという執念を感じ取る事ができる。
本書テーマとなっている特攻に関しては、よく知る航空機特攻よりも、震洋や回天などの特攻兵器、加えて戦死率の高い潜水艦部隊に関する会話も多く登場する。ありきたりではあるが、命令なのか自主的なものなのかについても触れている。当時を見てきた人々が、特攻兵器の開発時期や実際にその様な戦術が採られ始めた時期などから、様々な考察を重ねていく。大西滝治郎、陣中日記として戦藻録を記し、終戦の日8月15日に部下を引き連れ特攻した宇垣 纒などよく知る人物の名前も多く出てくる。果たして彼らを側で見て支えてきた人々が、どう評価し、何を語るのか。
太平洋戦争の中でアメリカが理解できなかったsuicide attack、Kamikaze attack、特攻。その背景にある時代的な考え方、日本人の置かれた状況、戦時下の教育、軍人採用など、あらゆる面から中堅幹部たちが考察を重ね議論を交わしていく。それらを聞いて、読んだ自分たちがどう考えるか。太平洋戦争に関しては様々な立場の人間が多くの書籍を出している。それらに加えて本書を読み、また新たな考え方に出会えるきっかけになるかもしれない。 -
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山本五十六や井上成美をはじめ海外ツウが多く、戦後に太平洋中心に描かれる提督物の書籍も多いことから、大陸で泥臭い戦いを強いられた陸軍と対照的にインテリ感の漂う帝国海軍、そんなイメージを持たれる方が多いように感じる。
私も学生時代から何処となくその様なイメージで括っていた。近年はレイテ反転の栗田中将の評価が見直されたり、山本長官をこっ酷く批判する書籍など、提督や参謀等の評価も割れていて面白い。実際は戦後生き残った関係者の個人的な関係や聞き伝わった内容など濁った情報が混ざり合うのだから本当の姿は解らない。
本書は人物よりも状況にフォーカスしてメジャーな作戦を評価していく点で、何度も似た様な書籍を読んだ方でもざっくり復習できて良いのではと感じる。また所々に航空機生産数や艦戦被害数などグラフや表も用いられ、戦局だけでなく社会の生産能力なども数値的に俯瞰出来る(戦時の経済分析専門書籍レベルでは勿論無い)。
流れを掴むという意味で、点と点を結ぶ状況を把握すると共に、如何に海域を移しながら、上層部(軍令部と現地の艦隊司令部)の考え方が当然考慮すべき戦局以外を考慮する事なく、目先の戦局打開という稚拙な戦術レベルに留まっていたかなど、半ば呆れながら読める。
しかしながら完全な第三者として読むから感じる事であり、実際の当事者達は現代のキャリア官僚の様な頭脳明晰、日本のトップレベルの頭脳の集まりなのだ。「船頭多くして船山に上る」では無いが頭が良い人が多数集まっても、目的意識や目標の置き方で失敗を繰り返すのは現代の会社でも一緒だ。逆にこれだけ纏まらない組織(帝国海軍)でよくもあれだけ戦えたものだと思う。
その下には多大なる犠牲があった事も忘れてはいけない。 -
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第1部は識者6人による座談会。
第2部は6人それぞれの補遺的文章。
あの戦争で当時のメディア(新聞とラジオ)が果たした役割はとてつもなく大きかった。開戦を賛美し、国民を扇動熱狂させた。恐ろしい!
終戦の日はいつか?
ポツダム宣言受諾を敵国に通告したのは8月14日。
それを国民に伝えた(玉音放送)のは8月15日。
ポツダム宣言受諾文書に調印したのは9月2日。
日本人は「終戦記念日は?」と問われれば8月15日と答えるが、国際的には「9月2日」が一般的だそうだ。
あの戦争の経緯が分かる文書はまだまだ未公開のモノが多い。なぜ開戦したのか?戦争の経緯は? 歴史的な解明はまだまだ先のようだ。 -
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対談。なぜ戦争になったのか。どこで間違えたのか。こういう本を読むと、自分がいかに知らなかったということを痛感する。そしてこういう本を読んで思うのは、過去のこととして知識にするのではなく、今、自分のいるまわりに活かせることはないか、ということなんだよね。
大正七年の原敬首相から昭和七年犬養毅が五・一五事件で暗殺されるまでを日本の政党政治の黄金期という。
では、原敬の何がすごかったのか。
偉大だったのは、としていわれること。
原敬日記をひいて、すごくこまめに軍人に会っていることを指摘している。
こまめに、ひょっとしたら自分と反対意見の人とも会って、パイプをつくっていたことが、強い力を持つことになったということだろうか。
意見が違う人とも、交流する。それによって単純に自分や自分の側の利益を押し通すのではなく、より多くの人が満足する道をさぐる。それが大きな仕事をするうえで肝要なのではないかな。
少なくとも、自分に反対する人間に対して「こんな人たちに負けるわけにはいかない」というのは、スケールが小さいんだなと思う。 -
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日本がなぜアメリカとの戦争に踏み切り、そして負けたのかという点について、近代史に造詣の深い6名の方が対談形式で述べる本。「なぜ負けたのか」よりも「なぜ国力に圧倒的な差があったアメリカとの戦争に踏み切ったのか」という点に関する部分には、ちょっときな臭い雰囲気になりつつある今日、考え直す意味は深いと感じます。
対米戦争に限らずほとんどの戦争が「自衛・自存」を大義名分に始められ、ブレーキをかけるはずのメディアも政権や大衆に迎合していく流れであった事などは同じ過ちを繰り返さないためにも知っておくべき事実であると思います。
なぜヒトラーのドイツと同盟を結んだのか、海軍・陸軍エリートはなぜ判断を誤って開戦に向かったのか、開戦以後の戦略は存在したのか、など8つのテーマに分けて議論されています。
物凄く深い議論が展開されているのに、私自身の近代史に関する知識不足で、いまいちよく分からない印象を受ける箇所もありました。でも逆に言うと新書サイズでここまでの内容の本だけにお買い得なのかも。歴史(特に近代史)はちゃんと勉強しないといけませんね。