【感想・ネタバレ】特攻 知られざる内幕 「海軍反省会」当事者たちの証言のレビュー

あらすじ

特攻はなぜ始まったのか、なぜ止められなかったのか――。当時の内幕を知る海軍中堅幹部たちが「海軍反省会」で語った、知られざる真相とは? 「海軍反省会」とは、旧海軍の中堅幹部であったメンバーたちが、昭和55年から平成3年まで、131回にわたり行った会議である(全録は『海軍反省会1~11』としてPHP研究所より刊行)。この海軍反省会は文字通り、海軍の失敗を検証し、後世の参考に記録を残すことを目的としていた。その録音テープには、第二次世界大戦中に作戦計画や戦場での指揮をとった人々の肉声が、約400時間にわたって残されている。本書は、「海軍反省会」における膨大な議論の中の、「特攻」に関わる主要個所を取り上げてまとめたものだ。特攻の記録から、軍令部や海軍省、艦隊などの現場で「特攻を送り出す側」の現実と本音が鮮明に表れている証言を収録している。当時の様子が生々しく伝わってくるとともに、会を重ねていくなかで、特攻を巡る様々なことが明らかになってゆく。平成の終わりの今だからこそ、必読の書。

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Posted by ブクログ

本書は元帝国海軍の左官級の中堅幹部が戦後に集まり、先の大戦について反省を踏まえて振り返った「海軍反省会」をベースに、本書タイトルにあるように「特攻」について語る部分を抜粋した内容である。筆者は大和ミュージアムでお馴染み、呉市にある海事歴史資料館館長であり、様々な海戦史に関する歴史書物を書いた戸高一成氏である。
元海軍関係者という事もあり、自身が関わった作戦に対して、また、当時の上司にあたる将官クラスの人々に対して、どの程度否定的な意見を述べているのか、興味を持って読んでみた。当時の作戦立案や戦争指導にあたる様な高い地位にいた人々の中には、自刃したり裁判で死刑になったり、すでに発言の機会を失ってしまった者も居る中、生き延びた人々はその責任について如何に考えているのか。中にはかなり中枢で指揮を採ったにも関わらず、死人に口なしとばかりに、居なくなった人間に責任を押し付ける様な内容の書籍を出すなど、やりたい放題の者もいる。現場におらず直接それを見たわけではなくとも、様々な書籍を読んで、ある程度客観性を持って見れる状況で、改めてそうした人間の書籍を読むと、腹立たしくなる以上に、滑稽に見えてしまう(誰とは言わないが)。
早速わくわくしながら本書を読んでみると、敢えて録音をそのままの言葉で文字にしたので、些か読みづらい箇所も多いものの、内容には怒りや悩みや悔しさや反省が感じられてリアルさが出ている。また話した方に対する反論などに臨場感が感じられて、あたかも自分がその場で聞いている様な感覚に陥る。中には戦後出版された書物からの引用が多すぎて、本人の考えなのか、戦後後天的に備わった知識を述べているのか判らない意見もある。だが、裏を返せばそれ程に自分たちが先導してきた戦争への強い想いや後悔、真実を探りたいという執念を感じ取る事ができる。
本書テーマとなっている特攻に関しては、よく知る航空機特攻よりも、震洋や回天などの特攻兵器、加えて戦死率の高い潜水艦部隊に関する会話も多く登場する。ありきたりではあるが、命令なのか自主的なものなのかについても触れている。当時を見てきた人々が、特攻兵器の開発時期や実際にその様な戦術が採られ始めた時期などから、様々な考察を重ねていく。大西滝治郎、陣中日記として戦藻録を記し、終戦の日8月15日に部下を引き連れ特攻した宇垣 纒などよく知る人物の名前も多く出てくる。果たして彼らを側で見て支えてきた人々が、どう評価し、何を語るのか。
太平洋戦争の中でアメリカが理解できなかったsuicide attack、Kamikaze attack、特攻。その背景にある時代的な考え方、日本人の置かれた状況、戦時下の教育、軍人採用など、あらゆる面から中堅幹部たちが考察を重ね議論を交わしていく。それらを聞いて、読んだ自分たちがどう考えるか。太平洋戦争に関しては様々な立場の人間が多くの書籍を出している。それらに加えて本書を読み、また新たな考え方に出会えるきっかけになるかもしれない。

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2024年09月26日

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