もう何度目になるのか。ことあるごとに近代史を読み返す。
後世の人は必ずこう呼ぶであろう「日本の50年戦争の始まりの戦争」
それが、日清戦争である。自分より強大な敵と戦ったためか、あるいは日本の完勝に終わったためかこの戦争に関しては現在の判断からは「陰鬱さ」が欠如している。戦後教育の賜物で「No mo
...続きを読むre戦争!」のような戦争忌避が全てある思想を持っている私でさえ、艦隊決戦でほぼ雌雄を決した黄海海戦はどこか牧歌的な雰囲気をかもし出していて古きよき時代であるかのように思える。最高速度14.5ノットでの戦い、隊列が横陣形と縦陣形の戦い、敵艦隊発見後食事をしてから戦闘開始という悠長さ。いかにも明治の若々しい力を感じる戦争であっただろう。
しかし、この本でもっとも重要なことは現在でもそのまま日中関係として成り立ってしまうということを描き出していることである。戦後、圧倒的な経済成長で世界の経済大国としての地位を築き上げた日本対20世紀末改革開放によって爆発的な勢いで軍備と経済体制を整え始めた中国のことだ。当時日本の最新艦の1.5倍以上の排水量を誇る清国の「定遠」「鎮遠」に対し、日本海軍は速射と軍の練度で戦いを挑んだ。だか、日本の三景艦「松島」「厳島」「橋立」に搭載されている三十二インチ砲はあまりに重量が大きすぎ、砲を横に旋回するだけで、船体が傾くほどだったという。一時間に一発しか放たれていない。それに対して、「定遠」「鎮遠」も負けていない。「定遠」が初めて主砲を発射したとたん振動で艦橋が崩れ落ち司令官の丁汝昌が負傷したという。
この本ではじめて知ったことだが、黄海海戦後の威海衛で日本海軍は世界で始めての水雷艇の集中運営で港内の敵艦を攻撃している。これは、まるで真珠湾への機動部隊の航空攻撃を連想させる。以前日本人は独創性がないとよく言われていた気がするが、すばらしい独創性があると思うのは私だけではあるまい。勝った戦争からは日本人のよさがにじみ出て、負けた戦争から日本人の悪さがにじみ出る。それでいい。そうして、学んでいけばいい。
いつだって日本人は必至で戦ってるんだと思える一冊である。