【感想・ネタバレ】[証言録]海軍反省会 3のレビュー

あらすじ

海軍反省会の第21回から第30回までを収録。この巻では、ドイツ大使館付海軍武官であった小島秀雄氏による、戦時中のナチス・ドイツと日本海軍の関係と交流模様。黛治夫氏、矢牧章氏による、アメリカでのスパイを使った日本海軍の諜報活動などについての証言。真珠湾攻撃にいたる、山本五十六大将の戦艦無用論の真意の考察。中公新書から発刊され当時話題となった、池田清『海軍と日本』に対する、大井篤氏の熱い反駁など、多くの興味ある発言が見られる。現場を知るものにしか語りえない、緊迫感溢れる言葉を満載した一冊である。

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Posted by ブクログ

 「海軍反省会」も3巻目となり、個別参加メンバーの個性と主張がだんだんわかるようになってきたが、「開戦2年半で日本とアメリカの戦力差が二倍以上になっちゃう。これでは全然問題にならないという結論」であったにもかかわらず、「海軍」が「内乱を恐れて開戦に同意した」という証言には驚く。
 これは、「当時の世界や日本の状況」に押し流されたと考えるべきか、「日本の政治システム」に問題があったと考えるべきか、読みながらいろいろ考えさせられてしまった。
 それにしても、本書を読んで思うのは、これらの海軍関係者には、戦時には国家予算の8割以上という膨大な予算を使いながら「帝国の破綻」に突進したことへの深刻な自責の念は感じられないこととである。官僚とは無責任なものであるが、海軍士官も官僚的なのだろうか。
 また、この戦争を招いた「帝国の大陸政策」への問題意識が低いことにもちょっと意外な思いを持った。
 「満州事変」「三国同盟」などの流れがこの「戦争」へとつながったことは明らかだが、この海軍内部の証言は「時代の流れに押し流された」「ドイツが勝つと思っていた」である。
 これは「言い訳」でしかないのではないか。もっと深刻な「自責の念」が吐露されるべきではないか。
 これは同じ方向にどっと進む「日本人の国民性」という視点から見るべきなのだろうか。
 いずれにしろ「海軍は行政機構の一部、陸軍を抑える役目を負わせるのは間違い」との責任問題で「軍部」を陸軍と海軍に分ける考え方は身勝手としか思えない。
 これらの海軍関係者の陸軍嫌いの言動を読むと、「こんな意識で大戦争に突入した軍人を持った国民の不幸」としか思えなかった。
 「大艦巨砲」や「潜水艦」、あるいは「レーダー・ソナー」などの「軍事」問題もそれなりに興味深いが、それよりもこの「反省会」を表に出すと「マスコミに利用されると困る」と言い合わせていることにも驚く。
 この元軍人たちには、膨大な国家予算を蕩尽した「戦争」が多く歴史の教訓をも含んだ国家の貴重な「公有財産」であるという意識は全くなかったのだろうか。
 戦後60年以上を経て、日本ではようやく冷静に「先の大戦」を見つめることができる時代を迎えているようにも思えるが、韓国や中国は、未だに「歴史認識」を日本に突きつけている。
 本書は、当時をよく知ることができ、当時の「戦争と軍部の時代」を自分たちで考えることができる良書であると思う。次巻も楽しみである。

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2013年04月06日

Posted by ブクログ

歴史の事実を一方向だけで語る事の危うさはあると思うが、
言い切っている訳ではないけども、
「戦争、War、をしているのではなくて、Battle、オンリーだ」
の様な事が書いてあって、
戦争というものの政治力の大切さがないがしろにされ過ぎていたのも敗戦の理由の1つなんだろう、と思えた。
三国同盟の頃の海軍からの目線の話は面白く読めた。
あの頃の世界の行動力や政治力を知っていくと、
日本の決定権のあやふやさも見えて来る。

それにしても、この反省会の中で戦争に反対だった事、
陸軍の行動について、いろいろ語られてはいるが、
もっと立場の違う方々との会談を聞いてみたいとも思った。
結局ここに関わった全ての人にそれぞれの正義や思いが
あったんだろうけども、
戦争として国で動いているはずなのに、
知らなかった、とか言えてしまう事が問題なのでは?
と考えてしまった。
海軍的思想、陸軍的思想、政治的思想、
それは1つになるのは難しいのかもしれないけども。

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2012年07月17日

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