乗代雄介のレビュー一覧

  • それは誠

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    初よみ、意外にもとてもよかった。比べるのもなんだが私としては「成瀬は~」よりずーっと好きである。過去長い入院生活でラジオを聴く楽しみを知ってから長年のラジオ愛好者なのだが特にNHKの朗読とラジオドラマは欠かさず聴いている。少し前にこの「それは誠」のドラマをやっていて50分の作品がよく出来ていて感動してしまったので原作を読んでみた。ドラマの方も原作のエッセンスをうまく生かしていたと改めて感心した次第である。まだ作品数が少ないのでとりあえず文庫になっているものから読んでみようと思う。
    読もうと思って買った本もまだ手付かずなのにこうして枝葉が広がっていくのもまた楽し。

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    2024年06月27日
  • 旅する練習

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    こ、これは。今年読んだ中でもかなり印象に残る作品。
    元気で前向きな亜美、博識な物書きの叔父、優しいけど内向的なみどりさん。どのキャラも魅力的で、コロナ禍でも希望を感じさせるストーリーに励まされた。ジーコの偉業も初めて知った。
    ただ、所々、叔父のモノローグに引っかかるところがあって気になっていたら、まさか…
    鳥の話がよく出てきて、印象的だったのもそういう事だったのかと。。。
    また再読すると思う作品。

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    2024年05月31日
  • それは誠

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    溺れている人がいたら、一緒に溺れてやろう。
    一緒に溺れてやろうって考えながら生きることは、どういう意味があるのか。
    溺れゆく1人に、一緒に溺れてやろうって6人。
    そこにあるのは優しさ?友情?
    そんなたいそうなものじゃなくて、ちょっとした相手への興味と、自分への興味なだけかもしれない。

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    2024年02月25日
  • それは誠

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    共に旅する友達でも他人でもない絶妙な距離感のクラスメイトたち。甘くて酸っぱいひそやかな恋心。家族と社会への諦観などなど、田舎の高校の空気感だったり、思春期の心の機微なんかが一人称の繊細な筆致で鮮やかに描き出されていて、ほうっと溜息が出た。たくさん小説を読んでいるわけでない自分でも、「上手いっ!!」と思った作品。
    等身大でひねくれものの主人公のささやかな冒険が、軽快な疾走感を伴って語られるロードムービー。
    自然に感情移入できて、だからこそ、主人公の小さな冒険が自分をどこか遠くへ連れて行ってくれるような気がしている。成長していく主人公と、ゆっくりと芽吹く確かな友情に強く胸を打たれる。
    これ以上無い

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    2024年02月20日
  • それは誠

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    学校をサボりがちで友だちのいない高二の僕は「東京修学旅行の思い出を忘れないうちに書き留めておこう」とパソコンに向かった。佐田誠の語り文は荒くザラついている。『旅する練習』と同じ著者なのか?と初めは違和感を覚えたが、(p.38)で一気に物語に引き込まれた。
    自由行動の希望地を「佐田くんの行きたいところ」と書いた松くんの思いに心揺さぶられた。

    三年前の代が勝ち取った「修学旅行二日目の全日自由行動」についてクラス担任が語り始める。生徒の権利を認める学校側。その裏に隠された"大人の事情"を生徒らはよく見ているなぁと感心した。
    と同時に「まるまる一日が自由行動になったんだから別によ

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    2024年06月04日
  • それは誠

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    スリルある冒険譚に緊張感が張り詰める場面もある中、青春真っ只中に感情の機微にほっこりと感動もさせられ、色んな感情が湧き出てきた。あくまで主人公が「書くこと」を通じて物語が語られる乗代雄介らしさも凄く良い味を出してして、余韻の残る読後感も爽やかで凄く心地よかった。名作。

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    2024年03月03日
  • 十七八より

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    そういえば、私も少女だった!いまもなお、ふとした時にあらわれて、平凡なおばさんになった私を苦しめます(笑)読んでいて気持ち良すぎてびっくりした。とてもすき。ありがとう。

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    2023年06月03日
  • 旅する練習

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    人の歴史が、その本質として土地と切り離せないことを思い出させてくれる小説。人が生き、そして死ぬ積み重ねを「歴史」とするならば、「家にいること」が称揚され、そこから切り離されたコロナ禍は異常な時期だったと言える。そんな中、あえて肉体の確かな感覚を伴って歴史を歩き、「練習」を重ねる姿は、いっそ清々しい理想型を感じさせる。しかしそうした爽やかさの陰には馬頭観音初め死の影がちらつくのであり、我々はコロナ禍もまた、死の匂いを帯びた季節であったことを思い出す。
    惜しむらくは結末。芥川賞の選評にあざとさが指摘されていたが、個人的には「こうでもしないとこの物語は終わらない」という感じがする。むしろそれだけ生命

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    2025年12月29日
  • 旅する練習

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    文庫になってからの再読。とても良かった。
    好きなのは「カワウを慮って土手を下った少女が形をとるなら、私はどんなに嬉しいかわからない(中略)書き続けることで、かくされたものへの意識を絶やさない自分を、この世のささやかな光源として立たせておく」や、亜美といっしょに撮った顔はめパネルの場面、パネルの後ろでは亜美が叔父の肩を組んでいて、撮影者側からは見えないけど、もしこの場面を横から見ている人がいたら大きな慰めになったというところ。こういった人の残した影のようなものをを丁寧に受け取ろうという温かい姿勢がとてもととても好きです。

    この本が話題になっていたとき最後の部分に注目が結構あったように記憶してい

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    2025年12月26日
  • それは誠

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    杉江マライ芥川本から。前に読んだ著者の作品も、いわゆる文学の中では楽しめた方だと記憶するんだけど、本作はそれよりさらに面白かったかも。高校修学旅行が舞台ってのも素敵で、どうしても自身の経験を追体験してしまうし、かといって通り一遍の旅行風景じゃなく、かなりの変化球を放られるんだから、興味深くない訳がない。思わず一気読み。

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    2025年12月19日
  • 最高の任務

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    「生き方の問題」「最高の任務」の2篇。どちらもとっても良かった!情景に根付いた何かを感じ取る感性というのがたまらなく好きだ。
    例えば「最高の任務」で青鷺を見つけた時、この青鷺は2年前叔母と一緒に見た青鷺だったか?多分違うんだろうけど同じものに見えてしまって、というかその青鷺であってほしいという景子の願望。相沢忠洋の一家団欒の幸せというのは一万年前の土器片からそういう喜びを第一にしてきたという下り。ゆき江叔母が景子のことを思って導く姿勢。ラストの場面、家族が景子を優しく見守るような眼差し。
    ちょっとわかりずらく感じるところもまた読んで近づきたいと思える素敵な小説でした。

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    2025年11月07日
  • 皆のあらばしり(新潮文庫)

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    素数の木曜日という響きも良く、それを待ち侘び、その間起きたことは二人の会話でしかわからず、わくわくしながら次の素数の木曜日を読み、最後はどこから形成逆転したかに驚き…もう一度読まないといろいろついていけないと思うが、わくわく感だけは間違いない。
    青年がどんな大人になりたいか、語ったことこそがわくわく感に繋がっているのだと思った。

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    2025年08月24日
  • パパイヤ・ママイヤ

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    ネタバレ

    美しかった。
    本当に文章が美しい。僕は元々情景描写を好まない人間だが、乗代雄介の情景描写は本当に好きだ。
    あまりにもど真ん中の青春で、それに対するメタも含んではいるのだが、やはりそれを美しいと信じようとするパパイヤやママイヤの、そして乗代雄介の意図が感じられた気がする。
    「旅する練習」では景色を文章として残そうとしていたが、本作では写真で残そうとしている。残そうとしていると言っても、序盤のママイヤは「変わっちゃうのに耐えられない」が故に、現像を拒否する。しかしパパイヤとの交流を通じ、変わっちゃうと分かっていても、そこにあった美しいものを、美しいと感じた自分自身を、信じられるようになり、強くなる

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    2025年08月15日
  • GOAT meets01

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    はじめて文芸誌を隅から隅まで読んだ。

    良い意味でハードルが低く、ここから文芸誌を手に取る人もたくさんいると思う。
    小学館さん凄いことやってます!!!

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    2025年08月13日
  • それは誠

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    人によって心を動かされる部分は違うことを改めて感じた作品だった。
     癖のある文章だなと思っていたが、最後まで読むとその癖があるから良いと感じた。
     最後になぜおじさんに会いたかったのかや松くんなどの対応などわかった時満足できる。
     溺れている人がいたら、助けることができる人間が理想だが、一緒に溺れていく覚悟ができる人間も必要だと感じた。自分も惚れた友達、女性には一緒に溺れる覚悟を見せれる人になりたいと思った。

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    2025年07月12日
  • 二十四五

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    阿佐美景子(主人公)が、仙台である弟の結婚式に向かう電車で、ある女子大生(平原夏葵)に声をかけられる。

    サラッとしている読み心地で、
    読み進めていく中で少しずつ事実関係など分かってくるような、
    叔母(ゆき江ちゃん)の喪失をすごく引きずっていることが分かってきて、
    主人公は作家になって活躍してることとか、
    24、5歳の阿佐美景子が、なんだかかなり大人っぽく感じた、自分より、ね。
    始めから終わりまでキーパーソン的な女子大生がすごく好感を持てる子であり、
    ほんとみなさん、しっかりしてるよなーと思ってしまう。またまた自分と比べて。

    何かあるわけでもないようだけど、
    出来事とは、個々人の中で起こって

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    2025年05月18日
  • 二十四五

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    読んでいて気持ち良くなる文章なのが好み。「旅する練習」のような感じの作品だが、これと比べると衝撃度は小さい。ただし、文章の裏に隠されたものが読み取れなかったのかもしれない。東日本大震災と絡めた作品であり、そこがきっと何か重要な何かがありそう。主人公である姉(景子)と弟との関係、姉と叔母(故人)との関係、弟の結婚相手、仙台で知り合った女性との関係・・・など様々。叔母の死因は何だっけ、震災と関係あるのかななど思ったり。読みやすいが解釈が難しい作品だった。でも、そろそろ芥川賞を獲るような気がする作家である。

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    2025年05月14日
  • それは誠

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    良かった、やはり学校を舞台とする小説は個人的に好きで、彼の小説で描かれる、歳と思考がかけ離れているが一部抜けている部分のある愛らしいキャラクターが私は好き

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    2025年05月04日
  • それは誠

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    旅する練習でもそうだったけど、この人の作品で出てくる土地とかをストリートビューでつい調べてしまう。誠たちがピザ食べながら会話した八ノ上横穴墓群、おじさんと会った後、みんなで線路沿いの道を歩きながら金網越しにみた西の空など。そこにいるはずもない彼らの影を見てしまう。高校生のこの時期にしかできない同級生とのやりとり、ちょっと踏み外しちゃいますか!的な冒険心、めちゃくちゃ貴重で尊くて今風にいうとエモい時間だなと思いながら読んだ。でも自分たちが当事者だったときはこのエモさになかなか気付けないなあとか。宮沢賢治の一緒に溺れるという話から蔵並が感化されたんだという場面が好きだ。最後の誠と小川のやりとりもと

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    2025年04月09日
  • 二十四五

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    仙台へ向かう新幹線の中で、ヤマシタトモコの『違国日記』の最終巻を読んでいましたよね、とショートヘアの女の子から声をかけられたところから物語ははじまる。

    『違国日記』も叔母と姪のおはなし。『違国日記』は、大切に読んだ漫画なので、最初からとても惹かれてしまった。

    弟のことを書いた「ヒヤシグマの生態」のエピソードが可愛かった。

    本を沢山読んでいたけれど書かなかった叔母のゆき江ちゃんのことをもっと読んでいたかった。

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    2025年03月29日