乗代雄介のレビュー一覧
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ネタバレ初よみ、意外にもとてもよかった。比べるのもなんだが私としては「成瀬は~」よりずーっと好きである。過去長い入院生活でラジオを聴く楽しみを知ってから長年のラジオ愛好者なのだが特にNHKの朗読とラジオドラマは欠かさず聴いている。少し前にこの「それは誠」のドラマをやっていて50分の作品がよく出来ていて感動してしまったので原作を読んでみた。ドラマの方も原作のエッセンスをうまく生かしていたと改めて感心した次第である。まだ作品数が少ないのでとりあえず文庫になっているものから読んでみようと思う。
読もうと思って買った本もまだ手付かずなのにこうして枝葉が広がっていくのもまた楽し。 -
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共に旅する友達でも他人でもない絶妙な距離感のクラスメイトたち。甘くて酸っぱいひそやかな恋心。家族と社会への諦観などなど、田舎の高校の空気感だったり、思春期の心の機微なんかが一人称の繊細な筆致で鮮やかに描き出されていて、ほうっと溜息が出た。たくさん小説を読んでいるわけでない自分でも、「上手いっ!!」と思った作品。
等身大でひねくれものの主人公のささやかな冒険が、軽快な疾走感を伴って語られるロードムービー。
自然に感情移入できて、だからこそ、主人公の小さな冒険が自分をどこか遠くへ連れて行ってくれるような気がしている。成長していく主人公と、ゆっくりと芽吹く確かな友情に強く胸を打たれる。
これ以上無い -
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学校をサボりがちで友だちのいない高二の僕は「東京修学旅行の思い出を忘れないうちに書き留めておこう」とパソコンに向かった。佐田誠の語り文は荒くザラついている。『旅する練習』と同じ著者なのか?と初めは違和感を覚えたが、(p.38)で一気に物語に引き込まれた。
自由行動の希望地を「佐田くんの行きたいところ」と書いた松くんの思いに心揺さぶられた。
三年前の代が勝ち取った「修学旅行二日目の全日自由行動」についてクラス担任が語り始める。生徒の権利を認める学校側。その裏に隠された"大人の事情"を生徒らはよく見ているなぁと感心した。
と同時に「まるまる一日が自由行動になったんだから別によ -
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人の歴史が、その本質として土地と切り離せないことを思い出させてくれる小説。人が生き、そして死ぬ積み重ねを「歴史」とするならば、「家にいること」が称揚され、そこから切り離されたコロナ禍は異常な時期だったと言える。そんな中、あえて肉体の確かな感覚を伴って歴史を歩き、「練習」を重ねる姿は、いっそ清々しい理想型を感じさせる。しかしそうした爽やかさの陰には馬頭観音初め死の影がちらつくのであり、我々はコロナ禍もまた、死の匂いを帯びた季節であったことを思い出す。
惜しむらくは結末。芥川賞の選評にあざとさが指摘されていたが、個人的には「こうでもしないとこの物語は終わらない」という感じがする。むしろそれだけ生命 -
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文庫になってからの再読。とても良かった。
好きなのは「カワウを慮って土手を下った少女が形をとるなら、私はどんなに嬉しいかわからない(中略)書き続けることで、かくされたものへの意識を絶やさない自分を、この世のささやかな光源として立たせておく」や、亜美といっしょに撮った顔はめパネルの場面、パネルの後ろでは亜美が叔父の肩を組んでいて、撮影者側からは見えないけど、もしこの場面を横から見ている人がいたら大きな慰めになったというところ。こういった人の残した影のようなものをを丁寧に受け取ろうという温かい姿勢がとてもととても好きです。
この本が話題になっていたとき最後の部分に注目が結構あったように記憶してい -
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「生き方の問題」「最高の任務」の2篇。どちらもとっても良かった!情景に根付いた何かを感じ取る感性というのがたまらなく好きだ。
例えば「最高の任務」で青鷺を見つけた時、この青鷺は2年前叔母と一緒に見た青鷺だったか?多分違うんだろうけど同じものに見えてしまって、というかその青鷺であってほしいという景子の願望。相沢忠洋の一家団欒の幸せというのは一万年前の土器片からそういう喜びを第一にしてきたという下り。ゆき江叔母が景子のことを思って導く姿勢。ラストの場面、家族が景子を優しく見守るような眼差し。
ちょっとわかりずらく感じるところもまた読んで近づきたいと思える素敵な小説でした。 -
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ネタバレ美しかった。
本当に文章が美しい。僕は元々情景描写を好まない人間だが、乗代雄介の情景描写は本当に好きだ。
あまりにもど真ん中の青春で、それに対するメタも含んではいるのだが、やはりそれを美しいと信じようとするパパイヤやママイヤの、そして乗代雄介の意図が感じられた気がする。
「旅する練習」では景色を文章として残そうとしていたが、本作では写真で残そうとしている。残そうとしていると言っても、序盤のママイヤは「変わっちゃうのに耐えられない」が故に、現像を拒否する。しかしパパイヤとの交流を通じ、変わっちゃうと分かっていても、そこにあった美しいものを、美しいと感じた自分自身を、信じられるようになり、強くなる -
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ネタバレ阿佐美景子(主人公)が、仙台である弟の結婚式に向かう電車で、ある女子大生(平原夏葵)に声をかけられる。
サラッとしている読み心地で、
読み進めていく中で少しずつ事実関係など分かってくるような、
叔母(ゆき江ちゃん)の喪失をすごく引きずっていることが分かってきて、
主人公は作家になって活躍してることとか、
24、5歳の阿佐美景子が、なんだかかなり大人っぽく感じた、自分より、ね。
始めから終わりまでキーパーソン的な女子大生がすごく好感を持てる子であり、
ほんとみなさん、しっかりしてるよなーと思ってしまう。またまた自分と比べて。
何かあるわけでもないようだけど、
出来事とは、個々人の中で起こって -
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旅する練習でもそうだったけど、この人の作品で出てくる土地とかをストリートビューでつい調べてしまう。誠たちがピザ食べながら会話した八ノ上横穴墓群、おじさんと会った後、みんなで線路沿いの道を歩きながら金網越しにみた西の空など。そこにいるはずもない彼らの影を見てしまう。高校生のこの時期にしかできない同級生とのやりとり、ちょっと踏み外しちゃいますか!的な冒険心、めちゃくちゃ貴重で尊くて今風にいうとエモい時間だなと思いながら読んだ。でも自分たちが当事者だったときはこのエモさになかなか気付けないなあとか。宮沢賢治の一緒に溺れるという話から蔵並が感化されたんだという場面が好きだ。最後の誠と小川のやりとりもと