乗代雄介のレビュー一覧

  • 皆のあらばしり(新潮文庫)

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    文庫で再読。二篇追加され、物語の制作の背景が分かった。やはり高校生とオッサンとの掛け合いが知的好奇心をそそる。

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    2026年01月05日
  • 旅する練習

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    人の歴史が、その本質として土地と切り離せないことを思い出させてくれる小説。人が生き、そして死ぬ積み重ねを「歴史」とするならば、「家にいること」が称揚され、そこから切り離されたコロナ禍は異常な時期だったと言える。そんな中、あえて肉体の確かな感覚を伴って歴史を歩き、「練習」を重ねる姿は、いっそ清々しい理想型を感じさせる。しかしそうした爽やかさの陰には馬頭観音初め死の影がちらつくのであり、我々はコロナ禍もまた、死の匂いを帯びた季節であったことを思い出す。
    惜しむらくは結末。芥川賞の選評にあざとさが指摘されていたが、個人的には「こうでもしないとこの物語は終わらない」という感じがする。むしろそれだけ生命

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    2025年12月29日
  • 旅する練習

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    文庫になってからの再読。とても良かった。
    好きなのは「カワウを慮って土手を下った少女が形をとるなら、私はどんなに嬉しいかわからない(中略)書き続けることで、かくされたものへの意識を絶やさない自分を、この世のささやかな光源として立たせておく」や、亜美といっしょに撮った顔はめパネルの場面、パネルの後ろでは亜美が叔父の肩を組んでいて、撮影者側からは見えないけど、もしこの場面を横から見ている人がいたら大きな慰めになったというところ。こういった人の残した影のようなものをを丁寧に受け取ろうという温かい姿勢がとてもととても好きです。

    この本が話題になっていたとき最後の部分に注目が結構あったように記憶してい

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    2025年12月26日
  • 最高の任務

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    「生き方の問題」「最高の任務」の2篇。どちらもとっても良かった!情景に根付いた何かを感じ取る感性というのがたまらなく好きだ。
    例えば「最高の任務」で青鷺を見つけた時、この青鷺は2年前叔母と一緒に見た青鷺だったか?多分違うんだろうけど同じものに見えてしまって、というかその青鷺であってほしいという景子の願望。相沢忠洋の一家団欒の幸せというのは一万年前の土器片からそういう喜びを第一にしてきたという下り。ゆき江叔母が景子のことを思って導く姿勢。ラストの場面、家族が景子を優しく見守るような眼差し。
    ちょっとわかりずらく感じるところもまた読んで近づきたいと思える素敵な小説でした。

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    2025年11月07日
  • 皆のあらばしり(新潮文庫)

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    ネタバレ

    素数の木曜日という響きも良く、それを待ち侘び、その間起きたことは二人の会話でしかわからず、わくわくしながら次の素数の木曜日を読み、最後はどこから形成逆転したかに驚き…もう一度読まないといろいろついていけないと思うが、わくわく感だけは間違いない。
    青年がどんな大人になりたいか、語ったことこそがわくわく感に繋がっているのだと思った。

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    2025年08月24日
  • パパイヤ・ママイヤ

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    ネタバレ

    美しかった。
    本当に文章が美しい。僕は元々情景描写を好まない人間だが、乗代雄介の情景描写は本当に好きだ。
    あまりにもど真ん中の青春で、それに対するメタも含んではいるのだが、やはりそれを美しいと信じようとするパパイヤやママイヤの、そして乗代雄介の意図が感じられた気がする。
    「旅する練習」では景色を文章として残そうとしていたが、本作では写真で残そうとしている。残そうとしていると言っても、序盤のママイヤは「変わっちゃうのに耐えられない」が故に、現像を拒否する。しかしパパイヤとの交流を通じ、変わっちゃうと分かっていても、そこにあった美しいものを、美しいと感じた自分自身を、信じられるようになり、強くなる

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    2025年08月15日
  • GOAT meets01

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    はじめて文芸誌を隅から隅まで読んだ。

    良い意味でハードルが低く、ここから文芸誌を手に取る人もたくさんいると思う。
    小学館さん凄いことやってます!!!

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    2025年08月13日
  • 二十四五

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    ネタバレ

    阿佐美景子(主人公)が、仙台である弟の結婚式に向かう電車で、ある女子大生(平原夏葵)に声をかけられる。

    サラッとしている読み心地で、
    読み進めていく中で少しずつ事実関係など分かってくるような、
    叔母(ゆき江ちゃん)の喪失をすごく引きずっていることが分かってきて、
    主人公は作家になって活躍してることとか、
    24、5歳の阿佐美景子が、なんだかかなり大人っぽく感じた、自分より、ね。
    始めから終わりまでキーパーソン的な女子大生がすごく好感を持てる子であり、
    ほんとみなさん、しっかりしてるよなーと思ってしまう。またまた自分と比べて。

    何かあるわけでもないようだけど、
    出来事とは、個々人の中で起こって

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    2025年05月18日
  • 二十四五

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    読んでいて気持ち良くなる文章なのが好み。「旅する練習」のような感じの作品だが、これと比べると衝撃度は小さい。ただし、文章の裏に隠されたものが読み取れなかったのかもしれない。東日本大震災と絡めた作品であり、そこがきっと何か重要な何かがありそう。主人公である姉(景子)と弟との関係、姉と叔母(故人)との関係、弟の結婚相手、仙台で知り合った女性との関係・・・など様々。叔母の死因は何だっけ、震災と関係あるのかななど思ったり。読みやすいが解釈が難しい作品だった。でも、そろそろ芥川賞を獲るような気がする作家である。

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    2025年05月14日
  • 二十四五

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    仙台へ向かう新幹線の中で、ヤマシタトモコの『違国日記』の最終巻を読んでいましたよね、とショートヘアの女の子から声をかけられたところから物語ははじまる。

    『違国日記』も叔母と姪のおはなし。『違国日記』は、大切に読んだ漫画なので、最初からとても惹かれてしまった。

    弟のことを書いた「ヒヤシグマの生態」のエピソードが可愛かった。

    本を沢山読んでいたけれど書かなかった叔母のゆき江ちゃんのことをもっと読んでいたかった。

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    2025年03月29日
  • 二十四五

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    弟の結婚式に出るため仙台にやってきた景子。叔母の死の喪失感から仙台を彷徨うような姿と知り合った女子大生との思いがけない交流。3日間の結婚式を挟む滞在の心情の変化がとても良かった。
    話全体の流れなどとても好きです。

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    2025年03月06日
  • 二十四五

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    弟の結婚式なのに、どこか浮かない景子。未だ叔母・ゆき江ちゃんを喪った悲しみが癒えず…具体的な思い出や言葉の描写がないにも関わらず、憂いを醸す筆力が見事。『十七八より』の続編だったとは知らず、本書を先に読んでしまった。

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    2025年03月01日
  • 旅する練習

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    ネタバレ

    読み終わって読み返したくなった。
    最後を読んだ時は、なんであの結末にする必要があったのか疑問に感じたけれど、解説を読んで腑に落ちた。何気ない日常とちょっとした喜怒哀楽を生む出来事が繰り返されるその人生を描いていた。
    正直最後の展開がなければこんなに心動かされなかっただろうし、考えず平和な作品だったなぁくらいの感想になるところだった。

    事細かに記録された旅の話、あまりにも細かい描写が多く初めて出会う単語もあり読むのに苦労した。でもこれも全て、あの最後のためにあった。
    どんな旅行でもあんなに全てのことを記録することは自分にはできないし、いくら小説家の叔父だからといってあんな事細かに記録するわけじ

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    2025年02月28日
  • 旅する練習

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    鬱屈としたコロナ禍の時期に、穏やかな実りある時間があった、という事を満喫しながら読み進めた。最後は、旅で何かを得たであろう亜美と叔父さんの様子が描かれるんだろうな、と思いながら読み進めての、予想しなかった展開の破壊力。こうくるとは思わなかったので、何度も読み返し、作者がなぜこういう終わりにしたのか、考えてしまった。

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    2025年02月23日
  • 旅する練習

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    最後に待ち受けている一文の、あまりにささやかで、かつなんと破壊力のあることか。読者は微笑ましい気持ちで彼らの旅の行く末を見守っているはずで、登場人物たちに思い思いの感傷を抱いているはずで、そうくるか、と読者の心を破壊しにかかるのは唸らされてしまった。
    そこに辿り着く、そのための物語なのだ、と読み終えた今では思う。

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    2024年11月07日
  • 旅する練習

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    ほのぼのとのんびりと旅は始まる。サッカーボールを蹴りながら、それが練習なんですね。長い距離を歩くなんて、最後はいつだろう。歩くと普段は通り過ぎて気がつかないことにも目が行くことでしょう。練習の旅の行きつく先が悲しい。どこかを歩きたくなった。

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    2024年10月25日
  • 旅する練習

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    少し遠出をしたいと思いました。
    この本はとても悲しい気持ちになりますが、それと同時に旅による、思い出ができる素晴らしさも教えてもらいました。柳田國男の作品を読んでみたいと思いました。

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    2024年10月22日
  • 旅する練習

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    ネタバレ

    書き写したくなるような箇所がいくつかあった、それは柳田国男や小島信夫の著書からの引用部分だった。「私」の記述や「亜美」の日記やジーコの評伝などと重層的にからまりあって面白い読書体験だった。この作家を追い続けるかどうかはまだ決められないけれど。読んだ3作の中では『それは誠』が好きだ。ついでに台164回芥川賞の選評も読んでみたが、プロの作家先生たちの受け止め方が様々で、文学賞選ぶのも大変ですね~と思ってしまった。だから一読者がどの作家のどの作品にひかれるかなんて運命の出会いのようなものだと思う。出会えたひとは幸せだ。

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    2024年09月05日
  • 旅する練習

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    ネタバレ

    過去の乗代作品の持って回ったような表現は抑えられ比較的読みやすい。風景描写は個人的に得意ではないのでうまくイメージ作りはできないところがいくつか。
    ロードムービーのような展開で心地よく読み進めていたが、結末はそうする必要があったのか私にはわからない。

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    2024年07月28日
  • 十七八より

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    1行で終わるところを3、4行かけて描写する。そして匂わせるばかりではっきり描かない所はこの手の作品を読みなれない人には何を読まされてるのか?となるかも。好きな人にはたまらない。

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    2023年10月08日