あらすじ
第169回芥川賞候補作に選ばれた、
いま最も期待を集める作家の最新中編小説。
修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。
その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、
えも言われぬ感動がこみ上げる名編。
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「旅する練習」に続いて、2作目。
高校生男子の語りで物語が進む。サリンジャーぽい青春小説。
母を亡くした自分を育ててくれようとしたおじさんを訪ねる旅(修学旅行の自由行動時間をクラスメート男子と!)。
親しくもないクラスメートが、だんだん親しくなっていく。「旅する練習」でも感じたけれど、前半の淡々とした語りから、後半はもうぐーっと盛り上がっていく。読後は、静かな感動が残る。
ほのかに憧れる女子との関係も物語のスパイスになっててよいなあ。
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どこまで誠の文章を信用するかで、いろんな解釈ができる凄い作品だと思った。
個人的には、たぶん誠は何らかの言語障害を持っていて、現実ではうまく人とコミュニケーションを取れない子なのではと思った。だから、パソコンで文字を打ち込んで会話するシーンもそうだし、松との関わり方もそうだし、相手を見て喋るシーンが極端に少なかったり、まさに「見つめ合うと素直におしゃべりできない」子なんだと思う。背伸びしてカッコいい事を言いたがる年頃の感じも、どこか現実での鬱屈した部分を書くことで発散させるため。という、そんな想像をしながら読んだ。
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初よみ、意外にもとてもよかった。比べるのもなんだが私としては「成瀬は~」よりずーっと好きである。過去長い入院生活でラジオを聴く楽しみを知ってから長年のラジオ愛好者なのだが特にNHKの朗読とラジオドラマは欠かさず聴いている。少し前にこの「それは誠」のドラマをやっていて50分の作品がよく出来ていて感動してしまったので原作を読んでみた。ドラマの方も原作のエッセンスをうまく生かしていたと改めて感心した次第である。まだ作品数が少ないのでとりあえず文庫になっているものから読んでみようと思う。
読もうと思って買った本もまだ手付かずなのにこうして枝葉が広がっていくのもまた楽し。
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溺れている人がいたら、一緒に溺れてやろう。
一緒に溺れてやろうって考えながら生きることは、どういう意味があるのか。
溺れゆく1人に、一緒に溺れてやろうって6人。
そこにあるのは優しさ?友情?
そんなたいそうなものじゃなくて、ちょっとした相手への興味と、自分への興味なだけかもしれない。
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共に旅する友達でも他人でもない絶妙な距離感のクラスメイトたち。甘くて酸っぱいひそやかな恋心。家族と社会への諦観などなど、田舎の高校の空気感だったり、思春期の心の機微なんかが一人称の繊細な筆致で鮮やかに描き出されていて、ほうっと溜息が出た。たくさん小説を読んでいるわけでない自分でも、「上手いっ!!」と思った作品。
等身大でひねくれものの主人公のささやかな冒険が、軽快な疾走感を伴って語られるロードムービー。
自然に感情移入できて、だからこそ、主人公の小さな冒険が自分をどこか遠くへ連れて行ってくれるような気がしている。成長していく主人公と、ゆっくりと芽吹く確かな友情に強く胸を打たれる。
これ以上無いと思える青春の小説でした。
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学校をサボりがちで友だちのいない高二の僕は「東京修学旅行の思い出を忘れないうちに書き留めておこう」とパソコンに向かった。佐田誠の語り文は荒くザラついている。『旅する練習』と同じ著者なのか?と初めは違和感を覚えたが、(p.38)で一気に物語に引き込まれた。
自由行動の希望地を「佐田くんの行きたいところ」と書いた松くんの思いに心揺さぶられた。
三年前の代が勝ち取った「修学旅行二日目の全日自由行動」についてクラス担任が語り始める。生徒の権利を認める学校側。その裏に隠された"大人の事情"を生徒らはよく見ているなぁと感心した。
と同時に「まるまる一日が自由行動になったんだから別によくない?」と今どきの子らしいドライな面も垣間見れて微笑ましかった。そういえば、私の高校の修学旅行先も東京で、当時の自由行動が2時間だったことを思い出した。
一日目の夜、宮澤賢治の「イギリス海岸」の話をしてくれた美人教師、高村先生。「川で溺れてる時に、一緒に溺れてやろうって人と、助けてやろうって人がいたらきみならどちらに来てほしい?」かと聞かれた誠は「二人ともそこにいたら、溺れている人はきっと助かる」と答えた。
この言葉が特待生、蔵並くんの気持ちを動かす。「松はお前と一緒に溺れてやろうと思っている。それなら僕は・・」
生き別れたおじさんに会いに日野に行く誠、松と大日向と共に蔵並もついてきたのだから、言葉の力って凄い。
父もなく母もいない。物心ついた時からずっと泳ぎながら溺れていた誠の心にしっかり届いたのだから!
著者は風景描写も上手い。
低い宙を舞うケヤキの葉が、陽光を受けてきらきら光る。女の子はしゃがみこむと、両手に落ち葉を山と盛り投げ上げた。強い輝きが目の前で滝をつくる。
枝を離れた葉は誰にも踏まれないまま積み重なり、日の光を浴び、時々の雨に洗われ、また天日干しされを何度も繰り返して、豊かで清潔な厚みをつくった。ここでは人も風も水も、ただ通り過ぎるだけなんだ。
誠と3人の男の子たちが行動を共にした一日が見事に描かれている。
無機質なパソコンから打ち出された名前には表情がない。それぞれが書いた名前の残るしおりを手にした時、思い出が輝く光のように浮かび上がってくるのだと思う。表紙には浅黄色の夕日が広がり、坂道を歩く4人の後ろ姿を包み込んでいるようで温かい気持ちにさせられた。
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スリルある冒険譚に緊張感が張り詰める場面もある中、青春真っ只中に感情の機微にほっこりと感動もさせられ、色んな感情が湧き出てきた。あくまで主人公が「書くこと」を通じて物語が語られる乗代雄介らしさも凄く良い味を出してして、余韻の残る読後感も爽やかで凄く心地よかった。名作。
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人によって心を動かされる部分は違うことを改めて感じた作品だった。
癖のある文章だなと思っていたが、最後まで読むとその癖があるから良いと感じた。
最後になぜおじさんに会いたかったのかや松くんなどの対応などわかった時満足できる。
溺れている人がいたら、助けることができる人間が理想だが、一緒に溺れていく覚悟ができる人間も必要だと感じた。自分も惚れた友達、女性には一緒に溺れる覚悟を見せれる人になりたいと思った。
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良かった、やはり学校を舞台とする小説は個人的に好きで、彼の小説で描かれる、歳と思考がかけ離れているが一部抜けている部分のある愛らしいキャラクターが私は好き
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旅する練習でもそうだったけど、この人の作品で出てくる土地とかをストリートビューでつい調べてしまう。誠たちがピザ食べながら会話した八ノ上横穴墓群、おじさんと会った後、みんなで線路沿いの道を歩きながら金網越しにみた西の空など。そこにいるはずもない彼らの影を見てしまう。高校生のこの時期にしかできない同級生とのやりとり、ちょっと踏み外しちゃいますか!的な冒険心、めちゃくちゃ貴重で尊くて今風にいうとエモい時間だなと思いながら読んだ。でも自分たちが当事者だったときはこのエモさになかなか気付けないなあとか。宮沢賢治の一緒に溺れるという話から蔵並が感化されたんだという場面が好きだ。最後の誠と小川のやりとりもとても良かった。
Posted by ブクログ
修学旅行の自由行動で離れて暮らすおじさんに会いに行く。クラスでも馴染めるやつなんていない、一人狼を気取っていたけど、会うためになんやかんやで協力してくれるクラスメイトと仲深まる青春ストーリー。
一文が長くてよみにくいなと、最初諦めかけたものの、最後まで読んでよかった。ずるさや寂しさを飲み込めない高校生男子。頑張れって思った。
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うん、これはいい!
ひさびさに当たりくじを引いた気分だ。
高校生が修学旅行中に親戚を訪ねる、という、ネタバレのしようがない単純な話が、実にスリリングでライブ感溢れる語り口で展開し、うっかりしてると心の深いところを揺さぶられる。
小劇場の舞台を観ているようなテンポのいいセリフのやり取りに乗せられてページを捲ってしまうが、細かく見ると、人物造形や情景描写、セリフのひとつひとつが緻密に構成されていて、技巧性も高い。
2冊目、3冊目と次々に手に取ってしまいそうな、楽しみな作家さんだ。
Posted by ブクログ
ひたすらに心地よい文章の中に浸かることができた。久々の読書がこの本でよかった。
僕は誠のような人間を心底愛している。彼のような人間を本当にかっこいいと思っている。でも彼のようになれない。僕は「孤独」を恥じてしまう。誠は美しい人間だ。
今日、高校生活最後の授業があった。
図らずも、我が校は教育目標に「誠」を掲げている。
それもあって本当にたまにだが、「誠」とは何かについて考える。
もちろん答えはないわけだが、佐田誠が持っているような人間的美しさを「誠」として形容することを、一つ高校生活を送った上での回答としておきたい。
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男子高校生たちの修学旅行中の小冒険。冒頭の独白部分は読み進めるのになかなか体力がいるけど、いざ会話が始まると自然に各キャラクターが思い浮かび、グイグイと進んでいく。ひさしぶりに青春を過ごさせてもらった。
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ずっと青春が襲ってきて苦しくなる本だった。
あの時のどうにもならなくて、狭い社会でやりくりして、クラスメイトと仲良くなる瞬間。
クラス、ってすごく不思議で社会に出ると同い年の人と出会う方が珍しい。同じクラスにいるってだけで、一生話しかけなかった人と仲良くなる運命みたいな出来事のことを思い出した。読んでよかったー!と心から思える話。あとキャッチャーインザライも、読まず嫌いせずに頑張ろうかなと思えた。
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修学旅行を抜け出して親戚のおじさんに会いに行く話。
前半が読みづらいのは、ワザとなのかも知れない。後半一気に引き込まれて、自分も日野にいる気分でした。
斜に構えてる主人公が魅力的だし、周りの友達と打ち解けて行く様子が蒼くて、こそばゆく感じました。
Posted by ブクログ
みなさん書いているように、最初は主人公の一人語りが私にはとても読みづらく、最後まで読めるかな…と不安になりましたが、修学旅行に入ってからはサクサクと読み進められました。高校でイベントなどの非日常の時に、普段は話すこともないような子と不思議な仲間意識を持てることって、確かにあるよなあとワクワクした気持ちで読めました。ついてきてくれた男子みんないいヤツだし、自分たちが楽しみながらも作戦に乗ってくれた女子たちも、みんないいなと思いました。文章だけ読んでると、確かに友達はあまりいなさそうだな…という感じの主人公ですが、みんなフラットに接しているのがいい学校だなあと最後は温かい気持ちになりました。
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人には自分の場所があって全てを見ることはできないけど、若さの時代はそれでも人と心を通わせることができて全てがわからなくても綺麗な夕暮れを見て一緒に感動することができる。
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高校2年東京への修学旅行。班行動。男子と女子。男の友情…だいぶ昔のことになってしまったけれどあの頃と今の子達の青春ってそれほど変わりないのかもしれない。なんだか泣けた。
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主人公だけでなく、登場人物たちがそれぞれの何かを抱えて、なんらかのこじらせぶりがあるところを描くのが上手い。登場人物たちが少しずつ歩み寄っていくのを、保護者のように息を詰めて見守りつつ読む。挿入された宮沢賢治の話が、後から実際の話にリンクした時、泣けた。
芥川賞の選評で、「話を作った感がある」というのを読んだので、先入観ありありで読んでしまった。豊崎由美はこの小説を高く評価していてその選評に対してとっても怒っていたので、どっちかな?と思いつつ読んだ。そういう読み方は正しくないかもしれないが、こういう読み方もまあ面白いかなと思って。
で、読んでみたら、どっちもありでした(笑)
確かに、こう持って行きたい、という作者の意図を感じるんだよね。それは、前回も芥川賞の候補になった「旅する練習」にも感じた。確かにその仕掛けのせいで、最後には泣かされるんだけど。作者は、そんな気はないんですけどね、ってそっけない書き方をしてるところが、なかなか憎いというか、そこが鼻につくっていうか(笑)今回は、はなっから、たぶんここは伏線で泣かせるんだろうなと、わかって読んでたから、予定調和というか、そんな感じだった。
豊崎さんは、創作なんだから、そういう仕掛けはあるだろうと言ってた。確かにそれもそう。
そして、その仕掛けが鼻についたとしても余りあるくらいの出来でもある。
仕掛けはいくつかあるのだけど、その一つは、吃音で病弱な松くんの存在。種明かしに至る最後まで、この存在が効いている。
この松くんの存在感たるや!
(でも、松くんみたいな存在を持ってくるの卑怯だろうという見方もおそらくあるだろうと思う。障がい者を「善なるもの」として配置することに対して、安易じゃないかという見方もよくわかる。)
でも松くん魅力的で泣かされちゃうんだよね。
ということで、正月の読書小説の在り方について考えることができて、楽しめました。
この小説自体も好きですし。
Posted by ブクログ
芥川賞ものだけに導入部分が、ああ、文学小説だなと読もうというエンジンがかからなかったが、内容は難しいながらも文面は知的な表現で癪に障ることなく登場人物の生活感を感じさせてくれた。主人公の設定がよくわからず、文中の登場人物も、”お前こんな奴だっけ?”みたいなことを言われており、ほんとそうだと思った。ちょっとぶっ飛んでない?
日常の中のちょっとした非日常を活き活きと描写される高校生の姿がまぶしい作品だった。
で、実際内容はどうかと聞かれたら、”やっぱり芥川賞はこんなもんなんでしょう”と締めくくる。エンターテイメントではない。
Posted by ブクログ
かなり読みにくい文章。現代っ子の会話のままの感じで書かれたのかもしれないけど、これは久々に断念かとも思ったけど、とりあえず薄いから頑張って読もうと覚悟を決める。
結果頑張って読む甲斐があった。それでも所々??ってなるところもあったけど、
いいな青春。若い頃の繊細さも修学旅行っていう学校生活での大イベントのちょっとテンション上がっちゃう感じも、懐かしくてキュンとするな。
Posted by ブクログ
読み終わると、とても好きだった。
序盤は“なんだか面倒だな、、”と感じてしまう言い回しも多かったけれど、高校生たちの関係性の変化と共に徐々にそのような表現が削ぎ落とされていく。
多様性なんてわざわざ声高に叫ばれずとも、他を知り共感し受け入れていくことはできるんだ。
私たちも高校生の素直さを見習わなければ。
Posted by ブクログ
帯に芥川賞候補作って書いてあって
まずい、苦手な分野かも
って思ったけれどそんなことはなかった
最初ちょっと入り込みにくかったけれど…
親戚のおじさんに会いに行ったあたりから面白くなってきちゃって
ピザ食べてるシーンはリアルに想像できた
一人でいたい
わかってはもらえない
孤独でいいんだ
それでもだれかと繋がり、関わっていくんだよね
Posted by ブクログ
修学旅行の高校生が自由行動の時間に長い間会えていなかったおじさんに会いに行くというお話。
はじめなかなか読み進められなかったけど、中盤からは集中して読めた。
青春の1ページを覗き見た感じでほっこりした。
Posted by ブクログ
"自然な導入に失敗"しているからか、読み始めはなかなかに乗れなかったですが、計画段階から旅行初日に飛躍するほどの勢いに、打って代わって、読み終えました
Posted by ブクログ
なんか前半はあまり入り込むことができなかったです。
でも、読み進めていくと自分の学生時代のことが徐々に蘇ってくる感じでした。
友達になろう!って言って友達になるなんてことはなくって、なんかこう言う感じだなぁ〜って、温かい気持ちになりました